15 / 53
第十五回 至落宮《しらくきゅう》
しおりを挟む
陸依《りくい》先生に教団の神殿であったことを話した。
「なるほど、そういうことが......
実は、私の方も【神薬】を調べたんですが......」
「特効薬つくれそうですか!」
「......いえ、あの薬、特効薬などではありませんでした」
陸依《りくい》先生は眉をひそめ言った。
「特効薬ではない?」
「ええ、あれは普通の水に、
内丹術《ないたんじゅつ》を込めただけのものです」
「ですが、幾人かに処方して軽減は確認しましたが......」
「はい、問題はそこなんです。
私は前から不思議に思っていたのです。
何故か病の原因がわからないのに、
私の内丹術《ないたんじゅつ》で作った薬で、
大きな効果があるのかと、
あくまで内丹術《ないたんじゅつ》で作った薬は、
内服した本人の気を高め病を退けるだけのはず......」
「それはどういうことですか?」
理解できず、聞き返した。
「......前に陰陽《いんよう》の気の話をしましたよね」
「ええ、陽《よう》の気が生命や創造を司り、
陰《いん》の気が死や破壊を司る......」
「そうです。
内丹術《ないたんじゅつ》は陽《よう》の気で作ります。
陽は陰《いん》の気を相殺する......」
「それって......まさか!?」
「ええ、率直に申せば、
この病は陰《いん》の気で作られたものということです......」
「......曇斑疫《どんはんえき》が誰かに作られたもの」
僕がそういうと、厳しい顔で先生はうなづく。
「ですが、よきこともありました。
私は紫水《しすい》の国にこの事を伝えていますので、
各国に伝えられるでしょう。おそらく各国の薬師にも、
内丹術《ないたんじゅつ》を使えるものがおりますから、
すぐに配布されると思います」
そう笑顔で先生は答える。
「そうですか、だとしたらこれ以上の被害はなくせますね。
でも、薬を一応増やしておいてください。
僕は彼らの教祖陀円《だえん》を探ります」
「わかりました。くれぐれもお気をつけて」
そうして陀円《だえん》を探して、
本部のあるという雅楽《がらく》へと向かう。
「ここが雅楽《がらく》の王都、西源《さいげん》か」
二日程走り、王都、西源《さいげん》に着いた。
そこは大きな建物が整然と並び、
かなりの多くの人で賑わっていた。
身に付けていた物や身なりからみな裕福そうにみえた。
「ここまで来た村や町は貧しかったのに、
ここだけ豊かな者たちが多いな」
歩いていると壁にか囲まれた巨大な建物がみえた。
「あれは王宮か......」
「違う。あれ下天教《げてんきょう》の本部、
至落宮《しらくきゅう》だ」
僕の独り言に行商らしき人が答えてくれた。
「あれが、教団の......」
「ああ、あの教団は集めた金を高官たちにばらまいて、
この国に入り込んでるのさ。
本来、王都は認可あるものか、高い身分の者しか住めないが、
認可を神薬と金で買ったってもっぱらの噂だ」
そう行商人は顔をしかめながら言った。
「ですが、薬は本物でしょう」
「まあな......だが、他の国じゃ、
道士や仙人が作った薬でも効果があるって話だからな......
この国の大勢の人間が、
浄財と称して金を取られて破産しちまっているのさ」
そう吐き捨てるように行商人は去っていった。
(どうやら、他の国も気づいているようだ。
だとしたら、この国にもいずれ話は伝わるから、
教団に疑いの目は向くだろうが......
この国の高官に取り入ってるなら、
揉み消されることもあるかも知れないけど......)
僕は至落宮《しらくきゅう》に近づく、
正面は大きな門が構えられており、周囲を高い壁が囲んでいて、
そこに武装した信徒らしき衛兵が十人いた。
(前のように夜までまって忍び込もう......
何か曇斑疫《どんはんえき》について知っているかもしれない)
そして夜を待った。
「なるほど、そういうことが......
実は、私の方も【神薬】を調べたんですが......」
「特効薬つくれそうですか!」
「......いえ、あの薬、特効薬などではありませんでした」
陸依《りくい》先生は眉をひそめ言った。
「特効薬ではない?」
「ええ、あれは普通の水に、
内丹術《ないたんじゅつ》を込めただけのものです」
「ですが、幾人かに処方して軽減は確認しましたが......」
「はい、問題はそこなんです。
私は前から不思議に思っていたのです。
何故か病の原因がわからないのに、
私の内丹術《ないたんじゅつ》で作った薬で、
大きな効果があるのかと、
あくまで内丹術《ないたんじゅつ》で作った薬は、
内服した本人の気を高め病を退けるだけのはず......」
「それはどういうことですか?」
理解できず、聞き返した。
「......前に陰陽《いんよう》の気の話をしましたよね」
「ええ、陽《よう》の気が生命や創造を司り、
陰《いん》の気が死や破壊を司る......」
「そうです。
内丹術《ないたんじゅつ》は陽《よう》の気で作ります。
陽は陰《いん》の気を相殺する......」
「それって......まさか!?」
「ええ、率直に申せば、
この病は陰《いん》の気で作られたものということです......」
「......曇斑疫《どんはんえき》が誰かに作られたもの」
僕がそういうと、厳しい顔で先生はうなづく。
「ですが、よきこともありました。
私は紫水《しすい》の国にこの事を伝えていますので、
各国に伝えられるでしょう。おそらく各国の薬師にも、
内丹術《ないたんじゅつ》を使えるものがおりますから、
すぐに配布されると思います」
そう笑顔で先生は答える。
「そうですか、だとしたらこれ以上の被害はなくせますね。
でも、薬を一応増やしておいてください。
僕は彼らの教祖陀円《だえん》を探ります」
「わかりました。くれぐれもお気をつけて」
そうして陀円《だえん》を探して、
本部のあるという雅楽《がらく》へと向かう。
「ここが雅楽《がらく》の王都、西源《さいげん》か」
二日程走り、王都、西源《さいげん》に着いた。
そこは大きな建物が整然と並び、
かなりの多くの人で賑わっていた。
身に付けていた物や身なりからみな裕福そうにみえた。
「ここまで来た村や町は貧しかったのに、
ここだけ豊かな者たちが多いな」
歩いていると壁にか囲まれた巨大な建物がみえた。
「あれは王宮か......」
「違う。あれ下天教《げてんきょう》の本部、
至落宮《しらくきゅう》だ」
僕の独り言に行商らしき人が答えてくれた。
「あれが、教団の......」
「ああ、あの教団は集めた金を高官たちにばらまいて、
この国に入り込んでるのさ。
本来、王都は認可あるものか、高い身分の者しか住めないが、
認可を神薬と金で買ったってもっぱらの噂だ」
そう行商人は顔をしかめながら言った。
「ですが、薬は本物でしょう」
「まあな......だが、他の国じゃ、
道士や仙人が作った薬でも効果があるって話だからな......
この国の大勢の人間が、
浄財と称して金を取られて破産しちまっているのさ」
そう吐き捨てるように行商人は去っていった。
(どうやら、他の国も気づいているようだ。
だとしたら、この国にもいずれ話は伝わるから、
教団に疑いの目は向くだろうが......
この国の高官に取り入ってるなら、
揉み消されることもあるかも知れないけど......)
僕は至落宮《しらくきゅう》に近づく、
正面は大きな門が構えられており、周囲を高い壁が囲んでいて、
そこに武装した信徒らしき衛兵が十人いた。
(前のように夜までまって忍び込もう......
何か曇斑疫《どんはんえき》について知っているかもしれない)
そして夜を待った。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道
コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。
主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。
こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。
そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。
修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。
それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。
不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。
記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。
メサメサメサ
メサ メサ
メサ メサ
メサ メサ
メサメサメサメサメサ
メ サ メ サ サ
メ サ メ サ サ サ
メ サ メ サ ササ
他サイトにも掲載しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる