57 / 66
第五十七話
しおりを挟む
「さて、これからどうするかだ」
みんなを集めて話をする。
近隣との交渉でいくつかの国に正式に認められた俺たちの国は、グナトリア国として立国した。
「まあ、今のところなぜかヴォルヘッド王国も静かだし、このまま土地の拡張と他国との貿易を続けるべきだろうな」
シモンズはそういう。
「ですね。 隣国との関係強化でより攻めづらくなりますし、軍事同盟も可能になりましょう」
その意見にセーヌも同調した。
「でもまだ同盟はしてもらえてないんだろ」
「ええ、もしここが攻められたら同盟国も兵を出さねばなりませんからね。 そのリスクを飲むには関係や国力が足りないということでしょう」
セーヌがいうと、ハクレイがうなづく。
「......隣国はヴァルヘッドの支配下の国が多い。 攻められる可能性がある以上すぐの同盟は難しいかと」
「じゃあ、国力強化しかないか...... 外交関係もない国も多い。 仕方がないな。 いまはみんなそれぞれの仕事を頼む」
みんなはうなづくと部屋をあとにする。
「国が本当にできたわね」
アンナはそういって資料を確認している。
「ああ、でも思ったほど感慨はないな」
「問題山積だし、いつヴァルヘッドが襲ってくるかはわからないしね」
「ああ面倒だ! そもそも、居場所をつくりたかっただけだしな。 こんな政務やりたかった訳じゃないんだが......」
俺は机に突っ伏した。
「気分転換に少しいいかしら」
あきれていたアンナに言われて執務室から屋上へとむかった。
拡大した町を眼下にみえる。
「ここは四階まで増築されたからね。 ほらいい風」
風がふき、目を開けると、遠くまで壁が広がっており、町を囲んでいる。
「だいぶ遠くまで見えるな」
「あそこみえる」
アンナに言われて見ると、遠く壁の奥に崩れた建物が小さくみえた。
「あれは......」
「あれはかつての王都よ」
「王都か......」
懐かしそうにみているアンナをみて思う。
「あそこまでいってみるか」
「えっ? 壁の外よ」
「いまの俺たちなら着けるだろう?」
「でも......」
「心配ならば、私もついていこう」
マルキアが後ろから声をかけてきた。
「マルキア...... ターナは?」
「もう元気だ。 寝たきりだったので、リハビリは必要だがな」
そういって優しく笑った。
「いいのか?」
「クリュエからマルキアさんは、過保護にしすぎるから、すこしだけ離れていてくださいといわれた......」
肩を落としてマルキアがこたえる。
「なっ、マルキアがいれば安全だろ」
「そうね...... 行ってみましょう」
俺たちは壁の外、かつての王都へと向かうことにした。
「かなり強いな。 ここのモンスターは、この国もモンスターに襲われたんだろう?」
モンスターを排除しながら先へと進む。
「ええ、急に...... 十年前、モンスターの群れが国全土を襲ったの......」
「その話は聞いたことがあるな...... 確か一週間ほどで町がことごとく滅ぼされたという。 しかしあまり聞かん話だ。 モンスターに滅ぼされた国は山のようにあるが、徐々に町を壊されていってということがほとんどだ」
マルキアがそう思い出すように答えた。
(一斉に......)
「そう。 それは私も不思議だった。 私は外にでていたから無事だったけど、いきなり国に火の手があがったの」
アンナは真剣な顔でそういう。
「ふうむ、それは何かどこかの策謀とかじゃないのか?」
「えっ?」
「いや、あまりない話なんだろ。 どこかの誰かが何か目的があって、仕掛けたとか」
「............」
俺が聞くとアンナは何かを考えている。
「しかし、そんなモンスターを操るなど不可能だろう」
「リリンがつくった笛は呼び寄せることは可能だった。 なら魔法やアイテムでモンスターを呼び寄せたり操るのは可能だろ」
マルキアに俺はそう答える。
「まあ、そんな魔法やアイテムがあればな...... ただこの国はあまり大きな国でも豊かな国でもない。 襲う理由がないだろうしな......」
マルキアは腕を組んでそういう。
「それは確かにな。 あれは......」
その時前方に壁らしきものがみえた。
「ここが王都か......」
俺たちは壁をこえ瓦礫とかした王都をあるく。 地面には草が生えている。
「これは......」
そこかしこに白骨化した遺体がある。
「............」
アンナが目を伏せている。
「ここまで町を繋げたら、遺体を葬ってやろう」
「そうね...... でも取引《トレード》はやめて」
「俺をどんな人間だと思ってるんだ」
「クズなんでしょ」
そうアンナは笑ったが、どこか悲しげだった。
「おい!」
先を進んでいたマルキアが呼ぶ。
近づくと、そこには崩れた城のあとがあった。
みんなを集めて話をする。
近隣との交渉でいくつかの国に正式に認められた俺たちの国は、グナトリア国として立国した。
「まあ、今のところなぜかヴォルヘッド王国も静かだし、このまま土地の拡張と他国との貿易を続けるべきだろうな」
シモンズはそういう。
「ですね。 隣国との関係強化でより攻めづらくなりますし、軍事同盟も可能になりましょう」
その意見にセーヌも同調した。
「でもまだ同盟はしてもらえてないんだろ」
「ええ、もしここが攻められたら同盟国も兵を出さねばなりませんからね。 そのリスクを飲むには関係や国力が足りないということでしょう」
セーヌがいうと、ハクレイがうなづく。
「......隣国はヴァルヘッドの支配下の国が多い。 攻められる可能性がある以上すぐの同盟は難しいかと」
「じゃあ、国力強化しかないか...... 外交関係もない国も多い。 仕方がないな。 いまはみんなそれぞれの仕事を頼む」
みんなはうなづくと部屋をあとにする。
「国が本当にできたわね」
アンナはそういって資料を確認している。
「ああ、でも思ったほど感慨はないな」
「問題山積だし、いつヴァルヘッドが襲ってくるかはわからないしね」
「ああ面倒だ! そもそも、居場所をつくりたかっただけだしな。 こんな政務やりたかった訳じゃないんだが......」
俺は机に突っ伏した。
「気分転換に少しいいかしら」
あきれていたアンナに言われて執務室から屋上へとむかった。
拡大した町を眼下にみえる。
「ここは四階まで増築されたからね。 ほらいい風」
風がふき、目を開けると、遠くまで壁が広がっており、町を囲んでいる。
「だいぶ遠くまで見えるな」
「あそこみえる」
アンナに言われて見ると、遠く壁の奥に崩れた建物が小さくみえた。
「あれは......」
「あれはかつての王都よ」
「王都か......」
懐かしそうにみているアンナをみて思う。
「あそこまでいってみるか」
「えっ? 壁の外よ」
「いまの俺たちなら着けるだろう?」
「でも......」
「心配ならば、私もついていこう」
マルキアが後ろから声をかけてきた。
「マルキア...... ターナは?」
「もう元気だ。 寝たきりだったので、リハビリは必要だがな」
そういって優しく笑った。
「いいのか?」
「クリュエからマルキアさんは、過保護にしすぎるから、すこしだけ離れていてくださいといわれた......」
肩を落としてマルキアがこたえる。
「なっ、マルキアがいれば安全だろ」
「そうね...... 行ってみましょう」
俺たちは壁の外、かつての王都へと向かうことにした。
「かなり強いな。 ここのモンスターは、この国もモンスターに襲われたんだろう?」
モンスターを排除しながら先へと進む。
「ええ、急に...... 十年前、モンスターの群れが国全土を襲ったの......」
「その話は聞いたことがあるな...... 確か一週間ほどで町がことごとく滅ぼされたという。 しかしあまり聞かん話だ。 モンスターに滅ぼされた国は山のようにあるが、徐々に町を壊されていってということがほとんどだ」
マルキアがそう思い出すように答えた。
(一斉に......)
「そう。 それは私も不思議だった。 私は外にでていたから無事だったけど、いきなり国に火の手があがったの」
アンナは真剣な顔でそういう。
「ふうむ、それは何かどこかの策謀とかじゃないのか?」
「えっ?」
「いや、あまりない話なんだろ。 どこかの誰かが何か目的があって、仕掛けたとか」
「............」
俺が聞くとアンナは何かを考えている。
「しかし、そんなモンスターを操るなど不可能だろう」
「リリンがつくった笛は呼び寄せることは可能だった。 なら魔法やアイテムでモンスターを呼び寄せたり操るのは可能だろ」
マルキアに俺はそう答える。
「まあ、そんな魔法やアイテムがあればな...... ただこの国はあまり大きな国でも豊かな国でもない。 襲う理由がないだろうしな......」
マルキアは腕を組んでそういう。
「それは確かにな。 あれは......」
その時前方に壁らしきものがみえた。
「ここが王都か......」
俺たちは壁をこえ瓦礫とかした王都をあるく。 地面には草が生えている。
「これは......」
そこかしこに白骨化した遺体がある。
「............」
アンナが目を伏せている。
「ここまで町を繋げたら、遺体を葬ってやろう」
「そうね...... でも取引《トレード》はやめて」
「俺をどんな人間だと思ってるんだ」
「クズなんでしょ」
そうアンナは笑ったが、どこか悲しげだった。
「おい!」
先を進んでいたマルキアが呼ぶ。
近づくと、そこには崩れた城のあとがあった。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる