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第十八話
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洞窟内を探索する。 でてきたモンスターをアルテをサポートしつつ排除した。
「うむ、だいぶ肩の力が抜けて、動きも洗練されてきた。 かなり正確に射れるようになったね」
「そうですか! 確かにモンスターに攻撃が効くようになって、落ち着いて対処できるようになりました!」
アルテは満面の笑顔で答える。
「アシッドウーズはいないようですね」
倒したモンスターを調べながら、ペイスはいう。
「いればこんなとこ......」
「ヒカリ...... 何かきます」
ペイスは静かに小さな声でいった。
ズリッズリッ
確かに何かが地面を這うような音がする。 しかし視界には何も見えない。
「何かの音がするのに、何も......」
アルテは弓をかまえ周囲を確認してる。
「ペイス!」
「ええ、アクアスプラッシュ!」
私が叫ぶと、ペイスの杖から大量の水弾がうちだされた。
「すごい威力だ! でもなぜ、どこにもモンスターなんて...... 」
「いいえ、アルテ、ほらっ、よく見て」
わたしが指差す。
「あっ! 水溜りに何かが動いている!」
その水溜りに何かが動く波紋かみえ、音か聞こえる。
「どうやら、姿を隠せるようですね。 魔法か特性のようなものでしょうか」
「姿が見えるなら、倒すのはたやすい。 アルテくんやっちゃいなさい」
「はい! 先生!」
アルテは弓を伸ばすと一瞬でその見えないものを射ぬき貫いた。
「ギュオ!」
そこから液体のような体が現れ、うねうね動いていたがすぐ動かなくなった。
「これがアシッドウーズ?」
「多分、ほら流れている体液で、地面が溶けています」
見ると地面から煙のようなものがたっている。 私は持ってきたアクアスネークのかごにアシッドウーズを入れた。
「そうか、ほかにもいるから、ペイスお願い」
「ええ」
ペイスに地面を濡らしてもらい、十体程度アシッドウーズを倒し、かごにいれた。
「まあ、こんなものかアルテ、ペイスご苦労様」
「あ、あのそれはいいのですが、ダンジョンからどうやって帰るのでしょうか」
不安そうにアルテはきいてくる。
「コアモンスターを倒すのが近道だね。 でも今日は早く帰りたいからこのまま吹き飛ばそう」
「へ? 吹き飛ばす」
「またあれですか......」
ペイスはうんざりしたように言った。
「今回は大丈夫! 新しい方法があるから! だからお願い!」
「わかりました。 本当にこの間みたいにこちらまで被害が及ばないようにしてくださいね......」
少し不安げな顔を見せたあと、ペイスは洞窟奥を向き杖をかまえる。
「じゃあお願い」
「ええ、ウィンドストーム」
ペイスの杖からが風が渦を巻いて洞窟奥へと放たれた。
「いっくよ! サンダーボルト二つでサンダーボルテックス」
左手で魔法を右手で魔法銃を撃ちだした。 二つのサンダーボルトは重なりあい、更に風の渦をまとい洞窟を照らした。
ドオオオオオオン
遠くから爆音と風がこちらまで伝わり目を閉じた。 そして目を開けると日の光りがさしこむ。
「ふう、さっきの場所ね。 帰ってこれた」
「ヒカリ! 二つの魔法を同時に使えるんですか!?」
ペイスが驚いて聞いてくる。
「うん、まあ、魔法銃には最初に魔法を込めといて、もう片方で魔法を放つんだ」
「なるほど、それで二つ分の魔法を発動できるんですね」
「驚くところが違いますよペイスどの!」
納得したようにうなづくペイスをみて、アルテは声をあげた。
「どうしたんですアルテさま?」
「ダンジョンがなくなりましたよ!」
「うん、私とペイスの魔法で、どっかーんとなくなったよ?」
「なくなったよ...... じゃなくて! コアモンスターはどうなったんですか!」
「あの雷風だと黒焦げいちころかな?」
「前のときもそうでしたね」
私たちの話を聞きながら、アルテは口を開けたまま固まっている。
「アルテお口空いてるよ?」
「......信じられない。 コアモンスターをダンジョンもろとも吹き飛ばすなんて......」
「もう目当てのものは手に入ったからね。 戦う必要はないでしょ」
「あっ! もしかして! あの崩壊したっていう南のランゲアの塔にあったダンジョンって」
「ああ、あの塔か、そういや最上部にコアモンスターが巣食ってたやつね。 うん、塔の下ぶっ飛ばして折ったよ。 多分地面に落ちたその衝撃で倒したんだよコアモンスター。 下に転がってたもん」
「でしたね」
笑う私たちをみながらアルテは唖然としていたが、一呼吸おくと、弓を縮める。
「......はあ、もう驚くのにもつかれました。 もう全て受け入れることにします」
アルテは諦めたようにそういった。
「うわっ!」
アルテは尻餅をついた。
「大分、弓を使えるようになったね」
「は、はい、あれからいくつかのダンジョンについていってモンスターと戦ったので...... でも先生には全く歯がたちません」
すこしがっかりしながらたちあがる。
「そんなことないよ。 経験の差、アルテは才能があるから、私より強くなるよ」
「本当にそうでしょうか......」
すこし間があってアルテはそう呟く。
(どうもおかしいのよね...... 王女なのに強さを求めるのも変だし、魔法が使えないことなんて、もう今は関係ないはずなのに)
「でも、先生はいいんですか? 私のこと相手していて、依頼もきているのでしょう」
「まあ、小さな依頼だから、大きいのをうけるには人が足りないのよ。 どんとんダンジョンができるのに、戦える人間が私たちだけじゃね」
「人ですか...... 少しだけ心当たりがあります」
「本当!? 誰!!」
「心配でもありますが......」
どうして? と聞くとアルテは今度はなします、そういって帰っていった。
(何かあるのかな? それにしても姫様なのに護衛も着けずよくここまでこれるな。 ここは治安がまあいいし、アルテは強いから心配はないけどね)
次の日、アルテは取り巻きたちを店までつれてきた。 ペイスとムーサはお茶とお菓子を作っている。
「いや、ありがたいけど、この子たちはだめだよ。 アルテほど強くないしモンスターは危ないからね」
「いえ、この子たちではなく...... まあ話を聞いてください」
アルテの取り巻きたちは、元々親などをなくしたスラムの孤児たちで、昔遊び歩いていたアルテに絡んで金を無心したところ、叩きのめされたらしい。
(アルテらしいけど......)
「で、ギルドにはいってくれそうな人を知ってるの?」
「ああ、お嬢の先生はあたしたちの先生だからな。 教えてやる。 スラムには【鈍色の女傑】っていわれている強い人たちがいるんだ」
アルテより背が高い少女アルセイスがそういう。
「【鈍色の女傑】?」
「うん、スッゴい強いお姉さんたちなの。 モンスターを倒して素材を売ってるんだけど、スラムで悪さする奴らをこてんぱんにするの!」
そう一番小さな女の子ヒュアデがクッキーを食べながらいう。
「そうなんだ。 でもアルテは私に向かってきたのに、その人たちには行かなかったの」
「あたしも行こうとはしましたけど、この子たちに止められたんです」
「ダメだよ! 鈍色の女傑はすっごい恐いんだ。 スラムを牛耳っているブルジュラ一家ですら、手をだせないんだから、お嬢にはそんなあぶないやつらと関わらせたくないもの」
そう赤毛の少女クリネイはアルテの腕を取った。
「というわけで、あたしも戦えてはいません」
少し残念そうにアルテはそういった。
(ふーん、この子たちを心配させてくないからか、優しいとこあるじゃん)
「で、その人たちはスラムに行けば会えるの?」
「では私も!」
「だめだよ。 アルテほらみんなをみなさい」
みんなアルテを心配そうにみて、ヒュアデはユーシェの腕を両手で抱き締めている。
「あんたたち...... だが一人でスラムは、いくら先生でも」
「大丈夫、私とペイスでいくよ」
「ええ、私がついていきます」
そういってリレアそっとヒュアデの頭を撫でた。
「王都にこんな場所があったなんてね」
王都の一角に石や板で作った粗末な家々が並んでいる。 そこはいりくんで迷路のようになっていた。 そこには大勢の人がいた。
「ええ、かなりの数がいますね......」
私とペイスは二人、子ども達に案内されてスラムへと訪れていた。
「モンスターが増えて、仕事のなくなった人たちも増えたの」
「でも最近先生たちがダンジョンを壊してモンスターを減らしたから、少し減ってるけどね」
ヒュアデとクリネイはそう話している。
「モンスターが減ったのなら、もっとここの人たちが減ってても良くない。 仕事だって増えてるんだし」
「でも、限られた仕事しかありませんし、商売をするには商業ギルドに所属しないと......」
ペイスがいいづらそうにそういう。
「......なるほど、それで...... さすがに10万ゴールド出せるひとたちもそうはいないか」
「そんなお金あったら、とっくにここを出ていってるよ」
そうアルセイスがあきれたようにいう。
「だから、みんなブルジュラ一家から仕事をもらってるの。 でもその仕事の仲介料でほとんどなくなっちゃう」
クリネイはそうしょぼりする。
「他の仲介を使えないの」
「みんなブルジュラ一家が怖いからね。 報復を恐れて他の業者は手を上げないんだ」
アルセイスは諦めたような口ぶりだった。
「国は」
「お嬢はいってくれてるみたいだけど、誰も話を聞いてくるないみたい」
(むう、なんとかしたいな...... それも含めて)
「やっぱりその鈍色さんに仲間になってもらうしかないか、ああそうだ。 アルテの様子が変なんだけどなんか知ってる?」
「変ですか?」
ペイスは首をかしげている。
「うん、どうも焦ってるようなんだけど...... みんなならなんか知ってるのかなって」
子供たちをみると、みな首をふっているなか一人の子供が何かしらいいたげだった。
「君はえっと、リムナドだっけ? なんか知ってるの?」
「......え、う、うん、一人でお嬢が呟いてるのを聞いたことがある......」
「なんて?」
「......あたしは王さまになれないんだって」
「王さまになれない...... どういうことだろ?」
「あっ! こっち」
その時、ヒュアデが手を引いて野路裏に隠れた。
「どうしたの? こんなところに隠れて」
「しっ」
そうアルセイスが制した。 待つと、目の前を人相の悪い三人の男たちがとおる。
「くそっ! 最近面白くねえ! あいつら!」
「まあな、あの女たちがいるからオレタチの勝手にゃできねえ」
「ああ、でもよ。 お頭もなんか策があるらしいから、それまでの辛抱だ」
そう話しながら前を通りすぎた。
「今のは誰なのですか?」
ペイスがイルネイに聞いた。
「あいつらはブルジュラ一家よ。 何年かまえにブレイルドとか言う国から来てらこのスラムをやりたい放題してたんだけど、鈍色の女傑たちがきて奴ら簡単には手が出せなくなったんだ」
(ってことは根っからの悪人ってわけじゃないのかな?)
「ほらあそこよ。 あの奥」
少しだけ離れた場所に大きめの石の家が建っている。
「元々ブルジュラ一家の持ち物だったけど、あの人たちが取り上げたんだ」
「ほう、やるな。 よし、君たちは帰って、ああブルジュラ一家とやらには気をつけてね」
ペイスが持ってきていたお菓子を渡して帰ってもらった。
「さて行きますか」
「一応物理、魔法、異常耐性の魔法はかけておきますね」
私たちにはその家へと向かった。
「うむ、だいぶ肩の力が抜けて、動きも洗練されてきた。 かなり正確に射れるようになったね」
「そうですか! 確かにモンスターに攻撃が効くようになって、落ち着いて対処できるようになりました!」
アルテは満面の笑顔で答える。
「アシッドウーズはいないようですね」
倒したモンスターを調べながら、ペイスはいう。
「いればこんなとこ......」
「ヒカリ...... 何かきます」
ペイスは静かに小さな声でいった。
ズリッズリッ
確かに何かが地面を這うような音がする。 しかし視界には何も見えない。
「何かの音がするのに、何も......」
アルテは弓をかまえ周囲を確認してる。
「ペイス!」
「ええ、アクアスプラッシュ!」
私が叫ぶと、ペイスの杖から大量の水弾がうちだされた。
「すごい威力だ! でもなぜ、どこにもモンスターなんて...... 」
「いいえ、アルテ、ほらっ、よく見て」
わたしが指差す。
「あっ! 水溜りに何かが動いている!」
その水溜りに何かが動く波紋かみえ、音か聞こえる。
「どうやら、姿を隠せるようですね。 魔法か特性のようなものでしょうか」
「姿が見えるなら、倒すのはたやすい。 アルテくんやっちゃいなさい」
「はい! 先生!」
アルテは弓を伸ばすと一瞬でその見えないものを射ぬき貫いた。
「ギュオ!」
そこから液体のような体が現れ、うねうね動いていたがすぐ動かなくなった。
「これがアシッドウーズ?」
「多分、ほら流れている体液で、地面が溶けています」
見ると地面から煙のようなものがたっている。 私は持ってきたアクアスネークのかごにアシッドウーズを入れた。
「そうか、ほかにもいるから、ペイスお願い」
「ええ」
ペイスに地面を濡らしてもらい、十体程度アシッドウーズを倒し、かごにいれた。
「まあ、こんなものかアルテ、ペイスご苦労様」
「あ、あのそれはいいのですが、ダンジョンからどうやって帰るのでしょうか」
不安そうにアルテはきいてくる。
「コアモンスターを倒すのが近道だね。 でも今日は早く帰りたいからこのまま吹き飛ばそう」
「へ? 吹き飛ばす」
「またあれですか......」
ペイスはうんざりしたように言った。
「今回は大丈夫! 新しい方法があるから! だからお願い!」
「わかりました。 本当にこの間みたいにこちらまで被害が及ばないようにしてくださいね......」
少し不安げな顔を見せたあと、ペイスは洞窟奥を向き杖をかまえる。
「じゃあお願い」
「ええ、ウィンドストーム」
ペイスの杖からが風が渦を巻いて洞窟奥へと放たれた。
「いっくよ! サンダーボルト二つでサンダーボルテックス」
左手で魔法を右手で魔法銃を撃ちだした。 二つのサンダーボルトは重なりあい、更に風の渦をまとい洞窟を照らした。
ドオオオオオオン
遠くから爆音と風がこちらまで伝わり目を閉じた。 そして目を開けると日の光りがさしこむ。
「ふう、さっきの場所ね。 帰ってこれた」
「ヒカリ! 二つの魔法を同時に使えるんですか!?」
ペイスが驚いて聞いてくる。
「うん、まあ、魔法銃には最初に魔法を込めといて、もう片方で魔法を放つんだ」
「なるほど、それで二つ分の魔法を発動できるんですね」
「驚くところが違いますよペイスどの!」
納得したようにうなづくペイスをみて、アルテは声をあげた。
「どうしたんですアルテさま?」
「ダンジョンがなくなりましたよ!」
「うん、私とペイスの魔法で、どっかーんとなくなったよ?」
「なくなったよ...... じゃなくて! コアモンスターはどうなったんですか!」
「あの雷風だと黒焦げいちころかな?」
「前のときもそうでしたね」
私たちの話を聞きながら、アルテは口を開けたまま固まっている。
「アルテお口空いてるよ?」
「......信じられない。 コアモンスターをダンジョンもろとも吹き飛ばすなんて......」
「もう目当てのものは手に入ったからね。 戦う必要はないでしょ」
「あっ! もしかして! あの崩壊したっていう南のランゲアの塔にあったダンジョンって」
「ああ、あの塔か、そういや最上部にコアモンスターが巣食ってたやつね。 うん、塔の下ぶっ飛ばして折ったよ。 多分地面に落ちたその衝撃で倒したんだよコアモンスター。 下に転がってたもん」
「でしたね」
笑う私たちをみながらアルテは唖然としていたが、一呼吸おくと、弓を縮める。
「......はあ、もう驚くのにもつかれました。 もう全て受け入れることにします」
アルテは諦めたようにそういった。
「うわっ!」
アルテは尻餅をついた。
「大分、弓を使えるようになったね」
「は、はい、あれからいくつかのダンジョンについていってモンスターと戦ったので...... でも先生には全く歯がたちません」
すこしがっかりしながらたちあがる。
「そんなことないよ。 経験の差、アルテは才能があるから、私より強くなるよ」
「本当にそうでしょうか......」
すこし間があってアルテはそう呟く。
(どうもおかしいのよね...... 王女なのに強さを求めるのも変だし、魔法が使えないことなんて、もう今は関係ないはずなのに)
「でも、先生はいいんですか? 私のこと相手していて、依頼もきているのでしょう」
「まあ、小さな依頼だから、大きいのをうけるには人が足りないのよ。 どんとんダンジョンができるのに、戦える人間が私たちだけじゃね」
「人ですか...... 少しだけ心当たりがあります」
「本当!? 誰!!」
「心配でもありますが......」
どうして? と聞くとアルテは今度はなします、そういって帰っていった。
(何かあるのかな? それにしても姫様なのに護衛も着けずよくここまでこれるな。 ここは治安がまあいいし、アルテは強いから心配はないけどね)
次の日、アルテは取り巻きたちを店までつれてきた。 ペイスとムーサはお茶とお菓子を作っている。
「いや、ありがたいけど、この子たちはだめだよ。 アルテほど強くないしモンスターは危ないからね」
「いえ、この子たちではなく...... まあ話を聞いてください」
アルテの取り巻きたちは、元々親などをなくしたスラムの孤児たちで、昔遊び歩いていたアルテに絡んで金を無心したところ、叩きのめされたらしい。
(アルテらしいけど......)
「で、ギルドにはいってくれそうな人を知ってるの?」
「ああ、お嬢の先生はあたしたちの先生だからな。 教えてやる。 スラムには【鈍色の女傑】っていわれている強い人たちがいるんだ」
アルテより背が高い少女アルセイスがそういう。
「【鈍色の女傑】?」
「うん、スッゴい強いお姉さんたちなの。 モンスターを倒して素材を売ってるんだけど、スラムで悪さする奴らをこてんぱんにするの!」
そう一番小さな女の子ヒュアデがクッキーを食べながらいう。
「そうなんだ。 でもアルテは私に向かってきたのに、その人たちには行かなかったの」
「あたしも行こうとはしましたけど、この子たちに止められたんです」
「ダメだよ! 鈍色の女傑はすっごい恐いんだ。 スラムを牛耳っているブルジュラ一家ですら、手をだせないんだから、お嬢にはそんなあぶないやつらと関わらせたくないもの」
そう赤毛の少女クリネイはアルテの腕を取った。
「というわけで、あたしも戦えてはいません」
少し残念そうにアルテはそういった。
(ふーん、この子たちを心配させてくないからか、優しいとこあるじゃん)
「で、その人たちはスラムに行けば会えるの?」
「では私も!」
「だめだよ。 アルテほらみんなをみなさい」
みんなアルテを心配そうにみて、ヒュアデはユーシェの腕を両手で抱き締めている。
「あんたたち...... だが一人でスラムは、いくら先生でも」
「大丈夫、私とペイスでいくよ」
「ええ、私がついていきます」
そういってリレアそっとヒュアデの頭を撫でた。
「王都にこんな場所があったなんてね」
王都の一角に石や板で作った粗末な家々が並んでいる。 そこはいりくんで迷路のようになっていた。 そこには大勢の人がいた。
「ええ、かなりの数がいますね......」
私とペイスは二人、子ども達に案内されてスラムへと訪れていた。
「モンスターが増えて、仕事のなくなった人たちも増えたの」
「でも最近先生たちがダンジョンを壊してモンスターを減らしたから、少し減ってるけどね」
ヒュアデとクリネイはそう話している。
「モンスターが減ったのなら、もっとここの人たちが減ってても良くない。 仕事だって増えてるんだし」
「でも、限られた仕事しかありませんし、商売をするには商業ギルドに所属しないと......」
ペイスがいいづらそうにそういう。
「......なるほど、それで...... さすがに10万ゴールド出せるひとたちもそうはいないか」
「そんなお金あったら、とっくにここを出ていってるよ」
そうアルセイスがあきれたようにいう。
「だから、みんなブルジュラ一家から仕事をもらってるの。 でもその仕事の仲介料でほとんどなくなっちゃう」
クリネイはそうしょぼりする。
「他の仲介を使えないの」
「みんなブルジュラ一家が怖いからね。 報復を恐れて他の業者は手を上げないんだ」
アルセイスは諦めたような口ぶりだった。
「国は」
「お嬢はいってくれてるみたいだけど、誰も話を聞いてくるないみたい」
(むう、なんとかしたいな...... それも含めて)
「やっぱりその鈍色さんに仲間になってもらうしかないか、ああそうだ。 アルテの様子が変なんだけどなんか知ってる?」
「変ですか?」
ペイスは首をかしげている。
「うん、どうも焦ってるようなんだけど...... みんなならなんか知ってるのかなって」
子供たちをみると、みな首をふっているなか一人の子供が何かしらいいたげだった。
「君はえっと、リムナドだっけ? なんか知ってるの?」
「......え、う、うん、一人でお嬢が呟いてるのを聞いたことがある......」
「なんて?」
「......あたしは王さまになれないんだって」
「王さまになれない...... どういうことだろ?」
「あっ! こっち」
その時、ヒュアデが手を引いて野路裏に隠れた。
「どうしたの? こんなところに隠れて」
「しっ」
そうアルセイスが制した。 待つと、目の前を人相の悪い三人の男たちがとおる。
「くそっ! 最近面白くねえ! あいつら!」
「まあな、あの女たちがいるからオレタチの勝手にゃできねえ」
「ああ、でもよ。 お頭もなんか策があるらしいから、それまでの辛抱だ」
そう話しながら前を通りすぎた。
「今のは誰なのですか?」
ペイスがイルネイに聞いた。
「あいつらはブルジュラ一家よ。 何年かまえにブレイルドとか言う国から来てらこのスラムをやりたい放題してたんだけど、鈍色の女傑たちがきて奴ら簡単には手が出せなくなったんだ」
(ってことは根っからの悪人ってわけじゃないのかな?)
「ほらあそこよ。 あの奥」
少しだけ離れた場所に大きめの石の家が建っている。
「元々ブルジュラ一家の持ち物だったけど、あの人たちが取り上げたんだ」
「ほう、やるな。 よし、君たちは帰って、ああブルジュラ一家とやらには気をつけてね」
ペイスが持ってきていたお菓子を渡して帰ってもらった。
「さて行きますか」
「一応物理、魔法、異常耐性の魔法はかけておきますね」
私たちにはその家へと向かった。
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