冒険者ギルド始めました!

曇天

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第二十六話

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「どうしたの? ムーサ」

 ヘカテーの屋敷からのかえり道、ムーサが浮かない顔をしている。

「......ええ、ヘカテーさん、ゴーレムの魔力核なんてどうするんでしょうか......」

「そうだね。 それは私も気になった。 ムーサ、ゴーレムの玉ってなんか使い道があるの」

「そうですね。 自動で魔力を周囲からえて、供給するものと本で読んだことがあります」

「まあゴーレムに使われてたからね...... 他には」

 私が聞くと、顔を曇らせた。

「......元々ゴーレムは、人間をつくる過程で生まれた実験物のようなものなんです......」

「それって! まさか、人を作ろうとしている!? あの子が錬金術を使えるの!」

「わかりません...... でも、ヘスティアさんの話だと、ヘカテーさんの両親は貴族に頼まれて何かを作ってた際に、事故でなくなったとか......」

(それでヘスティアはあんなこと......)

「もしかして両親を作ろうとしてるってこと......」

「それは...... でもわたしには彼女の気持ちがわかるんです。 私の両親もモンスターに襲われて亡くなったから...... その時よみがえらせる力があれば、私ならすがってしまうと思うから......」

 そうムーサは目を伏せた。

「......あり得る話ね。 でも本もらっちゃったし、取りあえずゴーレムの玉を渡しましょ。 それでその本の内容はわかる?」

「内容は...... ただかなりの魔力がないと作れないと思います。 少なくとも私には無理ですね」

 ムーサは本を読みながらそうつぶやく。

「なら、彼女に仲間になって欲しいね」

「ヘカテーさんに...... なって欲しいけど......」

 心配そうにムーサは答えた。

(ムーサは本当に心配なんだ...... 自分とにた境遇だから、親近感があるのかも)

「大丈夫だよ! ムーサだってなってくれたでしょ!」 

「あっ! そうですね! 確かにそうです!」

 ムーサはパッと表情が明るくなる。
 
 私たちはカンヴァルの工房へと向かった。


「ああ、ゴーレムのか、ほいこれ!」

 そうカンヴァルはかけた玉を渡してくれる。

「なんかわかったことある」

「そうだな。 自動で魔力の吸収をして、指定された魔力放出を行うってことぐらいな」

「指定された魔力放出......」

「そう特定の行動をするように命令するんだ」

「なるほど......」

(プログラムのようなものか......)

「じゃあもらっていくね」

「ああ、それで何か見つかったら持ってきてくれよ。 新しいモンスターの素材がなくて困ってるんだ」

「わかった、わかった」

 私たちはヘカテーの屋敷に向かった。


「これがゴーレムの玉......」

 ヘカテーの屋敷で、机の上においたゴーレムの玉をヘカテーは目を輝かせてみている。

「そう、それが鎧のゴーレムの中にあった魔力核、でもヘカテー...... これどうするつもり?」

「......別に」

 そういうと、ヘカテーの表情が暗くなる。

「......人間を作り出すつもり?」

 私がそういうと驚き、こちらをみている。 

「違う!!」

「人間を作り出すことは禁じられているんだよ」
 
「それ早く渡して!」

「だめ......」

「約束! ポーションの資料と交換した!」

「人間なんて作れないよ。 わかってるでしょ」

 こちらをにらんだヘカテーは、なにか丸いものを目の前にだした。

(これブルジュラがつかった!? しまった知覚......)

 目の前で閃光がおきる。

「くっ!」

「わっ!!」

 ムーサの驚いた声がして、走っていく足音が聞こえる。 

 目がなれ、部屋をみるとヘカテーの姿はなく、目の前の机にあったゴーレムの玉がない。

「やられた! ゴーレムの玉を取られた!」

「ヒカリさん探しましょう! この屋敷の中にいるはず!」

 ムーサとそれぞれ屋敷内を探す。 しばらく探しムーサと合流した。

「......やはり、ここか」

「ええ、他のお部屋にはいませんでしたから......」

 そこは収納のような板を外すとあった下へと続く隠し階段だった。

 下に降りると大きな鉄扉があり、開けると閃光が瞬く。

「うっ! なに!?」

 目を開けると、さまざまな瓶や本がおかれている部屋のなか、中央の台の前にヘカテーがいる。

「ヘカテー!」

 近づこうとすると台の上に寝ていた人が台より降りた。 それは女性で白い髪をしている。

「母様......」

 ヘカテーはそういった。

「ゴーレムなの!?」

「違う、母様よ」

 ヘカテーは首をふり拳を握りしめ答える。

「......違うよ。 それはゴーレム、人じゃない......」

「違う!! 母様よ! なんでそんなこと言うの!」

 ヘカテーか私に激しい怒りを見せると、ゴーレムはこちらをみた。

「ヘカテー...... 敵意、排除する」

 そう言うと一瞬でそばにきた。 そして拳をふるう。

(なっ! 知覚加速!!)

 そのスピードは人間のそれとは違い、すさまじい速さをしていた。

(はやっ!!)

 私はその拳をなんとかかわすと、すごい音をたて、その拳が壁を突き破る。

「母様! 止めて! 何してるの!」

「ヘカテー敵意、排除」

 ヘカテーの言うことをきかず、私への攻撃を続ける。

「くっ! ムーサさがって!」

(ダメだ! ここじゃヘカテーも巻き込む!)

 何とか辛うじて攻撃をかわしてさがる。

「やめて! どうしたの!? いうことを聞いて! 私を守るだけでいいの! そんなことしないで! とまって! とまれ!」

 ヘカテーはゴーレムにしがみついて止める。

「とまる...... 排除、守る、ヘカテー、守る...... 排除」

 ゴーレムの目が赤くなり、振り向いてヘカテーに拳をむける。

「えっ......」

 私はヘカテーとムーサを抱えてとんだ。

 ドゴオオオン

 ゴーレムは台を叩き割った。

「母様なんで......」

「きっと守るのと、止める矛盾した行動を指定したから壊れたんだよ。 ムーサ、ヘカテーをお願い!」

「はい!」

 ムーサがヘカテーの手を引いて部屋を飛び出した。

「母様!」

「ヘカテー、ヘカテー、ヘカテー」

 ゴーレムがヘカテーを追おうとする。

 私はガンブレードをかまえ放った。

「ごめん! アイシクルガスト!」 

 氷の突風がゴーレムに向かう。 つららが胸にあったゴーレムの玉を砕くと、ゴーレムは後ろに倒れた。

「ヘ、ヘカテー...... ヘカ、ヘカテー...... へ...... カテ......」

 そう言うとゴーレムは動かなくなった。

「ごめんね。 あなたが悪いわけじゃない...... あの子は私たちが必ず守るから、そのままおやすみ......」

 私は眠るように目を閉じるゴーレムをおいてその場をさった。
 

「母様...... なんで」

 部屋のソファーでヘカテーはつぶやいた。

「ヒカリさん......」

 それをみていたムーサが心配そうに私に言った。

「大丈夫......」 

 私はヘカテーの横に座る。 

「母様は......」

「眠ったよ。 もう二度と起きない......」

「......そう」

 ヘカテーはそう力なく言う。
 
「ヘカテーあなたわかっていたんでしょ。 ゴーレムはゴーレム、人間になんてならないって」
 
「............」

「ゴーレムを動かせるほど賢いあなたが、そんなことわからないわけがないよね」
 
「......それでも、そばにいてほしかった......」

 絞り出すようにそう答える。

 私が抱き寄せると、ヘカテーは声を出さずに泣いた。


 ヘカテーはムーサのいれたお茶を飲み、少し落ち着いたようだ。

「ヘカテー、私やムーサもあなたと同じだよ」

「同じ......」

「家族がいない...... 私も両親が事故でなくなったんだ。 ムーサはモンスターに......」

「さみしかった」

「うん、そりゃあね。 でも......」

(そうだ...... 私も一人になったとき絶望したんだった..... あの時、誰かが手をとってくれたっけ、あれ誰だったんだろう)

 こちらを見ているヘカテーに気づく。

「あ、でも今はみんながいるから平気だよ」

「みんな......」

「うん。 ムーサ、ペイスやカンヴァル、ヘスティア、アルテ、シアリーズ、鈍色の女傑、色んな人たちと一緒に生きているんだ」

「私は一人......」

「そ、そんなことありません!」

 珍しく大きな声をたし、ムーサがそう言った。

「ムーサ?......」

「あっ、ごめんなさい、私も一人でした...... でもみなさんにお会いして一人じゃなくなった。 ヘカテーさんだって......」

 そういって言葉に詰まる。 その目には涙をためている。

「私は何もできない...... 人ともうまくはなせない。 何にもできることがない......」

「人には得意不得意があるんだよ。 それにヘカテーは錬金術があるじゃない」

「錬金術も少ししか使えない...... ゴーレムを造りたくて、必死で覚えた...... だから」

「私たちは必ずしも錬金術が欲しいわけじゃないよ。 ヘカテーが必要だからいってるの」

「私もいっていいの......」

「うん! ねっムーサ」

「はい! もちろん!」

 ムーサは頭をぶんぶんふってそういった。

「ありがと......」

 そう言ってヘカテーは目を閉じた。
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