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第二十六話

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「ふぅ、なんとかなったな」
 
「ああ、ギリギリだったがな」
 
 俺とシモンズが笑いながら話していると、マルキアが深く頭を下げた。

「みなすまなかった。 ......だが妹にはあなたの力が必要だ。 頼みごとばかりで申し訳ないが、薬をこの子の為につくってやって欲しい」

「......いいけど、マルキアには俺たちと一緒に働いてもらうよ」

「ああ、なんでもしよう」

 そうマルキアはうなづいた。

「それで、ベインツは魔召石でなにをしていたんですか?」

 リリンが聞いてきた。

「ああ、それは......」

 みてきたことを一部始終聞かせた。


「なっ...... 魔王だと」

「そんな馬鹿げたことを......」

「そんなことをしてたんですか...... 信じられない」

 三人は言葉をつまらせた。
 
「そうだ。 それで魔召石で魔力を集めてたんだと」

「どうするんだ!? このままほっといたら復活しちまうぞ!」

 シモンズがあせる。

「別にいいんじゃない?」

「な、なにいってるんですかコウミさん!? 魔王がよみがえっちゃうんですよ!」  

 リリンが信じられないという顔をする。

「そもそも魔王は魔法を与えただけだろ。 それを悪用したのは人間だってベインツの言い分は一理ある」

「いや、だが目覚めたら世界は再び戦乱となるんじゃないか?」

 マルキアはそういう。
 
「まあ、そうなるかもな。 でもさそれが人間だから、俺たちの国が守られれば良くない?」

「お、お前」

 シモンズが言葉を失っている。

「ひ、ひどいです! アンナさんがあなたをクズだといってたけど! 本当にクズだったなんて!」

(あ、あいつ、そんなこといってたのか)

「とりあえず、阻止のしようもないだろ?」

「......まあな。 確かに魔召石なんて、そう見つかるもんでもないしな」 

「私はコウミに助けられた。 あなたの決定にしたがう」 

 シモンズとマルキアはそういってうなづく。

「で、でも何か起きそうだったら、阻止しますよね!」

「俺たちの国が脅かされるならな」

 そういうと、リリンも不満げながら納得した。

「これで人材も増えたし、国を開拓しようぜ!」

 俺たちはグナトリアへと帰る。


「お帰りコウミ」

 アンナたちが出迎えてくれた。

「ああ、クリュエ、この子をみてくれないか、魔性病って言う病気なんだ」

「魔性病...... 本で読んだことがあります。 あちらの診療所にはこんでください」
 
「マルキアはついてあげてくれ」

「あ、ああ」

「それで状況はセーヌ、ハクレイ」

「アルステルンの人々がやってきて、かなり人数が増えました。 1000人でしょうか、町の拡張でもうひとつ町ができています」

「そのため水の確保が急務となってますね」

 セーヌとハクレイがそういった。

「やはり、でも戦えるものが増えたから、そちらに振り分けられるな。 よし、明日俺とアンナ、シモンズ、リリンと他のものたちで湖の捜索へ向かう」 

「おう!」

「わかりました錬金術の力が役に立つときですね!」  

「ええ、行きましょう」


 次の日、湖を探すために森にはいる。 他のものたちは後ろから壁をつくり、警戒しながらついてくる。

「大丈夫かしら」

 アンナが不安そうに行った。

「もしかしたら、ヴァルヘッドから兵が向けられるかもしれないから、バリスタを正面の左右の城壁に三つずつ、バーンランス二百本はおいてきた。 少なくとも一週間は守りきれる」

「ああ、それにマルキアやアルステルンのものたちもいる。 そう簡単には落ちないだろう」

 シモンズはそういう。

「それにしても、言われて作りましたけど魔力測定器なんて必要なんですか?」

 リリンが不思議そうに聞いた。

「ああ、四方の壁につけてるから、もし魔力が強いやつが潜伏しようとしたとき発見できるんだ」

「そこまでする必要あるの?」

 アンナは怪訝そうに聞いてきた。

「あのベインツってやつはある意味クズよりヤバイ。 自分の世界に浸りきってるなにをするかわからん異常者だ。 警戒しとかないと......」

 あの無表情を思い出しただけで背筋に寒気がはしる。

「まあ対策はとってんだ。 早く水源を見つけようぜ」

 シモンズが槍を握ってそういった。


 俺廃墟の町にそって奥へと進む。 途中モンスターに度々でくわすも、アンナの剣とシモンズの槍で排除する。

「かなり強いモンスターもたやすくいなせるな」

「ああだが、このマジックランスなら、この程度のモンスターなら軽いぜ」

 シモンズが光る槍をふる。 

「それはリリンの父親の短刀を複製して、リリンが加工してつくった槍だ」

「ええ! 私が作りました!」

 そうリリンが胸を張る。

「アンナは出力を押さえられるようになったか」

「ええ、なんとか練習したわ。 じゃないと斬りたくないものも、きってしまうもの」

「俺も剣を持ってるが、剣の扱いが不慣れでうまく使えん。 ほかの武器が必要だな......」

「正直、コウミさんは身体能力低めですからね。 剣とか槍とかじゃうまく使えませんもんね」

「だな。 モンスターとの戦闘ではあまりあてにはらならん」

 リリンとシモンズははっきりいった。

(ぐっ、だが確かにな。 何か戦闘面でも使えるものが必要になるか...... それと別のものも)

「まず魔力の最大値をあげておかないとな......」

 森に霧が少しずつでてきた。
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