血みどろ兎と黒兎

脱兎だう

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②第一章 僕たちの関係はまだ、お友達のまま

10七不思議、行ってみちゃう?

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 どうしようかな。

 出れないんだよな。

 ドア蹴破ったらきっと損害賠償請求来るよね、うーん。
 八方塞がりなこの状態を見て、両親が心配して騒ぎ立てる前に帰れるかが不安になる。

「(ブラビット)」

 居ないかな……と期待して小声で呼んでみる。
 居ないか……などと再び瞑想しようかと思うと声がした。

「良い子ちゃーん何処ですかー、鞄が教室にあったのでいると思うのですが……というかさっき声しましたね。この近くにいます?」

 周辺の廊下から響き渡ってきた大好きな声に勢いよく顔を上げ、深淵の底に沈み切っていた僕の心は急激に地上へと出て息を吹き返す。

「(いる! いる、ここにいるよ!)」

 最近クソ生意気な態度を取っていたような気がしていた(後の祭りな)ので来てくれたことに浄化
 安心した。

 声の出所に気付いたらしい、「あ」と気まずい声が聞こえる。

「(……トイレ入ってきていいよ。今回はドア開かなくて困ってるし)」

「女子トイレの方ですかね」
「(男子! 男子ィーッ!)」

「冗談です」

 くっそ、また君はそうやってすぐ……といつもの悪態をつこうとするが、する前に「わあ」という彼女の声がして問い掛けた。

「(どうしたの?)」

「一か所だけ故意でドア前に物を置いたようなとこがある……絶対ここに居るでしょう、コンコン」

 コンコン、の声に合わせてノックするブラビットが可愛すぎて──尊い──。
 危なかった。

 彼女の姿が見えていたら確実に萌えでやられそうだった……恐るべし大天使ブラビット。

「(正解。っていうか物が置かれてたのか……道理で開かない訳だーなるほどなあ)」
「もう外は夕方の色してませんけど大丈夫です?」

「へっ」

 つまり夜? 小声も忘れて慌てたままちみほの電源を入れると画面には午後七時三十八分と表示されていた。
 うわあやっばい両親からライソの通知来てる。
 親指で開いてみると『電車でも乗り過ごした?』と心配しているメッセージが届いている。

 とりあえずすぐ帰ろ──

「そういえば何故閉じ込められたことに気付かない程トイレに居たんです?」

「(痛いところを……学校の七不思議っていう怪談話聞いてお腹壊しちゃったんだよ。体調不良でそれどころじゃなくて気付かなかったんだと思う)」
「なるほど。七不思議……」

 キラキラと目を輝かせ始めた彼女を見て

「気になるの?」

 と問うと

「いえ、本で探してみます」

 と返された。

 かなり気になってるよね?

 まあ七つも怪談話が揃っている学校はなかなか無いかもしれないし、調べるなら今の内か。
 便座から立ち上がり荷物を持って個室から出る。
 両親には「友達と七不思議冒険したいのでしていいですか思い出作りたい」と何度もしつこくライソでお願いして了承を得た。学校には黙っておいてくれるとのこと。
「青春だなあ」というメッセージはさておき、許してくれて良かった。

 良い子は真似しちゃ駄目だぞ(そもそもソノリカなら警備員に見つかるだろうけど)。

「(これから調べよっか、僕も気になってた奴だし)」
「良いんですか? そうですか……そうですか」

 ──嬉しさを隠せてないよ、ブラビット。

 滲み出ている期待をガッツポーズという形で表現されては、頑張るしかない。
 僕はブラビットと真っ暗闇になった廊下に出て七不思議を調べることにするのだった。
 彼女はきっと、こうしている間にも「呪われそう」と僕が怖がっているとは分からなかったことだろう。
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