冒険者ギルド始めました!

曇天

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第三十五話

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 私はアルテと共に城に拘束されているギエンレルトに会いに行った。 そこは一応他国の重臣だからか、ひとつの大きな部屋だった。

 私たちが入るとギエンレルトはこちらをいちべつし目を閉じた。

「アルテ姫ですか...... たとえ何者でも、私が話すことはありません。 戦争を止めたければすぐに釈放を」

 私はロキュプスクの持っていた銃を目の机においた。

「そ、それは! なぜこれを! まさか!」

「そう、ロキュプスク...... いえゴーレムが持っていた銃だよ。 来るべき日ってなに、魔法文明を滅ぼした者がいるの」

「そこまで知っている...... あなたは一体何者」

「私はヒカリ、冒険者ギルドのギルド長」

「あなたが、あの噂のデスデザスターライトニングバーサーカーか......」

(また増えてる!!)

「そうだ。 この方は町ひとつなど一瞬で破壊してしまえる力をお持ちなのだ」

 アルテは胸を張っていった。

「ちょ、ちょっと、アルテ...... そうだじゃないよ! ま、まあ今はいいけど、あなたたちは何をしようとしていたの」

「あなたがいかような力を持ってもあのものたちには到底戦えぬ」

「あのもの...... それはかつての文明を滅ぼしたとされる者なの」

 しばらく黙ると、口を開いた。

「そうだ。 あのものは神」

「神!?」

「何をたわけたことを......」

 アルテはそういぶかしげにいった。

「本当の神なの?」

「まさか先生、このような世迷い言を信じるおつもりですか」

(信じたくはないけどナドキエのこともある)
 
「そうみな信じぬと思い、ロキュプスクどのと示し併せ、かなり危険なこともしたのだ...... なにも知らないものたちのためにな」

 ふてくされたようにギエンレルトはいう。

「なぜ神が人間を滅ぼすと分かるの」

「我が国ブレイルドは、かつての魔法文明の生き残りが建てた国なのだ。 それゆえ文献が多く残されていた。 そこに神との戦いの詳細がかかれていた」

 ギエンレルトの話では、神は千年に一度の周期に現れ、その都度人間を滅ぼしていくという。 今は十回目、その周期に入ったことを知り、それを防ぐためにロキュプスクの協力で魔法アイテムやゴーレムの複製や魔法銃を復元しようとしたらしい。


「にわかには信じられません......」

 ヘスティアがそうつぶやく。 その日の夜、私たちはバールレのギルドで集まっていた。

「本当に神様なんているんでしょうか」

 ペイスは不安そうにいった。 

(いるけど...... ナドキエは人間を滅ぼすような感じには見えなかったけど)

「王はロキュプスクの日記を読んで、ギエンレルトを返還することにしました。 半信半疑ではあるが、ロキュプスクはとても聡明で、信憑性のないことで行動などするものではなかったからです」

 ヘスティアかいい、私はうなづいた。

「それで明日の返還時に、私たちもついていって、その文書などの確認にいこう思う」

「事実か分からないものね」

 シアリーズも、うなづく。

「そう、それに、ムーサには真偽を確かめるためにも来てもらわないと、あとヘカテーにも、古代のアイテムをみてもらいたいから」

「わかりました! ねっ」

「うん......」

 二人は了承してくれた。

 そう話していると、ギルドの扉をたたく音がする。

「もう閉めてるのに」

 私はみもせずに扉を明ける。

「すみません。 今日は終わっているので、明日に......」

「久しぶりなのにあんまりね」

 それは聞き覚えのある声だった。 私は顔を上げる。

「あ、あ!」

 私は驚いた。 それもそのはず、そこにいたのは私をこの世界へと戻したナドキエだったからだ。

「少し話かあるのだけど、いいかしら」

 有無をいわせず、中へとはいる。

「あんた! まさか!」  

「なに、戦うつもり」

 ナドキエはそう笑顔をみせた。 私は魔法銃剣を抜こうとするのをやめる。

「なんのつもり......」

「ヒカリそのかたは......」
 
 私のようすにペイスが不安そうに声をかける。

「......問題ない。 少し二人で話をさせて」

 私の部屋へとナドキエをつれていく。

「最悪、みんなに被害をもたらさないためかしら、ずいぶん信頼できる仲間をえたのね」

 奥の部屋にはいるとナドキエは椅子へ座る。 

「......それで人間を滅ぼすって本当......」  

「本当だといったら、ここで私を倒すのかしら」

「正直、そうしたいのはやまやまだけど、神様に勝てるきはしない...... 何せ世界をわたらせる力を持ってるくらいだもんね」

 そうナドキエを見つめる。 ナドキエは先ほどまでとはうってかわって真面目な顔になった、

「なら、何を聞きたいの」  

「一体何で人間を滅ぼすの......」

「そうね...... 間違いをおかさせないためかしら」

「まちがい......」

「ええ、人間は力をもつと必ずその力を悪き方に使う。 それはいつも悲劇を生んだから......」

「人間を滅ぼすことより悲劇なの?」

「そう...... 私たちにとってだけど...... これ以上はあなたがこれからいく場所にいけばわかるわ」

(ブレイルドに何かあるの......)

「なら、そのとき全て話してもらうね」

 私がそういうとナドキエは何かを考えるように静かにうなづいた。 


 次の日、私たちはブレイルド共和国の首都、アゼリアルへときていた。

「すごい!!」

「ほんとですね!」
  
 ペイスと一緒に驚く。 その整然と並んでいる建物群は現代のビルのようで圧倒された。 

「これ石だよね。 強度どうなってんの?」

「魔法で強化されている。 コンクリートよりはるかに柔軟性があって固い。 古代の...... 未来の魔法技術よ」

 そうナドキエがいう。

「未来......」

「こ、コンクリートですか...... ナドキエさんは、物知りですね」

「......ええ、そうね」

 ペイスにいわれているその顔は哀しげだ。

(信用してもいいのかわからないけど、取りあえず話してもらわないと、なにもわからないから)

  
 私たちはアルテたちと合流し、大議事堂というブレイルドの政府機関に向かう。

 そこには大きな円卓があり、その半分には十人ほどの老人が座っていた。

「ようこそ、我がブレイルドへ、元老院長サモンズと申す」

 そう一番中央の長身の老人が立ち上がり挨拶した。

「私は冒険者ギルド長、ヒカリ。 こちらはバールレの姫アルテ、そして仲間たちです」

「ええ、アブソリュートデスデザスターライトニングバーサーカーですね。 そしてアルテ姫とその仲間のかた、魔獣討伐などお噂は聞いております......」

 そう静かな物腰でサモンズはいった。

(またふえてる!!)

「......まあ、いいです。 それでギエンレルトの返還と共に、神との戦いのお話をお聞きしたいのですが」

「ええ、そこに」

 円卓の椅子をすすめられ、私たちは座った。

「我々ブレイルドの民が旧魔法文明の子孫たちだとは聞いていますね」

「そして神に滅ぼされた...... ともね」

「ふむ、信じがたいと思われますが、我が国の文献には十度文明がおこり、千年に一度世界はその都度滅ぼされた、とあります」

(信じるしかない、何せその神が実際にそうだといってるんだし)

 私は目をつぶっている隣のナドキエをみる。

「それで対抗策のために、ロキュプスクと繋がっていた......と」

 アルテが怪訝そうにいう。

「当然お怒りでしょうなアルテ姫。 越権した行為であったことはここに謝罪をする。 しかし、この話あなた方に話したとて信じてもらえぬだけではなく、もし神が知りうるところになれば......」

「その瞬間滅ぼされかねない...... か」

 カンヴァルか腕を組んでいう。

「そうです......」

「しかし、なぜ他の国まで併合された。 話しても信じてもらえぬからですか」

 ヘスティアはそう聞いた。

「それもある...... が正確には遺跡の調査のためです」

(遺跡......)

「かつてどの文明も、神に滅ばされるたけではなく、魔法技術を使い抵抗したらしいのです。 その技術が各地の遺跡に眠っていたからです」

 そういうとサモンズは立ち上がり、私たちについてくるよう促した。 


 大議事堂内を歩き、大きな鉄の扉を越え地下へとはいっていく、しばらくあるくと巨大な門があった。

 その中は明かりもないのに明るく中にはなにもない真四角な部屋だった。 その部屋の中央に私たちがたつと地面に穴が空き、下へと降りていった。

「うわっ、エレベーター!?」

「きゃあ」

 ペイスやみんなは驚いている。

 下につくと、そこには壁一面に本が並べなれている。 

「図書館......」

 ムーサがつぶやくと、サモンズがうなづく。

「そう、かつてこの地で何があったかを示す書庫です」

 そして一冊のぶ厚い本を取り出す。

「これはついこの間、隣国セレンピアの遺跡から見つかった魔法書です」

 その本を開いた。 その瞬間、壁に本から光が放たれ映像が映し出される。 

「これは!?」

 そこには巨大なモンスターたちによって町が壊され、人が蹂躙される場面が映る。

「ひっ......」

「いや」

 ムーサとヘカテーは顔をおおう。

「これは、あれはアガース、ラードーン...... オルトロス、ピュートーン......」 

 あの凶悪な魔獣たちやコアモンスターが大地を埋め尽くすほどのおびただしい数が進んでいる。

「魔獣...... モンスターが、しかもあんな数なんて......」

 私を含め、みんなそれをみて絶句している。

「この魔獣は神が創造してはなったものです。 あれはスタンピード、魔獣の進撃......」

 そうサモンズはいい本を閉じた。

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