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第二十二話

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「これが紙か...... ここで売ってる紙より繊細な感じがする」

 おれは部屋でかなり繊維がある感じの紙を手に取る。

 今サクトが紙制作に取りかかっていて、試作品をもってきた。

「ええ、マサトさまが お作りになった紙とは比べるべくもない劣化物ですが、人間たちが作るものよりはよいものだと。 これからもちろん改良は加えます」

「でもすごいよ。 かなり白いし、売れるレベルだね」

「はっ、ありがとうございます。 それというのもデュセどのがもってきた木材がかなりよいものでして」

 そういってサクトがデュセをみる。

「ここらの木で一番繊維が多いアスモの木よ」

「少々繊維が短く絡まりづらいのですが、その分滑らかになります。 ここからは努力で、より薄く固く繊細な紙を、作りたいと思います。 おそらくよい水と粘性があれば作れるかと」

「わかった。 とりあえずこれを売りたいんだけど、おれとサクト、デュセしかいないか。 売れるものがあるのに人員がな」

「いえ......」

 サクトがなにか言おうとしたとき、ドアをノックされた。

「マサトさま!」

 入ってきたのはイケメンのワイルドな青年、背の低い美少年、美女とかわいい少女がいた。

「に、人間!? 誰!!」

「ああ、俺ですよ。 ゼオンです」

「ゼ、ゼオン!? 人間になれたの!?」

「ウェアウルフですから、とはいえ苦労はしましたが」

「それで後ろは?」

「私です」

「その声はコゴルか!」

 美少年はコゴルだった。

「じゃあ、残りの二人は! まさか!」

「アプラです。 そしてこちらがネオンどのです」

 美女になったアプラがそう恥ずかしがっているネオンを紹介する。

「な、なんで人間に!?」

「コゴル、アプラ、ネオンどのには私のシェイプシフトをお教えしました。 ほかのものにも教えてはいるのですが、体得したのはこの三人だけですな」

 そうサクトがうなづく。

「驚いた! だけど、これなら町へ売りにいくのも可能だな」

「それは、私とアプラどので参ります。 マサト商会をつくりましたので」

 ゼオンがそういいアプラもうなづいた。

(さすがサクト仕事が速い...... でもおれの名前はやめてほしかった。 なんかはずい)

「そうか、じゃあサクトあの話...... コゴルとネオンも頼める」

「はい、学校の件、四名ですね。 わかりました」

「学校にいくの!?」

 デュセが興奮気味にきく。

「ああ、人間たちの方がこの世界に詳しそうだしな。 この世界の知識が必要だ」

 こうしておれたちは学校にいくことになる。

 
 それから、一ヶ月後。

「これが制服か......」

 おれたちは学校に通うため、ラルトレン王国のデトルフという大きな町にきていた。

「みて! マサト!」

 制服か気に入ったのかおれの前でデュセは回る。

「うんにあってるよ」

「ふふふっ」 

(もう四回目だけど......)

「わ、私もどうですか?」

 ネオンも控えめにそういっている。

「うん、似合ってる」

 照れ臭そうに微笑んでいる。

「それにしても、よく学校に通えるようにできたな」

「サクトさまが、校長と飲み屋で意気投合して、学園にねじ込んだらしいです」

 コゴルがそう教えてくれる。

(サクト、コミュお化けか)

「さあ学園にいってみよう」


 学園はかなり大きな敷地にたっていた。 どうやら富裕層や貴族などの子弟が通う学園で、魔法や剣などの戦闘技術もおしえるらしい。

 六学年ほどあり、一学年は50人程度だ。 年齢は14才から入学でき一定の単位をとれば卒業できるという。

(卒業で、就職とか有利になるのか...... まあおれには関係ないけど、そんなことよりここで自分達の正体をしられずに情報をえないとな...... しかし)

「あの子達なに?」

「きれいね!」

「すごいかわいいこたちが三人かと思ったら、一人は男か」

「新入生か!」

 周りの生徒たちは、おれ以外に興味津々のようすだった。

(やはり、顔か!! 世の中は顔か! 異世界も顔か!)

『あなたは人の顔じゃない...... いえ、人は顔ではないです。 あなたは神ですし、顔なんか多分大丈夫ですよ』

(精霊ちゃん、やめて! 傷つく! フォローが下手すぎて余計傷つく!)

 おれは現実に負けそうになりなからも、なんとか教室へと向かった。

 教室でも三人は大人気だった。 

「ねえ、君新入生だよね」

「そうよ」

「みたことないけど、どこにすんでるの?」

「秘密」

 そうデュセはまとわりつく男子を軽くあしらっている。 

 ネオンはなんとかかわしているようだ。

「ねえ、君は」

「あっ、はい。 僕は商人をしています。 今は勉強するため学園にきました」

「そうなんだ!」

「かわいい!」
 
「ねー」

 そう女子たちにコゴルは照れながらも、うまく対応しているようだ。

(そして、おれはそれを眺めてる。 なんか中学のときみたいだな。 この空気な感じが...... まあ、三人が楽しいならそれもいいか)

「おい......」

 それをみていたら、後ろから声をかけられた。 見ると大柄な目付きの悪く、制服をきくずした生徒がこちらをみている。

(ぎゃあああ! いきなり異世界ヤンキー? に絡まれた!!)

「な、なんですかね?」

「お前、その剣見せてみろ」

 おれの腰にある剣をあごでしゃくる。

「剣? これ」

 その生徒に剣を見せる。

「この剣は...... どこで手に入れた」

「どこ?」

(これ森に落ちてた古い剣だけど、直したといっても信じないか)

「おじさんに入学祝いでもらったんだけど」

「こいつはうちのアスガリア家の紋章だ」

 そういって自分の腰にある剣を抜いた。 確かに意匠はちがうが紋章は同じだ。

「あ、ああ、そうなんだ。 なんかのあれかな。 おじさんが手に入れたのかな?」

「この紋章の剣をもてるのはうちの家系だけしかもたねえ。 盗んだのか」

「いやいや、そんなものなら身に付けないでしょ! ちがうちがう! いや、持ち主がいるなら返すよ」

「返す必要なんかないわ」

 そうデュセが横から口を出した。

「あんたの家のものだったとして、マサトがもっててもおかしくないでしょ。 あんたの家の人間が手放したのかもしれないじゃない」

「ありえねえ。 これは一族しかもたねえんだ! 売るなんてことはねえ! 邪魔だ! 引っ込んでろ!」

「なんですって、人間風情が......」

 二人がにらみあう。

「まあまあ! そんな大切なものだとは知らなかったんだ。 返すよ」

「それですむわけねえだろ。 お前のおじさんとやらが盗人なら罰が必要だ。 おもてにでろ!」

 そういっておれの服をつかむと、おれを引っ張りだした。

「この!!」

 デュセたちがこちらに来るのをおれはとめた。
 
(しかたない。 なんとか穏便にすます方法を考えよう)

 おれは連れ出されながらそう考えていた。
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