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第五十七話

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「さて、これからどうするかだ」

 みんなを集めて話をする。

 近隣との交渉でいくつかの国に正式に認められた俺たちの国は、グナトリア国として立国した。

「まあ、今のところなぜかヴォルヘッド王国も静かだし、このまま土地の拡張と他国との貿易を続けるべきだろうな」

 シモンズはそういう。

「ですね。 隣国との関係強化でより攻めづらくなりますし、軍事同盟も可能になりましょう」

 その意見にセーヌも同調した。

「でもまだ同盟はしてもらえてないんだろ」

「ええ、もしここが攻められたら同盟国も兵を出さねばなりませんからね。 そのリスクを飲むには関係や国力が足りないということでしょう」

 セーヌがいうと、ハクレイがうなづく。

「......隣国はヴァルヘッドの支配下の国が多い。 攻められる可能性がある以上すぐの同盟は難しいかと」

「じゃあ、国力強化しかないか...... 外交関係もない国も多い。 仕方がないな。 いまはみんなそれぞれの仕事を頼む」 
  
 みんなはうなづくと部屋をあとにする。


「国が本当にできたわね」  

 アンナはそういって資料を確認している。

「ああ、でも思ったほど感慨はないな」

「問題山積だし、いつヴァルヘッドが襲ってくるかはわからないしね」

「ああ面倒だ! そもそも、居場所をつくりたかっただけだしな。 こんな政務やりたかった訳じゃないんだが......」

 俺は机に突っ伏した。

「気分転換に少しいいかしら」

 あきれていたアンナに言われて執務室から屋上へとむかった。

 拡大した町を眼下にみえる。

「ここは四階まで増築されたからね。 ほらいい風」

 風がふき、目を開けると、遠くまで壁が広がっており、町を囲んでいる。 

「だいぶ遠くまで見えるな」

「あそこみえる」

 アンナに言われて見ると、遠く壁の奥に崩れた建物が小さくみえた。

「あれは......」

「あれはかつての王都よ」

「王都か......」

 懐かしそうにみているアンナをみて思う。

「あそこまでいってみるか」

「えっ? 壁の外よ」

「いまの俺たちなら着けるだろう?」

「でも......」

「心配ならば、私もついていこう」

 マルキアが後ろから声をかけてきた。

「マルキア...... ターナは?」

「もう元気だ。 寝たきりだったので、リハビリは必要だがな」

 そういって優しく笑った。

「いいのか?」

「クリュエからマルキアさんは、過保護にしすぎるから、すこしだけ離れていてくださいといわれた......」

 肩を落としてマルキアがこたえる。

「なっ、マルキアがいれば安全だろ」

「そうね...... 行ってみましょう」

 俺たちは壁の外、かつての王都へと向かうことにした。


「かなり強いな。 ここのモンスターは、この国もモンスターに襲われたんだろう?」

 モンスターを排除しながら先へと進む。

「ええ、急に...... 十年前、モンスターの群れが国全土を襲ったの......」

「その話は聞いたことがあるな...... 確か一週間ほどで町がことごとく滅ぼされたという。 しかしあまり聞かん話だ。 モンスターに滅ぼされた国は山のようにあるが、徐々に町を壊されていってということがほとんどだ」

 マルキアがそう思い出すように答えた。

(一斉に......)

「そう。 それは私も不思議だった。 私は外にでていたから無事だったけど、いきなり国に火の手があがったの」

 アンナは真剣な顔でそういう。

「ふうむ、それは何かどこかの策謀とかじゃないのか?」

「えっ?」 

「いや、あまりない話なんだろ。 どこかの誰かが何か目的があって、仕掛けたとか」

「............」

 俺が聞くとアンナは何かを考えている。

「しかし、そんなモンスターを操るなど不可能だろう」

「リリンがつくった笛は呼び寄せることは可能だった。 なら魔法やアイテムでモンスターを呼び寄せたり操るのは可能だろ」

 マルキアに俺はそう答える。

「まあ、そんな魔法やアイテムがあればな...... ただこの国はあまり大きな国でも豊かな国でもない。 襲う理由がないだろうしな......」

 マルキアは腕を組んでそういう。

「それは確かにな。 あれは......」

 その時前方に壁らしきものがみえた。

「ここが王都か......」

 俺たちは壁をこえ瓦礫とかした王都をあるく。 地面には草が生えている。

「これは......」

 そこかしこに白骨化した遺体がある。

「............」

 アンナが目を伏せている。

「ここまで町を繋げたら、遺体を葬ってやろう」

「そうね...... でも取引《トレード》はやめて」

「俺をどんな人間だと思ってるんだ」

「クズなんでしょ」

 そうアンナは笑ったが、どこか悲しげだった。

「おい!」

 先を進んでいたマルキアが呼ぶ。 

 近づくと、そこには崩れた城のあとがあった。

 
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