冒険者ギルド始めました!

曇天

文字の大きさ
上 下
34 / 37

第三十四話

しおりを挟む
 それから数日たち、ヘスティアがやってきた。

「で、どうなにかわかった?」

「......ギエンレルトはなにもしゃべらないのです。 その上ブレイルドはかなり強弁に返還を求めてきている。 それに反発した貴族と重臣たちの多くが主戦論へと傾きつつあり危険です」

「それって戦争始まっちゃうじゃん!」

「何とか王が抑えていますが、向こうが先に仕掛けてくる可能性もあり、みなピリピリしていています」

「大変なことに......」

 ペイスは不安そうに呟くと、シアリーズは聞いた。

「ヘスティアどの、戦争を止める手だてはないの」

「まずロキュプスクを見つけて捕え、ブレイルドがなにかを企んでいるという証拠を見つけられれば、ブレイルドの正統性を崩しえるかも知れないですが......」

「でもどこにいったかわからないんじゃ」

「それが、どうやら捕まえた錬金術師たちの話では、別の場所に工房があるらしいのです。 しかし、調べようにもその場所はブレイドルとの国境近く、緊迫したこの状況で兵士や騎士団を動かせないのです」

「なら私たちが捕まえにいくよ」

「やってくれますかヒカリ」

 すまなさそうに、ヘスティアがいった。

「戦争なんて起こさせるわけにいかないからね」

 私たちはロキュプスクを追うため工房へ向かうことにした。

 
「ここ? こんな山のなかにいるの?」

「ヘスティアさまの話だと、昔見つけられた古代遺跡で、ダンジョン化してなかったので放置されていたようです」

 ペイスがそういった。

「ほら、あそこ」

 山のと中腹に洞窟のような場所が見えた。

 中へと慎重に進む。 石の柱と石畳のようなものがある以外は、中はなんの変哲もない狭いただの洞窟だった。 

「特に変わったところはないですね。 まあ、強いていえば人工的に作った柱や床あるだけ、あとはなにもないですね」

 ムーサは杖を握りしめ、周囲をみている。

「どこかから...... 魔力を感じる」

「本当ヘカテー、でも奥には壁があるだけだけど」

 シアリーズが壁までいきさわった。

「何か隠しているのかしら...... あらこれ」

 そういい何かをさわると、地響きがして、石の床に下に降りる階段が現れた。

「隠し階段か......」

 私たちは長い階段をおり地下へと進む。 そこは洞窟から一変し、仄かに明るい石壁が続く通路のようだった。

「これは旧魔法文明のもののようですね」

 ムーサは壁を調べながらいった。

「はやく先にいこう」

 その通路をでると、天井の高い部屋へとでた。 そこは実験道具のようなものがおかれ、奥には台のようなものがおかれていて、そこに人影がみえた。

「ロキュプスク!!」

 それはロキュプスク本人だった。

「ここまで......」

「あなたは一体何をしようとしてる!」

「なにも知らぬ愚か者たちよ...... われらの邪魔はさせぬ」

 そういうと腰から何か筒を出した。

「あれは!? 魔法銃!!」

 ロキュプスクは魔法銃を放つ、巨大な炎と水球がこちらに向かってくる。 私もガンブレードを撃つと、魔法は相殺され中央で弾けた。

「くっ...... なぜ貴様がその銃を......」

「こっちのセリフ!! みんな攻撃を!」

 私とシアリーズ、カンヴァルが前にでて剣で攻撃する。 ロキュプスクはおいていた巨大な鎌ををふり三人をはじきとばした。

「なっ! 固い!!」 

「それだけじゃないわ! なんなのこの力!」

「ああ、三人も吹きとばすなんて!」

 ロキュプスクは表情をかえず銃を構える。 

「アクアスプラッシュ!」

「エアロショット!」

「ストーンブリッツ!」

 ペイス、ムーサ、ヘカテーが放った大量の水弾と空気弾そして石のつぶてが、ロキュプスクをとらえて吹き飛ばす。

「やった!」

「いや!」

 シアリーズが制す。 倒れたロキュプスクはゆっくり立ち上がった。

「嘘だろ! 完全に魔法が当たったぞ!」

「魔法耐性...... でもそんな魔法使ってないわ」

「まずい!!」

 ロキュプスクは魔法銃を放つ、その黒い魔法は周囲を粉々にするのが見えた。

「二人とも離れて!!」

 私たちが離れると、ロキュプスクの魔法銃から黒い弾が放たれ地面を粉々にした。

「なんだあれは!?」

「あんなもの魔法耐性が上がっても食らえば死ぬわ! どうするヒカリ!」

 シアリーズがそう叫ぶ。

(この人強い! いや強いなんてもんじゃない! このままじゃ全滅、かといって殺せば情報も......)

 ロキュプスクは突進して巨大な鎌を振るってきた。 
 
(しまった! 余計な考えで!)

 その時そばを影が通り、ロキュプスクはそれを鎌で防いだ。 

「たあ!!」

 さらに矢が射られロキュプスクが防ぐ。 後ろをみるとアルテが弓を向けそこにいた。

「アルテ!?」

 ロキュプスクは銃をアルテに向けた。

 ガキィ!!

 それを槍で弾いたのはトライデンだった。

「み、みなさん、かまいません! 父をロキュプスクを切ってください!」

「トライデン...... わかった! みんな攻撃を!」

 私たちはそれぞれ攻撃を加える。 私は予知で攻撃をみなに伝え隙を攻撃する。

(よし! ここ!!)

 私の剣でロキュプスクの鎌を弾いた。

「私が!!」

 そういってトライデンはロキュプスクの首を狙い槍でないだ。

 キィン

 首に当たった槍の切っ先が折れて地面に刺さる。 ロキュプスクの首をみると、肌の下に銀色の金属のようなものがみえた。

「なっ! これ人じゃない! なら!」

 私は近距離から首にガンブレードを突きつけ放った。
  
「ライトニングブラスター」

「ガァァアア!!」

 私の放った雷光はロキュプスクの首を飛ばし、その首は地面を転がる。 ロキュプスクと思われていたものは地面に両ひざをついたまま動かなくなった。

「これ...... 父様のつくったゴーレム」

 近づいてきたヘカテーがいうと、首がとれた体からイコルを取り出した。 
  
「じゃあ本物は......」

「父上はここです......」

 奥の台のそばでトライデンはいった。 近づいてみると服をきているが白骨化している遺体があった。

「これがロキュプスク......」

「ええ、家の紋章の服を着ていますし、この指輪は母の形見......」

「じゃあ、もうとっくに......」

 ペイスがことばにつまる。

「しかし、何か外傷があるわけではなさそうだ」

 カンヴァルのいうとおり、確かに遺体には損傷はみられない。

「おそらく、病死だとおもいます。 父は体をやんでいましたから、ある時から、急に動けるようになったのは不思議に思っていました......」

 トライデンは少し目を潤ませてそばに座る。

「どういうこと......」

「これみたいね......」

 シアリーズは机にあった本を持ってきた。

「それは......」

「どうやら日記のようね」

 私たちは読んでみる。

『来るべき日のため対応策をとらねばならない』

(来るべき日、対応策......)

『巨額の資金をつぎ込んだかいあって、ブレイルドとの遺跡の共同調査で、かつての武具を手に入れる。 少し光明が見えた』

(武具って魔法銃かな)

『私はもう長くない...... はやく進めねば、かつての魔法文明と同じことがおこるだろう。 しかし国に伝えたとて動かすのは難しい......
やはり私が進めねばならない』

(かつての魔法文明......)
 
『この未曾有の危機を避けるためには不正もして清濁のみこんで金を得る必要がある。 ブルジュラや他の大商人に力を与えてでも...... 病の私はそれまでいきてはいられまい...... それに私の代わりをするゴーレムも何とか手に入れた』   

 日記にはそうかかれていた。

(ブルジュラのいってた偉い方ってロキュプスクだったのか...... それほどまでしてお金を集めて何を......)

「これだけだと、何なのかわからないけど、どうやらただ何か悪意があってやっていたわけてはなさそうだね」

「そのようです......」

 トライデンは少しだけ安心したようだった。

「でもアルテ急にどうしたのこんなところへ」

「ヘスティアからこの事を聞いて、いてもたってもいられず、軟禁されていたトライデンに聞いてここにきたんです」

「ずいぶん無茶だよ」

「先生の弟子ですから」

 そういって静かに笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた

リオール
恋愛
だから? それは最強の言葉 ~~~~~~~~~ ※全6話。短いです ※ダークです!ダークな終わりしてます! 筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。 スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。 ※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

貴方のために

豆狸
ファンタジー
悔やんでいても仕方がありません。新米商人に失敗はつきものです。 後はどれだけ損をせずに、不良債権を切り捨てられるかなのです。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

処理中です...