おこもり魔王の子守り人

曇天

文字の大きさ
上 下
71 / 75

第七十一話

しおりを挟む
「なんだあれ...... 煙」

 俺が帰るとアディエルエの城の方から煙のようなものがみえる。

「なんだ!! 一体何が! アディエルエ! ヴァライア!」

 俺は走って城に近づく、すると城は半壊している。

「アディエルエ! ヴァライア! どこだ!」

 崩れている城の中を探す。 

「ま、マモル......」

 影からヴァライアが這い出てきた。

「ヴァライア!」

 俺は持っていたポーションを飲ませる。

「かはっ、はっ、はっ」

「どうした!? 何があった!!」

「わ、わからん...... 城が強大な魔法攻撃を受けた......」

「アディエルエは!?」

「怪我をした私を影に押し込めると、外に出られて、魔法が城にあたらないようにと...... いらっしゃらないのか......」

「ああ、ここにはいないようだ。 魔力を感じない」

「くっ、私がいながら......」

「取りあえず、セレンティナさんに連絡だ......」


「やられましたね......」

 セレンティナさんが苦渋の表情を浮かべる。 

「すみません...... 私がいながらムザムザと...... いきなりの爆発でダメージを受けてしまい......」

 ヴァライアは膝の上でふるえる拳を握る。

「......しかたないわよヴァライア。 高い魔力防壁があるこの城を一撃でここまで破壊するなんて、多分古代の戦略級魔法の類いだわ」

 アスタリオンさんはそういい慰める。

「そんなものをぶっぱなせば、アディエルエも死んでしまうかもしれないのに......」

「いえ、アディエルエさまなら防げると踏んでの行動でしょう......」

 セレンティナさんがそういう。

「やはり魔導器の封印を解くためにアディエルエをさらったのでしょうか?」

「おそらく...... 取りあえず八魔将とその配下に探索の命をだしています」

「私もザイガルフォンたちに探すように伝えているわ」

「前に...... 俺にマーキングしていたといってましたから、転移は可能なんじゃないですか?」 

「いいえ、おそらくアディエルエの力を知ってるからこそのこの強引な方法、魔法を封じる細工はしているでしょうね」

 アスタリオンさんはそういって考える。

「あとはマモルさまが連れてきた彼女に聞くほかありませんね」

 そういって拘束している白髪の少女をみる。 少女は猿ぐつわで口を縛られている。

「白い髪に赤い瞳...... あなたは、いえあなたたちは何者ですか」

 セレンティナさんは猿ぐつわを離して聞いた。

「さあ、誰なのかな。 私たちなんかのことより魔王ちゃんのことを心配したらどう?」

 そう少女はうそぶいた。

「私はセレンティナともうします。 まずあなたのお名前をお願いします。 それが礼儀でしょう」

「......私はエセレニアよ」

(こいつから情報を得られそうにないか...... ん?)

 そのとき、スマホにメールが届く、見ると橘さんで石碑の文章の解読ができたので送るという。

「あの黒い石碑か......」

『多くの先人の犠牲により、神々は無なるかの地へと転じていった』

(神を転じていった......)

『しかし...... 半数は封印するしかなかった。 ゆえにいずれこの地へと舞い戻るかもしれぬ。 そのようなことがなきよう、更に世界をわかつ......』

 メールにはそうあった。

(半数は封印...... 更に世界をわかつ)

 俺はこのメールをセレンティナさんたちに見せた。

「......確かに、この世界を神々によりわかつと神話にはあります」

「なら、神々を分離させるために世界を分けたってことかしらね」

 アステリオンさんが腕を組む。

「そして、一方無なるかの地、多分、魔力のない世界に転じた。 おそらくこれはマモルさまたちのことかと思います」

「俺たち...... ならもう一方が......」

 俺たちはエセレニアをみる。

「......ふふ、そうだよ。 私たちは神々さ、でも分けられた方とは違う。 私たちはこの世界に残された神といわれた一族だよ」 

 そういって不敵な笑みを浮かべている。

「残された......」

「ああそうだよ。 私たちはこの世界に残されてしまった......」

「暴虐の魔王も、それで神々をこちらに戻すために動いていたのか......」

「さあ」

「さあ...... 知らないということ?」

 アステリオンが厳しい顔で聞く。

「そうだよ知らないし興味はないね」

「ならお前たちはなんのためにこんなことをしている?」

「......私たちはこの世界に残されてしまった。 それがどう言うことかわかる......」

「忌民ですね......」

 ヴァライアは悲しそうな顔をした。

「そうだ。 我々は知りもしないかつての祖先が犯した罪とやらで忌民といわれ、数万年にもわたり迫害されてきた。 住むところを奪われ命を奪われた!」

 憎々しげにそう吐き捨てた。

「それでジャナルヘルムもか......」

「そんな昔のことは知らない、でもそうかもね」

 ヴァライアが聞くと横を向いてそういう。

「それで、神々を戻したいのか」

「私たちにとっては神なんてのはどうでもいいのよ。 あいつらの封印さえ解ければ、お前たちと戦うことになるだけ」 

「それは神への復讐でもある...... ですか」

 そうセレンティナさんがいうと答えず笑う。

「......魔導器の宝物庫は魔王ちゃんが開けられるはずだよね」

「......そうですね。 確かに魔王さまが開けることが出来ます...... ですが宝物庫は見つけられるのですか?」

「魔王ちゃんとの交換なら教えてくれないの?」 

「では交渉しましょう。 あなた方はどこにいらっしゃるんですか?」

 セレンティナさんがいう。

「それを教えたら攻めてくるつもりでしょ、まずそっちから情報をくれないとね」

 にやついてエセレニアがいう、セレンティナさんは静かに頷く。

「いいでしょう......」

「セレンティナさん!」

 俺がいうとセレンティナさんが制した。

「彼女さえ確保していれば場所を聞けますから......」

 そういうと、懐からスマホをだした。

「スマホ...... ずいぶん簡単ね」

「宝物庫は移動するのです。 同じ場所にはありません。 ですから地図がいる...... 確認してください」

 そういってエセレニアの目の前にスマホを見せた。

「あなたなら真実を見通す魔法をもってるでしょう......」

「ふふ、そうだね」

 ーーその隠された真実をみとおせーー

「トゥルーアイ」

 そう唱えると、エセレニアの瞳が輝く。

「確かに...... 本物だね。 あんたは嘘をついてない」

「さあ、これであなた方の居場所を教えてください。 交渉に赴きます」

 セレンティナさんがそういうと、エセレニアはいきなりセレンティナさんからスマホを奪い、壁際に飛び退いた。

「なっ! 拘束を解いていたのか!」

「無駄だ! 逃げられるか!」

 俺とヴァライアはすぐに詰め寄る。 エセレニアは一度うつむくとすぐこちらを見て口をあけた。 その舌の上には青い宝石があった。

「しまった!」

「キャハハハ!! バイバーイ」

 そう笑い声と共にエセレニアは光に消えた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。 中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。 役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
田舎貴族であるユウマ-バルムンクは、十五歳を迎え王都にある貴族学校に通うことになった。 最強の師匠達に鍛えられ、田舎から出てきた彼は知らない。 自分の力が、王都にいる同世代の中で抜きん出ていることを。 そして、その価値観がずれているということも。 これは自分にとって普通の行動をしているのに、いつの間にかモテモテになったり、次々と降りかかる問題を平和?的に解決していく少年の学園無双物語である。 ※ 極端なざまぁや寝取られはなしてす。 基本ほのぼのやラブコメ、時に戦闘などをします。

いつか世界の救世主―差し伸べるは救いの手―

明月
ファンタジー
――最愛の人を亡くしたことで失意の底に居た少年は、自身の無力さを嘆いた。 そして少年は、ある決意をする。それは……自分が人々に"救いの手"を差し伸べることだった。 ……成長し、幾度と無く人々へ手を差し伸べてきた重度のお人好しの主人公 生明 守(あざみ まもる)は、名も知らぬ少女を救うために自分の命を犠牲にしその儚い命を散らす。 死んだはずの守は自称女神と対面し2つの選択を委ねられた。異世界へ赴くか、天国ヘ行くかのどちらかを決めろと言われた守は、異世界へと赴くことを決意する。 守は名を『シア』と改め、貰ったチートと己の勇気で多くの人を救うため異世界を駆け巡る。全ては彼女……、水野との"約束"を果たすため、そして多くの者を救うために。 ※「小説家になろう」にて同一作品を投稿しております。 http://ncode.syosetu.com/n0987db/

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~ 「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」  国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。  ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。  その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。  だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。  城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。  この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

処理中です...