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第五十九話
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「どうだった?」
ひっそりとした都市を歩きながら、おれは集まった三人に聞いた。
「どうやら、やはり軍の再編を行っているようですわ」
「ああ、それにどこからか持ち込まれたらしく、かなりの数の神剣の使い手が生まれたらしい」
ミリアナとバルクティスは集めてきた情報をはなす。
「うむ、あそこのオムレツはなかなかうまかったぞ」
ほほにソースをつけてベルスレイブはお腹をさすっている。
「......おれが姿を消して兵士の話を盗みぎきしたら、どうもどこかからのくるはずの援軍が来ないので待機しているらしい」
「ワイゼンフラム以外にも援軍がいるのですか?」
「わからない。 やはり城にいくしかないな。 ベルスレイブ覚悟はいいか」
「誰にいっておるか、私に任せよ! あっ、ぎゃあ!」
自信満々で胸を張った拍子に剣を足におとし、ベルスレイブは転げ回った。
(ああ、不安しかない......)
城内部に潜入してあわただしく動き回る兵士をさけ、人のいない場所に向かう。
「やはり戦争の準備だな。 早く止めないと」
「王のそばにいる者たちをどうする?」
「おれが霊体の糸を張って、実体化させれば動けないはず。 王はどこだ。 先に糸をはる」
「ここをまっすぐいけば、謁見の間だ」
バルクティスから聞いて、おれは霊体《アストラルバディ》となり、壁をすり抜けた。
「まだ来ぬか!」
大きな部屋の中、大勢の人がいる。 その中央奥に大きな椅子に座り、苛立つようすの太った男がいる。
(こいつがアルバハルか...... やはり援軍を待っているな)
「はい、まだ連絡はありません。 やはり考え直しては......」
そう見覚えのある風貌の鎧姿の男がいった。
(あっ、あいつ、たしかベルデ将軍だ)
「ここまできて引けぬ! もはや、戦争しかないのだ。 くぅ、ベルステアめしくじりおって!」
「なっ!?」
(あ、危ない声がでるところだった...... ベルステアが神剣士を送ろうとしてたのはここだったのか、あれは)
扉から黒いローブの人物が入ってきた。 それはよくみしった顔だ。
(あ、あいつ、セファイラ...... あいつもからんでいたのか!)
「セファイラ! ベルステアは失脚した!! 話が違うではないか!」
「そうですね。 どうやらあてがはずれました」
「き、貴様! 貴様がそういうから、兵や武具を集めたのだぞ!」
王は動揺している。
「まあ、御安心くださいませ。 メンダコなる町は輸送路さえ押さえてしまえば、兵糧攻めをおこなえます。 ワイゼンフラムとの共同作戦ならあの町をなんなく落とせましょう。 ねえ、ベルデ将軍」
そうセファイラはベルデ将軍をみた。
「確かに、こちらには新しく選別した五十の神剣使いがいて、兵も一万、ワイゼンフラムも一万、輸送路を封鎖して町から出せば容易く倒せるかもしれんが......」
「なにか不安でも」
「仮にあの町を攻め落としたとして、この国の経済がよくなるとは思えん。 多大な犠牲を払い町を手に入れても...... 民が従うとは」
バルデ将軍は言葉に詰まる。
「ですが、あの森の資源は豊富。 いずれ大きな資産になるでしょう」
「そうだ! バルデ! 先行投資なのだ! 我が意を民に見せつければ不満もなくなろう!」
「御意......」
バルデはただただうなづいた。
(やはり、兵糧攻めか、ただセファイラがいたのは計算外だ。 こいつをどうにかしないと......)
糸を設置したら壁を抜けみんなのもとに帰った。
「......なるほど、それで奴らが神剣の使い手を増やしたのか......」
バルクティスがうなづく。
「なんですの? そのセファイラとか言うものは?」
「ふむ、詳しく話せ」
ミリアナとベルスレイブが聞いてくるので、セファイラのことを話した。
「復神教団...... 聞いたことはありますわ」
「私も聞いたことがある」」
「えっ!? ベルスレイブも! 何百年前からあったってこと?」
「ああ、そういう教団はあった。 様々な国に関与し、戦争を引き起こそうとしてた感じだ」
「どういうことだ...... そんな昔からあったなんて」
「まあその事は後回しだ。 今はこの状況を止めないと、戦争が始まってしまう」
バルクティスが真剣な顔でいった。
「一応、森には鋼の糸を張り巡らしてくるから、突破するのに大分時間はかかるけど、確かに早く王を斬らないと...... でも斬ったあとこの国はどうなる?」
「そうだな。 多少の混乱が起こるが王と側近さえ排除できれば、多分混乱は少ない。 不満があっても声をあげられない貴族や軍の中枢にもかなりの数いるはずだから、うまく収まるとおもう」
「そうか、なら大丈夫か」
「それでどうしますの? 隠れて近づきますの?」
「セファイラがいるからな...... やつは厄介だ。 重さ、石化、光、影を操るし、単純に強い」
「ならば正面からいきましょう」
ミリアナがそういった。
「いくらなんでも......」
「大丈夫、私に策があります。 バルクティスどの私についてきてくださる」
「わかりました」
「その間にトーマとベルスレイブさまは隠れて王の隣へ」
「ミリアナ本当に大丈夫なの?」
「ええ、破剣妃の娘ですもの」
そうミリアナが微笑む。
「まあ、この者がそういうのだ。 信じようではないか」
ベルスレイブがうなづいてそういった。
ひっそりとした都市を歩きながら、おれは集まった三人に聞いた。
「どうやら、やはり軍の再編を行っているようですわ」
「ああ、それにどこからか持ち込まれたらしく、かなりの数の神剣の使い手が生まれたらしい」
ミリアナとバルクティスは集めてきた情報をはなす。
「うむ、あそこのオムレツはなかなかうまかったぞ」
ほほにソースをつけてベルスレイブはお腹をさすっている。
「......おれが姿を消して兵士の話を盗みぎきしたら、どうもどこかからのくるはずの援軍が来ないので待機しているらしい」
「ワイゼンフラム以外にも援軍がいるのですか?」
「わからない。 やはり城にいくしかないな。 ベルスレイブ覚悟はいいか」
「誰にいっておるか、私に任せよ! あっ、ぎゃあ!」
自信満々で胸を張った拍子に剣を足におとし、ベルスレイブは転げ回った。
(ああ、不安しかない......)
城内部に潜入してあわただしく動き回る兵士をさけ、人のいない場所に向かう。
「やはり戦争の準備だな。 早く止めないと」
「王のそばにいる者たちをどうする?」
「おれが霊体の糸を張って、実体化させれば動けないはず。 王はどこだ。 先に糸をはる」
「ここをまっすぐいけば、謁見の間だ」
バルクティスから聞いて、おれは霊体《アストラルバディ》となり、壁をすり抜けた。
「まだ来ぬか!」
大きな部屋の中、大勢の人がいる。 その中央奥に大きな椅子に座り、苛立つようすの太った男がいる。
(こいつがアルバハルか...... やはり援軍を待っているな)
「はい、まだ連絡はありません。 やはり考え直しては......」
そう見覚えのある風貌の鎧姿の男がいった。
(あっ、あいつ、たしかベルデ将軍だ)
「ここまできて引けぬ! もはや、戦争しかないのだ。 くぅ、ベルステアめしくじりおって!」
「なっ!?」
(あ、危ない声がでるところだった...... ベルステアが神剣士を送ろうとしてたのはここだったのか、あれは)
扉から黒いローブの人物が入ってきた。 それはよくみしった顔だ。
(あ、あいつ、セファイラ...... あいつもからんでいたのか!)
「セファイラ! ベルステアは失脚した!! 話が違うではないか!」
「そうですね。 どうやらあてがはずれました」
「き、貴様! 貴様がそういうから、兵や武具を集めたのだぞ!」
王は動揺している。
「まあ、御安心くださいませ。 メンダコなる町は輸送路さえ押さえてしまえば、兵糧攻めをおこなえます。 ワイゼンフラムとの共同作戦ならあの町をなんなく落とせましょう。 ねえ、ベルデ将軍」
そうセファイラはベルデ将軍をみた。
「確かに、こちらには新しく選別した五十の神剣使いがいて、兵も一万、ワイゼンフラムも一万、輸送路を封鎖して町から出せば容易く倒せるかもしれんが......」
「なにか不安でも」
「仮にあの町を攻め落としたとして、この国の経済がよくなるとは思えん。 多大な犠牲を払い町を手に入れても...... 民が従うとは」
バルデ将軍は言葉に詰まる。
「ですが、あの森の資源は豊富。 いずれ大きな資産になるでしょう」
「そうだ! バルデ! 先行投資なのだ! 我が意を民に見せつければ不満もなくなろう!」
「御意......」
バルデはただただうなづいた。
(やはり、兵糧攻めか、ただセファイラがいたのは計算外だ。 こいつをどうにかしないと......)
糸を設置したら壁を抜けみんなのもとに帰った。
「......なるほど、それで奴らが神剣の使い手を増やしたのか......」
バルクティスがうなづく。
「なんですの? そのセファイラとか言うものは?」
「ふむ、詳しく話せ」
ミリアナとベルスレイブが聞いてくるので、セファイラのことを話した。
「復神教団...... 聞いたことはありますわ」
「私も聞いたことがある」」
「えっ!? ベルスレイブも! 何百年前からあったってこと?」
「ああ、そういう教団はあった。 様々な国に関与し、戦争を引き起こそうとしてた感じだ」
「どういうことだ...... そんな昔からあったなんて」
「まあその事は後回しだ。 今はこの状況を止めないと、戦争が始まってしまう」
バルクティスが真剣な顔でいった。
「一応、森には鋼の糸を張り巡らしてくるから、突破するのに大分時間はかかるけど、確かに早く王を斬らないと...... でも斬ったあとこの国はどうなる?」
「そうだな。 多少の混乱が起こるが王と側近さえ排除できれば、多分混乱は少ない。 不満があっても声をあげられない貴族や軍の中枢にもかなりの数いるはずだから、うまく収まるとおもう」
「そうか、なら大丈夫か」
「それでどうしますの? 隠れて近づきますの?」
「セファイラがいるからな...... やつは厄介だ。 重さ、石化、光、影を操るし、単純に強い」
「ならば正面からいきましょう」
ミリアナがそういった。
「いくらなんでも......」
「大丈夫、私に策があります。 バルクティスどの私についてきてくださる」
「わかりました」
「その間にトーマとベルスレイブさまは隠れて王の隣へ」
「ミリアナ本当に大丈夫なの?」
「ええ、破剣妃の娘ですもの」
そうミリアナが微笑む。
「まあ、この者がそういうのだ。 信じようではないか」
ベルスレイブがうなづいてそういった。
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