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第12話 磨術祭⑤ 準々決勝

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 準々決勝は、《犬境 雅VS甲 蕈留》、《金形代 鍊VS兎木 香》、《壬 冴VS丁 燎》、《土光薙 神無VS庚 操》の8名が決まった。


 先に対戦する雅を、モニターで見ていた。 すると、灰が頭に包帯を巻いてよろよろと歩いてきた。


「灰! 大丈夫だった!」

 
「ああ、なんとかな......雅は......」


「いま、始まった」


 一緒にモニターでみていると、爆発を雅は霊境で防いでいた。


「あいつの、甲の、術はなんかおかしいんだ.....」


「爆弾のように霊力変換しているんじゃないの?」


「いや......それは俺も思ってガードに隙を作らなかった。 でも、爆発を防げなかった......」


 霊境で防いでいた雅だったが、次の瞬間、霊境の中で大きな爆発が起こった。


「雅!」


 霊境が破壊され、雅が倒れている。


 その後、雅はタンカに乗せられ、運ばれていった。


「落ち着いて見てみろ霊力は感じる、死んじゃいない」

 
 麟はそう言った。


「そうか......」


「それより、ほら見てみろ......金形代とか言う奴の試合」


 僕がモニターを見ると、金形代君が金属人形を操り、兎木 香《とき かおり》という少女を押していた。 人形を操りながら金形代君は、左手指輪を刀に変え切り裂いた。


「金形代君が切った......いや」


 兎木という少女は、切られたと思われた体から木を生やし、人形ごと金形代君を吹き飛ばした。 そして金形代君はふらつくと膝をつき倒れた。


「今のは木のダメージか」


「それ程の威力とは思えないけど......」


 灰と僕の言葉を聞いて、麟は考えるような顔をしている。
 

 次に僕の試合になるため、会場に向かおうとすると、


「俺と雅の分も頑張ってくれ!」


 そう言う灰の拳は震えていた。


「ああ、必ず」


 色々な想いを胸に、僕は会場に向かった。 


 歓声の中に舞台に登ると、そこは市街地だった。 前には対戦相手の大学生の庚 操《かのえ みさお》という少女がいた。


「君が土光薙家の御曹司、結構タイプなんだけどー、でも金形代家の人間、もういなくなっちゃったから分家のあたしが頑張るしかないわけ、負けてもらえる?」


「僕も負けられないんです。 やることがあるので!」


「そうー、残念......やるしかないかー」 


 そう言うと庚先輩は、術式を唱えた。


(金形代家の分家ということは、人形を使うのか......いや)


 僕はその場から飛び退いた。 すると周囲の建物がバラバラに切れた。


「へえ、避けるんだ。 私の糸見えてんのかしらねえ」


(感知でかわさないと危なかった。 見えない程ものすごい細い金属の糸が張り巡らされてる......気を抜くと死んでしまう)


「あたしは暗殺専門の術士なの、一応、これから邪魔になりそうな他家の有力な人間に、試合中の事故に見せかけて殺せって命令なのよね。 心は痛むけど死んでもらえるかしら」


 庚先輩は糸を操り周囲を切り裂いて近付いてくる。 霊球を作るも回転する前に切られてしまった。


(感知することはできるが、糸の数が多い上、切れ味が良すぎる。 霊玉を貯める暇もない、体力がつきたら終わりだ)


 僕は攻撃をかわしつつ、霊刃で糸を斬ってみたが、霊刃が斬れた


「無駄よ、この糸、回転させてんのチェーンソーみたいにね、並みの力じゃ切れやしないわ、諦めてバラバラになりなさい」


 そう言われて僕が止まると、


「諦めたの、でも敗けを認めても死んでもらうわよ、土光薙家当主を取れれば出世間違いなしだからね、悪く思わないで」


 そう言って糸を打ち出してきた。 が僕の体に届くまえに止まった。


「なにこれ!? 糸が動かない!? 何をしたの!」


「霊力探知用に張り巡らせていた霊力を集めてあなたの糸を拘束しただけですよ」


「嘘よ! 回転する糸を拘束できる程の霊力は出てないはず!」


「後ろをみてください」


 首を動かして後ろを見た庚先輩は絶句している。


「......斬ったはずの建物の瓦礫が少ない!? どういうこと......まさか!!」


「そうですあなたが斬った建物のいくつかは、僕の霊力で作った偽物、斬ったあなたの糸に纏わせる為に霊力を液状のようにしました。 いくら回転して切れ味が良くても、液体のように柔らかい霊力を全ては切り裂けないはず、そして僕は柔らかな霊力を一気に固めた」


 その話を聞いて、唖然としていた先輩は、観念したように、


「わかったわ......あたしの負けよ。 あなたを取れれば一家の暗殺家業から足を洗えると思ったのにね。 あーあ」


 そう嘆いて負けを宣言した。
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