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第三戦:義妹は総理を守る!?

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華やかな宴は進み、ついに今宵のスペシャルゲスト、我が国の代表伊部信一郎内閣総理大臣のご登場と相成った。
「わお、兄ちゃまッ! 総理大臣よ、本物の!!」
世間知らずを絵にかいたようなお嬢ちゃんの美波だが、意外にも政治に興味があるのかと光輝は少しだけ感心もした。
が、実態はTVをほぼほぼ見ない美波にとって、知っている有名人というとこの国の最高権力者くらいだというだけの話だ。
総理はさっそうとご登場ののち、要人たち数人といくつか言葉を交わしたのち、明らかにこのセレブな宴の最年少出席者の美少女に歩み寄る。
「これは、これは、鴻池のお孫様、美波嬢ですな。お美しく成長されましたなぁ」
「い、いえ、そんな…。ていうか、あ、じゃなくて、と…申しますか総理は、わたくしのことご存じなのですか?」
と、少々噛みながら、ほっぺを紅潮させた美波は精悍な我が国の最高権力者に尋ねる。
「鴻池翁とは、我が伊部家も代々お世話になっていますのでね。そのお孫は深窓の佳人としても、財界では知られておりますよ」
「ま…まぁ。そんな…ほんとのこと、おっしゃられても…」
と、最高権力者からの讃辞にこの上なく『素直』な反応を示し、またまたさらにほっぺを赤らめる。と、その時だった。

「なんだ、あいつは!? あぶないッ、総理!!」
光輝が息を飲む。
背後に迫るギャルソンが突如、巨大な魔物に姿を変えたのだ。
黒いベストも真っ赤な蝶ネクタイも粉微塵に吹き飛ばす様に裸体を現したその男は、ゴツゴツした岩の塊が張り付いたような上腕二頭筋を振り上げ、伊部総理に覆いかぶさるように襲い掛かる。
が、最高権力者を悪の手から間一髪助け出したのは、なんと美波だ。
美波は総理の腕を手繰り寄せ、怪物のような大男の刃のような鉄拳に空を切らせたのだ。
さすがは、体操部で鍛えた身体能力。
ほわわーんとした日頃の様子からは想像もできない卓越した運動神経に光輝が惚れ惚れしたのもつかの間。
「総理、早く逃げて! 総理を守ってください、早く!」
と、美波はすっかり正義の乙女の表情でSPに守るべき我が国のリーダーを託す。

「なんだ、この小娘は!?」
魔物は、今度は突如現れた勇敢なJKに標的を変えたように向き直る。
そして大きく振りかぶり、可憐で華奢な乙女目掛け、拳を振り下ろす。
「逃げろ美波!!」
 光輝が悲痛の叫びをあげる間もなく、魔人の拳が妹の肉体を貫いた!!
 …かに思われたものの美波は華麗にバク転し、宙に着地。真っ白いパンティが一瞬丸見えだったが。
「乱暴する人は許さないんだから!」
 美波は、素早く手にしたブランデーの注がれたグラスを魔物の眼を狙って投げつける。
「うぎゃあーッ!!」
これにはさすがの『非人』もたじろいだ。
「美波…めっちゃかっこいいぞ!」
思わずポーッと妹に見惚れる光輝。
とびっきりチャーミングな現役JKが悪漢を倒す。
そんな痛快な展開はここまでだった。細いお人形のような白い首筋に、ピシ―ッと毒蛇のような黒い鞭が絡みついたのだ。

「く、苦しいッ…!」
「やってくれるじゃあないかね、お嬢さん。しかし、小娘のくせに、我がバーニングには向かうとは、大それたことをしたものだ。大和撫子というものは慎み深いものと思っていたが、ね」
美波の首を鞭でくいくい締め上げるサディスティックな嗤いを浮かべるのは、軍服姿の冷徹そうな男。
日本がアジア各国にまで勢力を広げていた頃の抗日戦士を彷彿させるかの国の制服を纏い、胸元には奇妙な勲章が不気味な黒光りをしている。
「あううんッ…や、大和撫子は…正義感が強いのよッ…。女の子だって…この国で…悪いことする人たちは…許さないんだから…あ、貴方は誰なの? ううッ!」
と、美少女フェイスを苦悶に歪めつつ、美波は悪に屈しない。が、純粋まっすぐで、正義感の塊のような女の子の反応を、予想していたかのように愉しむ。
「ふん、小生意気な。だが丁度よい。日本の財界人が我が組織の軍門に下る際、生贄が必要だと思っていたところだ。日本では、人柱、とでもいうらしいが。なかなか可憐で財界エリートのパーティにも招待される勇敢なジャンヌダルク…。そんな小日本人に似つかわしくない令嬢を責め苛むのも一興だな、ククク…」
軍人は、冷酷で嫌味なほど端正な貌をさらに残忍に歪め、鞭のグリップに備わっている遠隔操作ボタンを巧みに操り、美波の苦痛をさらに厳しいものにする。

「フフフフ、挨拶が遅れたな、お嬢さん。わが名はバーニング作戦部総統、アンジューコン。亜細亜全土の制圧が至上命題!!」
アンジュ―コンは明らかに半島系の鋭い眼光を向け、マイクタイプの変声機から畏まった日本語を紡ぐ。
「く、くぅ―――、そ、そんな、ことできるわけない!」
苦しみながら美波が抗弁する。
『平和憲法』を掲げる日本とて丸腰ではない。
自衛隊はあるし、優秀な警察組織や特殊部隊も維持している先進国家だ。
このバーニングが、どれほどの力を持っていようと、『一介の秘密結社』が国家を手玉にとれるはずはない。
「はたしてそうかね、だが、一国の民を操るのは意外に簡単でね。人心を掌握する方法の一つとして相手の権威や威信を失墜させる方法がある。お嬢さんにはそれに協力してもらうとしようか」
残忍にほくそえむアンジューコンだ。
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