33 / 51
第33話 反魂香① 火具槌家《ひぐつちけ》
しおりを挟む
「もうすぐ岩手だ。 蕈留にも来てもらって悪いな。 雅と麟、貴人はとても来れそうにないから、置いてきたからな」
「かまわない、土光薙に俺も助けてもらったからな、五行家にはわだかまりもあるが、受けた恩は返す」
灰にそう聞かれて蕈留はそう言った。
「蕈留、お前は界咒学園に通わなかったのか」
「ああ、僕は最大の陰陽師の学園、陰陽学園で力を見せつけることで、仲間を集め、五行家の勢力を上回るのが目的で入学したからな」
鍊が蕈留に聞き、そして、
「灰、お前もだ。 確か岩手にも大きな陰陽師の学校あったはず? お前は何故いかなかった?」
「......具創学園《ぐそうがくえん》か、火具槌家の当主、火具槌 多々良《ひぐつち、たたら》というおっさんが理事長だ。 俺の家は火具槌家の分家だったが降格して、家から離れて陰陽学園に入ったからな......」
「いや、無神経に聞いてすまなかった......」
「いや......少し因縁があるだけだ、おっと着いたぞ」
岩手に着いて山奥に入っていくと、そこは昔ながらの古民家が並ぶ街があった。 その奥に大きな屋敷があった。
「ここ、幾つかの場所に結界が張られてるって、中に強い霊力がいくつもあるって青龍が言ってるけど......」
「ああ、ここは火具槌家本家だからな......重要な咒宝具が守られている。 そういやうずめ、お前、青龍と契約したんだって」
「うん、青龍が力を貸してくれて式神使いに」
「青龍......その年齢で十二天将の式神使いか......かなりの術士だな」
「これも神無兄ちゃんと、皆のお陰だよ」
蕈留が驚くとうずめは少し照れた。
(彼も強い、かなりの修羅場を潜ってるな......)
蕈留は思った。
灰達は火具槌本家に入る。 中は騒がしく人が行き来している。奥に通され部屋に待っていたのは、熊のように大きな男だった。
「久しいな灰、事情は聞いている......」
「ああ、多々良のおっさん、頼む黒焔刀を貸してくれ」
灰は言葉少なに頭を下げた、多々良は哀しそうな顔をしている。
「お前の願い、何ともしてやりたいが......黒焔刀は......盗まれたのだ。 他の幾つかの咒宝具と一緒にな」
「本当か!? 誰に、まさか......」
「......まだ分からんが、おそらくはあいつだろうな......」
多々良は目を閉じて考えている。
「時夜《ときよ》姉ちゃんが......
「俺たちと同じ理由......反魂香か! なら早く界咒学園に戻らないと!」
蕈留が立ち上がろうとすると、
「待て、すぐに動きはしまい、あの咒宝具は使うために大きな霊力を必要とするからな、おそらく霊熔山《れいようざん》にいるだろう。 あの霊山で霊力を満たす必要がある......二日前に人を送ったが帰ってきてはいない。 俺自ら行こうと思ったのだが......今、幾つかの近くの街で同時多発的に術士至上主義者とみられるテロが起こっていてな、俺は動けん」
「それは、両者が連携してるという事ですか」
鍊が多々良にそう聞いた。
「わからん......だがその可能性も考えている。 黒焔刀がフェイクで本命は別の危険な咒宝具狙いだった場合、ここを襲う可能性もある......」
「俺達が霊熔山の方に行ってくる、もし黒焔刀を取り返したら借りるぜ」
灰がそう言った。
「わかった......いいだろう」
灰達は霊熔山に向かって山道を進んでいた。
「鬼灯......すまないが時夜とは何者だ。 何故、反魂香を狙っている?」
蕈留が聞くと少し沈黙があって、
「時夜は......火具槌多々良の娘で、俺の兄貴、鬼灯家の前当主、燿《よう》の許嫁だった人だ......」
灰は言った。
「だったってことは......」
鍊が言うと、
「ああ、兄貴は二年前に死んだ......時夜を庇ってな、それ以来、時夜は姿を消した」
「それで、多々良さんはあんな反応を......」
「多分、俺に対して引け目があるんだろ。 鬼灯家は俺一人になったから、皆は残された俺を憐れみの目で見てた。 俺はそれが嫌で陰陽学園に行ったんだ」
「すまない......だが、時夜という人は、お前の兄を生き返らせようとしているのか......」
蕈留が聞くと、
「多分な......兄貴はもう甦らない......それはわかってるはずなのに」
灰は悲痛な顔で答えた。 その時先を歩いていたうずめが、
「この先の洞窟から複数の人間の霊力を感じると青龍がいってるよ!」
「先に調べに来た奴らか......」
灰は言うと、
「その時夜という人も一人とは限らない......仲間がいるかもな」
そう鍊が続けて言う。
洞窟の入り口は複数あり、灰達は別れて洞窟に入った。
「かまわない、土光薙に俺も助けてもらったからな、五行家にはわだかまりもあるが、受けた恩は返す」
灰にそう聞かれて蕈留はそう言った。
「蕈留、お前は界咒学園に通わなかったのか」
「ああ、僕は最大の陰陽師の学園、陰陽学園で力を見せつけることで、仲間を集め、五行家の勢力を上回るのが目的で入学したからな」
鍊が蕈留に聞き、そして、
「灰、お前もだ。 確か岩手にも大きな陰陽師の学校あったはず? お前は何故いかなかった?」
「......具創学園《ぐそうがくえん》か、火具槌家の当主、火具槌 多々良《ひぐつち、たたら》というおっさんが理事長だ。 俺の家は火具槌家の分家だったが降格して、家から離れて陰陽学園に入ったからな......」
「いや、無神経に聞いてすまなかった......」
「いや......少し因縁があるだけだ、おっと着いたぞ」
岩手に着いて山奥に入っていくと、そこは昔ながらの古民家が並ぶ街があった。 その奥に大きな屋敷があった。
「ここ、幾つかの場所に結界が張られてるって、中に強い霊力がいくつもあるって青龍が言ってるけど......」
「ああ、ここは火具槌家本家だからな......重要な咒宝具が守られている。 そういやうずめ、お前、青龍と契約したんだって」
「うん、青龍が力を貸してくれて式神使いに」
「青龍......その年齢で十二天将の式神使いか......かなりの術士だな」
「これも神無兄ちゃんと、皆のお陰だよ」
蕈留が驚くとうずめは少し照れた。
(彼も強い、かなりの修羅場を潜ってるな......)
蕈留は思った。
灰達は火具槌本家に入る。 中は騒がしく人が行き来している。奥に通され部屋に待っていたのは、熊のように大きな男だった。
「久しいな灰、事情は聞いている......」
「ああ、多々良のおっさん、頼む黒焔刀を貸してくれ」
灰は言葉少なに頭を下げた、多々良は哀しそうな顔をしている。
「お前の願い、何ともしてやりたいが......黒焔刀は......盗まれたのだ。 他の幾つかの咒宝具と一緒にな」
「本当か!? 誰に、まさか......」
「......まだ分からんが、おそらくはあいつだろうな......」
多々良は目を閉じて考えている。
「時夜《ときよ》姉ちゃんが......
「俺たちと同じ理由......反魂香か! なら早く界咒学園に戻らないと!」
蕈留が立ち上がろうとすると、
「待て、すぐに動きはしまい、あの咒宝具は使うために大きな霊力を必要とするからな、おそらく霊熔山《れいようざん》にいるだろう。 あの霊山で霊力を満たす必要がある......二日前に人を送ったが帰ってきてはいない。 俺自ら行こうと思ったのだが......今、幾つかの近くの街で同時多発的に術士至上主義者とみられるテロが起こっていてな、俺は動けん」
「それは、両者が連携してるという事ですか」
鍊が多々良にそう聞いた。
「わからん......だがその可能性も考えている。 黒焔刀がフェイクで本命は別の危険な咒宝具狙いだった場合、ここを襲う可能性もある......」
「俺達が霊熔山の方に行ってくる、もし黒焔刀を取り返したら借りるぜ」
灰がそう言った。
「わかった......いいだろう」
灰達は霊熔山に向かって山道を進んでいた。
「鬼灯......すまないが時夜とは何者だ。 何故、反魂香を狙っている?」
蕈留が聞くと少し沈黙があって、
「時夜は......火具槌多々良の娘で、俺の兄貴、鬼灯家の前当主、燿《よう》の許嫁だった人だ......」
灰は言った。
「だったってことは......」
鍊が言うと、
「ああ、兄貴は二年前に死んだ......時夜を庇ってな、それ以来、時夜は姿を消した」
「それで、多々良さんはあんな反応を......」
「多分、俺に対して引け目があるんだろ。 鬼灯家は俺一人になったから、皆は残された俺を憐れみの目で見てた。 俺はそれが嫌で陰陽学園に行ったんだ」
「すまない......だが、時夜という人は、お前の兄を生き返らせようとしているのか......」
蕈留が聞くと、
「多分な......兄貴はもう甦らない......それはわかってるはずなのに」
灰は悲痛な顔で答えた。 その時先を歩いていたうずめが、
「この先の洞窟から複数の人間の霊力を感じると青龍がいってるよ!」
「先に調べに来た奴らか......」
灰は言うと、
「その時夜という人も一人とは限らない......仲間がいるかもな」
そう鍊が続けて言う。
洞窟の入り口は複数あり、灰達は別れて洞窟に入った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界に彩りを
なつのさんち
ファンタジー
前世から引き継いだ記憶を元に、男女比の狂った世界で娯楽文化を発展させつつお金儲けもしてハーレムも楽しむお話。
二十九歳、童貞。明日には魔法使いになってしまう。
勇気を出して風俗街へ、行く前に迷いを振り切る為にお酒を引っ掛ける。
思いのほか飲んでしまい、ふら付く身体でゴールデン街に渡る為の交差点で信号待ちをしていると、後ろから何者かに押されて道路に飛び出てしまい、二十九歳童貞はトラックに跳ねられてしまう。
そして気付けば赤ん坊に。
異世界へ、具体的に表現すると元いた世界にそっくりな並行世界へと転生していたのだった。
ヴァーチャル配信者としてスカウトを受け、その後世界初の男性顔出し配信者・起業投資家として世界を動かして行く事となる元二十九歳童貞男のお話。
★★★ ★★★ ★★★
本作はカクヨムに連載中の作品「Vから始める男女比一対三万世界の配信者生活:オタク文化で並行世界を制覇する!」のアルファポリス版となっております。
現在加筆修正を進めており、今後展開が変わる可能性もあるので、カクヨム版とアルファポリス版は別の世界線の別々の話であると思って頂ければと思います。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
今日も聖女は拳をふるう
こう7
ファンタジー
この世界オーロラルでは、12歳になると各国の各町にある教会で洗礼式が行われる。
その際、神様から聖女の称号を承ると、どんな傷も病気もあっという間に直す回復魔法を習得出来る。
そんな称号を手に入れたのは、小さな小さな村に住んでいる1人の女の子だった。
女の子はふと思う、「どんだけ怪我しても治るなら、いくらでも強い敵に突貫出来る!」。
これは、男勝りの脳筋少女アリスの物語。
【完結】死ぬとレアアイテムを落とす『ドロップ奴隷』としてパーティーに帯同させられ都合よく何度も殺された俺は、『無痛スキル』を獲得し、覚醒する
Saida
ファンタジー
(こちらの不手際で、コメント欄にネタバレ防止のロックがされていない感想がございます。
まだ本編を読まれておられない方でネタバレが気になる方は、コメント欄を先に読まれないようお願い致します。)
少年が育った村では、一人前の大人になるための通過儀礼があった。
それは、神から「スキル」を与えられること。
「神からのお告げ」を夢で受けた少年は、とうとう自分にもその番が回って来たと喜び、教会で成人の儀を、そしてスキル判定を行ってもらう。
少年が授かっていたスキルの名は「レアドロッパー」。
しかしあまりにも珍しいスキルだったらしく、辞典にもそのスキルの詳細が書かれていない。
レアスキルだったことに喜ぶ少年だったが、彼の親代わりである兄、タスラの表情は暗い。
その夜、タスラはとんでもない話を少年にし始めた。
「お前のそのスキルは、冒険者に向いていない」
「本国からの迎えが来る前に、逃げろ」
村で新たに成人になったものが出ると、教会から本国に手紙が送られ、数日中に迎えが来る。
スキル覚醒した者に冒険者としての資格を与え、ダンジョンを開拓したり、魔物から国を守ったりする仕事を与えるためだ。
少年も子供の頃から、国の一員として務めを果たし、冒険者として名を上げることを夢に見てきた。
しかし信頼する兄は、それを拒み、逃亡する国の反逆者になれという。
当然、少年は納得がいかない。
兄と言い争っていると、家の扉をノックする音が聞こえてくる。
「嘘だろ……成人の儀を行ったのは今日の朝のことだぞ……」
見たことのない剣幕で「隠れろ」とタスラに命令された少年は、しぶしぶ戸棚に身を隠す。
家の扉を蹴破るようにして入ってきたのは、本国から少年を迎えに来た役人。
少年の居場所を尋ねられたタスラは、「ここにはいない」「どこかへ行ってしまった」と繰り返す。
このままでは夢にまで見た冒険者になる資格を失い、逃亡者として国に指名手配を受けることになるのではと少年は恐れ、戸棚から姿を現す。
それを見て役人は、躊躇なく剣を抜き、タスラのことを斬る。
「少年よ、安心しなさい。彼は私たちの仕事を邪魔したから、ちょっと大人しくしておいてもらうだけだ。もちろん後で治療魔法をかけておくし、命まで奪いはしないよ」と役人は、少年に微笑んで言う。
「分かりました」と追従笑いを浮かべた少年の胸には、急速に、悪い予感が膨らむ。
そして彼の予感は当たった。
少年の人生は、地獄の日々に姿を変える。
全ては授かった希少スキル、「レアドロッパー」のせいで。
転生幼児は夢いっぱい
meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、
ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい??
らしいというのも……前世を思い出したのは
転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。
これは秘匿された出自を知らないまま、
チートしつつ異世界を楽しむ男の話である!
☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。
誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。
☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*)
今後ともよろしくお願い致します🍀
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる