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一巻:クールビューティ司書
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―———深夜の帝都国立博物書印館。
本来ならば、何者も立ち入ることのできない時間だ。
邑山藍子は明日から始まる“中世・近代拷問展”の看板が掲げられた企画展示室の扉を前に、生唾を飲み込む。
眼鏡が似合う美貌の彼女は、クール・ビューティと形容するのが相応しかろう。
ついに先だって、30歳を超えたばかりだが、男性経験は皆無だ。
藍子の名誉のために言っておくと、彼女はモテぬはずもない。
帝都女子短大時代は帝都大学のエリート学生たちから、引きも切らない誘いを断り続けていたものだ。
元より活字が命の文学少女だ。
異性との交際にさしたる関心はなかった。
高倍率の帝都司書試験を突破し、若くして館長補佐の立場を与えられた彼女の生き甲斐が仕事だっただけだ。
そんな彼女が男性の誘いを受けたと知れば、同僚や友人たちは目を丸くするであろう。
しかも、その相手が、義務教育しか受けていない、この館の清掃員である小柄な醜男と知れば、なおさらだ。
そして、その逢瀬の場所が、勤務先であるこの歴史的な書物や収蔵物の収められた館の中とくれば…いやむしろ、藍子らしいかもしれないが。
残業と偽って深夜まで居残った彼女の小さな胸は、妖しくときめくばかりだ。
本来ならば、何者も立ち入ることのできない時間だ。
邑山藍子は明日から始まる“中世・近代拷問展”の看板が掲げられた企画展示室の扉を前に、生唾を飲み込む。
眼鏡が似合う美貌の彼女は、クール・ビューティと形容するのが相応しかろう。
ついに先だって、30歳を超えたばかりだが、男性経験は皆無だ。
藍子の名誉のために言っておくと、彼女はモテぬはずもない。
帝都女子短大時代は帝都大学のエリート学生たちから、引きも切らない誘いを断り続けていたものだ。
元より活字が命の文学少女だ。
異性との交際にさしたる関心はなかった。
高倍率の帝都司書試験を突破し、若くして館長補佐の立場を与えられた彼女の生き甲斐が仕事だっただけだ。
そんな彼女が男性の誘いを受けたと知れば、同僚や友人たちは目を丸くするであろう。
しかも、その相手が、義務教育しか受けていない、この館の清掃員である小柄な醜男と知れば、なおさらだ。
そして、その逢瀬の場所が、勤務先であるこの歴史的な書物や収蔵物の収められた館の中とくれば…いやむしろ、藍子らしいかもしれないが。
残業と偽って深夜まで居残った彼女の小さな胸は、妖しくときめくばかりだ。
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