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第四十回 拒絶の国
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村の長老、佳信《かいしん》さんの家に招かれた。
その時、若い村人は遠巻きに無言でずっとみている。
その目はとてもひややかだった。
(仙人に対しての嫌悪ではない感じだな......余所者だからか)
「早受《さじゅ》が助けていただいたそうで、
ありがとうございました仙人さまがた。
いなくなったので何とか探そうとしておったのです」
そう佳信《かいしん》さんはあとまを下げる。
「ですが、お腹が減ってるはずなのに、
一向に渡した食事に手をつけないのですが」
早受《さじゅ》さんは食べずにずっと持っている。
「この国のものは......人からものをもらうことは、
幼い頃から強く禁止されておるのです。
破れば他のものから、異端と見なされ叩かれるため、
我慢しておるのでしょう......
......早受《さじゅ》いいから隠れて食べなさい」
佳信《かいしん》さんがそういうと、頭を下げて、
早受《さじゅ》少し食べると、残りを持って家をでていった。
「弟の租受《そじゅ》に持っていったのでしょう......」
「なぜ、ものを受けとるのをそれほど拒むのですか?」
「最低限の誇りなのでしょうね......この国にはなにもありません。
お金も物も何もないゆえに、精神性に頼るしかないのでしょう。
私もなんとか村長になって村人を諭そうとしましたが、
幼き頃より与えられた考えを覆すことはできませなんだ」
そういって深いため息をついた。
「まあ、気持ちはわかる......俺も貧しい出だから、
豊かな奴らに対して人間としては負けてねえ。
そんな気持ちになったことはあるからな......」
紅《こう》がそういうと、
静かに聞いていた桃理《とうり》がおもむろに立ち上がる。
「そんなこと馬鹿げてるわ!誇り、名誉、
そんなもの生きていてこそよ!
死んだら何もならないじゃない!」
そういって桃理《とうり》は外にでていった。
追って家の外にでると、桃理《とうり》は、
畑のしぼんだ野菜をとる。
そして、野菜からとった種を全ての畑にまくと、気をいれ始めた。
「命気生成《めいきせいせい》!!」
すると、畑にまいた種が育ちみるまに畑に野菜が実った。
(全部の畑に気をいれるなんて大丈夫なのか!?)
桃理《とうり》はぐらつき、僕は慌てて駆け寄ると、
倒れる桃理《とうり》を抱き止めた。
「無茶だよ!こんなに大量の気を使うなんて!
いくら仙人でも、死んでしまう」
「これでもう飢えないはず......」
村人たちは、それをみて驚いてはいたが、
誰もとろうとはせず、ただ見ているだけだった。
「皆のもの、仙人さまがくださった恵みなのだ。
皆いただこうではないか」
村長の呼び掛けにも周囲を気にして、顔色をうかがい
手を出すものはいなかった。
「村長、俺たちはもの乞いじゃないんだ。
例え仙人さまからの施しとはいえ、
生きていくに最低いるこの土地以外に、受けるべきではないのだ」
一人の若い村人がそういって村長をにらむ。
そうだ、そうだと一部周りの若い村人も同調する。
(本人たちが望まない以上、ただの押し付けでしかない......)
「ふっざけないでよ......」
フラフラと桃理《とうり》が立ち上がる。
「桃理《とうり》!まだ立っちゃだめだ」
「あんたら、大人が自分で決めたことなら......
勝手に飢え死にしてもそれはそれでいいわ......」
見なさい、そう言って必死に我慢している幼い子供たちを、
桃理《とうり》は指差した。
「ただ、あんたらの誇りや自尊心で、
選択できない子供を巻き込むんじゃないわよ!!
子供が飢えたら頭を下げてでも助けをこうのが大人でしょう!
あんたたちは、子供の命より自分の面子が大事なの!!」
そう怒りに任せて吐き捨てた。
「仙人さまの言う通りだ......
まず、飢えた子供たちに、食べさせてやろうではないか」
佳信《かいしん》さんが静かに言うと、
幾人か以外の多くの村人たちがうなずき、
頭を下げ野菜をもっていった。
もらわなかった若者たちは、こちらをにらみながら去っていった
「すみません......仙人さまにこのような失礼をしまして、
助けていただき、本当にありがとうこざいました」
佳信《かいしん》さんが頭を下げると、
桃理《とうり》は無言で歩いていった。
「持っていかなかったものもいましたが......」
「ええ、あのものたちは......」
「どうしたんだ?」
紅《こう》が聞くと、村長は戸惑うように話し始めた。
「最近、この国の若いものたちが、
よからぬことを企んでいるのです」
「よからぬこととは?」
「......過激な若いものたちが武器を持ち、
他国へ戦いを挑むのではという話でして」
「戦争も何も、武器もなんにもないだろう」
紅《こう》がいうと、
佳信《かいしん》さんはひどく困った顔をした。
「実は......少し前に天から仙人さまが降りてこられて、
若いものたちに何かを吹き込んだらしいのです」
(命炎仙《みょうえんせん》さまがいってたことか......)
「力を貸すですか......」
「はい、『お前たちは他者に頼らず生きる誇り高き者たちだ。
ゆえに力を貸してやろう』
そう言って封宝具《ふうほうぐ》と気の使い方を与えたそうです。
その言葉に違和感を感じた一人が、逃げて伝えにきました」
「他の力は借りないとかいって、封宝具《ふうほうぐ》は使うのか、
勝手なものだな」
「それで、その仙人とは」
「確か......沙像仙《さぞうせん》と」
僕とコウは顔を見合わせる。
「沙像仙《さぞうせん》!?まさか十二大仙か」
「紅《こう》命炎仙《みょうえんせん》が、
恐れていたことはこれだ......」
村の外は、吹雪が人の叫び声のように聞こえていた。
その時、若い村人は遠巻きに無言でずっとみている。
その目はとてもひややかだった。
(仙人に対しての嫌悪ではない感じだな......余所者だからか)
「早受《さじゅ》が助けていただいたそうで、
ありがとうございました仙人さまがた。
いなくなったので何とか探そうとしておったのです」
そう佳信《かいしん》さんはあとまを下げる。
「ですが、お腹が減ってるはずなのに、
一向に渡した食事に手をつけないのですが」
早受《さじゅ》さんは食べずにずっと持っている。
「この国のものは......人からものをもらうことは、
幼い頃から強く禁止されておるのです。
破れば他のものから、異端と見なされ叩かれるため、
我慢しておるのでしょう......
......早受《さじゅ》いいから隠れて食べなさい」
佳信《かいしん》さんがそういうと、頭を下げて、
早受《さじゅ》少し食べると、残りを持って家をでていった。
「弟の租受《そじゅ》に持っていったのでしょう......」
「なぜ、ものを受けとるのをそれほど拒むのですか?」
「最低限の誇りなのでしょうね......この国にはなにもありません。
お金も物も何もないゆえに、精神性に頼るしかないのでしょう。
私もなんとか村長になって村人を諭そうとしましたが、
幼き頃より与えられた考えを覆すことはできませなんだ」
そういって深いため息をついた。
「まあ、気持ちはわかる......俺も貧しい出だから、
豊かな奴らに対して人間としては負けてねえ。
そんな気持ちになったことはあるからな......」
紅《こう》がそういうと、
静かに聞いていた桃理《とうり》がおもむろに立ち上がる。
「そんなこと馬鹿げてるわ!誇り、名誉、
そんなもの生きていてこそよ!
死んだら何もならないじゃない!」
そういって桃理《とうり》は外にでていった。
追って家の外にでると、桃理《とうり》は、
畑のしぼんだ野菜をとる。
そして、野菜からとった種を全ての畑にまくと、気をいれ始めた。
「命気生成《めいきせいせい》!!」
すると、畑にまいた種が育ちみるまに畑に野菜が実った。
(全部の畑に気をいれるなんて大丈夫なのか!?)
桃理《とうり》はぐらつき、僕は慌てて駆け寄ると、
倒れる桃理《とうり》を抱き止めた。
「無茶だよ!こんなに大量の気を使うなんて!
いくら仙人でも、死んでしまう」
「これでもう飢えないはず......」
村人たちは、それをみて驚いてはいたが、
誰もとろうとはせず、ただ見ているだけだった。
「皆のもの、仙人さまがくださった恵みなのだ。
皆いただこうではないか」
村長の呼び掛けにも周囲を気にして、顔色をうかがい
手を出すものはいなかった。
「村長、俺たちはもの乞いじゃないんだ。
例え仙人さまからの施しとはいえ、
生きていくに最低いるこの土地以外に、受けるべきではないのだ」
一人の若い村人がそういって村長をにらむ。
そうだ、そうだと一部周りの若い村人も同調する。
(本人たちが望まない以上、ただの押し付けでしかない......)
「ふっざけないでよ......」
フラフラと桃理《とうり》が立ち上がる。
「桃理《とうり》!まだ立っちゃだめだ」
「あんたら、大人が自分で決めたことなら......
勝手に飢え死にしてもそれはそれでいいわ......」
見なさい、そう言って必死に我慢している幼い子供たちを、
桃理《とうり》は指差した。
「ただ、あんたらの誇りや自尊心で、
選択できない子供を巻き込むんじゃないわよ!!
子供が飢えたら頭を下げてでも助けをこうのが大人でしょう!
あんたたちは、子供の命より自分の面子が大事なの!!」
そう怒りに任せて吐き捨てた。
「仙人さまの言う通りだ......
まず、飢えた子供たちに、食べさせてやろうではないか」
佳信《かいしん》さんが静かに言うと、
幾人か以外の多くの村人たちがうなずき、
頭を下げ野菜をもっていった。
もらわなかった若者たちは、こちらをにらみながら去っていった
「すみません......仙人さまにこのような失礼をしまして、
助けていただき、本当にありがとうこざいました」
佳信《かいしん》さんが頭を下げると、
桃理《とうり》は無言で歩いていった。
「持っていかなかったものもいましたが......」
「ええ、あのものたちは......」
「どうしたんだ?」
紅《こう》が聞くと、村長は戸惑うように話し始めた。
「最近、この国の若いものたちが、
よからぬことを企んでいるのです」
「よからぬこととは?」
「......過激な若いものたちが武器を持ち、
他国へ戦いを挑むのではという話でして」
「戦争も何も、武器もなんにもないだろう」
紅《こう》がいうと、
佳信《かいしん》さんはひどく困った顔をした。
「実は......少し前に天から仙人さまが降りてこられて、
若いものたちに何かを吹き込んだらしいのです」
(命炎仙《みょうえんせん》さまがいってたことか......)
「力を貸すですか......」
「はい、『お前たちは他者に頼らず生きる誇り高き者たちだ。
ゆえに力を貸してやろう』
そう言って封宝具《ふうほうぐ》と気の使い方を与えたそうです。
その言葉に違和感を感じた一人が、逃げて伝えにきました」
「他の力は借りないとかいって、封宝具《ふうほうぐ》は使うのか、
勝手なものだな」
「それで、その仙人とは」
「確か......沙像仙《さぞうせん》と」
僕とコウは顔を見合わせる。
「沙像仙《さぞうせん》!?まさか十二大仙か」
「紅《こう》命炎仙《みょうえんせん》が、
恐れていたことはこれだ......」
村の外は、吹雪が人の叫び声のように聞こえていた。
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