上 下
22 / 66

第二十二話

しおりを挟む
「おい! お前だ! それと女のお前出ろ!」

 俺とリリンが呼び出され、鉱山が見える町の上の方にある大きい屋敷へと連れていかれる。 その屋敷は金などの装飾が施されて悪趣味な内装をしていた。

「ああ、お前たちか、俺のシマを荒らしてるって若造は」 

 そう高そうなソファーにすわり、たばこをすう小太りのおっさんがいる。 その横には目を閉じて立っているマルキアがいた。

「あんたがドルクスか......」 

「ほう、俺のことを知ってるのか」

(こいつはクズだが、取り入れそうなクズだな)

「あんたは裏社会では有名なんでね。 できるなら手を組みたいと思ってる」

「ちょっと! コウミさん!」 

 リリンが焦っている。

「おいおい、鉱山襲撃しといて、ずいぶんだな」
 
「でもすぐ殺さないのは、理由があるからだろ。 あんたは使えるもんは使うそういう男だ」

「ふふっ、なかなか鋭いな。 うちの若いのを簡単に捕縛したんだ。 使えるなら使いたいところだが...... なんで鉱山を狙った」

 鋭い目でこちらをみる。

「あの鉱山の魔召石、貴族との取引に使ってるんだろ。 どの程度の品質を知りたくてね」 

「何? それをどこで......」

「蛇のみちは蛇ってことさ」 

「......それでなぜ品質を知りたい」

「これだ」

 俺はポケットから石をだした。

「これは魔召石...... なんだ!? 透明度が高い! かなり品質がいい! ここのじゃないのか!」

「ああ、俺たちが見つけた鉱山の石だ」 

「そんなもの持っていたか......」

 マルキアが怪訝な顔でいった。

「ふふん、あんたが調べないところへ隠したのさ」

 マルキアがいやな顔をした。

「これは、どこにある...... 教えなければどうなるかわかってるだろうな」

 そうドルクスはすごんできた。

「それは教えてもいい。 もちろん俺たちの取り分を確保してだが、それよりその貴族のことをききたい。 誰かまではわからなくてな。 ここに忍び込んだんだ」

「まさか取引を横取りするつもりじゃないだろうな」

「そんなつもりはないよ。 最初はそうしようとは思ってたけどな。 そっちのすごいやつが相手じゃ戦っても無駄みたいだからな」

「ふふっ、いい判断だな。 そうだマルキアに勝てるやつはいない」

 無言でマルキアは目を伏せている。

「それで、その貴族は誰だ。 何のために魔召石を集めている」

「ヴァルヘッド王国のベインツ卿だ。 何かはわからんが魔召石を高値でかってくれる。 だからここを俺が支配したのさ。 マルキアはそのベインツ卿の紹介だ」  

(ヴァルヘッド王国、確かグナトリアの近隣の軍事大国......)

「ドルクス...... お前、魔召石を他の国へながそうとしているみたいだな」

 マルキアは鋭い眼光をドルクスに向けた。

「い、いや、なんのことだ」

 明らかにドルクスが動揺している。

「......それがばれれば貴様は消されるぞ。 やめておくんだな。 ベインツは危険な男だ」

 そういうマルキアから、ドルクスは目をそらして俺の方をみた

「......それでその鉱山はどこだ。 お前らにも十分に取り分はやる......」

「そうだな......」 

 ーー甘い吐息で、みなを夢へと誘えーー 
 
「スリーピングブレス」

「リフレクト!」

 マルキアがそう唱える。

「リリン!!」

「はい!!」

 ポケットから鏡をだした。

「うっ......」

 俺は凄まじい眠気を感じ意識を失った。


「コウミ...... コウミさん!」

「うっ」

 目が覚めるとリリンがいた。 ドルクスたちは眠っている。

「ふう、なんとかうまく行ったな」

「ええ、このリフレクトミラーのお陰です! 魔法を反射し返しました」

 マルキアはその場で眠っていた。

「本当に仲間になっちゃんうんじゃないかと思いましたよ」

「それはない。 俺はこいつらとは別種のクズなんでな」

「......クズは否定しないんだ」

 リリンは引いている。

「取りあえずマルキアだけは拘束しておこう。 眠りの魔法の持続効果がわからん。 もし起きて追われるとつむからな」

 魔召石を手に取り取引《トレード》で作った拘束の縄でマルキアを縛り背負うと屋敷をでた。

「そろそろだ」

 ドカン! ドカン! ドカガガン!!

 連続して鉱山の方で爆発音がしている。

「シモンズさんたちが動きだしました!」

 リリンはそう興奮している。

「ああ、渡しといた赤爆球と蒼氷球が役に立ったな。 向こうは問題ない。 あとは......」

 その時、後ろに気配を感じた。

「クソガキが...... あっちは鉱山がやられたか」

 ドルクスと手下十数人が後ろにいた。

「くっ...... 早いな!」 

「多分反射の反射で魔法が弱くなったのかも!」  

「なめやがって!! ぶっ殺してやる!!」 

 ドルクスがいきり立っている。

「いいのかよ。 マルキアはここだ。 お前らで俺たちをやれると思ってるのか」 

「当たり前だ! 鉱山の奴らを手助けしてたのかもしれんが、奴らはせいぜい二十人程度、下には俺の部下がまだやまほどいる!」

「町の奴らも暴れてるかもしれんぞ」

「ふん! 奴らからは武器を全て奪い取ったわ。 鎌、包丁、鍋すらな! せいぜい木のフォーク程度しかない。 お前たちは袋のネズミだ」

 その時、下からボロボロのドルクスの手下が走ってくる。

「か、頭!! 町の奴等が暴れて手がつけられません!!」

「なんだと!? 武器はもってないだろうが! 鎮圧しろ!」

「それが手に手に槍や剣をもっていて...... ひぃ!」

 下から槍や剣をもった町の住人たちが押し寄せてきて、 ドルクスたちを囲んだ。

「なぜだ!? なぜ!!」

 ドルクスは尻餅をついて愕然としている。

「コウミ! リリン! 大丈夫!」

 下からアンナが走ってきた。

「な、なんとか助かった」

「は、はい」
 
 俺とリリンはへたりこんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...