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第五十話

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「大変です! トルキア王子が!」 
 
 宮殿を直しているのを手伝っていると、マーメイドの一人が慌ててやってきた。

「どうしたの?」

「はい、目が覚めたら、しばらくおとなしくしていたのですが、海上に! アミネイアどのがおいました」

「アルピュリアのもとか......」

 マリクシアは目を伏せる。

「我慢できなかったようだね」

「......王としては失格だ」

 だがマリクリアはなにかいいたげだった。

「おれもいってくるよ」

 おれは海上へと向かった。


「さて、アルピュリアは......」

 コゴルとアミネイアの二人の魔力を探知する。

「いた...... コゴルは店、アミネイアは城の方か」

 先にトルキア王子を探しに城へと向かった。

「ここら辺に......」

 城の裏手にある海岸に、トルキア王子がいた。

 そこに黒衣の化者《ダークレイス》とみられる黒いローブのものが三人いる。

「あいつがきちゃった。 さっさと殺しちゃって!」

 その声で二人がトルキア王子にむかう。

「お前はジグスか!」

 おれは剣をもち切りかかる。

「そうでーす」

 その細腕でおれの剣を防いだ。

(こいつ魔力障壁か...... いや)

「王子を殺すのは戴冠式だろう!」

「ダルハントはね。 でも私たちは王子が死んで反乱でも起こればそれでもいいのさ!」

(やはり、ダルハントを裏切るか!)

 おれは魔力剣《オーラブレイド》に精霊を混ぜた。 精霊剣《エレメントソード》で切りかかる。

「おおっと! それはまずいね!」

 王子に二人が切りかかっている。 それを槍で王子がさばいていた。

「結構やるねあの王子! でも!」

 二人のローブの人物が王子の近くで爆発する。

「ひゃはははっ! ぶっ飛んだ! これで死んだね!」

「いいや、よくみろ!」

「えっ?」

 土煙がなくなると、そこには王子がいた。

「なんで!? 人間なら即死のはず!!?」

 王子の姿がかわりアミネイアがいた。

「なっ!? まさか入れ替わってた!?」

「そういうことだ!」

 おれはもっていた精霊剣を投げつける。

「ぐふっ!」

 ジグスの腹に剣が深々と刺さる。

「くっ...... は、は、はは。 でもきかないよ!」

 そういってローブを脱ぐと、その体は人形のようだった。

「やはり、人形か......」

「そういうこと...... わたしを殺せなんてしないんだ。 このままあんたたちを殺してあげるよ。 この剣作るのにかなり魔力をつかうよね。 あっちのリザードマンも無傷じゃない。 もう終わりだよ」

「......最後に聞きたい。 お前たちはなんなんだ」

「そうねぇ、最後の望みぐらいはきいてあげる。 私たちはある方
に作られた存在。 この世界を掃除するためにね」

「ある方...... 掃除」

「もういいよね。 死んでも」

 その人形の目がひかる。

「もっとききたかったが、しかたない」

「そうよ。 さよなら」

「お前がな。 それは返すよ」

 おれはジグスの腹を指差した。

「これは!? ただの魔力じゃない!!」

 その瞬間剣が光を放つした。 その膨大なエネルギーはジグスを溶かしていく。

「がっ!!! なんだ! これは!! 魔力の塊!?」

「ああ、お前たちがアルピュリアに与えた力だ。 あれから作った魔力結晶をその剣の中に埋め込んだ」

「お、お前ぇぇぇ!!」

 ジグスはそのまま光の中にきえた。


「大丈夫か」

「なんとか、まさか自爆するとは思いませんでした...... 体の頑丈さに感謝しなければなりませんね」

 そう笑顔で答えるアミネイアを回復させる。

「それでトルキア王子は」

「ここだ」

 海岸の岩場に隠れていた王子がでてきた。

「事情を話してもらった。 君たちはなにものだ。 モンスターなのか」

 困惑する王子におれたちは事情を話した。

「まさか、人間がモンスターたちを仲間に...... それではまるで魔王だ」

 そう驚いて何かを思案している。

「まあ、私もマーメイドを愛しているのだから...... あり得るか」

「きゃあ」

 そういってアミネイアはほほに手を当て体をくねらせている。

(アミネイアは大分恋愛脳だな)

「それでアルピュリアは!」

「おれたちが保護しているけど、彼女はあわないと思うよ」

「やはりそうか......」

「彼女も一時の感情とはいえ、自分の種族を崩壊させかねなかった。 それを自分のためにトルキア王子にしてもらいたくないんだろう」

「......確かに私はこの国の王子。 しかし...... 彼女とともにいきられるなら国など捨てる覚悟」

 しっかりとこちらを見据えてトルキア王子は話した。

「きゃあ、きゃあ」

 アミネイアは更にくねくねしている。

「ま、まあ、でもそれは彼女の本意じゃないし。 とりあえずダルハントを何とかしないと」

「叔父上...... 仕方あるまい。 国を捨てるにしても最後のけじめはつける。 お力をお借りしたい」

 そうトルキア王子は頭を下げた。


 それからは簡単に終わる。 

 おれたちは城に乗り込み、ダルハントとその側近貴族たちと兵士かを叩き伏せた。 

「簡単でしたね」

 アミネイアがそういう。

「うん、元々王子...... いや王一人でもなんとかなったんじゃないか」

「まあ、肉親の情で野放しにしてしまったのかもしれません」

「かもな。 でもあっちは解決したけど、こっちの解決は難しいな......」

 先程からおれの店にトルキア王はきて、部屋にこもるアルピュリアに話しかけている。

「アル、この国は私が取り戻した。 王に即位し、法もなくした。 もう隔てるものはなにもないんだ」

「......お帰りください。 あなたは国の王、人々を導くお方。 私のような身勝手なものは忘れてください......」

 それきり声をださなくなり王を拒絶していた。

「なかなか頑固ですね」

 コゴルがため息をついた。

「アルピュリアさまは自分の弱さがトルキアさまの足枷になったと感じているの。 法律ができて一年ぐらいずっと部屋でないて、それを悪いやつに利用されたから、また同じことを起こすんじゃないかって心配してる......」

 そうキュルアはいまにも泣きそうな顔でいう。
 
「アルピュリアも自らの立場としての責任を知っているからか......」

(精霊ちゃんならいいアドバイスがきけそうだけど...... しかたない)

「もう面倒だ。 強引にいこう」

「いきましょう!」

 そう意気揚々とアミネイアが賛成する。

「ええ!?」

 コゴルが怪訝な顔をしていた。
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