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第十二話

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「たった三人で...... このモンスターのでる森にこれを......」  

 俺たちの家に着いた。 セーヌは驚いて目を見開いている。

「そう。 コウミの取引《トレード》とクリュエの魔法でここまでできたの」

 アンナはそういった。  

「なるほど、それであんな珍しいものを手に入れてたのですね。 それにしても取引《トレード》ですか......」

「とはいえ国をつくるには人材がいない。 セーヌは騎士だろ。 俺たちのモンスター対策の不足を補うにはちょうどいいんだ」 

「セーヌさんがここにいてくれればかなり心強いです!」 

 俺とクリュエがいうと、セーヌは考えている。

「......そうですね。 祖国を失った私にはすべきことはもうありません。 この国を守ることで騎士としての意義ができる。 この話、謹んでお受けします」

 そううやうやしく礼をいった。

「よろしく! セーヌ!」

「よろしくお願いします! セーヌさん!」

 アンナたち三人はそう笑顔で言い合った。


「それでなんだがセーヌが加わっても人は足りない。 確かセーヌの国は滅んだんだよな」

「ええ、一年ほど前に、モンスターに滅ぼされました...... 各国へと援軍を呼びに私は旅に出たのですが、どこの国も援軍は出してはくれなくて...... そして国が滅んだあと、他の国が軍を進めてモンスターを駆逐し、そこを領土としたのです......」

「そうか、それで...... でもお前の国の人間はまだいるだろう?」

「え、ええ騎士たちはかなりの数亡くなりましたが、先に避難をしていた住人は親戚や知り合いをたより他国へ...... それはまさか」

「そうだ。 その人たちにきてもらいたい。 まだこの場所はせまいから、その中で信頼できるもの、有能なものを選抜して誘って欲しいんだ」

「なるほど...... 確かにみんな異国にいて肩身の狭い思いをしていますね。 呼び掛ければくるかもしれない...... それで具体的にはどんな者を?」

「アンナはあるか?」

「そうね。 まず職人、そして商人、そして戦えるものかしら。 職人は道具をつくれるし、商人で交易をしてお金をえる。 そしてこの場所の防衛、交易の護衛も」

「そうだな。 俺の取引《トレード》でアイテムを手にいれてそれを売ることもできるし、加工することもできる。 そしてここを拡げるにはその間守っていてもらえれば、俺とクリュエもたすかる」

「あ、あと魔法が使える人がいれば!」

 クリュエが慌ててそういった。

「なるほど、わかりました。 それならば知っているものは何人かいますね。 そのものにあたってみましょう」

「頼むよ。 ばれると厄介なんで信頼できるものを頼む」

「ええ」

 そう笑顔でいうとセーヌは出掛けていった。

「じゃあ、人がきたとき用に家をたてておくか。 クリュエとアンナは魔法の練習でもしておいてくれ」

「わかったわ」

「はい」

 それから家を交換してたてはじめた。


「ふぅ、八つ目完成、木の家、ひとつ1000だから、8000か...... でもまだ体は大丈夫だな。 俺もだいぶ魔力の最大値が上がっている」

「なっ!? 家が増えて!」

 そういうセーヌと一緒に四人ほどが驚いてこちらをみていた。

「ああ、セーヌその人たちが」

「ええ! 私の国のものたちと知り合いが一人です。 もっといたのですが、特に信頼できる四名をつれてきました」

「え、えっと私はミーシャです。 元アンカレス王宮御用達の交易商人の娘です。 国がなくなり、両親をうしなって小さな雑貨屋を営んでました」

 小柄で利発そうな少女はそういった。

「私はリクルです。 家は服飾店でした。 今はお針子をしています」

 少しふくよかな少女はそういう。

「私は騎士ハイレンです。 セーヌさまと同じく騎士団所属です。 国が滅ぶとき、商人の輸送護衛の任のため難を逃れました。 他の騎士たちは国に戻り、私だけは護衛のため、その場に残されました......」

 三人目の長身の少女はそういった。

「私はディラ、両親が魔法使いだったから、私魔法が使える」 

 そうやってショートカットで猫目の少女はこちらをみていった。 

「ようこそ! ではそれぞれ家があるから、そこに後で必要な家具を手に入れるわ」

「ディラさん! 私も魔法が使えるのですこしお話しませんか?」

 アンナとクリュエはそういって、みんなを案内する。

「まあ、最初としては上々だ。 でも女の子ばかりだな」

「すみません。 私も知り合いが少なくて...... しかも男は多く戦いに加わったため少なくて......」

「なるほどな」

「特に若い女子はあまりいい状況ではないんです。 何か技能のあるものは他でも生きてはいけるのですが......」 
 
「それで女の子ばかりか......」

「ええ、ダメでしょうか」  

「俺はかまわない。 女の子ならやましいことを考えづらいだろうし、アンナとクリュエも女の子たちの方がやりやすいかもしれん。 ただまあ俺はすこし肩身が狭いから、次は男も頼むよ」

「ふふっ、わかりました」

 そうセーヌは笑顔で答えた。
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