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①第六章 誰が誰を悪いと決めるのか
5犯罪率が高い国
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目を覚まして、まず恥ずかしくなった。
いじめで心が殺される前に羞恥心で死ぬかと思った。
身体が反応していたのもいけなかった、起きてすぐ隠れるように布団に潜ったら彼女に不思議そうな目で見られてしまったではないか。ちっくしょー。
同時に疑問点も湧き上がってくる。
未来的犯罪者は「悪夢」を見るのではなかったか? ということ。
どう考えても僕にとってあれは最っ高に幸せな夢だった。
現に今寝覚めが素晴らしくいい。肌のつやも良くなった気さえしてくる程。
──一体どういうことなんだろう。
また恥ずかしい思いをしては家で気を休めるにも休まらないので、それ以降は手を繋いで貰うだけに収まることとなった。
両親が居ない間は虚ろな目になりつつある僕が五年生になった、丘志五年六月十五日、日曜日。
彼女が死神協会に行く日、何気なく気になっていた「呼ぶ」ってどういうことかと聞いた。
「ああ、あれはですね。貴方にか──メニューを開けるようにしまして」
か、と聞こえた後言い直していたような気はしたが、まあ今は言えないことなのだろうと察してそこには触れずに問いかける。
「え? メニューってあのゲームでのあのメニュー?」
「はい」
うっそだぁと思いつつも密かな期待を込めて言われた通りにやってみたが、どうにもブラビットの目が治らない限り見えないようだ。特に何も変化はなかった。
少しゲームっぽい画面を見れるかと期待していただけに残念……!
申し訳なさそうにしている彼女はそれはそれは魅力的で写真撮りたいなと思う程美しい。
「私が留守の間何事も無いように祈る他無いですね、今後ともお気を付けて。では行って参ります」
「行ってらっしゃい」
彼女の後ろ姿が消えるまで見送り、階段を下りて居間にあるテレビを付ける。
ニュースは今日も殺人事件のことばかり。頻繁に切り替わるニュースの内容は、大体が犯罪のものだった。
あまり意識したことは無かったが、この人間界はやたらと犯罪が多い気がする。
いつの時代も犯罪はあるというけれど、毎日違う事件が流れているのは前からなのだろうか?
≪……され、未だ意識不明の重体だそうです。≫
ふと気になって見続けていく。
≪次のニュースです。本日午前三時頃、英地県むざん市で三十代の女性の遺体が発見されました。遺体が発見されたのは住宅街にあるアパートで、女性は一人暮らしだったとのことです。容疑者として逮捕されたのは四十代の男性で、警察は何らかの交際トラブルがあったとして捜査を続けています≫
交際トラブルかぁ……英地県というと地図から見て杜介都より上にあるとこだったかなあ。
僕が犯罪者になる未来があるとしたら正直これだと思うのだけど(恋愛絡みだと少々過激なのは認める)、でも僕以上の犯罪者はいないって言ってたよな。
そんな、恋愛絡みでトップレベルの悪人になるかと言われると微妙なところだろう。
けどブラビットとの出会いはそれが理由なのだし、もっと犯罪系の知識は付けるべきかもしれない。
刑罰とか、警察系の……法律の知識とか。
──ん、いや待てよ?
人間界の犯罪基準と人外達の犯罪基準って結構違うのでは……まあ合っても困ることはないか。
これからの勉強の方針を決めようかと物思いに耽っているとおか……母さんが話しかけてきた。
「んー? どうしたの、赤。にやにやしちゃって。さては好きな子とのこと想像してたな~? このこのーっ」
「な、なななっ違うってばー!」
慌ててしどろもどろに否定するが逆効果な気がする。
微笑ましいと言わんばかりの母さんの表情は変わらなかった。
話題を変えようと「そういえばこれは普通だろうか」と聞いてみることにする。
「……でもさ、おか……母さん」
「なあに?」
呼び方を変えたことに気付いたのか、息子の成長を喜ぶ親の目をしている。
実を言うと「僕」っていう一人称と共に女々しいといじられた為対策として変えようとしているだけなのだが。
まあ、身内や親しい間柄では一人称は変えなくてもいいだろう。
「好きな子の腕や足切り取って僕の腕や足とくっつけたいなって思うのって」
間髪入れずに遮られる。
「赤⁉ 普通じゃないしそれは流石に異常よ!? そんなことしたら貴方犯罪者になるわ!」
──えっやっぱり恋愛絡みの犯罪者?
いや、でもな。多分殺人数がかなり多いってことだと思うんだよな、あの口ぶりから察するに。
「……何を考えているのか分からないけど、とりあえずそんなこと言っちゃ駄目よ?」
「どうして?」
「確実に嫌われるかドン引かれるから」
「え」
な、なんだって!?
やっぱり切り取りは駄目か!
じゃあ皮を剥いで骨を抜いて中に直接入るのはどうだろう、なんて考えていると
「駄目だからね、貴方は少し……少しと言っていいのか分からないけど結構変わっているのは確実だから」
と言われてしまった。
なんてこった。僕が毎度思い留まっているあっちの考えの方が良いってことか。
……これからはもっと気を付けよう。彼女に嫌われたくない。
≪続いては過去に流行ったモデルランキング! 男性モデルでのトップスリーは……≫
間を置いてどんどん発表されていくイケメンたち。
へえ、こんな人たちもいたのか。
あんまり興味ないけど、一位の翼木祥って人は確かに格好いいな。黒髪に緑目、典型的なイケメンより少しチャラ男っぽい感じだけど。
一通り興味のあるのが終わってしまい、視線をテレビから外す。
「テレビ見てないなら消しとこっか?」
「うん、ありがとうお母さん」
あ。またお母さんって呼んでしまった。うっかり失念してたな。
いじめで心が殺される前に羞恥心で死ぬかと思った。
身体が反応していたのもいけなかった、起きてすぐ隠れるように布団に潜ったら彼女に不思議そうな目で見られてしまったではないか。ちっくしょー。
同時に疑問点も湧き上がってくる。
未来的犯罪者は「悪夢」を見るのではなかったか? ということ。
どう考えても僕にとってあれは最っ高に幸せな夢だった。
現に今寝覚めが素晴らしくいい。肌のつやも良くなった気さえしてくる程。
──一体どういうことなんだろう。
また恥ずかしい思いをしては家で気を休めるにも休まらないので、それ以降は手を繋いで貰うだけに収まることとなった。
両親が居ない間は虚ろな目になりつつある僕が五年生になった、丘志五年六月十五日、日曜日。
彼女が死神協会に行く日、何気なく気になっていた「呼ぶ」ってどういうことかと聞いた。
「ああ、あれはですね。貴方にか──メニューを開けるようにしまして」
か、と聞こえた後言い直していたような気はしたが、まあ今は言えないことなのだろうと察してそこには触れずに問いかける。
「え? メニューってあのゲームでのあのメニュー?」
「はい」
うっそだぁと思いつつも密かな期待を込めて言われた通りにやってみたが、どうにもブラビットの目が治らない限り見えないようだ。特に何も変化はなかった。
少しゲームっぽい画面を見れるかと期待していただけに残念……!
申し訳なさそうにしている彼女はそれはそれは魅力的で写真撮りたいなと思う程美しい。
「私が留守の間何事も無いように祈る他無いですね、今後ともお気を付けて。では行って参ります」
「行ってらっしゃい」
彼女の後ろ姿が消えるまで見送り、階段を下りて居間にあるテレビを付ける。
ニュースは今日も殺人事件のことばかり。頻繁に切り替わるニュースの内容は、大体が犯罪のものだった。
あまり意識したことは無かったが、この人間界はやたらと犯罪が多い気がする。
いつの時代も犯罪はあるというけれど、毎日違う事件が流れているのは前からなのだろうか?
≪……され、未だ意識不明の重体だそうです。≫
ふと気になって見続けていく。
≪次のニュースです。本日午前三時頃、英地県むざん市で三十代の女性の遺体が発見されました。遺体が発見されたのは住宅街にあるアパートで、女性は一人暮らしだったとのことです。容疑者として逮捕されたのは四十代の男性で、警察は何らかの交際トラブルがあったとして捜査を続けています≫
交際トラブルかぁ……英地県というと地図から見て杜介都より上にあるとこだったかなあ。
僕が犯罪者になる未来があるとしたら正直これだと思うのだけど(恋愛絡みだと少々過激なのは認める)、でも僕以上の犯罪者はいないって言ってたよな。
そんな、恋愛絡みでトップレベルの悪人になるかと言われると微妙なところだろう。
けどブラビットとの出会いはそれが理由なのだし、もっと犯罪系の知識は付けるべきかもしれない。
刑罰とか、警察系の……法律の知識とか。
──ん、いや待てよ?
人間界の犯罪基準と人外達の犯罪基準って結構違うのでは……まあ合っても困ることはないか。
これからの勉強の方針を決めようかと物思いに耽っているとおか……母さんが話しかけてきた。
「んー? どうしたの、赤。にやにやしちゃって。さては好きな子とのこと想像してたな~? このこのーっ」
「な、なななっ違うってばー!」
慌ててしどろもどろに否定するが逆効果な気がする。
微笑ましいと言わんばかりの母さんの表情は変わらなかった。
話題を変えようと「そういえばこれは普通だろうか」と聞いてみることにする。
「……でもさ、おか……母さん」
「なあに?」
呼び方を変えたことに気付いたのか、息子の成長を喜ぶ親の目をしている。
実を言うと「僕」っていう一人称と共に女々しいといじられた為対策として変えようとしているだけなのだが。
まあ、身内や親しい間柄では一人称は変えなくてもいいだろう。
「好きな子の腕や足切り取って僕の腕や足とくっつけたいなって思うのって」
間髪入れずに遮られる。
「赤⁉ 普通じゃないしそれは流石に異常よ!? そんなことしたら貴方犯罪者になるわ!」
──えっやっぱり恋愛絡みの犯罪者?
いや、でもな。多分殺人数がかなり多いってことだと思うんだよな、あの口ぶりから察するに。
「……何を考えているのか分からないけど、とりあえずそんなこと言っちゃ駄目よ?」
「どうして?」
「確実に嫌われるかドン引かれるから」
「え」
な、なんだって!?
やっぱり切り取りは駄目か!
じゃあ皮を剥いで骨を抜いて中に直接入るのはどうだろう、なんて考えていると
「駄目だからね、貴方は少し……少しと言っていいのか分からないけど結構変わっているのは確実だから」
と言われてしまった。
なんてこった。僕が毎度思い留まっているあっちの考えの方が良いってことか。
……これからはもっと気を付けよう。彼女に嫌われたくない。
≪続いては過去に流行ったモデルランキング! 男性モデルでのトップスリーは……≫
間を置いてどんどん発表されていくイケメンたち。
へえ、こんな人たちもいたのか。
あんまり興味ないけど、一位の翼木祥って人は確かに格好いいな。黒髪に緑目、典型的なイケメンより少しチャラ男っぽい感じだけど。
一通り興味のあるのが終わってしまい、視線をテレビから外す。
「テレビ見てないなら消しとこっか?」
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