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第42話 魂継の儀⑥ トーナメント二回戦

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 僕達が歓声に包まれて会場に入ると、


「二回戦、第六試合、土光薙 神無チーム、対、土光薙 塵チーム先鋒前へ!」 


 審判に言われ、


「よし!」


 灰が舞台にあがる。 対戦相手は、顔の青白い片足が義足らしい青年が現れた。


「では先鋒戦、鬼灯 灰、対、土光薙 血染《ちそめ》始め!」


「君が僕の相手か......ふふっ」

 
 血染は口を歪めて笑った。


「何が言いたい」


「哀れだと思ってね」


「なんだと!」


「君は土光薙に関係ないだろ、それで殺されるなんてねえ」


 血染はクックックッと笑う。


「殺れるもんなら殺ってみろよ」


「ああ......」


 そう言うと血増はナイフを取り出し、自らの腕を切って術式を唱える。


「土水金行、血増鎌《けつぞうれん》......」


 灰に向かっていくと、腕から流れる血が増え形を変えて巨大な鎌になると、それを振り下ろした。 灰はとっさにかわしながら術式を唱える。


「火金行、炎甲拳《えんこうけん》!!」


 灰は両腕に燃える鋼の籠手こてを出し鎌を受け止め、弾くと内に入り込み連打した。


「ぐっ!」   


 血染は苦痛に顔を歪めると、


「まさか、とっさでかわせるとはね......大した反応速度だ......」


「その術......やはり暗殺者か......」


 灰に言われると、血染はふふっと笑い、


「......そうだよ、僕は土光薙の裏組織、塒《ねぐら》の一員さ......まさか、僕らが表舞台に出ることになるとはね、いよいよその時が来たんだね」


「その時......どういう意味だ」


「君が知る必要はないよ、何故ならもう死ぬんだから」


 そう言って術式を唱える。 すると血染は肌が赤くなり六本の血の腕が生えそれぞれに剣や槍、手斧、鎌を持った。


「それは!? 俺と同じ!」


「この術は君だけが使える訳じゃない......これは血阿須羅《ラクタビージャ》だ」


「くっ! だが、俺と同じなら!」


 灰は阿須羅王となり、同じく炎の剣や槍、斧を持ち血染に斬りかかる。 二人が斬り合うと血染の方が押している。


「......クックックッ、その程度では、僕には勝てないよ、君の攻撃は僕の血液を凝固させたこの肌が通さない」


「だったら......」


 灰は黒焔刀を抜き血染の肩口を斬り裂いた。


「ぐっ......それは黒焔刀......時夜から君に渡ってたのか......」


「知っているのか!?」


 ニヤリと笑うと血染からでた血が増えて変化し血染の姿となっていく。


「なにっ!?」


 攻撃を続けるが、血が出るほど増えていく血染に、灰はどんどん押されていき、ついに舞台上血染で溢れる。


「終わりだ......」


 血染はそう言うと、鎌を振り下ろす。


「待て!」


 僕は舞台上に叫び、


「敗けでいい」


 審判にそう告げた。


 舞台を降りると、灰は、


「すまん......助かった」


「大丈夫さ、それより一瞬動きが止まったけど......」


 そう僕が言うと、灰は、


「ああ......あいつら間違いなく霊熔山の事に関わってる......」


「!?」


 僕が驚いていると、


「灰兄ちゃんの仇は僕が取るよ。 他の試合を見て対戦相手が気になってるからね......」


 そう言いながらうずめが舞台に上がる。 舞台にいた相手は両腕に包帯を巻いた冷たい目をした男だった。




「では、次鋒戦、雪御 うずめ、対、土光薙 織《しき》、始め」


むくろって人が言ってた咒縛監獄にいたって人だよね」


「どうだろうな......」


「やっぱり......土光薙家が関わっていたのか」


 答えず織は術式を唱える。


「土木金術、紙薄旗《しはくき》」


 織は紙で出来た旗を構えた。


「青龍戟《せいりゅうげき》」


 うずめは青龍を槍先に大きな刃がついた戟の形に変え構え二人は打ち合う。 すると、織の旗ののぼりが伸び鋭くなるとうずめに向かう。 すんででかわしたうずめだったが、旗の柄で吹き飛ばされた。 


「ぐはっ!」 


 うずめは舞台を転がる。 間髪入れず織は術式を唱える。


「土火木行、爆連符《ばくれんふ》!」 


 無数の符がうずめをめがけ飛んでくると爆発した。


「ふっ、たわいもない......」


 爆破が収まる。 爆煙の中から飛び出したうずめの右腕は鱗のようだった。 


「青龍鱗《せいりゅうりん》!」


 鱗のある腕で織を殴り付けた。



 「ぐっ!」


 舞台に叩きつけられた織は、ゆっくり立ち上がると、


「......なるほど......子供だからと侮ったか......」


「お前達、塒が今までのことに関わってるのか、一体何をしようとしているんだよ!」


「......我らの目的は一つ唯一の当主を掲げこの術士の世、いや人の世を統べることだ......」


「それが塵って人なのか」


 答えずフフッと笑うと、織は術式を唱える。


「土木金火行、大化身《おおかみ》」 


 織の両腕の包帯のような紙がほどかれるとそこに腕はなかった。 そしてその長い紙は集まると巨大な狼となった。


 うずめは青龍鱗で攻撃するも、狼の体はへこんだだけですぐ元に戻ってしまう。 俊敏に動く狼の爪を受け続けたうずめは、切り裂かれされ舞台を転がる。


「ぐうう!」


「もう諦めろ......紙の柔らかさで受け流せばそんな攻撃は効きはしない、私に近づくこともできない、所詮神無など、当主になれなどしない......なったところで同じだろうがな」


 織は薄ら笑いを浮かべる。 うずめはゆっくりと立ち上がり術式を唱える。


「式神依身《しきがみよりみ》青龍脚《せいりゅうきゃく》......」


 うずめが光輝くと、脚が鱗に覆われた。 その瞬間凄まじい速さで狼を蹴り裂き、織は場外に吹き飛ばされ壁に激突した。


「なっ!? ぐはああ!!」


 織はそのまま動かなくなった。 

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