おこもり魔王の子守り人

曇天

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第三十六話

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「ぷはぁ、だめだ!」

 俺は地面に倒れこんだ。

「一ヶ月しても、石に魔力を留められない......」

 すると、とことことアディエルエが近づいてくる。 そして倒れた俺のほほを突っつく。

「つっつくな」

「マモル...... 色々考えすぎ...... 魔力はどこにでもある」

 そういうと壁際まで戻り、座って携帯ゲームをし始めた。

「なんだ? あいつが考えなさすぎなんだろ...... 魔力はどこにでもか...... ん?」

 俺は起き上がり石ころに魔力を込める。

(中に留めるのに意識しすぎていた...... 穴のあいたコップに水をそそいでも流れていくだけ、まず石ころの魔力でコップの穴を埋める!)

 俺は石ころの魔力をつかみ、周囲に膜のように張るイメージを加え中に自分の魔力を注ぐ。

(魔力がたまっていく感じがする)

 その石を投げると大きな岩にめり込んだ。

「お見事...... まさかたった一ヶ月で会得するとは」

 セレンティナさんが驚いていう。

「......多分あいつのおかげですね」

 そういっていつものように携帯ゲームをしているアディエルエをみた。


(あれからずっと練習はしていた。 まだ確実にできる訳じゃないが、今やるしかないな......)

 俺は魔力を剣に留める。

「いけ...... その小僧は殺してもかまわん。 だが王女は殺さず捕らえろ......」

 そうベリタリスがいうと、兵士たちは槍や剣を持ち迫る。

「くるぞ! 何してる! 前に出るなマモル!」 

「ちょっと離れておいてくれ、お前が捕まると多分集中が途切れる」

 俺は止めるルシールをおき、鞘に剣を納めて迎え撃つ。

「死ね!!」

 そう兵士の盾ごと鞘で殴り付けた。 その瞬間衝撃波が生まれる。

「ぐはっ!!」

「がはっ!」

 何人かの兵士が吹き飛び、後ろの兵士たちは足を止めた。

「なんだ!?」

「何をした! 魔法か!」

「ありえん! 魔法で守られた盾だぞ!」

 混乱している兵士たちを次々と殴り付ける。

(あまり強く殴ると殺してしまう。 狙うは盾か鎧、あとは足!)

「ぎゃあ!!」

「ぐわぁぁ!!」

「な、なんだ、何が起こっている!?」

 全員吹き飛ばすとベリタリスは後ろに下がる。

「す、すごいな。 なんだその力!?」

 ルシールがそばにきた。

「あとはお前だけだ」
 
「くっ!! こい! 何をしている!」

「どうせ、こんなことだろうと思った......」

 そういうとベリタリスの影からローブの白髪の人物が現れる。

(なんだあいつ、ヴァライアと同じ魔法か......)

「君って付与魔法を扱えるのか......厄介だね」

(この声、女の子か......)

 その前髪で目をかくした背の低い少女はそういって、杖を向ける。

 ーーその燃え盛る炎をもって、混沌すら焼き尽くせーー 

「その呪文は!?」

「フレアエクスプロージョン」

 炎の弾が飛んでくる。 俺は魔力を付与した剣でそれを切り裂いた。 

「あー、きれるんだ。 剣もある程度使えるのかメンドー......」

「早くやれ!」

「ベリタリスさま~、先に約束のものをもらえませんか? だって倒したあと裏切られたらこまるから~」

「な、なに!? 先に倒せ!」

「でもここで貴方勝たないと、もう人生つんじゃいますよ」

 俺の剣をいなしながら、そう話している。

(こいつ! 話しながら! それにこいつも付与魔法を使っている!)

「わ、わかった!」

 そういってベリタリスは鍵を投げる。 少女は受けとると、俺の剣をはじいて後ろにとんだ。

「早く、もう王女も捕らえずともかまわん! 二人とも殺せ!」

「いいや、もう目的は果たしたよ。 あんたとはこれでさようならさ」

「目的を果たしただと、貴様裏切るつもりか!! お前たちマグナエクス...... ぐふっ!」

(マグナエクス......)

 そういいきるまえに、ベリタリスの後方に移動した少女は深々と剣をベリタリスに突き立てた。

「ダーメ、それいじょうは......」

 そういうと白髪の少女は高い声で笑いながら影に消えていった。 

 
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