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第十九話

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 俺たちがギルドに戻ると、周囲がざわついている。

「サンドワーム討伐おめでとうございます!」

 そう受付嬢から祝福される。

「うそだろ! あの三人でサンドワームを倒したのか!」

「あり得ない! まだDクラスでしょ! Bクラスパーティーでも難しいのに!」

「あの子供、仲間を集めてたやつか! くそっ! 加わっとくんだったぜ!」

「あいつ、確か錬金術師だったな。 何かすごいアイテムでももってたのか」

 そう口々に話している。

「ふっふっふっ、これで錬金術師の名声は上がりました」

 そういやな笑顔でリリンはいった。

「まあ、確かにあの穴を作るアイテムは有用だったな」

「でも作るの成功したの初めてで...... もう一回作れるかはわかりません」

 リリンが不安そうにいった。

「それでも錬金術はすごいわ」

「でしょう!!」

 そうすぐどや顔になった。

「では、こちらがサンドワーム討伐の懸賞金になります! そしてお三人はBクラスへと飛び級で昇格しました!」

 そういって受付は大きな袋を複数だした。

「おお! 一気にBクラスになったな! これならより大きな依頼を受けられる」

「ええ、それに......」

 懸賞金の袋にほおずりしているリリンをアンナは見ている。

「だな。 なあリリン、俺たちと来ないか」

「えっ? あなたたちと」

 俺たちはリリンに国のことを伝えた。

「国をつくってる!?」

「ああ、お前の錬金術は俺たちにこそ必要だ。 魔力の素材なら俺がだすから、俺たちとこいよ」

「ふむ...... 確かにその取引《トレード》の力は見ました...... うん、そうですね。 素材があればなんでもつくれます! わかりました! 一緒に行きましょう!」

「ええ、よろしく!」

 リリンが仲間に加わった。


「さて、どうする? リリンを仲間にしたけど」

「一人だけじゃ足りないわね......」

 考えているとリリンが口を開いた。

「人を探してるんですか?」

「ああ、今の国の状態を話したろ。 周囲から狙われてるし、水源を探すのに戦える人が欲しい」

「ふむ、あてがあるにはあります」

「詳しく話してくれ」

「実は......」


「アルステルン?」

「ええ、しいたげられた者たちの町です」

 リリンがそういうとアンナがうたづいた。

「聞いたことはあるけど、かなり危険な所よね。 無法者の住みかっていうけど」

「まあ、当たらずともって感じですね。 ですから、普通では手にはいらない商品とかも扱ってて、父さんと何度かいったことがあるんですが......」

「そこになにがあるんだ?」

「かなり危険ででっかいスラムのような町なんですが、そこには戦争やモンスターによって滅んだ国のものたちも集まってるんです」

「人はいるのはわかるが、信頼できる者じゃないと、仲間にできないぞ」

「ええ、ですが、国がなくなった元は騎士や魔法使いたちもいます。 ギルドでひと集めをするより効率的に人材を集められるかもしれません」

「なるほど、確かに冒険者もにたようなものだしな...... 冒険者になってないものたちもいる...... か」

「行ってみましょうか」

 アンナと顔を見合わせる。

「じゃあ、行きましょう! 案内します!」

 俺たちはリリンの案内でアルステルンへと向かった。


「おいここかよ......」

 数日移動してきたその場所は岩山をくりぬいたような砦のようだった。

「元々モンスターの侵攻を防ぐ砦だったらしいです」

「それでか......」

 門のところに槍をもった人相の悪い男がたっている。

「何のようだ」 

 威圧的に話してきた。

「買い物です。 商人なんで」

 そういってリリンはお金のはいった小さな袋を渡す。

「いいぞ、はいれ......」

 ぶっきらぼうにいう番兵の横を通り抜ける。 

「話通りだな。 賄賂がまかり通るのか」 

 俺たちは中へとはいる。 中は粗末なバラックが立ち並び、異臭をはなっている。

「なるほど劣悪な環境だな......」

「でしょう。 これなら住んでくれる人は多いんじゃないですか?」

「そうとはいえないわ。 ほら」

 アンナがいうと周囲に、何人か目付きの悪い男たちが腰に剣を携えて周囲をつぶさにうかがっている。

「どういうことだ」 

「多分逃げ出さないように見張ってるんだわ」

「前にきたときはそんなことなかったのに......」

 リリンが緊張した面持ちで話した。

「ここで知り合いはいるか? 話を聞こう」

「は、はい。 取引していた業者のおばあさんがいます」

 俺たちは路地の奥へと向かう。

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