中年童貞氏は麗しの姪から寵愛を受けて…

その六．新居徒伯父さんの裏の顔…

遥がお出かけしてしまった後、淳二はおよそ４０年寄生し続けている、自室の机に向かう。
一見何の変哲のない、汚い部屋だ。
が、まるで特撮の秘密基地よろしく、木製の机の下にある隠しボタンを押すと、壁面がくるんと回転し、小さなモニターが現れた。
断っておくと、この世界ではコンピュータはまだまだ未発達だ。
日ノ本の國は経済発展より、亜細亜の人民を大きく包み込むリーダーになるという選択肢を獲った。
結果、ヨーロッパを打ち負かそうとする経済発展は二の次となった。
現世の祖国のような製品開発を世界に展開していくような拝金主義のスタイルは好まぬ賢人が大勢いるからだ。
亜細亜のみならず欧米からも、絶大な信頼と尊敬の眼差しをもらう誇りだかき国といえばよかろうか…。

それはそうと、この淳二。
コンピュータ通信を駆使し、様々なプログラミングを行うことで小遣いを得ていた。
大学で挫折しかかったITの知識は、社会で未発達の分野だからこそ、彼に大きな利益をもたらした。
現世のいわばメールに当たる通信機能で、広く自分の能力をアッピールしたところ、海外からも様々な依頼が舞い込むようになった。
当初は、欧米の牧草地帯で家畜を追い払うための自動電流装置の感知センサーのプログラムに始まり、次は警備会社からは防犯用人体温感センサーの開発を依頼された。
やがて、妙な方向に事態は動く。
が、精々サラリーマンお給料程度の活動でとどめていけばよかったものの、意外な方向で仕事が舞い込む。

妖しげな団体がスパイの折檻に用いると思われるエレキ椅子に流す電流の調整をしてくれとの依頼もあった。
肉体が限界を迎えると自動的に放電を中止できるように、マニアックな注文だったが受けたところ、相当な額になった。
その仕事を取り次いだのが、宗教団体と思わしき団体の代理人、占部を名乗る男だ。
最近依頼されたのが、マインド・コンピュータなる洗脳装置の一部で、そこに用いる超音波のタイプを、人体の興奮度から割り出すためのシステム作成というこれまた怪しい依頼だった。
が、この報酬がなんと４億円だという。
「来年はまた遥に追求されるだろうなあ」
独り言ちていると、連絡音が入る。
「おお、占部氏か。また新たなお小遣い稼ぎのネタですかねえ」
モニターに相手の顔が映し出される。