硝子の魚(glass catfish syndrome)

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続13. ナース(3)

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「股を開け」
 安達は言葉を知らない小さな子供のように、目を大きく開いてただこちらを見つめている。そこには奇妙な背徳の匂いがあった。自分は彼の両足を抱えると、裂くようにして開いた。ストッキングは随分破れてしまっていたが、レースのついた白い小さな下着と、下着から零れるように顔を覗かせた性器とが収められた股間辺りには、まだ生地が残っていた。先走りが滲んだのか、性器の先端が当たっている場所には染みが生まれている。
「なんだ、漏らしてるのか。だらしない助平尿道だな」
 敢えて性器には触れず、先程犯したばかりの穴にボトルの先を擦りつける。パステルカラーのプラスチック容器は、凹凸のないつるりとした無害な外見をしており、しかしだからこそ、この場においてはバイブやディルドの類よりもよほど淫猥だった。ここにきて漸く安達も己の身に何が起ころうとしているのかを理解したようで、綺麗な顔を引き攣らせて脚を閉じようとした。
「さっきまでまんこにずっぽり咥え込んでよがってたくせに、今更嫌がってみせても説得力がないんだよ」
 噛みつくように告げて、綻びかけたばかりの蕾にボトルを沈ませた。素材は硬いが突起はなく、直径も三・五センチほどだ。もっと大きなものを嵌めたばかりなのだから、問題はない。それでも抉じ開けられるのが苦しいのか、ボトルの先が彼の好きな場所に到達しても、安達は両手で口を押さえ、泣きそうな声を出し続けた。数センチ残したところでボトルの挿入をやめると、自分は彼の両手首を掴んで口許から剥ぎ取り、濡れてきらきらと輝く瞳を覗き込んだ。
「さて、今お前のまんこがどうなっているか、説明してごらん」
 安達は顔を背けた。赤く染まった耳殻が目の前に差し出される。頭蓋の内側が、煮えたぎるように熱くなった。
「悪い子だ」
 手首を掴んだまま、片膝で相手の股間を押し潰した。短い悲鳴が室内に響く。ゆっくりと体重をかけながら、もう一度同じ言葉を発した。
「説明してごらん」
 安達は唇を薄く開いた。
「……か……硬いの、入ってる」
「それだけか」
「…………硬くて冷たいから……なか、中が、ぎゅってなって、苦し……」
「膣が締まるのは、気持ちがいいからじゃないのか。抜き差しできないくらい吸いついてるぞ。まんこに生チンポぶち込まれて処女膜破られたときより、反応もいいしな」
「いっ、や、やめ……ん、あ、あ、やだ、あぁっ」
 ボトルを掴み、乱暴に動かす。肉がきつく絡みつくのが、手応えでわかった。安達は頭を反らし、泣き声を漏らしていた。露わになった喉は照明の光を反射して、まるで白く発光しているようだった。この小さな喉仏に噛みついて、頸動脈に犬歯を立てたい。そんな獰猛な食欲とも凶暴な性欲ともつかない欲望を、ボトルを押し込むことでやり過ごし、自分は立ち上がって彼の顎に手をかけた。
「玉をしゃぶりながら、自分でまんこを擦るんだ」
 安達は涙の溜まった瞳をこちらに向けて、小さくしゃくりあげた。
「上手にいけたら、ボトルの代わりに俺のを嵌めて、膣にザーメン飲ませてやる。ただし、クリトリスには触るなよ」
 鞭にしか見えない飴をちらつかせ、ジーンズと下着を足首まで下ろしてバスタブの縁に腰かける。安達は一瞬迷うような表情を見せたが、ボトルに下の口を塞がれたまま性器を虐められるのは嫌だと思ったらしい。甘い息を漏らしながら腰を上げると、床に両膝をついて、人間不信の猫のような動作で近づきこちらの股間に顔を近づけた。不安を湛えた眼差しが、勃起して筋の浮き上がったグロテスクな男根に向けられる。相変わらず処女のような目をする男に、異様なくらい興奮した。
「竿はいいから、袋を咥えろ」
 彼が瞬きすると、赤くなった目の縁から雫が零れた。普段は心持ち淡い色合いの睫が、濡れて濃い色になっている。もっと泣かせたくなる顔だ。危うく彼の頭を掴んで自分の股間に押しつけそうになったが、手を伸ばす前に、安達が脚の間にするりと潜り込んできた。やがて柔らかく濡れた何かが、ちゅう、と睾丸の片側に吸いつく。上体を落としているせいで、安達にとってはひどく窮屈そうな姿勢だったが、お陰でこちらからは、無残に引き裂かれたストッキングに包まれた彼の尻と、それを深々と犯しているボトルの先端とがよく見えた。
「まんこを擦れと言っただろう」
 睾丸を食む唇が、怯えたように震える。触れる吐息がひどく熱かった。まるで頭の中に溶岩が詰まっているような気分だった。
「今お前の淫乱まんこに突き刺さってるボトルで中を擦って、自分でそのだらしない尿道から潮を吹かせるんだ。いいな」
 そろそろと後ろへ回された右手が、ボトルの先を握った。濡れたプラスチックの塊が、徐に引き抜かれていく。
「ん……ん、んんぅ……」
 ローションのせいで指が滑るのか、あるいは体勢が悪いのか、安達の行為は話にならなかった。上の口での奉仕も下の口での自慰も中途半端なのだ。しかし彼が必死になって奉仕と自慰を同時に行おうとする姿は、どんなポルノビデオよりも卑猥だった。安達には、彼が射精するまで穴で自慰しろとしか言っていない。ならばこちらが射精することに関しては、何の障害もないだろう。そこで自分は可哀想な男に睾丸をしゃぶらせたまま、自らの性器を扱き始めた。安達は余裕がないせいか、こちらも自慰を始めたことに気づいていないようだったが、しかし彼の動作と声には焦りと絶望が滲み始めた。この調子ではいけそうにないと悟ったらしい。それでも暫くの間は睾丸を吸いながらぐちぐちと穴を擦っていたが、やがて唇と舌を性器から離し、恐る恐るといった様子で頭を起こした。
「……あの、…………あの……」
 彼は上目遣いでこちらを見つめ、何か言おうとした。涙で濡れた目許と、唾液で濡れた口許が、同時に視界に入る。自分は陰茎を扱きながら、先端を相手の顔に向けた。
「……っ」
 見惚れるほど綺麗な顔に、粘ついた白い液体が飛び散る。安達は慌てて退こうとしたが、零コンマ何秒かの差でこちらが動く方が早かった。相手の後頭部に手を回して強引に引き寄せ、滑らかな頬に亀頭を擦りつけて、残りの精液を吐き出す。
「可澄は本当に悪い子だな。なかなか言うことを聞かないし、言われたことも上手くできない。おまけにできないとすぐに諦めて甘えてくる。そういう悪い子はどんな目に遭うか、わかるか」
 身勝手な言葉を吐きながら、性器で相手の口許を叩く。安達は目を伏せ、唇を硬く結んでいた。抉じ開けて舌を吸い出したくなる口だ。
「悪い子は、罰としてお尻を叩かれないといけない。そうだろう?」
 返事はなかった。ただ、濡れそぼった下睫から、新たな水滴が零れ落ちる。それで相手の顎を指ですくい上げ、顔を覗き込んでもう一度訊ねた。
「可澄は悪い子だ。悪い子のお尻は、叩かないといけないよな?」
 瞳が揺れて、瞳孔がこちらに向く。曖昧な色をした虹彩が、降り注ぐ照明の光を砕いて一等星の輝きを灯していた。あと一息だ。
「言うんだ、可澄」
 顔を寄せてそっと囁いた。暗がりに連れ込まれた猫のように、漆黒の瞳孔がじわりと開く。
「た……叩いて、……お尻、叩いてください……」
「変態」
 吐き捨てて立ち上がり、彼の背後に回ると両手を腋の下に差し込む。そのまま前方へ引きずって彼の上体をバスタブの縁に凭れかかるように押しつけると、尻をまくって高く上げるよう命じる。安達はしゃくり上げつつも、言われたとおりにした。どうやら観念したらしい。
 ストッキングの裂け目の下、レースの下着の隙間からは、相変わらずボトルの先が覗いていた。大量のローションのせいで、尻だけでなく、太腿までぐっしょりと濡れている。写真か動画に収めたい光景だったが、セキュリティ上の問題があるので潔く諦め、ストッキングの穴に指をかけた。
「お尻をどうしてほしいのか、言ってごらん」
 鈍い音を立てて、繊維がちぎれる。安達の呼吸が速くなるのがわかった。
「お尻……叩いて……」
 蕩けた声が、切なげにねだる。自分はストッキングの穴を広げながら、わざと溜め息をついた。
「貫通したくせに処女ぶるんじゃない。もっとマシな言葉は言えないのか」
「……悪い子の可澄のお尻、た……たくさん叩いてくださ……」
「本当に芸がないな。お前はまんこに突っ込まれて喘ぐ以外何もできないのか」
「……ぅー」
 安達は背中を震わせ、本格的に泣き始めた。それに伴い、突っ込まれたボトルもひくひくと動いた。自分はほとんど剥き出しになった彼の尻を、平手で打った。短い悲鳴が鼓膜に甘く溶ける。
「ひ、ん、んん、っく、あ、ぁあ、んー……」
 数回続けて肌を打ってから、肉を揉み込むようにして手応えと手触りを楽しみ、再び平手で尻を叩く。白い肌は瞬く間に赤く染まった。衝撃が内側に響いてボトルと肉が擦れるのが気持ちよいのか苦しいのか、安達は我慢を知らない動物のように鳴き始めた。媚びを含んだ悲痛な声が、暴走しそうな欲望に火をつける。こちらも我慢がきかなくなり、ボトルの先端を握ると一気に引き抜いた。
「うぁっ」
 小さく口を開いた蕾に、自分のものを力任せに捻じ込んだ。肉棒を挿入されたと気づいた安達は、一、二秒ほど痙攣し性器をきつく締めつけたあと、ぐったりと身体の力を抜いた。試しに彼の股間辺りに触れてみたが、ストッキング越しの彼の性器は勃起しておらず、射精した様子もなかった。いったのか、と問うと、頭が微かに縦に動いた。彼がドライで達したのは、これが初めてかもしれない。そう思うと可愛くて仕方なくなった。男根に貫かれたまま、バスタブの縁に縋りついて浅くはあはあと息をする姿が、どうしようもなく可憐に映った。
 しかし、彼を快感の余韻に浸らせておくつもりはなかった。柔らかな粘膜に自分の精子を擦り込むまでは、何があろうとセックスを終わらせるわけにはいかない。
 崩れそうになる彼の腰を掴むと、最奥まで嵌めて、捏ねるようにじっくりと掻き回した。安達は深いところがあまり得意ではない。奥を攻めているうちに、微かな呻き声が小さな泣き声に変わり、抜けきっていた力が徐々に身体に戻り始め、蕾がきゅうきゅうと性器の根元を吸い上げる。嫌がっているのをわかっていて、敢えて言葉で耳を犯した。
「子宮口を突かれるのがそんなにいいのか」
「ひっ……や、だ、奥、いや」
「奥じゃない、子宮口だ」
「……し、しきゅ……っ、う、うぅ……んぁん」
「気持ちがよすぎて呂律が回らないか」
 とろりとした肉に性器を包まれて、強い快感にこちらも言葉が途切れそうになる。だが紅潮した耳朶は、卑猥な言葉で犯されることを欲している。期待には応えなければならない。
「まんこがザーメン欲しがってひくついてるのが自分でもわかるだろう。中出しのおねだりをしてごらん。上手にできたら、正常位で嵌めた状態でキスして、中に射精してやる。こんなふうに顔が見えないまま、まんこでチンポを扱くだけのオナホにされるだけで終わるのは、可澄も嫌だよな?」
 安達はぐずぐずに泣いていたが、こちらの提案を聞くとしゃくり上げるのをやめた。そして短い沈黙を挟んだのち、一生懸命首を捻ってこちらに視線を向けた。
「……可澄の、おっきなおちんちん嵌められただけでいっちゃういやらしいおまんこに、修吾さんの精液、恵んでください……」
 涙と喘ぎで掠れた声ではあったものの、なかなかはきはきとした口調だった。こう見えて、案外余裕が残っているのかもしれない。ならばその余裕を、完全に突き崩してやらなければならない。
 黙って彼の体内から性器を抜くと、無抵抗の身体を床に引き倒した。それからすぐに性器を挿入し直し、仰向けになった彼を押し潰すようにしてのしかかる。頭を抱えて無理やり唇を合わせると、安達は素直に舌を差し出した。ぬるついたその小さな肉の塊を、自分の口の中に吸い取ってきつく歯を立てる。暫く彼の舌と唇を味わってから、口を離して身体を起こした。
「すごい格好だな。淫乱ナース処女喪失レイプってところか。AVのタイトルにありそうだ」
 呟いて、胸に手を伸ばす。乳首を狙って親指の腹で擦ると、安達は息を漏らして身体を震わせた。
「おっぱいにも触ってほしいんだろう。いかにも乳首が感じますって顔をしてる。毎晩布団の中で、クリトリスと一緒に擦ってるんじゃないか」
 平坦な胸を服の上からまさぐりながら、制服の下で健気に充血し勃起しているであろう乳首を暴いて虐め抜きたい欲望と、いかにも凌辱されているといった具合に下半身だけ無残に乱れた今の格好を保っておきたい欲望の間で、自分は静かに戦っていた。
「淫乱処女の可澄は、乳首とクリ、どっちが感じるんだ?」
 安達はぎゅっと目を閉じた。恥ずかしいらしい。それでも律儀に、耳を澄まさないと聴こえないような小声で、くり、と答えた。
「そうか。それじゃあおっぱいは弄らなくていいな」
 胸を触るのをやめ、腰を掴む。安達は慌てて首を横に振った。
「や、…………ちくび、乳首のほうがきもち、い……」
 言葉の真偽はともかく、今の彼が乳首への愛撫に飢えていることは紛れもない事実のようだった。
「乳首か。でももうお前は処女じゃない。乳首やクリなんかより、今はまんこの方がいいんだろう」
「いあぁっ、い、いたい、いや、いやだっ」
 入口にカリが辛うじて引っかかる程度まで挿入を浅くしてから、一息に奥まで押し込み、またぎりぎりのところまで引き抜く。性器で肉を抉るような激しい動きに、安達は身を竦めて嫌がった。食いちぎられそうなくらい性器を締めつけられて、こちらも苦しくないわけではなかったが、それでも構わず腰を打ちつけていると、悲鳴に少しずつ甘いものが混じりだす。
「ひ、ん、ん……あっ、あぁ、あ、うぅ」
 この調子なら、もう一度ドライでいかせることができるかもしれない。がつがつと蕩けきった粘膜を貪りながら、彼の声と蕾の締めつけに意識を集中する。
「さあ、もう一度潮を吹かないでいってごらん」
 ローションと先走りとでどろどろになった肉の洞を、カリで引っ掻き亀頭で捏ねる。自分の性器の形に広がるその小さな器官が、愛おしくて仕方ない。安達は完全に余裕をなくした表情で、強張った手で自らの胸許を掴み引っ張った。どうした、と訊ねると、ちくびいじって、と涙声でねだられた。
「こうか」
「うーっ」
 服の上から探り当てた小さな突起を摘み上げ、指の間で捻り潰した。衝撃をやり過ごそうともがいた踵が床を擦る、微かな音が聞こえる。次の瞬間、彼の全身が大きく震えた。
「――あぁっ」
 絶頂を迎えた蕾が、まるで搾乳機のように性器をきつく搾る。粘膜は射精を促すように蠢いていた。こちらも限界が近かったので、狂ったように締め上げてくる熟れきった肉で自身の性器を乱暴に扱き、最奥で精液を吐き出すと、射精しながら性器を抜いて、無残に荒らされた蕾や赤く腫れた尻、そして結局下着をつけたまま、最後まで射精させてもらえなかった彼の性器に、残りの精液をぶちまけた。



「……そろそろシャワーを浴びませんか。全身べとべとしていて落ち着かないんです」
「ああ。もう少しだけ」
 居心地の悪そうな男を後ろから抱えるようにしてユニットバスの床に座り、制服の袖から覗く白い腕や、芸術的なまでに形のよい脚や、ストッキングに包まれた爪先を眺める。データにして記録することができない以上、脱いでしまう前に記憶に焼きつけておく必要がある。少々呆れられても構わない。
 衣装の袖が短いせいで、安達の腕は、指先から二の腕の三分の二あたりまでが剥き出しになっている。自分のように頑健な筋肉をまとわせていない代わりに、女のような柔らかさもない、不思議な腕だ。肉が薄いため、手首や肘は骨の形がひどく露わになっており、人差し指の腹で辿っていると、まるで相手の身体の内部にじかに触れているような気分になる。腕を愛撫しながらほっそりした太腿を矯めつ眇めつ鑑賞していると、安達が再び口を開いた。
「…………さすが樋川さんですね。トイレでナース姿の処女を強姦ですか。俺は女の子にするみたいに抱いてほしいと言っただけなんですけど」
 別にそういう性癖なのではない。そう反論しようとして、しかし思いとどまった。彼と初めて寝たときも、考えてみれば処女を強姦したようなものだった。安達以外の人間にそういう類の欲望を覚えたことは一度もないとはいえ、前科がある以上何を言っても説得力に欠ける。それで反論する代わりに、相手の顔を覗き込んで訊ねた。
「満足したか」
「……はい」
 安達は軽やかに笑った。どう聞いてもとても事後とは思えない、初夏の風のように爽やかな笑い声だった。
「そうか。俺が妙な設定を盛ったせいで、気持ちが悪くなったかと思った」
 すると彼は首を傾げた。
「気持ち悪いのがいいんでしょう」
「……やっぱり気持ち悪かったのか」
 自覚がないわけではなかった。しかし、こうしてはっきりと言われてしまうとさすがにショックが大きい。言葉を失いぼんやり宙を見ていると、そっと背中を撫でられた。続いて、柔らかなものが口の端に押し当てられる。唇だった。
「ごめんなさい。でも、樋川さんのことはすごく好きなので安心してください」
 慰めるつもりも取り繕うつもりもあるらしいが、前言撤回する気はさらさらないようだった。しかし自分はそれほど繊細な性質ではなく、かつ、そこまで複雑な精神構造を有してもいなかったので、手を伸ばして相手の頬を撫でた。
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