硝子の魚(glass catfish syndrome)

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続12. ナース(2)

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 ドアを開けると安達を先に中に入れ、後に続いた。一時間前に換気扇を回しておいたユニットバスは、水滴一つなく乾燥している。サムターンのつまみを横に倒すと、施錠の音が思ったよりも大きく響いた。
「……あの、……」
 振り向いた安達の表情は、少し強張っている。整った顔に落ちる蛍光灯のざらざらした光が、ポルノ映画のように卑猥だった。もう躊躇う段階は通り越している。ここまで来たら、全てを楽しむしかない。だから右手で彼の腰を引き寄せ、左手で手首を掴んだ。相変わらず澄んだ皮膚をした男の指は、爪の先まで清潔だった。じっくり鑑賞したあと、微かに震える中指を口に運ぶ。
「あの……っ」
 第一関節と第二関節の間に軽く歯を立て、指先を舌で撫でた。それは晩冬の氷柱に似て、冷たく細く滑らかだった。氷を溶かすように指を舐めながら、相手の腰を軽く摩る。安達は戸惑いを隠さずに瞬きを繰り返していたが、付け根まで深く咥えて指の股を舐めてやると、薄い肩が撃たれたように跳ねた。
「美味い」
 口から中指を引き抜き、今度は薬指に口づける。
「このまま骨まで食べてしまおうか」
 安達は狼狽した様子で首を横に振った。唇が薄く開くが、言葉は出てこない。
「そんな顔をされると、今すぐぶち込みたくなるな」
 下品な言葉を吐きながら手首を解放し、代わりに相手の身体を自分の胸の中に押し込める。スカートの裾をたくし上げたとき、安達は抵抗する素振りを見せたが、それは結局素振りだけで終わり、すぐに小さな尻が衣装の下から現れた。覆い被さるようにして見下ろせば、ベージュのストッキングの下に、純白のレースが透けて見える。
「さあ、女の子の部分を見せてごらん」
 小さな下着の輪郭をなぞりながら、低く囁いた。安達はまた首を横に振った。嫌、と小さな声がする。悪い返事だった。それで容赦なくストッキングに指先を食い込ませた。軽く力を入れるだけで、薄い繊維は呆気なく破れた。安達の喉が怯えたようにひゅっと短い音を立てたが、自分はそれを無視して細い裂け目に指を潜らせ、直に彼の肌に触れた。
「今から可澄は俺の雌になるんだ」
 人差し指と中指を動かして、皮膚の薄い肌をくすぐるように撫でる。
「小さいまんこにイカ臭い生チンポをぶち込んで、膣の中にたっぷり射精する。処女膜が裂けて血が出るかもしれないし、受精して赤ちゃんができるかもしれない。こんな狭いトイレで、畜生みたいに後ろから嵌められて処女を散らすなんて、本当に可哀想な話だ」
 安達は、うう、と呻いて身を竦めた。膝ががくがく震えていて、今にもその場に崩れ落ちてしまいそうだった。立ちバックをするためには、ここであまり時間をかけるわけにはいかない。両手の指を絡めて左右に引くだけで、ストッキングは瞬く間にただの襤褸に変わった。自分は相手の腕を掴んで立ち位置を入れ替え、タンクに手をついて腰を突き出すよう指示した。彼は嫌がって頭を振ったが、平手で数回尻を打ってやると、濡れた息を吐いて言われたとおりの姿勢を取った。
「いい格好だな。子宮口まで突けそうだ」
 ちぎれて垂れ下がったストッキングの切れ端は、色のせいでまるで皮膚が裂けてしまったかのように見える。破れた部分からは、打たれて仄かに赤くなった尻と、レースに覆われた小さな下着が覗いていた。ストッキングは尻の辺りしか破いていないため、太腿の部分は僅かに伝線しただけなのが妙に痛々しく、また煽情的だった。動くなよ、と囁いて、左手の指先を下着に引っかけ、右手でズボンのポケットからローションのボトルを取り出す。親指で弾くようにしてボトルの蓋を開けると、かち、というその小さな音に反応したのか、安達が身震いするのがわかった。
「可澄は処女だから、上手にあそこからぬるぬるを出せないだろう。俺が濡らしてやるから、尻をもっと突き出してごらん」
 下着をずらし、露出した蕾よりも上、浅い谷間の上空から、たっぷりとローションを注いだ。尻から腿へ人工の愛液が滴り、濡れて変色したストッキングが淫らな斑模様を描いていく。粘度の高い液体が足首を伝い床を濡らし始めたところで、自分はボトルを床に置いた。左手で下着をずらしたまま、穴へ指を伸ばす。設定とは裏腹に度重なるセックスで縁が腫れてしまった二つ目の性器は、中指を軽く添えただけできゅうと窄まった。それは慎ましい反応であると同時に、自身の内側へ男を誘い込もうとする淫らな動きでもあった。
「このまま慣らさずに突っ込んだら、どうなるだろうな。やってみるか?」
 閉じた穴の周りを指の腹で撫でながら訊ねた。すぐにタンクに縋りつく手が強張る。それから数秒して、いや、と小さな返事があった。今日は随分『嫌』が多い。
「だったら、可澄のおまんこを解してくださいって、俺におねだりしなきゃいけないな」
 安達は頭を振った。承諾なのか拒絶なのかわかりかねる振り方だった。それで三十秒ほど待ってみたが、結局彼は何も言わなかった。自分はズボンの前を寛げ、自らの性器を取り出した。
「慣らさないで挿入されたら、きっと痛いだろうな。処女膜と一緒に入り口も裂けるかもしれない。きっと血がたくさん出るだろう。だが俺は、可澄がどんなに泣いてぐずっても、可澄の膣を俺の精液でいっぱいにするまで抜くつもりはない。さあ、どうする?」
 角度のついたそれを、濡れた尻の谷間に擦りつける。肉は薄いが、ぬるぬると滑って気持ちがよかった。それでもまだ返事が聞こえないため、蕾に亀頭を押し当てたとき、漸くか細い声が耳に届いた。
「……可澄の……お……おまんこ……、解して……」
「いい子だ」
 優しい口調で褒めてから、指を二本まとめて突っ込んだ。衝撃に耐えるように、安達の肩が震える。声こそ出さなかったものの、はあはあと息をつきながら薄い背中を上下させるさまは、苦痛と快感とを無言で訴えていた。異物が馴染むまで待ってやるべきなのかもしれないが、そこまで甘やかす気にはなれない。そのまま中に収めた指を動かすと、濡れた粘膜が擦れる猥褻な音がした。
「そんなに悦ぶなよ」
「い……、いや……あ、ぁ」
「嫌か。それじゃあ、もう本番でいいんだな」
 言葉で相手と自分自身の心を煽り、容赦なく彼の内側を拡張する。狭い洞は熱く潤んでいて、指を動かすたびに粘膜がねっとりと絡みついた。男に悦びを与えることも、男から悦びを与えられることも知っている、貪欲な肉だ。まだ若干硬い気もするが、しかし青いうちに一口齧っておきたい。そんなことを考えながら、空いた手で自身の性器を扱き、ストッキングの破れ目から覗く尻に先走りを擦りつけていると、こちらの思惑が伝わったのか、入れないで、と蚊の鳴くような声が聞こえた。
「お願い、入れないで……まだ、まだだから、……」
 声質が細く澄んでいるせいか、声が少し震えただけで、まるで本当に処女がレイプされかけているかのように響く。堪らなかった。
「何処がどうまだなんだ。わかるように言えよ」
 言いながら、性器で尻を叩いた。垂れ下がったストッキングの切れ端が、怯えたように揺れる。安達は耳まで赤くなったが、それでも健気に要求された言葉を口にした。
「……まだ……まだ、おま……こ、おちんちん……は、はいらない……」
 悪くない回答だった。が、非常に良いというわけでもなかった。
「どうして入らないんだ。きちんと説明しろ」
「……せつめい……っく、うぅー……」
 意地の悪い追撃に、安達は啜り上げた。情緒が不安定になっているらしい。それでも言わなければこのまま犯されると思ったのか、彼は一生懸命言葉を並べ始めた。
「…………可澄の……お……おまんこが、狭くて……、樋川さんの、おち……ちんが、お、おきい、から……っ」
「――なるほどな。だが、入らないかどうかは、やってみなければわからない。さあ、前戯は終わりだ。可愛い初物まんこの処女膜を破って、『女の子』から『雌』にしてやる」
 言い終えると同時に穴から指を引き抜き、ぱくりと小さく開いたそこに自身の性器を宛がう。安達は腰を揺すって逃れようとしたが、それでどうにかなるわけもない。
「ひ、あぁっ」
 悲鳴を無視して、開きかけた蕾に男根を呑み込ませる。ローションで滑りはよかったものの、必要最低限の愛撫しかしていなかったため、肉の圧力はなかなかのものだった。性器を粘膜で握り込まれて、うっかり理性を手放しそうになる。一気に押し込んだ方が彼には楽だとわかっていたが、敢えてじわじわと腰を進めた。
「ほら、自分のまんこに生チンポがずっぽり入っていってるのがわかるか」
 目の前では、汗ばんだうなじが四等星を撒いたように光っていた。どうしようもなく猥褻な光景なのに、まるで誰もいないビルの屋上で、遠い空を眺めているような気分になる。その激しい乖離に、頭の中が白く濁った。衝動的に相手の腰を掴み、最奥まで突き立てる。悲痛な叫び声が耳殻を掠めたが、抑えることはできなかった。
「これで貫通だ。雌になった気分はどうだ?」
 安達は口を自身の肩に擦りつけるようにして、零れた悲鳴の残りを呑み込んだ。どうやら感想を聞かせるつもりはないらしい。それで彼の深い部分を捏ねるように腰を振った。
「処女膜突き破られて雌になった気分はどうだって訊いてるんだ」
「んん、あ、ぅー……く、苦し……うあっ、や、やめっ」
 可愛げのない返事をする相手を、優しく抱く必要はない。細い腰をがっしりと掴んだまま、配慮も遠慮もない速度で抜き差しを始める。相手の肉で自らの性器を扱く、ただそれだけの動きだ。彼はタンクにしがみつくようにして堪えていたが、やがて限界を迎えたのかずるりと手が滑り、そのまま便器の蓋の上に崩れ落ちた。それでも許さずに覆い被さるようにして腰を抱え、柔らかな粘膜の最奥をカリでごりごりと抉り続けていると、いいです、と泣きながら答える声が聞こえた。
「チンポ嵌められるのが気持ちよすぎて、立っていられなくなったんだな。正直に、おちんちん気持ちいいですって言えよ」
「うぅ……き……きもち……っ……おちんち……きもちい……です……」
 単語の合間に挟まれる啜り泣きは、痛々しかった。しかしそんな哀れな声を出しながら、彼の穴は肉棒をしゃぶったまま放そうとしなかった。試しに前立腺の辺りに狙いをつけてカリを擦りつけると、途端に蕾が飲み込むような動きを始める。膣が精液を欲しがって締まるのと同じだ。
「淫乱」
 低く囁いて、穴から性器を引き抜き、身体を離す。支えを失った安達はずるりと体勢を崩し、便器の蓋に上半身を預けたまま床に座り込んだ。ウエストまでめくれたスカートの裾を直そうともせず、背を震わせて泣いている。そんな後ろ姿を眺めていると、泣き顔を見ながら犯したくなった。
「可澄、こっちを向いてごらん」
 下心を見抜かれぬよう、できる限り優しく呼びかけた。安達はびくりとして肩越しに視線をこちらに寄越したが、涙で濡れた瞳には警戒の色が濃く滲んでいる。涙の雫を舐め取ってやろうと顔を近づけると、慌てた様子でそっぽを向かれたので、無理せずそのまま耳の裏側に口づけた。
「キスがまだだっただろう。しないか」
 赤くなった耳朶を甘噛みし、耳孔に舌を這わせる。両手で服の上か上半身をまさぐり、乳首の辺りを爪の先で引っ掻いてやると、快楽に弱い男は蓋にしがみつくのをやめ、こちらの胸に身体を預けた。
「可愛い」
 きっと酷くされたぶん、優しい口づけを期待しているのだろう。だが、そんな期待に応えるつもりはなかった。だから相手の頭を抱え込むと薄い唇を貪り、狭い口の中を舐め回したあと、小さな舌を吸い出して噛んだ。安達は肉食獣に仕留められた草食動物のように喉の奥で悲鳴を上げていたが、首の後ろと顎を掴んで唾液を飲ませているうちに、くぐもった声は徐々に柔らかな媚びを含み始めた。たっぷりと楽しんだあとで唇を離して顔を見ると、焦点を失いぼんやりと蕩けた眼球が二つ、白い月のような灯を浮かべて並んでいた。
「可澄は本当にキスが好きだな」
 それは問いではなく、ただの独り言だった。しかし安達はこの言葉に対し、こくりと肯いてみせた。思わず頭を撫でてしまいそうになり、自分は首を横に振った。
「要するに、口を犯されるのが好きなんだろう。口もまんこも男好きの助平穴だなんて、とんだ変態だ。こんないやらしい悪い子には、お仕置きをしないといけないな」
 安達は何度か瞬きした。快楽によってとろりと溶けていた瞳が、内面の何らかの起伏を反映して揺れる。自分は床に転がっていたローションのボトルを拾い、残っていた中身を全て掌に垂らした。そうして空になったボトルに、出したばかりのローションを塗していく。
「――可澄の悪食まんこに、いいものを食わせてやる」
 安達はまた瞬きした。瞳の水面には冷たい人工の月が冴えた光を放ち、そして白い肌の上では、相変わらず四等星が輝いていた。
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