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「ん......」

 
 要ゆうきが目を覚ますと


「やっと目が覚めたか」

 
 その男の声で、はっとなったが、動こうとしても体が動かせなかった。


「無駄だよ、その紋鎖は魔力を奪う、ほとんど回復も出来ない」

 
 そう言って、ゆうきを脇に抱えながら早足で歩く鑑はニヤリと笑った。


「なんでこんなこと! みんなは! 皆はどうしたの!」
 
「彼らはもうこの世にはいない」

「そんな......皆が......」

「何で私だけ殺さないの!」   

「ああ、君は気を失ってたから知らないのか、君は、異世界人なんだよ、私達が探してた宝が君だ」

「わたしが.......異世界人......?」  

「ああそうだ、5年前穂唱麻央によって、外に転移されたんだ」

「じゃあ......わたしが、あそこにいたの......」


 驚いていたが、一息吐いて、


「そう、そして私を政府に渡すのね」

「いいや、あいつらには渡さない、渡すわけがないだろう、私を使い捨てた奴らなどにな」


 鑑は虚空を睨んで言った、そして


「君を欲しがる奴らは、いくらでもいる、大企業、国、果ては闇の社会まで、何せ異世界は、巨額の金と力をを産み出す最後のフロンティアだらな」

 
 そう言い、前から遺跡の入り口から光と風がもれてくるのを感じて、


「ああ、この風が、私を素晴らしい人生へといざなってくれる」

 
 だが、その風は突風となり、鑑を吹き飛ばした。 


「なんだ!?」
 
 
 鑑が目をやると、

 
 逆光を背に、要と共にとおる達三人の姿が見えた。


「皆!!」

「そんなおまえたち!? なぜだ!! なぜ生きている!!」



 それは遡ること、10分前のことだった。


 ドラゴンゾンビの吐く炎の中、三人は無事だった。


「おい、おい、どうなってんだこりゃ!?」

「これって、普?」


 太陽と来名さんが驚くなか、僕は中華鍋を掲げ炎を防いでいた。


「ああ、助かった、100階に竜がいるって聞いてから、怖くてバイト代貯めて作った唯一の魔法道具《対竜用魔法鍋》が役に立った。

「でかした! お前の異常な慎重さがここで役に立ったな! でどうやって、竜を倒すんだ?」 

「いや倒せない、炎を防ぐだけだ。」

「最悪だー! と言いたいとこだけと、何かあるんだろ、信じてるぜ」

「ああ、二人とも僕の肩に手を置いて、行くよ」
 

 そうして僕達はここにいる。


「そんな馬鹿な、ありえん、上位の探索者でも、魔方陣も無しに転移なんて、出きるわけがない!!」


 フラフラと立ち上がりながら、鑑が言った。


「僕は冒険をしたくないんだ、だからすぐ皆で帰れるよう、ほとんど全魔力を使って即座に転移できる魔法を習得した。
 ただ急だと、転移場所指定が出来ないから、さっき会話したのは、確実に転移場所に飛ぶ為だった。まさか目的が要さんだったなんて思わなかったからね」


 僕がそう言うと、唇を噛みながら鑑はこちらを睨み付け、


「まあいい、ここで三人共やって、その異界人を連れていく」

「無理だよ、スケルトン三体、ドラゴンゾンビ、もう魔力も残ってないはずだ」  

「なめるな! おまえ達ぐらいの素人ならやれる!!」

 
 そう言うと、鑑は、手に魔法の剣を造り、切りかかってきた。

  
「ありがとよ、お前がくれたこいつのお礼、返すぜ!」


 そう言って、太陽が担当を振り下ろすと突風が吹き、風が鑑を押し止めた。


「これは、さっきのと同じ、私が置いた短刀の力か! だがこの程度」

 
 風を押し、無理矢理前に出た鑑に、

  
「上を見た方がいいですよ先生」

「なめるな! そんなブラフに騙されんぞ!!」
 
 
 その瞬間、僕の投げた中華鍋が落ちて鑑の頭を直撃した。

 
「ぶっ!!」

 
 そう言って、鑑は膝から崩れ落ち、地面に倒れた。








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