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第二話

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 おれに巨大なアリがせまる。

『あれはヒュージアント。 肉食のモンスターです。 逃げないとたべられますよ』

「えええええ!? モンスター!?」

 ガサガサガサガサ! 巨大なアゴを動かしながらアリがせまる。

「いやぁぁぁぁ!!」

 おれはとにかく逃げた。

「ど、ど、どうしたらいい!! このままじゃ死ぬ!」

『あなたはかなり強いのです。 とりあえず、私を信じて戦いましょう』

「無、無理だ! そんなこと信じられない!」

『だったら、自分を信じて』

「も、もっと信じられない!!!」

『あれです。 右をみてください』

「右...... あれは」

 地面に落ちているボロボロの剣がある。 それを拾いかまえた。

「ギィ!!」

 アリが飛びかかってくる。

「うわぁ!!」

 とっさに剣で払いのけると、アリは地面を転がった。

「あっ、倒した!」

『いえ吹き飛ばしただけです、またきますよ。 斬ってください』

「いやこんなボロい剣じゃ斬れないって!」

『ならばその剣に【創造】《クリエイト》を使ってください』

「力をつかうと死んじゃうよ!」

『このままだと結局死にますよ』

 アリがこちらに迫ってくる。

(仕方ない、もうやけだ!!) 

「【創造】《クリエイト》!!」  

『その剣で斬ってください』
 
 おれは迫ってくるアリに目をつぶって剣をふるった。

 ザシュッ

 目を開けると、アリの胴体と頭がわかれ手足をピクピクしている。

「えっ? 倒せた......」

『やりましたね』 

「でも、なんで...... あっ!」

 おれのもっている剣が新品のように光っていた。

「あんなにさびや刃こぼれがあったのに、ピカピカになってる」

『【創造】《クリエイト》の力です』

「でも、思ったほどつかれてない」

『無から作り出すには、かなりの神の力がいります。 元々あるものならその力をあまり使用しません』
 
「なるほど、ないものを作り出さなきゃ、それほどの力はいらないか...... これは修理とかすれば人のためになるな。 いや、まずモンスターってなに!?」

『モンスターとは神の力で生まれた魔物です』
 
「それって殺してよかったの? なんかかわいそうだけど......」

『おそってくるモンスターは負の力により生まれたもの。 ただ破壊や憎悪にとらわれ、苦しむだけ。 倒せばその苦しみから逃れられます』

「苦しみから逃れるのか...... なら倒してよかったのかも。 なんかさっきまでつかれてたんだけど、すこし楽になった気がする」

『モンスターを倒して、その神の力を取り込みました』

「じゃあ、モンスターを倒すことでも、力が増すってこと?」

『そうです』 
 
「うーん、でも怖いからいやだな。 とりあえず人にあわないと」

 おれはそこから人を探して、草原をすすんだ。


「おっ! 町かな」

 そこには建物が見えてきた。

 大勢の人たちがいて賑やかな町だった。 建物や人の服装はみた感じ中世ヨーロッパのようだった。
 
「おい、森の奥でゴブリンをみたってよ」

「なんか最近モンスターが多いな。 気を付けないと」

 そう話してるのが聞こえた。

「なんか、RPGの世界みたいだな。 でも言葉がわかって助かる」

『私と同調しているあなたは言語などを理解できます。 まあ文化的にはあなたの世界でいう中世ぐらいでしょうか。 ただ【魔法】によって見た目よりは文化レベルは高いのです』

「魔法!? そんなものあるの?」 
 
『ええ、魔力を用いて事象をおこせる力。 正確にはその魔法をつかうための魔力とは、神の力のことです』

「なるほど、ここの人たちは神の力...... いや魔力で魔法を使えるのか......」

『とりあえず、お金が必要なので、何とかしましょう』

「神さまでもお金が必要なんて、人間世界って何てせちがらいんだ」

 おれは現実を突きつけられ、とぼとぼと町を歩く。


「一通りみてきて、捨てられた武具とかないかと聞き込んだけど、ないらしい」

『道具は希少ですから、鉄は溶かし、木材は薪なんかに再利用できますしね』

「リサイクルか、立派だな...... いや、それじゃおれが生活できないよ!」

『町の外に行けば多分ありますよ。 モンスターと戦った武具とか、盗賊に襲われたときの残りとか』

「すごい危険すぎるよ。 まあそれは最終手段として、何かないかな。 あっ! お金を割って複製するとか!」

『無理です。 お金には魔法がかけられています。 複製を防止するためです。 それに犯罪がばれたら信頼が地に落ちますよ』 

「まあ、そうだね。 じゃあ創造する力でなにか......」

 店が視界にはいると、そのガラスの向こうに人物画がかけられていた。

「ねえ、肖像画いくつかあるけど、みんな貴族みたいなんだよね」

『ええ、本来肖像画は高級品ですからね。 画家を雇える貴族や富豪じゃないと手に入らないものですよ』

「なら......」

 おれは剣を売り払い、お金を手に入れた。

『剣を売ってしまったんですか?』

「ああ、元手がほしいからね」

 そして雑貨屋で紙をかった。

「紙があってよかった。 中世なら紙が貴重だからな」 

『まあ、製造工程はなくても魔法でつくれますからね。 でも紙なんてどうするんですか?』

 おれは町にたち行き交う女性に声をかける。
 
「あの、肖像画いりませんか。 でも絵ではなく実際の姿ですよ」

「えっ? 肖像画。 でも絵筆もなにもないけど......」  

 女性は首をかしげる。

「魔法ですよ」

「魔法...... そんな魔法が使えるの? 聞いたことないけど、でも肖像画は高いから」
 
「いえ、いえ、安いですよ」

(えっと、宿賃が100ゴールドだから)

「20ゴールドでどうでしょう」

「えっ!? そんな安いの...... じゃあためしにお願いしようかしら」

「わかりました」

 おれは【創造】《クリエイト》で紙に女性を写し出した。

「すごい! 本当に実物みたい」

 女性は喜んでお金を払ってくれた。

『なるほど、【創造】《クリエイト》をそうやって使うのですか』

「ああ、イメージを具現化する。 紙の上にね」

「なあ、おれもひとつ頼むよ」

「はいっ! まいど!」

 それから次々来る客に肖像を写してお金を稼いだ。
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