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第二十六話 碧玉《へきぎょく》の修行

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 未麗仙《みれいせん》先生の元で修行して約二年、
 僕は陰陽の気をある程度扱えるようになり、様々な仙術を会得した。

「先生ありがとうございました」

「いいえ、それで答えはでましたか?」  

「......いえ、答えはまだ......
 でも何か仙人である意味を作ってみようと思います」

「......それでいいと思います。
 自分の生き方は自分でお決めなさい」

「はい!」

 僕は未麗仙《みれいせん》先生に礼を言って、
 仙島を離れ地上へと戻る。

「久しぶりに公尚《こうしょう》さんと、
 宋清《そうせい》さんに会いたいが......」

 その前に気になることがあった。

「未麗仙《みれいせん》先生の話では、
 曇斑疫《どんはんえき》は、もう収まったらしいから、
 安心だけど、それを作り出した者は、
 かなり強い力を持つとはいっていたな」

「にゃう?」

 懐にいれた幼龍のコマリがこちらを見てないた。

「コマリ落ちるからちょっと大人しくしていてね」

「にゃう」
 
 そう鳴いた。

 あの調伏《ちょうぶく》の後。
 
「調伏《ちょうぶく》した霊獣《れいじゅう》は、
 その仙人に従います。あなたが責任もって育てなさい」

 そう先生からいわれ連れてきた。
 陽の気を吸いながら成長するらしい。
 
(いずれ未麗仙《みれいせん》先生みたいな仙人になるのかな......)
 
 撫でるとコマリは嬉しそうにほほを寄せてくる。

 地上に降りてまず、金白仙《こんびゃくせん》に礼を言うため、
 会いに行くことにした。

 艶夜《えんや》に向かう。その途中、知っている気を感じる。
 
「これは......感じたことがある気だ」

 森から碧玉《へきぎょく》が現れた。

「あ、やはり三咲《みさき》さまでしたか」

 笑顔でそう話しかけてきた。

「碧玉《へきぎょく》も元気そうで」

「ええ、ずいぶん大きな気をされていますね......
 師匠に連れていかれて、どこかで修行なさったのですね。
 最初は分かりませんでした」

「未麗仙《みれいせん》という仙人に修行してもらってたんだよ」

「未麗仙《みれいせん》......聞いたことがあります!
 確か十二大仙の一人すごい仙人です!」

 少し気になったことを聞く。

「十二大仙って、金白仙《こんびゃくせん》も、
 その十二大仙なんだけど、知ってた?」 

「えっ............」

 碧玉《へきぎょく》は驚きのあまりか、
 口を開けたまま呆然としている。

 それから近くの町までいき、
 碧玉《へきぎょく》が落ち着いてから話した。

「そうだったんですね。
 十二大仙人の金靂仙《こんれきせん》が師匠だったのか......
 白天仙《はくてんせん》が、
 師匠をすごい人だといってた意味が分かりました」

「今も金白仙《こんびゃくせん》のことは、評価してないの?」
 
 碧玉《へきぎょく》は首をふる。

「いいえ、元々すごい人なんだろうということは、
 薄々かんづいてましたから......でもすごい力をもちながら、
 それを使わない師匠を認められなかったのです」

「それで......」

「ですが、あの王魔《おうま》を倒した時に悟りました。
 人々の為にその力を使われているのだと!
 それ以来、酒を買ってこいといわれれば買いに行き、
 借金を返しとけといわれれば返しています!」

 そうキラキラとした目でいった。

(それって、いいように使われてるだけじゃ......
 真面目すぎだな碧玉《へきぎょく》は)

「ま、まあ良かった。お礼をいいたいのだけれど、
 金白仙《こんびゃくせん》はいまどちらに」

「それが用があると三ヶ月前にどこかに行かれて......」

 困ったように碧玉《へきぎょく》が答える。

「そうか、ああ、それで曇斑疫《どんはんえき》のこと、
 何か聞いてないかな?」

「ええ、曇斑疫《どんはんえき》は、
 ほぼ薬のお陰でなくなっていますね......」

 少し元気がないように碧玉《へきぎょく》がいった。

「どうしたの?」

「はい、実は......
 あの疫病が仙人によるものだとの噂がありまして......」

(まあ、作れるのが道士か仙人だろうから、仕方ないが......)

「で、実際作った者の話は」

「いいえ、誰かは......」

(やはり、まだわからないのか、
 陸依《りくい》先生に詳しく話を聞こう......) 

「三咲《みさき》さま、それで......お願いがあるのですが」

 そうおずおずと碧玉《へきぎょく》がいいづらそうにしている。

「なに?」

「未麗仙《みれいせん》さまに合わせていただきたいのです!」

「先生に?」

「はい......金白仙《こんびゃくせん》がいなくなり、
 一人で修行していますが、あまりうまくはいっていません。
 やはり師匠についた方がよいと......
 そこで未麗仙《みれいせん》さまに、
 合わせていただけないでしょうか?」

「まあ、紹介はできるけど......」

(あれは地獄だからなあ)
 
「お願いします!」

「で、でも、とても厳しいんだ」

「私は覚悟できています!」

(仕方ない......)

「わかった。本当に覚悟してね」

「はい!」

 元気よく答えた碧玉《へきぎょく》をかかえ、
 引障《いんしょう》で空を飛んだ。

「ひ、ひえ、空を飛んでる!」

 それからしばらく飛び、
 未麗仙《みれいせん》先生の仙島《せんとう》へとついた。

「ここが未麗仙《みれいせん》先生さまの住まわれる、
 仙島《せんとう》ですか」

 物珍しそうに碧玉《へきぎょく》がキョロキョロと見回している。

「どうしましたか?三咲《みさき》?忘れ物ですか?」

 そうおっとりとした声で、
 羊に乗った未麗仙《みれいせん》先生が現れた。

「ふむ、まだ彼女は道士ですね......まあ話しは家で聞きましょう」

 僕たちは先生の家へと向かった。

「なるほど金白仙《こんびゃくせん》の弟子ですか......
 
「は、はい、どうぞお願いします!修行をつけてください!」

 そう平伏して碧玉《へきぎょく》は頼んだ。

「いいでしょう。これから仙人が多く必要になるやも知れない......」

 そう遠くを見て先生はいった。

「ありがとうございます!」

「へ、碧玉《へきぎょく》本当にいいの......」

 僕がいうと、碧玉《へきぎょく》は目を輝かせる。
 
「もちろん!十二大仙に教えを乞えるなんて光栄です!」

 それを聞き未麗仙《みれいせん》は怖い笑顔をしている。

「では三咲《みさき》さま。
 私は強くなって必ず力になりましょう!」

「う、うん、無理せず頑張って!」

(お願いだから死なないように......) 

 僕は碧玉《へきぎょく》の無事を祈りつつ、
 未麗仙《みれいせん》の仙島《せんとう》を離れる。

 そして陸依《りくい》先生に会いに、
 安薬堂《あんやくとう》に向かった
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