おこもり魔王の子守り人

曇天

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第四十二話

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「で、で、でんしゃだ......」

「す、すごいな! キラーワームより大きいぞ!」

 アディエルエとヴァライアは興奮しているようだ。

 キップを改札にとおして、電車のドアがあくと二人はおっかなびっくり乗っている。

「ふぉぉ...... す、すごい」

 走行が始まると、アディエルエは目を輝かせて外の景色を見ている。

「ふむ、速さはそれほどでもないな」

「結構速いだろ」

「使役するモンスターには、これより速いのはいくらでもいる」

「ふーん」

 しばらく座っていると、乗客たちがざわつき始めた。

「な、なんだ!?」

「あ、あれ!! モンスターだ」

 乗客たちの話を聞き外を見ると、かなり大きな蛇のようなものが地面をでたり潜ったりして並走してきている。

「あれはキラーワームか!!」

「いや、ちがう! あれはグランドサーペント! 大地を泳ぐ巨大な蛇だ!」

 グランドサーペントはその巨体を揺らし電車にぶつかってくる。 その衝撃で車体が揺れ、乗客たちの悲鳴が響く。

「ヴァライア、アディエルエを!!」

「わかっているが、外では手が出せんぞ!」

「わ、私の魔法......」 

「いえ、アディエルエさまの魔法ではこの車両にも被害がでます!」

 俺は窓を開けると風が車両に吹いた。

「列車の上にいく!」

「あれはお前だけでは無理だ! アディエルエさまはここに!」

「わかった! レバシュ、アディエルエを頼むぞ!」

 俺とヴァライアは窓から天井に登りみる。

 並走してきているサーペントは土に潜ったり、上がったりしながらこちらへとぶつかってくる。

 俺は何発か魔法を放つも効いてないようだった。

「ぐっ! 俺の魔法じゃ、あの皮じゃぬける気がしない!」

「私の魔法でもおそらくは無理だな。 アディエルエさまかセレンティナさまなら可能だろうが......」

 俺がいうと落ち着いてヴァライアが返す。

「じゃあどうする......」

「乗り移って剣で貫く」

「あの皮だぞ! 厚すぎる! 俺の魔法付与の剣でも無理だ!」

「私ならば可能だ。 ただ皮を貫いても致命傷にはならない、だから私が皮を貫く、お前がその後、魔法で撃ち抜け」

 そういうと影から剣を取り出した。

「無茶すぎる!」 

「しかし、このままだとこの車体ごと横転するぞ」

「くそっ、わかった!」

 ヴァライアはサーペントの頭が浮上するタイミングをみて飛びおりる。

 ーー暗闇の力をまとい、その暗き歪みをあらわせーー

「シャドウブレード!!」

 黒い影をまとった剣を振りかざしサーペントの頭につきたてた。

「グオオオオオオ!」 

 サーペントは暴れながら列車へとぶつかる。    

「なっ! やばっ!」

 俺はその大きな揺れで列車の外に放りだされる。
 
(死ぬ......) 

「いけ! ジェイディア!」

 その瞬間足に黒いなにか巻き付き引っ張られる。 それは巨大な黒いカラスのような鳥の爪だった。

「マモル!」

 ヴァライアの叫び声で、我に返った俺は魔法を唱える。

 ーー光よ、わが前にその偉大なる軌跡を見せよーー

 ーーその燃え盛る炎をもって、混沌すら焼き尽くせーー

「ライトブリッドエクスプロージョン!」 

 俺は上空からグランドサーペントの頭の傷に向かって放つと、炎光弾は頭を貫き、その体はその場に留まる。 そしてその姿は遠くに過ぎ去っていった。 
 
「ヴァライア!」

「なんだ?」

 そういって俺の影からスッとでてきた。

「なんだよ。 無事なのか......」

「当然だ」

「まあ助かったよ。 ありがとう」

「ふん、べ、べつにお前を助けた訳じゃない。 アディエルエさまが危険にさらされたからだ」

 照れているような顔をした。

(ツンデレかよ) 

「それにしても、こんなの操れたんだな」

 巨大な鳥をみていう。

「......まあな。 戻れシェイディア」 

 巨大な鳥は影のなかに消えた。
 
(なんだ? 下に大きな魔力が三つ!?)

 下がざわついている。 その瞬間窓から黒い影が飛びだして離れていく。 その髪は白い。

「あれは、ゼフォルの城であったやつか!? アディエルエ!」

 俺が下におりると、レバシュが巨大になり唸っていてたが、俺の姿をみて唸るのをやめた。 アディエルエはその後ろにいる。

「どうした!?」

「......誰かが、私のそばにきたのを、レバシュが噛みついた......」

「刺客か...... どこからですか?」

 冷静にヴァライアがきく。

「多分影......」

 アディエルエは言葉少なに答えた。

「シャドウムーブ...... まあ、取りあえず無事だったからよかった」 

(あの白髪、やはりあの女か、アディエルエを狙っている......)

 取りあえず電車はサーペントがいなくなったからか、その場で止まった。 被害がでたので一時停止するとのアナウンスが流れ、俺たちはそこから歩くことになった。

「ふぁ...... あ、歩き......」

 アディエルエは肩を落とした。

「でも、すぐだ。 ほらあそこに見えてるだろ」

 遠くに町の建物が見えていた。
 
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