血みどろ兎と黒兎

脱兎だう

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②第二章 一生のキズを背負う子供たち

1夜の学校を探索しよう

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 さあ始まりました夜の学校探索ぅー! イエー。

 二人で一緒に盛り上げていきましょおー……はあ。

 大丈夫かな、呪われないかな、これが終わった途端に呪いが降りかかって人生ゲームオーバーとか嫌だぜ?
 なんて身震いしながら足音を立てないよう廊下に出た。
 夜なのだから当たり前だが、辺りは四方八方真っ暗で、このままではとてもじゃないが目視出来そうにない。

「(うーわ、真っ暗だ)」

 夜目が利くかどうか、今暫く試してみる。

「(……ちっとも見えそうにないや)」

 どうしようかな。
 ちみほだと光力足りないだろうし……と思慮していれば、僕が愛執するブラビットの声が行き渡ってきた。

「明かりがあればよろしいのですね? どうぞ」

 ぽっ、とライターで着火させたような音が出て、円が広がるように視界が開けていく。

 ──うわ凄いなあ……魔法かな?
 やっぱり人外は便利そうで良いなあ。

 羨慕の眼差しを向ければ瞬く間に彼女の片頬はつり上がる。

「凄いでしょう。魔法はこういうことをいとも簡単に実行してしまえるのです。前にも言いましたが、魔法というのは反映する力ですが幻覚などを得意とします。なので……」

 自慢気に語るテンションの高さぶりはそれまで無表情で固まっていたとは考えられないもので、吹き出しそうになるのを堪えた。

「(……っふ、え、えーと。つまり周りの人に影響が出ないようにも出来るから、周りから見れば光ってないってこと? で良いのかな)」
「あらやだ、正解ですよ。凄いですねえちょい悪ちゃん」

「(だからその呼び方止めてって……)」

 ふふふ、と笑っている姿も可愛いが、小学生の頃の黒歴史を掘り起こすのは止めていただきたい。
 一度脳裏に過ると自分では自制が効かず、仲が良かった頃の夏休みを思い出してどこか憂鬱になる。

 今頃の時期に、仁夏達と遊んでいた時……僕は本当に嬉しかったし、楽しかったのだ。

 一緒にゲームしたことも、

 一緒に外で遊んだことも、

 市民プールでふざけた時も……確かに、当時はあの二人に救われていた面もある。
 なのにこんなことになって……明確な原因が今も尚分かっていないことも、この哀愁に拍車を掛けている原因の一つだろう。

「どうしました?」

「(……もうあの頃には戻れないんだなって。丁度今と同じ夏の時期に仁夏と狼と僕の三人で遊んでたことがあったでしょ? ちょっと、……寂しくなって……さ)」

 寂しく感じている、と言えばみるみる内に彼女の顔は信じられないようなものを見る目に変わる。
 死神だと狩る立場だし、僕が初めてのお友達ということもあって

「仲が良かったことへの未練」

 に微塵も縁が無かったのだろうな。

「貴方は、あそこまでされて許せるのですか?」
「(分かんない。でも、……苛ついているのは事実だし。無理かも)」

 倫理や道徳の面で言えば悩むことなく答えは「NO」だろう。
 感情論で言ってしまうと、未練なく乗り越えられない限り、後悔の念が強い。
 反省点がどちらにどのくらいあるのかは、謎だけど。

「……が、……」

 今、なんて言ったんだろう。
「が」しか聞き取れなかったせいか、文脈を推察することすら不可能だった。

 あっれーおっかしいな、僕聴力結構良いんだけどな?

 好きな子の声を聞き逃すなんてそんな……そんなあるまじき失態。
 聞いても答えてくれなかったことは少々癪に障るが、「独り言ですから」と言われては引くしかないと押し黙るに至る。
 夜間に見る校内は、予想に反して幻想的な光の匙加減をしており、僕の熱愛を押し上げるに十分だったようだ。
 二人きりの夜の学校でロマンチックな背景(状況)

 ……──間違いない、デートだ!(違う) 

 幽霊をもデートの飾り付けに使ってやろうかと恐怖心を恋心で払拭していると、ブラビットが訊いてくる。

「そういえば、七不思議と言うからには七つですよね? 一体どんなものがあるので?」
「(あー。そうそう、七つあって……僕が聞かされた限りでは……こんな感じだった、かな?)」

 1・血濡れのラム
   …鏡に向かって「ブラッディ・ラム、ブラッディ・ラム、ブラッディ・ラム、どこですか」とノックすると血濡れの少女が出てくる。
 2・鳴り響くラジオ
   …教室に置いてあるラジオが人知れずに鳴って意味不明な歌が流れる。
 3・壊れたバイオリン
   …音楽室の倉庫にあるバイオリンが勝手に動き出す。
 4・不気味な瞳
   …紫と青のグラデーションの瞳を持った教師が呪いで生徒を殺した。正体は悪魔だった。
 5・叶えて天使様!
   …良い子は天使様にお願いすると願いを叶えて貰えるらしい! 対価に何かを奪われた。
 6・神から下されし三つの試練
   …元の話はリーンに伝わる五感を捨てる話だと思う。三つの試練をやり遂げれば神様と会話出来るそうだ。
 7・君はいじめられっ子
   …この学校でいじめられて殺された子が未だに成仏出来ず悪霊となってしまった。会うと殺される。

「(って感じだったと思う)」

 なんてことなさそうにのんびりとした声で言う僕とは反対に、ブラビットはこめかみを押さえながら訴えてきた。

「連行案件混じりすぎではありません!? こちらの管轄のものが幾つかあるような気がするのですが」

 管轄……管轄とかあるんだ。
 まるで警察みたいな側面を持ち合わせてるんだな。
 お仕事モードな彼女に新たな魅力を見出だしながら頭を捻る。

「(え、でも幽霊の話とかも多いよね? 幽霊って──)」

 と、そこまで言って思い当たる。もしかするとというのは……なのではないか。
 顎を押さえて考え込む僕の姿を見て彼女は頷く。

「予想されている通り、死神が狩り忘れた魂の可能性があります。悪魔や天使に関しましても外界の者たちが起こしたものであると考えてよいでしょう」
「(なるほど……じゃあ、呪いとか悪霊は存在しないってことだよね! 僕は非科学的な存在なんて信じないぞ!)」

 オカルト全否定をすることによってホラーが大の苦手という己の短所を隠そうとする中学生。
 それに疑いの眼差しを向けてブラビットは

「非科学的な存在、私共も入りそうですけどね」

 と不満を溢している。
 しかし、人外達と人間はどこまで関わりを持っているのだろう。
 この南有利中で悪魔と天使がいたならば、杜介都以外にも多くの人外達がいるに違いないのだ。
 果たして現代において人間界で暮らしている人外の割合はどのくらいなのか。

「…………」

 まあ、今考えても仕方ないな。
 ついでに、自宅帰ってますよアピールとしてちみほ開いてまぞったーを更新しておこう。

『らびらび描きたいのに構図が思いつかないよぉーーー!!!!(泣)』

『誰か……通りすがりの優しい人がらびらび投げてくれないかな……チラッチラッ』

 更新っと。

 ──うーん、我ながらネット上ではウザイ性格をしているね!

 MLエムラインを覗いてみても『求ム!』をしている人はこの時間帯だと少ないようだ。
 嘘だろ俺のMLがこんなに静かなんて……!(いつもは騒がしいのに!)

 ※TL表示-------------------
 しろぱんだ
 誰かァァァァァ、誰かァァァァァ、らびらびを呼んでぇぇぇぇ‼️
  →野良猫ろん
  おかしい……誰もらびらびを呼ばないなんて。一体何があったんだ……(ネタ)

  →ふ腐ふ
  きっと何かあったに違いない……(同じくネタ)

  →しろぱんだ
  フフwwwノリに乗ってくれるの嬉しーーです!!ありがとう😆💕✨

 クレマルウナたん
 流行りのホラー。ピエロが多すぎて吐き気がする!!!
 ピエロ恐怖症に優しい世であれ……ナム

 megetto
 今日人が少ないのは幽霊の仕業かな?かな??
 きになるょ。。

 野良猫ろん
 作業キツい……勉強もキツい。あれもこれもそれもキツい、でももっと嫌なのは台風が来ること。

  →しろぱんだ
  分かりみ深すぎ

  →大翔
  ああ。分かります。そろそろ台風の時期ですからね。竜巻注意報も来るとは思いますが。

  →野良猫ろん
  竜巻とか避難しなきゃ死にますよ……来ないように祈ろー!

  →しろぱんだ
  流石にダブルはマジ勘弁案件だよね……
 ------------------

 ……傍から見たら十分騒がしいMLな気はするが、普段ならばこれの十倍は賑わっている。
 時間帯のせいかな。
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