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第二話

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「いやいやいや! そんなはずは...... だって死で異世界に転載するなんて!」   

 パニックになる。

(でも、そうとしか......)

「だったらなんで人間じゃないんだよ! タコって! しかもこれタコでもないだろ! 誰がこんな姿望むんだよ...... って、あれ」

 その時おれは思いだした。 あの暗い世界でメンダコになりたいと思ったことを。

「おれだ! おれ思ってたメンダコになりたいって! バカか! なんでイケメンって思わなないでメンダコって、メンちがいだろ!! せめて人になれば! くぅ!!」

 あのときのことを人生で一番後悔した。 また始まったばかりだというのに。

「しかもこれメンダコでもない...... 口だって前についてるし、あっ!」

(これおれのイメージだ。 メンダコってよく知らない。 フワッとしたイメージでこうなったのか)

「最悪だ...... でもちゃんと深海って思ったじゃん...... なんで陸なの」

 ドガンッ!!

 落ち込んでいると、突然大きな音がして家が揺れる。

「なんだ地震!? いや、あれは!?」

 窓の外をみると、金属のように光沢のある人より大きなカニが、家に体当たりしてきている。

「ぎゃああああ!! これ本物のモンスターだあああ!!」

 混乱して家中を駆け回る。 巨大な腕が壁を貫いてはいってきて、ハサミが開閉している。

「あの家の傷、こいつか!! だから住人が逃げたのか!」

 なんとか腕が壁に挟まってる間に、おれはなんとか扉をあけ、飛んで逃げ出した。


「はぁ、飛べるからなんとか逃げられた。 本物のモンスターがいるってことは、人にばれたらモンスターとして退治されるな。 転生して人生すぐ詰んだ......」

 絶望的な気持ちでフワフワと飛んでいた。 

(羽をうごかすのはつかれるな。 でもこんなもんで浮力や揚力が得られるものなのか? あと耳も聞こえるし言葉もわかるな......)

 そんなことを考えていると、遠くに町らしきものが見えてきた。

「......いくしかないよな。 見つかったら即死確定のミッションか」

 町へと覚悟をしながら地面におり町にはいる。

(なんか中世のヨーロッパみたいな建物だな。 ゲームの世界みたいだ。 比較的衛生的だ。 さっきの家にもお風呂はあったし...... でも燃料が見当たらない。 どうなってる?)

「......一応、まだばれてないな」

 こそこそしながらフードを目深にかぶり、人々を避けながら町の中心まで来る。 

「ぐぎぃぃい!」   

「なんだ? あのこ?」

 中央の公園のような場所で、年齢は15、6の元のおれと同じぐらいに見える女の子が台に刺さっている剣を抜こうとしているようだった。

「はぁはぁ、やっぱり無理だ」

 少女は座り込んだ。

「メリム、無理だといっとるだろう」  

「あきらめろ。 何年やっているんだ。 お前の母さんサーシャとお前は違う」

「それは抜けないよ。 今まで何百人と試したんだ。 そもそも本物かどうかもわからないし」

 周りの大人たちはあきれたようにいう。

「そんなことない! これは神剣よ!! これを抜けばモンスターなんかやっつけられるんだから!」

 女の子はそういうと剣を抜こうとしている。

(神剣?) 
 
「そんなものは昔話、いやおとぎ話だ。 モンスターを倒すのは傭兵か、兵士に任せろ」

「そうそう。 そんなにその剣がほしいなら、その台座を削って手に入れろよ」

 そう大人たちは笑って言う。

(見もふたもないことをいうな。 いやおれはそんなことをしてる暇はない。 なんとかこの人生、いやタコ生を生きてくすべを......)

「せめて、この剣を抜ける人がいれば...... あっ!」 

 そのメリムと呼ばれた少女はおれと目があうと、走りよってきた。

(なんかまずい......)

「ねえ、あなた旅人よね! あれ試しに抜いてみてくれない!」

「えっ...... いやおれは興味がないから」 

「いいじゃない! 一度だけだから!」

 メリムと呼ばれていた少女はおれに顔を近づけた。

(近い...... 近い、ばれる)  

 袖をとられ引っ張られれる。

(なんだこの子めちゃくちゃ力が強い!)

「なんか軽いね。 それにちょっと怪しくない...... そもそもこんな田舎に旅人なんて......」

(ま、まずい怪しみだした......)

 じろじろとこちらを見ている。 

「あ、あの剣を抜けばいいんだよね」

「そう! やってみて!」

(ふう、なんとかごまかした......)

 おれは仕方なく剣身の下の方にひし形の宝石がついている剣を手に、いや腕に取る。

(さっさと済まして、どうやって生きるかを考えないと...... なんだこの感じ)

 奇妙な感覚をえて、少し剣を持ち上げるとスッと剣が台座から抜けた。
 
「えっ?」

(まずい!!)

 素早く剣をさし戻した。

「えっ!? 今抜けなかった......」

(まずい!! これ以上目立つのはまずい!!)

「い、いやぁ、抜けなかったよぉ、ピクリともしなかったよぉ」

「もう一回やってみて!」

 その大きな青い目をこちらにじっと向けてメリムはいう。

(青い宝石みたいな目だ。 それにかわいい...... いや今はそんなことはどうでもいい! まずいぞ! なんとかごまかそう!)
  
「ぐぐっ! 固い!! ダメだ!」

 剣を握り、引き抜こうとするふりをした。

「なんかおかしい...... それっ!」

 メリムはおれの体をくすぐりはじめた。

「やっ! だめ! くすぐったら! ダメ! ぎゃはははは!!」

 その時もった腕からパタリと地面に剣が地面に落ちた。

「しまっ!」

「ぬ、抜けた...... 剣が抜けたああああ!!!」

 メリムは剣を掲げ、町中にとどろくように声をあげる。

「まさか、本当にぬけたのか!」

「伝承は本当なの!」

「あれが、モンスターを倒す神剣士!?」  

 町の人たちが集まりだした。

(や、やばいいぃ!! 逃げないと!)

「あなた名前は!」

 メリムにガッチリとそでをつかまれた。

(ま、ま、まずい、すごい力で逃げられない!) 

「とうま、だけど、これは何かの間違いで、この剣はたまたまぬけやすく......」

「トーマ! 一緒に来て!」

「えっ? まって......」

 そのまま強引にメリムに引っ張られていかれた。

 
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