異世界アパートを取り戻す! ~魔王と俺の大冒険~

曇天

文字の大きさ
上 下
21 / 66

第二十一話

しおりを挟む
「これでいいか......」

 生えている木を剣できって、小さめのテーブルと椅子をつくる。

(最初は剣を振るうのもおぼつかなかったのに、かなり扱えるようになったな。 それに筋力に体力も増えたし、魔力の操作で身体能力を高めることもできるようになった。 まあ、こっちでモンスターと戦ってりゃそうなるか......)

 ディンは楽しそうに料理をしている。

(なんか、わからんやつだな。 魔王なのに、料理も好きそうだし、なんだったら断ってんのに俺の洗濯までしてたし......)

「なんだ? 人の顔ジロジロみて余の顔になんかついておるか?」

「いや、料理するのが好きなのかなって」

「ああ、楽しいな! 料理は単純にうまいものを作ればよいだけだからな。 ネガティブな考えがいらんだろう。 魔王のときは色々いやな選択もせねばならんかったからな」

「いやな選択?」

「王として非情な選択だ。 施政、特に戦争などだ......」

 そういったディンの表情がくもる。

「なら魔王なんてやめちまえばよかったのに、どう考えても不向きだろ」

「言ってくれるな。 だがそうだな、余は政治など興味もなかったからな」

「ならなんで魔王なんかになったんだ?」

 俺が聞くと、ディンは鍋をもってテーブルへと静かに置いた。

「ふむ、余がまだ物心つくかつかないかのとき、この世界は争いに満ちておった。 人間、魔族、モンスター入り乱れて戦っておったのだ」

「何のためだ?」

「領土...... 自らの野心、それぞれ理由はいろいろだった...... まあ生物の性《さが》とでも言おうか...... そのとき余は、いやみなただ飢えていた。 食べ物だけではないがな...... だからそのとき腹一杯食べさせてやりたいと思っただけだ」

(......まえに食堂をするのが夢だとかいってたな)

「余は元々膨大な魔力をもって生まれた。 それを使い弱き者を守るうちに魔王と呼ばれた。 そして余のもとに集まる者が増え、国へとなっていったそれだけのこと......」

 そういって目を伏せる。

(嬉しそうでもないな)

「余の話はそれだけだ。 聞かれたことに答えたゆえ余も問おう。 お主はなぜあのアパートにこだわる? 他に住むこともできるはずだ。 まあ余もあのアパートには思い入れはあるがな」 

 スープを飲みながら、ディンはこちらをみて不思議そうにそう聞いてきた。

「うまい! ああ、それは、お前みたいなおっきな話じゃないよ。 というか俺と同化してたならわかるんじゃないのか」

「同化といっても、半分寝ているようなものだ。 大半のことはわからん。 潜在意識や知識などは一部共有しているが、完全に目覚めたのはこの世界にくる少しまえだ。 お主がアパートに入居者がいなくて絶望していた頃だ」

「あのときか...... いや、ただ俺と同じだったからだ」

「同じ? アパートがか」

「ああ、あそこの場所は本来、大きな駅が近くにできて発展するはずだった。 それが反対にあい計画がポシャったんだ。 つまり必要がなくなった...... 必要とされないあのアパートがなんだか、俺と同じように思えた。 ただそれだけだ」 

「必要とされない...... か」

「お前とは真逆だな」 

「そんなことはない。 余はお主を必要しておる。 魔力を回復するためにな」 

「俺も必要としてるよ。 胃袋のためにな」

 そう笑いあって、食事を終えた。

 
「さて、いくか」

 次の日、森の中を歩いた。

「アイテムの方向に行けば人がいる」

「なるほど」

 ディンの感知をたよりに進む。 日暮れまえまであるく、すると道が見えてきた。

「おっ! あそこ人工的な道だな!」

「ふむ、街道のようだ! なんとかでられたな。 今日は野宿はせんでよさそうだ」

 俺たちはそこから近くの町へとつき、宿へと泊まる。 次の日から馬車を乗り継いで進むと、三日後大きな都市へとついた。

「どうやらここは王都か......」

 向こうに荘厳な王宮が見えた。

「そのようだな。 しかもあそこからアイテムの魔力を感じる」

「おい!! それって王宮にあるのかよ!」

「ああ、間違いない」

「そりゃ無理だぞ...... 入ることすらできないだろ」

「まあ、逆に言えば時の貝殻以外ならば、管理してもらえば問題ないとも言えるな」

「そうか、悪用されなければ良いわけだしな。 どのアイテムがあるのか聞き込むか」

 手分けして聞き込みを開始した。


「でディンどうだった? どうやら昔魔族との戦いで何かを手に入れたって話だが」

 待ち合わせの食堂で落ち合う、

「ああ、私も聞いたどうやら鎖のようだな。 おそらく【冥呪の鎖】だ。 対象を封印する鎖だな」

「なら問題ないか......」 

「ああ、置いといても問題はあるまい」

「じゃあ、他のところに行こう」

「そうだな。 次は......」

 そういうとディンは集中して魔力を感知している。

「大まかにしかつかめんからな。 あっちか...... いや、これは移動している!」

「どういうことだ」

 そのとき、鎧を来た兵士がのった大勢の馬がけたたましい音をたてて、町を走り抜ける。

「賊を逃がすな!! 追え!!」

 そういって騎馬団は町を抜けていった。

「賊!?」

「ああ、どうやら余のアイテムは盗まれたようだ。 王宮にあった反応がなくなった。 余たちも行こう」

 俺たちは魔力をおった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

処理中です...