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第十五話

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「なんかすごいでかい木が一杯はえている」

 巨大な木々が生える街道をメリムがかる馬車は進む。

「ええ、ここは樹海の中にある国なの」

 メリムがそう答えた。

「ほら、あそこに見えるのが、ハイレルさんが洞窟があるといってたザイトルテ大瀑布よ」

「おお!」

 雲のように一部がもやがかかった遠くに巨大な滝がみえる。

 おれたちは近くの町サンクスにたちよった。

「ここからあそこまでかなりあるけど」

「ええ、でも悪路だから、馬車では無理ね。 それにここに神剣があるはずよ。 周辺には強いモンスターがいるから、準備しないとね」

 馬屋に馬を繋ぎ、町のなかを歩く。

「ん? なにか騒がしいな」

 大勢の人が騒ぐ声がしたので、近くにいくと、人が集まっている。

「何かしら?」

「ちょっとみてみよう」

 おれがくねくねとからだの柔らかさをいかしてメリムと前にいくと、中央に少女がいて、大男とにらみあっている。 その後ろに台があり剣が刺さっている。

「あれは神剣?」 

「そうみたいね」

 メリムと話していると、男が声をあげる。

「貴様、俺を誰だとおもっている! 去年の剣武祭の予選にも出場したしたザッハさまだぞ! 神剣をさわさせないとはどういうことだ!」

 そう大男は目の前の少女に一喝した。

「貴様程度が予選にでられるとは、剣武祭も落ちたものだな」 

 そう風になびく青い髪をかきあげ、凛々しく美しい少女がそういう。

「なんかすごいかわいい......」

「............」

 ムギュ

 メリムが無言のまま両手で顔を潰してきた。

「へ、へぷっ......」

 ザッハは背中の大剣を抜いた。

「その言葉を取り消せ小娘!」

「その言葉こそ取り消せ、私にはレフィーネという名前がある」

 そういうとレフィーネという少女は長いが細身の剣をぬく。

「おいおい、あんな細い剣であの大剣を防ぐつもりか」

「腕をおられるどころか顔を潰されちゃうわ」  

「やめてやれよ!」

 周囲がざわつく。

「うるさい! これは剣士としての誇り! 何人も邪魔することは許さん!」

 そういうとザッハは剣を周囲に向ける。  

「大丈夫かな...... 止める?」

「いいえ、あのこ強いわ」

 メリムがそういうと、ザッハは大剣をふりおろした。

 バキィィィン!! 

 レフィーネはその細い剣で大剣をうけると、その剣はしなり、ザッハの剣を宙へととはねあげた。 そして青い髪をなびかせるとその剣先をザッハに突きつける。

「あっ......」

 ザッハは言葉もなく膝を地面につけた。

 その瞬間、周囲から歓声がわいた。 

 レフィーネはそのまま剣を納めると、台に座った。

「すごいな。 あんな細い剣で、どうやったんだ」 

「多分相手の剣の真芯をずらして威力を落としたんだわ。 そしてその反動で剣を弾いた。 筋力じゃなくて技術ね」

 そうメリムが真剣な顔をでいう。

 みんなが去っていったあと、おれたちは少女に近づいた。

「なんだ? あれをみていて、まさかこの神剣を手に入れようなどとはいわないだろうな」

 そう冷たい目でこちらをみた。

「試すのもだめなの?」 

「......この剣は大切なもの、絶対に悪用されるわけにはいかない。 試したくば私を認めさせてからためせ」

「なら、ためさせてもらうわ。 ただここじゃ目立つから他に行きましょう」

 メリムがそういう。

「わかった。 なら郊外に広場がある」

 そういうと、レフィーネはすたすたと去っていった。

「メリム、本当に戦うつもり、あのこかなり強いんでしょ」  

「ええ、腕だけならおそらく私よりも上......」

「じゃあ」

「でも私も神剣士を目指してるの。 無理でもためさないと」 

 そう真剣な眼差しでメリムがいう。

(そうか、メリムにも掲げる目標があるもんな。 なんかうらやましいな)

 おれは静かに見守ることにした。

 郊外にいくと、レフィーネは静かにたっている。

(うっ、強そうだ)

 メリムがその前にたち、剣をぬいた。

「先ほどの男とさほど実力は変わらないようだ。 それで私に勝てるとでも」

「あなたは負けるからといって試しもしないの?」

「ふっ、いい答えだ」

 レフィーネも剣を抜いた。

 メリムが走り距離をつめ剣をふるうと、それをレフィーネは剣を受けようとした。

(普通に戦っても勝てる気がしないけど、メリムにはなにか勝算はあるんだろうか)

「これなら!」

 メリムは当たる前に剣を横にしてレフィーネの剣を叩いた。

「ぐっ!!」

(うまい、点なら支点をずらせるけど、面なら難しい! これなら力で勝るメリムが有利、剣をおれるかも!)

 レフィーネは受けきれず、細い剣ぎたわみ地面につきそうになる。

「無駄だ!」

 レフィーネの剣はおれずに曲がり、その反動でメリムの剣をはねあげた。

 そうして剣を喉元に突き立てた。

「参ったわ...... それは魔力」

「ああ、私は非力だからと、剣を折りにくるものが多い。 だから魔力で剣を柔らかくする方へと鍛練した。 だから折れない。 卑怯といわれても構わない」

「いいえ、そんな魔力の鍛練、並みの人じゃできないもの。 完敗ね」

 そういうとレフィーネは手をさしのべる。

 それをメリムは握り立ち上がった。

(ふむ、まあよかった)

「お前なら、あの【氷雪剣】ブリュンライゼを託してもいいかもしれない」

「あの剣ってなんなんだ?」

「あれは、いまはなき私の師匠の剣、私には抜けなかった」

「それで守ってたの」

「ああ、あの人の誇りを守るために」

「おおい!! レフィーネ!!」

 少年がこちらにはしってくる。

「どうした? マルコフ」

「大変だ! 神剣が!!」

「なんだと!」

 レフィーネが走ってむかう。 おれたちもついていく。

 
 さっきの公園に大きな穴があり、剣がなくなっていた。

「これはなにがあった!?」  

「はぁはぁ、なんか、黒いローブの奴らがきて、ぬけないとわかると、すごい力で台座ごと引っこ抜いていっちゃった」

 マルコフという少年は息を切らせながらそういった。

「くっ! ぬけないから持っていったのか!」

「黒服、おれのような」

 そう聞くと、マルコフはうなづく。

「そう全身を黒いローブをきてた。 あとは大きなやつが台座ごと剣を担いでて、もう一人いた」

 おれとメリムにが目を合わす。

「ならセファイラかもしれないな」

「一人じゃないってことは、組織なのかも......」
    
「誰だ!? しってるなら教えてくれ!」

 おれたちはしってることをレフィーネに教えた。

「なるほど...... 神剣をか。 ならば次に狙うのは大瀑布にあるという治癒の神剣か」

 レフィーネがあるきだす。

「おれたちもいく」

「ええ、あの黒服とんでもない強さだわ。 でも三人なら戦えるかもしれない」

「わかった。 頼む」

 おれたちは大瀑布へとむかった。
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