おこもり魔王の子守り人

曇天

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第一話

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「ふぁ、さあ起きるか」

 俺は目が覚めると、布団から起きあがりカーテンと窓を開ける。

「いつもの朝......」

 そこにはかつての見慣れた町の風景はなく、広大な草原と横にある巨大な洋風の城が視界に入った。

(だったな...... 眠るとたまに忘れる)

 その瞬間、壁一面にアニメのポスターがはられ多くのフィギュア、マンガ、アニメのブルーレイボックスの置かれた棚が目にはいってくる。 そしてそれは俺の部屋ではなかった。

「やめろよ! 急に召喚するの!」

 目の前にあるゲームハードやコミック、エナジードリンクやお菓子の袋がいくつものったコタツに俺はそういった。

「マモル、もう起きる時間......」

 そういってコタツが答えた。 いやちがう、コタツがもぞもぞ動くと中から金髪で赤眼の少女アディエルエが顔半分だけだして、消え去りそうな小さな声でそういった。

「......また徹夜したな」

「してない......」

「うそつけ! 目の下にクマができてるぞ!」

 そういうとアディエルエはコタツにもぐった。

「ヒール......」

 そう声がきこえるとコタツから顔を出した。 黒いジャージ姿のその顔にはクマはなくなっていた。

「クマない......よ」

「はあ、クマ消すのにわざわざ回復魔法使うなよ」

「ねえ...... ゲーム」

 そういうとアディエルエはゲームパッドを差し出した。

「またか...... 昨日も100回負けて、まだ諦めてなかったのか」

「違う...... 99回しか負けてない、次は勝つ......」

(あいかわらずテンション低いくせにムダにやるきだけはある)

 彼女が座り直すと、俺はしぶしぶ格闘ゲームをスタートさせる。

「くっ...... くあっ...... あっ、今おしたのに反応しなかった...... くっ...... あっ」

 そう体を左右に激しく動かしながら、アディエルエはぶつぶつといっている。 その横顔はとてもかわいい。 

(おっとみとれるところだった、しかし下手だな。 かなりやってるのに全然うまくならない。 まあ半年ならしかたないか...... いやネットやスマホは完全に使いこなしてるか、やはりただ下手なだけか)

 そう彼女アディエルエは元々俺たちの世界の人間ではない。 いや彼女たちがだ。


 半年ほど前、この世界に変動が起きた。 突然異世界がくっついて世界が広がったのだ。 いや正確には戻ったというべきだろう。 かつて世界は神によりわけられていて、そして元のひとつの世界へと戻ったのだという話になっている。
 
(そして、俺のアパートの隣がアディエルエの城になった)

 負けそうになり、目をつぶってボタンをむちゃくちゃに押しているアディエルエをみる。

「ま、負けた......」

「はい、終わり」

「も、もう一回...... 今のはボタンを押したのに、は、反応しなかったやつがあった...... 一回、いや三、ご、十回...... けっこうあった」

 アディエルエは必死に数をましながら訴えてくる。

「......昨日もそういって100回やったんだぞ」

「99回...... しか、してない」

「しかもパーフェクトで負けといて押し間違えですまないだろ......」
 
「マーモール、冒険行こーぜ」 

 そう外から呼び掛ける声がする。 

「野球しよーぜみたいにいうな!」

 俺が部屋の窓を開けそういうと、門の外に二人ほどこちらを見上げてにこにこと笑っている。 

「マモル行くの......」

「ああ仕事だ。 世界が広がってモンスターが出没したから、今高校閉校してるっていったろ。 この間に稼いどきたいからな」

 俺が部屋をでようとするとすると、アディエルエは無言でコタツのなかに潜った。

 俺が城をでると門の外で二人が待っている。 

「よっ、おはよ」

 背の低い筋肉質の少年がいった。 ドワーフのラクレイだ。

「おっすマモル!」

 狼男のような黒い毛並みの獣人、ワーウルフのガルムが手を上げる。

「おはよう。 でガルム、ラクレイ、今日は西の森でいいな」

「ああ西の森の洞窟内の駆除がお前らんとこの役所からの依頼だな」

 ガルムがそのデカイ手で器用にスマホをいじって確認している。

「ほい、マモル」

 ラクレイが俺の剣や盾と鎧を渡してくれた。

「ありがと、じゃあ行こう」

 俺たちは草原を歩いてむかう。

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