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第八話
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次の日の朝、俺は城の前でまっていた。
(外にでたいなんて、あいつのコレクションへの想いは本物だな。 前に、そんなに外にでたくないなら城が火事になったらどうすんだってきいたら、真剣な顔で運命を共にする...... っていったのに)
二人が城からでてきた。
「さ、さあ、いこう...... そして...... は、早く帰ろう」
「いやまて......」
コタツ布団を頭から被っているアディエルエを止めた。
「......止めろよ」
「い、いや、一応は言ったのだが......」
俺がいうとヴァライアは目そらした。
「......脱げ」
「こ、これだめ? 目だたないよ......」
「普通にダメだ。 逆に目立つぞ」
「い、いや、目立ちたくない......」
布団脱ぐ、その下は普通のトップスとスカートをはいていた。
「いいんじゃないか」
(あのだらだら黒ジャージかと思った......)
「そうだろう! わたしがコーディネートしたからな! アディエルエさまは上品でかつシンプルなものがよく似合われる!」
ヴァライアが鼻息荒くそういう。
(なるほど、ヴァライアが選んだのか)
「なんか変......」
そうアディエルエはもじもじしている。
「変じゃない、かわいい、かわいい」
「そ、そう......」
そういうと、アディエルエはヴァライアの後に隠れた。
「はぁ、はぁ、コンビニまで...... あと...... どのくらい」
肩で息をしながらアディエルエがきいてくる。
「まだ歩いたばっかだ。 ほら」
後に城が見える。
「えっ、もう一時間は歩いた......」
「歩いてないわ。 せいぜい十分だ」
「でも、もう無理かも...... はぁ、はぁ」
「回復魔法つかえよ」
「そ、そうか...... ヒール」
(これは、先が思いやられるな)
「そもそも、世界がひとつになって、建物の距離がかなり離れたんだ。 一番近いのでも三十分は歩くぞ」
「さ、さ、さんじゅぷん...... あと三倍はむり......」
「こ、こいつ...... 移動する魔法とかないのか、転移とか」
「マーキングしないと転移はつかえん」
「じゃあヴァライアがさきいってマーキングすればいいんじゃないか」
「私にはつかえん。 転移の魔法は超がつく高等魔法なのだ。 使い手はほとんどいない......」
「じゃあ、俺か、ヴァライアでいって、アディエルエは帰るか」
「が......がんばる......」
少し間をおいてアディエルエは歩き出した。
「は、はあ! アディエルエさまがあのようなお言葉を! みよマモル! あれが魔王の鋼の意志だ!」
「いや、オタクの意地だろ......」
俺は感動しているヴァライアの横をあきれて歩きだした。
へたりながら、そのたび回復をしてアディエルエは歩き、ついにコンビニについた。 既に日も暮れかけていた。
「はぁ、はぁ、ついた......」
「やりましたね! このヴァライア感動しております!」
「甘やかすな! もう夕方だ! めちゃくちゃかかったろ! さあ早く買って帰るぞ」
「私が必ずあててみせます! アディエルエさま!」
コンビニに入ってお菓子の棚を見ると、三つだけ残っていた。 俺たちはそれを買う。
「じ、じゃあ、あけ...... あける」
「落ち着けよ...... ってヴァライアはもうあけてんじゃん」
ヴァライアは膝から崩れ落ち両手をついている。
(外れたな......)
ヴァライアが開けた袋のカードを見てみる。
「二十枚一組かなかなか良心的じゃないか、スラ地蔵の赤、青、緑、黄、紫、ビリジアン...... マゼンダ...... コバルトブルー...... 萌葱《もえぎ》...... 紅海老茶《べにえびちゃ》!? 全部色違いのスラ地蔵じゃねーか!」
「スラ仏カード...... 全300種中、スラ地蔵が250種......」
鋭い目をしてアディエルエはいった。
「いやもうそれスラ地蔵カードだろ! もはや詐欺じゃねーか!」
アディエルエは一度カードの袋を胸に当て目をつぶってから、ゆっくりとカードの袋をあける。 その目は光輝いていたが、徐々に光を失っていった。
(かぶったな...... スラ地蔵地獄か)
「これは当たらんな......」
俺は完全にあきらめて袋を開けて取り出した。 色の違う地蔵が山ほどでてくる。
(これの何が楽しいんだ。 地蔵をひたすら集めるなんて、ただの苦行というか、修行だろ。 ん?)
一つホログラムのついたカードがある。
「あっ、スラ阿修羅だ」
「えっ? みせて......」
アディエルエは興奮気味に近づいてきた。 俺がカードを渡すと、空に掲げた。
「神はいた......」
空から光が注ぐ。
「魔王がいうなよ、それに仏だしな。 じゃあ、とっとと帰ろーぜ」
「くっ! 貴様に先を越されるなんて......」
ヴァライアは悔しそうだ。
「どうした? 早く帰るぞ」
アディエルエはコンビニの横を見ている。 そこには幼い子供二人がいる。
「ん? どうしたあの子供がどうかしたのか」
どうやら二人は姉妹らしく、泣いている妹を姉が慰めているようだ。
「しょうがないよ...... しーちゃん、落としちゃったのは」
「風が吹いたの! せっかくお姉ちゃんにあげようと思ったのに!」
姉妹は手にスラ阿修羅のカードをもっているがボロボロだった。 車にでもひかれたのだろう。
それを見ていたアディエルエはその姉妹におどおどしながら近づき、自分のもっているスラ阿修羅のカードを差し出した。
「お姉ちゃん...... くれるの」
「ん......」
「ありがと!」
二人の姉妹は礼をいうと手を繋いで、嬉しそうにこちらをみながら手を振り帰っていった。
「いいのか......」
「いい...... 元々マモルが当てたやつ......」
「じゃあ、肉まんでも買って帰るか」
「うん......」
アディエルエは満足そうに小さくうなづき、俺たちはコンビニに戻ると肉まんを買って帰った。
(外にでたいなんて、あいつのコレクションへの想いは本物だな。 前に、そんなに外にでたくないなら城が火事になったらどうすんだってきいたら、真剣な顔で運命を共にする...... っていったのに)
二人が城からでてきた。
「さ、さあ、いこう...... そして...... は、早く帰ろう」
「いやまて......」
コタツ布団を頭から被っているアディエルエを止めた。
「......止めろよ」
「い、いや、一応は言ったのだが......」
俺がいうとヴァライアは目そらした。
「......脱げ」
「こ、これだめ? 目だたないよ......」
「普通にダメだ。 逆に目立つぞ」
「い、いや、目立ちたくない......」
布団脱ぐ、その下は普通のトップスとスカートをはいていた。
「いいんじゃないか」
(あのだらだら黒ジャージかと思った......)
「そうだろう! わたしがコーディネートしたからな! アディエルエさまは上品でかつシンプルなものがよく似合われる!」
ヴァライアが鼻息荒くそういう。
(なるほど、ヴァライアが選んだのか)
「なんか変......」
そうアディエルエはもじもじしている。
「変じゃない、かわいい、かわいい」
「そ、そう......」
そういうと、アディエルエはヴァライアの後に隠れた。
「はぁ、はぁ、コンビニまで...... あと...... どのくらい」
肩で息をしながらアディエルエがきいてくる。
「まだ歩いたばっかだ。 ほら」
後に城が見える。
「えっ、もう一時間は歩いた......」
「歩いてないわ。 せいぜい十分だ」
「でも、もう無理かも...... はぁ、はぁ」
「回復魔法つかえよ」
「そ、そうか...... ヒール」
(これは、先が思いやられるな)
「そもそも、世界がひとつになって、建物の距離がかなり離れたんだ。 一番近いのでも三十分は歩くぞ」
「さ、さ、さんじゅぷん...... あと三倍はむり......」
「こ、こいつ...... 移動する魔法とかないのか、転移とか」
「マーキングしないと転移はつかえん」
「じゃあヴァライアがさきいってマーキングすればいいんじゃないか」
「私にはつかえん。 転移の魔法は超がつく高等魔法なのだ。 使い手はほとんどいない......」
「じゃあ、俺か、ヴァライアでいって、アディエルエは帰るか」
「が......がんばる......」
少し間をおいてアディエルエは歩き出した。
「は、はあ! アディエルエさまがあのようなお言葉を! みよマモル! あれが魔王の鋼の意志だ!」
「いや、オタクの意地だろ......」
俺は感動しているヴァライアの横をあきれて歩きだした。
へたりながら、そのたび回復をしてアディエルエは歩き、ついにコンビニについた。 既に日も暮れかけていた。
「はぁ、はぁ、ついた......」
「やりましたね! このヴァライア感動しております!」
「甘やかすな! もう夕方だ! めちゃくちゃかかったろ! さあ早く買って帰るぞ」
「私が必ずあててみせます! アディエルエさま!」
コンビニに入ってお菓子の棚を見ると、三つだけ残っていた。 俺たちはそれを買う。
「じ、じゃあ、あけ...... あける」
「落ち着けよ...... ってヴァライアはもうあけてんじゃん」
ヴァライアは膝から崩れ落ち両手をついている。
(外れたな......)
ヴァライアが開けた袋のカードを見てみる。
「二十枚一組かなかなか良心的じゃないか、スラ地蔵の赤、青、緑、黄、紫、ビリジアン...... マゼンダ...... コバルトブルー...... 萌葱《もえぎ》...... 紅海老茶《べにえびちゃ》!? 全部色違いのスラ地蔵じゃねーか!」
「スラ仏カード...... 全300種中、スラ地蔵が250種......」
鋭い目をしてアディエルエはいった。
「いやもうそれスラ地蔵カードだろ! もはや詐欺じゃねーか!」
アディエルエは一度カードの袋を胸に当て目をつぶってから、ゆっくりとカードの袋をあける。 その目は光輝いていたが、徐々に光を失っていった。
(かぶったな...... スラ地蔵地獄か)
「これは当たらんな......」
俺は完全にあきらめて袋を開けて取り出した。 色の違う地蔵が山ほどでてくる。
(これの何が楽しいんだ。 地蔵をひたすら集めるなんて、ただの苦行というか、修行だろ。 ん?)
一つホログラムのついたカードがある。
「あっ、スラ阿修羅だ」
「えっ? みせて......」
アディエルエは興奮気味に近づいてきた。 俺がカードを渡すと、空に掲げた。
「神はいた......」
空から光が注ぐ。
「魔王がいうなよ、それに仏だしな。 じゃあ、とっとと帰ろーぜ」
「くっ! 貴様に先を越されるなんて......」
ヴァライアは悔しそうだ。
「どうした? 早く帰るぞ」
アディエルエはコンビニの横を見ている。 そこには幼い子供二人がいる。
「ん? どうしたあの子供がどうかしたのか」
どうやら二人は姉妹らしく、泣いている妹を姉が慰めているようだ。
「しょうがないよ...... しーちゃん、落としちゃったのは」
「風が吹いたの! せっかくお姉ちゃんにあげようと思ったのに!」
姉妹は手にスラ阿修羅のカードをもっているがボロボロだった。 車にでもひかれたのだろう。
それを見ていたアディエルエはその姉妹におどおどしながら近づき、自分のもっているスラ阿修羅のカードを差し出した。
「お姉ちゃん...... くれるの」
「ん......」
「ありがと!」
二人の姉妹は礼をいうと手を繋いで、嬉しそうにこちらをみながら手を振り帰っていった。
「いいのか......」
「いい...... 元々マモルが当てたやつ......」
「じゃあ、肉まんでも買って帰るか」
「うん......」
アディエルエは満足そうに小さくうなづき、俺たちはコンビニに戻ると肉まんを買って帰った。
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