異世界アパートを取り戻す! ~魔王と俺の大冒険~

曇天

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第二十三話

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「取りあえず、国にはアイテムを渡して伝えておいた。 これであとであいつらを捕まえにいくだろう」 

 町に帰ると兵士に盗賊の場所を教え、馬車で次のアイテムの場所へと向かっていた。

「だがよかったのか、鎖のアイテム手に入れなくて」

「かまわん。 悪用しづらいアイテムだからな」

「それにしても相手の動きを遅くする魔法があるなら、もっと早く使ってくれよ。 ワイバーンとかに使えば落とされなかったろ」

「ん? そんな魔法を使った覚えはない。 もってはいるが、今の魔力では使えん。 時間操作など途方もない魔力を使うからな」

「えっ? でも、あいつらの動きめちゃくちゃ遅かったけど......」 

「それは、サキミが強くなったのだ。 元々人と戦ったことはないだろう。 お主はモンスターとの戦いで人間を凌駕する力を手にいれたのだ」

 自分で作ったホットドッグを食べながら、ディンは答えた。

「でも、セレネは早かったし強かったぞ」

「あやつは卓越した力をもっておった。 普通の人間ではない」

(俺、そんなに強くなってたのか......)

 実感がわかないなと思いながら手をみる。

「そんなことより、さっさと食え。 せっかくパンを暖めたのに冷めるだろ」

 不満そうにいったので一口食べうまいといったら、機嫌がよくなった。

 それから四日かけ、ベントレイ王国へとついた。 

「ここがベントレイ王国か...... なんかのどかだな」

「ふむ、テレウスと同じぐらい田舎だな」

 草原の草が風になびくのをみて深呼吸する。

「それで、どこにアイテムがある」

「ここから、先のようだ」

「宵月とかいうあいつらに出くわすかもな。 まあ、あいつら程度ならなんとでもなるな」

「そうだが......」

 そういうとディンは真剣な顔をしている。

「な、なんだ人の顔をじろじろとみて」

「ディンは亜人なんだよな。 なんか見た目、ただの人間なんだけど」

「ふむ、余も自分が何の亜人かはわからん。 見た目人間と変わらんが、魔力がありえん量らしい。 まあ他の魔王も人間に見えるものが多かったな。 魔法を使って姿をかえているものもいたのだろうが」
 
「ふーん、他の魔王は何人いたんだ?」

「あの当時、十三人いて十三魔王と呼ばれていた。 今は一人の魔王らしいが」

「そいつらと戦ってたんだろう?」

「うむ、それぞれの目的はちがったがな。 支配のため、正義のため、平和のため、国のため、同族主義のため、民のため、強さのため、それぞれ掲げ戦乱を起こしていた......」

「でも、最後には三人しかいなかったんだろう」

「ああ、余と不戦を貫く慈王アマラセウス、そして凶王ガルガンチュアだ」

「ガルガン...... ああ湖でいってたディンの宝物を盗んでいった...... たしか残党って言ってなかったか?」

「そうだ。 ガルガンチュアは余が倒した。 その生き残りの子孫であろう。 奴は強く暗黒大陸のモンスターをも操り、十三魔王のうち六魔王を倒した」

「それと戦ったのか」

「うむ、余は戦いたくはなかったから、攻めてくるものとしか戦っていなかった。 ガルガンチュアは余の国へ侵攻してきたからな。 奴は魔族の支配のみならず、人間界への侵攻も企てていた。 そしてなんとか多大な犠牲を払い倒すことに成功した」

「お前それって......」

「そうだ。 その戦いで疲弊した余たちを人間が侵攻してきた。 軍こそ退けたが、勇者に倒され逃げた...... 余だけな」
 
 そう沈んだ声で話す。

「まあ、気にすんな。 そんな状態なら俺ならとっくに逃げてる。 お前はよくやったさ、それでこの平和ができてんだろ」

「そうだな...... まあ、結果はなんとか平和は保たれておる」

「なんだ? 何かあるのか」

「余は臆病とはいえ、あの時死の覚悟をしたのに、なぜ契約を使ったのかよくわからんのだ...... 何かを忘れておるような気がする」

 そう考え込んでいる。

「ふむ、強大な魔王と戦う覚悟をしたのに、逃げるなんておかしいっちゃおかしいな」

「まあ、とっさのことゆえ、命ほしさに使ったのかもしれんな」
 
 悲しそうに笑いながらディンはいった。
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