風の街エレジー

新開 水留

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13 「邪瘤」

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 何ヶ月振りかに幼馴染四人が顔を揃えた。
 伊澄銀一、池脇竜雄、神波春雄、善明和明の四人が居酒屋『雷留』の暖簾をくぐる。威勢よく「らっしゃい」と声を上げた店主の留吉は、先頭の竜雄を見た瞬間片手で顔を覆った。時任建設の若い衆を病院送りにした大立ち回りから、まだ幾日と経っていない。とは言え赤江において喧嘩や揉め事、果てはヤクザの抗争もよくある話だ。留吉とて彼らを追い出そうという気など毛頭ない。
 食肉加工業、長距離トラックの運転手、造船業、漁師とバラバラの職についているため、四人が一斉に顔を合わす機会は一年を通してそう多くはない。その為揃いも揃って底なしの酒豪である彼らは、その時あるだけの現金を引っ掴み、尽るまで飲むのが習わしだった。
 本来ならばこの夜もそうなる筈であったが、いつも通り雷留に向かう足取りからして既に重たかった。
 時和会の藤堂から西荻平左殺害に関する不穏な推測を聞かされた後、仕事から三日ぶりに赤江に戻って来た竜雄は、平助の入院と難波の死を聞かされて愕然となった。打ちひしがれたと言ってもいい。
 昔からの馴染みである平助らの変わり果てた様相はもちろんの事、幼馴染である銀一達が得体の知れぬ事件に巻き込まれる切っ掛けを作ったのが自分ではないのかと、顔面を蒼白にして気に病んだ。そして竜雄にとっても、難波の死は大きな衝撃だった。犯人が特定出来ず捕まっていない事も恐ろしいが、単なる通り魔殺人や偶発的な事故ではない事が薄気味悪さに拍車をかけていた。理由がなんであれ殺意という犯人の意識が、よもや自分達に向かないとは誰にも言えないからだ。
 竜雄がこの街に戻って来た夜は、和明が翌未明から漁に出る事が決まっており、四人が顔を揃えたのは春雄が東京へ戻る日の前日であった。
 雷留にて。
「…どないした、お前ら全員糞詰まりか?」
 注文伝票を構えたまま、留吉は冗談を飛ばす。
 銀一達四人を柄の悪い他の客達の間に座らせたくない留吉は、気を使って普段使用していない店の奥に席を設けた。しかし狭いとはいえ個室を用意したにも関わらず、当の四人は下を向いたまま注文ひとつしようとしない。未成年の頃からこの店に通っていた四人を知っているだけに、留吉はさすがに気味悪がった。 
「とりあえず、…ビー、ル?」
 と和明が言うと、
「お、何本いこか」
 と留吉は喜んで喰い付いた。しかしその先が続かない。和明の視線が他三人の頭上を泳ぎ、下を向いてしまう。
「もうええわ、ケースで持って来るさかい、後は自分らでやり」
 留吉は注文伝票を白紙のまま机に放り投げ、厨房へ戻っていった。
 やがて、ささやかな宴が始まる。
「…んで、志摩はその後どうなったん」
 と言ったのは春雄である。『死体置き場』で起こった黛ケンジと志摩太一郎の突然の殴り合いは、仕事終わりでたまたま通りがかった竜雄の登場で呆気なく幕を閉じた。路上に転がって失神している志摩を銀一と竜雄がトラックの荷台に乗せて赤江へ戻って来たのだが、竜雄が普段から利用しているトラック置き場に放置していた所、朝には姿を消していた。
「何それ、一言もなしかえ?」
 眉をしかめる春雄に、銀一はただ首を横に振って答えた。
「なんじゃいな、あいつも大概やの」
 不服そうな春雄に対し、
「…響子にすまん事したな」
 と話題を変えて言ったのは、銀一である。
「ええよ、うちの親とは仲良うやっとるから。別になんも文句は言うとらんよ」
「今日だけやない。帰ってからこっち、ずっと連れ出してるようなもんやしな」
 春雄が東京から赤江に戻って来た日の翌日には、銀一と共に西荻の家を訪れ、幸助の疾走と難波の死に直面している。あくる日まで騒動は続き、その二日後には警察にて事情聴取を受けている。竜雄が戻ってからも春雄は家を空けて銀一や竜雄と飲んでおり、おそらく響子が思い描いていたような、久しぶりの長期休暇を過ごせてはいない。
「かまわんて。そんな事で文句言うような奴と違う」
 春雄はそう苦笑して言うが、それを鵜呑みにする程銀一達は馬鹿ではなかった。
 ただ、正直今は響子の事を考えられる余裕が、竜雄や和明にはなかった。銀一にしても会話の切っ掛けになればと思っての話だったが、誰もその思いやりには乗って来なかった。
「どうしても気になるのが、一個あって」
 沈黙を破ってそう切り出したのは、和明だった。
「そのー、幸助さんな。お前ら二人が平助と話しよるのを盗み聞きしとって、今井が死んだ知らせを聞いて飛び出してったんよな」
 銀一と春雄は顔を見合わせ、頷いた。和明は続ける。
「バリマツが死んで、今井が死んで、次は自分かと思ったと…」
「そうやろうな」
 と春雄が答える。
「刃物を隠し持ってて、追いすがって来た平助を刺してまで山へ逃げた。…そこからが、行方知れず。そうやのになぜか、殺されたのは幸助さんやなく、難波やった」
 和明の言葉に聞き入っていた銀一が、頷いて言う。
「それは俺も思う。何で俺やなく、難波なんじゃろうか」
「違うで銀」と和明は首を振る。「俺が言うてんのは難波か、銀かて話やないんよ。お前らが見た幸助さんは、明らかに怯えてたんよな? 気が狂う程に震えてたと。な? つまりは何かしら理由はあったと考えてええと思う。ただそんな状態で、難波をやった犯人のおる山へ、そうとは知らんかったとは言え、自分から入って行くもんかのう」
「それはお前…」
 知らなければそういう事もあるだろう。むしろ冷静に思考できたいたかも怪しい状態に見えたのだ。
「それやのに、なんで幸助さんは、ほんまはこんな言い方したらあかんけど、なんで死んでないんや?」
「なんでて」
 和明と銀一の間に、春雄が割って入る。
「榮倉の言い方やと、見つかってないだけで、もうあかんのと違うかってのが警察の見立てやけどな」
 すると和明は尚も頭を振って、
「その話もどうかと思うわ。榮倉てこないだおったジジイの介護人みたいな奴じゃろ? あいつ、ああ見えてなかなか食わせもんやと俺は思うなあ。そもそも警察が捜索に山入って死体が見つからんなんて事あるかい? あるとすりゃ、そら死体が動いとるわ。それやのうても、つい最近知り会うたばっかりの一般市民に、軽々しく人の生き死にがどうとか言いよるもんかねえ」
 と実にもっともらしい事を言う。春雄は面白くなさそうな顔をしたが、和明の言葉には説得力があって、口を尖らせた。
「そう言われたらそうかもしれんけどや。ほな和明は、幸助さんは、死んでないと思うとるんか?」
「死んでないどころかお前…」
「おう、俺も」
 不意に言葉を差し挟んでそう言ったのは、竜雄である。ひたすら落ち込んでいるように見えた竜雄だったが、彼なりに考えを巡らせているらしかった。
「俺も和明と同じように考えとったわ」
「な?」
 という和明の同意の求めにも竜雄は頷いで応じ、銀一と春雄を交互に見て言う。
「お前ら二人は最初っから現場におったから何とも思わんのかもしれんけどな。俺な、和明もそうやと思うけど、初めて難波が死んだって聞いた時、幸助さんが殺ったと思たわ」
「はあ!?」
 銀一の上げた驚きの声に、
「そうそう、俺もや」
 と和明が言葉を被せた。頷いて、竜雄は言う。
「状況的に見たら普通そう思うぞ。なんでお前らがそれを言わんのか、そっちの方が不思議やったくらいよ。山に入る寸前、平助刺しとるんやろ?」
「ちょっと待ってや」
 と銀一は春雄を見やる。春雄は口をぽかんと開けたまま言葉を失っている。竜雄が続ける。
「そら、俺らが知っとる幸助さんは、控え目に言うて平凡太郎じゃ。まだ平助の方が根性あるよ。自分の息子包丁で刺すようなボンクラには見えんけど、実際それをやりよった以上、難波殺しかて一番の容疑者は普通幸助さんっちゅう事にならんか?」
「ないわ。あん時の幸助さんの姿見たら、そら一瞬後ろ姿見ただけやけど、絶対そんな事想像も出来んわ。あんなもん、完璧にトチ狂った呆けもんやで。頭から毛布引っ被って、小便撒き散らしながらダダダダダー!や。そんな…」
「それや」
 和明が言う。一瞬場がしんと静まる。
「俺が一個気になる言いよるんはそこよ。幸助さんが怪しいっちゅう話もそうやけど、そもそもお前ら、お前らが見たんはほんまに幸助さんなんか?」
 音のない電撃が狭い部屋で反響した。そこまで考えていなかったのか、竜雄までもが目を見開いて和明を見た。
 銀一も春雄も顔色を失っている。和明に言われて、あの日の状況を何度も思出しているのだ。何度も何度も。
 やはり、そうだ。
 あの時平助が叫んだのだ。『父ちゃん!』。
 顔は、見ていない。
 沈黙が、銀一達の答えそのものだった。
「平助は、見たんじゃろうか」
 と、和明が言った。
「見舞いがてら、平助の様子見に行ってくるわ。明日は休みやから、話出来るようなら、してくる」
 竜雄がビールの入ったグラスをグイと煽り、言った。
 そこへ、店主の留吉が現れた。
 いまだに静まり返った室内を見渡し、溜息混じりにこう言った。
「おい、今、店の方に電話入っとるんやが、なんぞ言う刑事がお前ら探しとるぞ。ここにおるて言うてええか?」
 四人が一斉に振り返った。
「刑事?」
 春雄が言い、
「誰じゃ」
 と銀一が聞いた。
「成瀬とか言いよったわ。ジジイみとーな声やわ。ジジなんかな、知らんけど」



 店内奥の個室から出て入口脇の電話のある場所まで向かうと、呑兵衛達の喧騒が嫌でも耳についた。普段そんな事は気にした試しがないというのに、何も知らずにただ美味い酒を飲んで酔っ払っている連中が、銀一は無性に腹立たしかった。
 成瀬からの電話には、銀一が応じた。本来なら警察からの電話に出る気になどならないし、居場所を聞かれても明かすわけがないのだが、状況ここへ来て耳にする成瀬の名が不吉以外の何物にも感じず、無視する事が出来なかった。
「伊澄じゃ」
「おう、成瀬じゃ。お前ら今日、西荻平助を見舞いに行ったか」
 ドンと胸を殴られたように、銀一の心臓が跳ねた。
「なんでじゃ」
「聞いとるんはワシやないけ」
 電話越しに聞く成瀬のしわがれた声は、直接聞くよりもずっと低くて粘着質だった。経でも読んでいるのかと思う程、しわがれている癖に異常な程力強い。顔さえ見なければ、これが老人の声かと思えて来る。
「…いや、バタバタしとったのもあるけど、行けてない。明日行こうと思ってた」
「ほんまか」
「おお」
「先だって病院から署の方へ連絡があった。平助の容体が急変したんじゃあ言いよってから、まだまだ聞かんといかん事がようけあるさかい急いで駆け付けたんじゃ」
「何?」
「何とか持ち直しはしたもんの、全く話なんぞ出来る状態やなかったぞ」
 と尚一層成瀬の声が、意味深な程低く銀一の耳でうねった。
「何があった!?」
「ほんまに今日行ってないんやな。そしたら言うが、お前ら結局一度たりとて、あれから平助の病室へ見舞いに顔出してないっちゅう事になるやないけ。なかなかどうして、お前らも大層な薄情モンやないか」
 人を馬鹿にする時の成瀬の嫌味な目付きが、銀一の瞼裏にちらついた。
「お前がどうこう言う話と違うやろ!明日行く言うとるじゃろクソが!」
 吠えたてる銀一に、成瀬は一歩も引く事をしない。
「ワシに食ってかかった所で同じ事じゃろが。平助の奴、ガタガタ震えて泣きよったぞ。死にとうない、死にとうない言うて、ガタガタガタガタ、赤江のごんたくれが鼻水垂らして泣きよったんぞ。ただでさえ死の淵いっぺん覗いとるんじゃ。そんな所で安酒かっ食ろうとらんで、一人くらい顔見せたらんか」
「……」
 成瀬の言い分は正しかった。こうして幼馴染四人が顔を揃えて大好物の酒を目の前にして尚、楽しくも嬉しくもないのだ。あーだこーだと推測で物を語るような事は本来性に合わない。今からでも行けるものなら顔を見に行こうかと、銀一は素直にそう思った。
「分かった。そうするわ」
「ほお、やけに素直やないけ」
「そんなんやないわ。で、何でわざわざ電話してきよったんじゃ」
「もうええわい。お前らが今日病院へ来とらんのやったら、関係のない話じゃ」
「…てこたあ、誰か別の人間が平助の見舞いに行っとるんか。…容体がおかしなった事と、関係あるんか」
 成瀬は答えない。
「今から行くわ」
「面会時間はとうに過ぎとるわい」
 銀一は壁に掛かった汚い時計を見上げる。午後十一時を回っている。
「ほな一個だけ聞かせえ。俺がこんな事言うのはおかしいかもしれんが、平助を刺したんは、ほんまに幸助さんか?」
「なんじゃあ、どういう意味じゃ」
「俺らは平助の部屋の前から逃げるあん人の後姿しか見てない。平助がそう言うたもんじゃから、あれが幸助さんなんやと信じとったが、顔は見てないんじゃ。もし俺らの証言だけで幸助さんが犯人扱いされとるんなら…」
 銀一が言い終わらぬうちから、成瀬の鋭い声が割っている。
「お前警察をなんやと思うとるんじゃ。お前らの話なんか初めから信じとるわけないやろ。最近になって幸助があの家に閉じこもっとったんはワシらも把握しとる。平左が死んでからこの一年、何度も足を運んで幸助と話をしとるし、バリマツの件でも、幸助の女房静子に話を聞く為に家には行っとる。もちろん難波が殺されてからも家ん中から敷地全部を捜索しつくした。今西荻の家は使用人共を除いて空っぽじゃ。お前らが見たんが幸助かどうかは知らんが、平助を刺してトンズラしとる人間は幸助で間違いない」
「証拠はあるんか」
「平助が顔を見とる」
 銀一は、自分の心臓で堰き止められていた血液がドッと流れるような安堵を感じた。しかし、それとて喜んで良い話では到底ない。
「…そうか」
「今更何を言いよるんじゃ」
「まだ幸助さんが見つかってないのは、あん人が難波をやった人間に殺されたからやのうて、あん人が殺した側なんじゃないかあ言うて、そういう思いも過っただけや」
「…これが普通の事件なら、無い話やない」
 受話器を握る銀一の手に力がこもる。
「やっぱり、そう思うか」
「ただ今回の事件はそんな単純なものやない。少なくとも、けったくそ悪い話やが平助を刺したのは幸助で間違いない。ただ、難波を殺したのは幸助ではないやろう」
「そうなんか!?」
「…お前、そこまで色々考えられる頭を持っとって、なんで見舞いの一回も顔出さんのじゃ」
「しつっこいのお!こっちも朝早よから働きよんじゃ!命に別状はないと聞けば落ち着いてから顔出そうかぐらいに思うてもおかしいないじゃろうが!恋人同士でもあるまいし、そんな事でがたがた他人に言われる筋合いは…」
「待て、お前今何言うた? 命に別状はないやと?」
 叫び過ぎたせいだろうか。理由の分からない冷たい空気が、耳の中に入って来るのを銀一は感じた。キーンという、耳鳴りも聞こえる。
「…なんや」
 という銀一の問いに一拍置いて、「阿保抜かせ!」成瀬が怒鳴り声を上げる。
「平助の意識が戻ったんは今朝じゃ!奴は今日までずっと死の淵覗きよったんぞ!ようやく目覚めて幸助の話聞けた思うとったら、今頃んなって容体が急変じゃ! なんとか持ちこたえたはええが、意識を取り戻した瞬間ベッドの上でパニックじゃ! 動けん体でガタガタ震えて、今でもずっと泣き続けよるわ!」
「ま、待て!待てや!聞いてないぞそんな話!命に別状はないて言うとったやないか!お前も一緒に話聞いてたやろ!」
「何をじゃ!」
「俺が難波と山へ入った翌日んなって、実は病院へ付き添った使用人から、手術は長引いたが命に別状はない言う知らせが晩の内に入っとったんじゃあ言うて。俺も春雄も和明もそう聞いた。お前や榮倉とかいう刑事も一緒におったじゃろ、あの日!」
「お前何をトチ狂った事を言いよるんじゃ。なんで警察のワシが使用人の話なんか聞かなあかん。そんなもんとっくにワシの部下から連絡受けとるわい。志摩が現れる前、西荻の玄関先で話しよった時の事を言うとるんなら、お前まだ動揺が抜けきっとらんかったのと違うか。ちゃんと思い出せ、あの段階でワシらの他に誰か人がおったか? ワシらが話しよる所へ、誰か割って入りでもしたか?」
「…いや。…誰もおらん」
「そもそも、お前らに平助の容態を伝えた言うんは誰じゃ。使用人言うても限られたあるぞ。今もこの病院で付き添いしてる、片森の事か?」
「いや、…違う」
「ほな誰じゃ」
 銀一の目は、汚れた壁時計もバカ騒ぎする客達も見ていなかった。
 あの日、突然現れた志摩太一郎と敷地玄関の門扉で談笑していた、あの男。
「…庭師」
 そう言った銀一の声は、ほとんど独り言に近い囁くような声だった。



 電話を切った銀一の背後には、なかなか戻って来ない彼を心配で見に来た竜雄達が立っていた。気配でそれを感じ取った銀一は、自分の右肩を見るように、虚ろな視線を泳がせてこう言った。
「ちょっと、出てくるわ」
「どこへじゃ」
 と竜雄が聞いた。
「西荻」
「今からか!?」
「ちょっと、確認せんなんこと、あって」
「なんや。成瀬に何言われた」
 春雄が声を掛けるが、銀一はそれには答えない。
「ちょっと、行ってくる」
「おい、待て!」
「銀!」
 うわの空のようだった銀一は、静かに言い残した次の瞬間には猛烈な勢いで店を飛び出していた。
 竜雄と和明がその後を追う。
 留吉が白紙の伝票を振り回し、「うちツケはやってないぞ!」と怒鳴った。
「警察!榮倉いう奴か成瀬いう刑事に電話して!西荻の家に行くて、言うといてくれ!頼んだで!」
 春雄は留吉に言い残すと、彼もまた入口の引き戸を壊す勢いで外へと飛び出して行った。


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