ケットシーの異世界生活

曇天

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第五十一話

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「ずいぶんだな......」

 姿を隠したアスティナさんはそう怒っていた。

「確かに門番の態度はとても悪かったですね」

 ぼくたちがこのアースラント領内にはいったとき、兵士たちのその態度はとても横柄だった。

「それだけじゃないだろ。 賄賂まで要求されたろ」

「ですね。 払わないと順番大分抜かされました」

「笑い事じゃない!」

 アスティナさんは笑ったぼくを怒る。

「まぁまぁ、早くマフトレインさんを探しましょう」

「あ、ああ、あの海藻は海岸線にある。 おそらくおやじが囚われているのもその近くのはず」

「でも、なぜマフトレインさんをとらえる理由があるんです? それにアスティナさんまで」

「多分、研究成果がほしいんだろ」

「研究?」

「モンスターを軍事利用しようと各国の諜報員が、接触してくることがあった...... それで私たちはあそこにいたんだ、 元々両親は
タルタニアの国で魔法の軍事研究をしていたからな」

(タルタニア、それで姿を隠していたのか......)

「だが、モンスターの軍事研究に疲れた両親は、バルチアに亡命して、あの森に隠れた......」

(それならアスティナさんのお母さんが殺されたのって......)

「では、マフトレインさんがさらわれたのは、モンスターの軍事研究のせいですか」

「多分な......」

「それは普通の人がさらわないでしょうね。 貴族や商人...... それなら大きな屋敷がある場所に行けば探知できるかも」

 ぼくたちは海に面していて大きな屋敷がある場所を探し、領内の町を巡る。


「ピィ!」

 こむぎはホットドッグを美味しそうに体を揺らしたべている。 お気に入りのようで、つくってくれと頼んだからだ。

「ここが、アースラント伯爵の城があるマザート、もう町はここしかないけど、まさか......」

「アースラント伯爵がおやじを...... 調べてみてくれ」

 マザートは高い豪華な建物が並んでいる。 他の町とは世界が違った。

「すごい建物ですね。 柱の彫刻とか遺跡みたい」

「ああ、裕福なものが多いな...... 他の町は他の領地より貧しいのに......」

 そうアスティナさんがいう。

(スラムみたいなものもない。 なんかショールームのようにきれいにつくられている)

「あれか......」

 一際大きな城が、海沿いの丘のような高い場所にある。 

「王都の城より大きい」

 近づいてみるも、厳重な警備で近寄れない。 裏手は海になっている。

「確かに海に近い......」

「ああ、調べてみてくれるか」

「ええ」

 ぼくは魔力感知で城を調べる。 地下らしき所に人が数名いる。

「なんかあの城の丘の中に人がいます......」

「地下か」

「えっ!?」

「どうした」

「いえ......」

(あれは...... ちゃんと調べないと)

「夜に侵入してみましょう」

「......ああ、わかった」

 ぼくたちは宿にむかった。


「高かったですね」

「ああ、普通の宿の50倍の値段だったな。 接客態度も悪い、ここで仕事をしているだけなのに...... 貴族みたいだった」

「確かに横柄でした。 ぼくたちなんか貧乏人扱いで、こむぎなんて部屋にいれてもらえず馬小屋におかれてた。 ごめんね」

「ピィ!」

 こむぎは怒っている。

 夜になり宿から、城へとむかっていた。 月も出てない暗い道を歩く。 こむぎとアスティナさんは姿を消している。

「城壁まで運びます」

 ぼくは高い城壁がみえる木に登り、上から猫足棒《にゃんこポー》で持ち上げた、こむぎとアスティナさんを城壁へとおく。

「見廻りの兵が多いな。 魔力鉱石はアスティナさんがもってるから姿を消すことはできない。 これじゃ見つかるな...... そうだ! なんで思い付かなかったんだ!」

 魔力をため魔晶剣をつかう。

「おい、それって......」

 アスティナさんが驚く。 ぼくは下にいた衛兵の姿になっていた。

「ええ、魔晶剣で衛兵になれないかと......」

「外側だけ変えたのか」

「はい、前にミラージュシェルが、外側だけ魔力で実体化させた幻をつくってたことを思い出してやってみました」

「確かにミラージュシェルは実態をもつ幻をつくれたな...... でも思い付いてすぐできるなんて」

 そうアスティナさんが驚いている。

「まあ、早く行きましょう」

 衛生の姿で城壁をすすむ。城の内部にはいり、通路をあるく。

「貴様......」

 後ろから声をかけられる。 そこには甲冑の男がいた。

「はい、なんでしょう」

「なぜここにいる」

「少し腹痛がありまして、少しだけかわってもらっております」

「そうか...... しかたないな。 わかった。 すぐもどれよ」

「はい」

 そう納得して向こうに向かった。

「あとで他の人間にかわった方がいいな」

「ああ、早く下へと向かおう」

 魔力探知を使い、地下への道を見つけた。 

「地下はこの角のさきなんですけど、二人衛兵がいますね。 入れるかな」

「さっきのやつ、偉そうだったからあいつに代わったらどうだ?」

「またあったら困るが...... やってみよう」

 ぼくはさっきの甲冑の男にかわった。

「あっ、ルザムさま。 こちらににようですか?」

 地下への入り口にたつ衛兵がそういった。

「ああ、下をみるかまわないか......」

 できるだけ似せて低い声をだす。

「風邪気味ですか......」

「ああ...... すこしな」

「わかりました。 どうぞ」

 少し困惑したように兵士は扉をあける。 扉の奥には地下への階段があった。

 ぼくたちは地下へと降りていった。

 ろうそくの灯りで照らされた階段はかなり長い。

「いま、丘の内部にいるのかな」

「......多分な。 灯りがみえてきた」

 より明るい石組みの通路があり、左右に部屋がある。 扉から見える部屋に何体ものモンスターが拘束されている。

「部屋にはモンスターがいる...... でもなんかおかしい。 イビルモンスターやホーリーモンスターと魔力が違う」

「ああ、だけどあんなモンスターみたことがない。 どういうことだ」

 アスティナさんは首をかしげた。 

(なにかおかしい。 早くあそこに)

 ぼくは足早に奥にある部屋へと向かった。

「どこにいく」

「ピィ?」 

「ここで感じたんです。 大きな魔力......」

「確かにおやじも高い魔力があるが」

「いえ、違う。 この魔力は......」

 ある部屋の前にたつ。 そこの扉の格子のような窓からなかを覗いた。

「やはり、あれは......」

 そこには思っていた通り、ゴールデンバードがいた。
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