上 下
108 / 109

初お仕事

しおりを挟む
天使達と別れてすぐ、僕らはヤラスティのすぐ近くの森へと足を進めていた。

薬草と言ったらやはり草木生える森である。リーシャさんに薬草の取れる場所を聞いたら、是非ここにと勧められたのだ。

リーシャさんの必死さに若干の不信感はあったものの、教えて貰っている身としては文句なんて言えず今に至る。それにこの森はストローグのお墨付きで、薬草の群生地があるのだそうだ。

もしそれを見つけられたら大儲け間違いなしらしい。


「今どこら辺かな…?」

「森の外側付近でございまする」

「見たところここらのめぼしい薬草はあらかた採取されてますね」

「もう少し先へ行ったらきっとありますうさ!」

「う、うん」


昼間だというのに、森の中は草木が光を遮るほど生い茂っているため薄暗い。それは奥へと進むにつれて増していき、とにかく怖い。

しかし影に潜むクロスケには居心地が良かったのか、嬉しそうに体を揺らしている。普段は人目があるため隠れてもらっているが、今は森の中で人もいないため、のびのび動いている。

しかし、クロスケは良くても僕には暗すぎる。


「なんか光るものとか持ってくるば良かった。こんなに暗いなんて思わなかったよ…」

「それでしたらわたくしにお任せ下さい」


そう言うと、ギンの頭上に拳ほどの光る球体が現れた。電球ほどに光るそれは、僕の行先を明るく照らしてくれた。魔法だ。


「ありがとう!ギン!」


先程まで感じていた怖さは、その光を見ただけでどこかへすっ飛んで行ってしまった。光は偉大である。

ギンの魔法のおかげか、森のそこそこ奥まで順調に進むことが出来た。もっと魔物とかなんかが襲ってくるかと身構えていたのが、なんだか拍子抜けだ。


「マオ様、薬草というのはこれでございまするか?」


ギンが小さなくちばしを突き出して指すそれは、まさに僕が探していた薬草、オルナ草。傷薬だけでなく回復薬を作る為に必ず必要となる薬草だ。

ちなみに傷薬は人の自然治癒を促進させ、治りを少し早めるモノ。回復薬は魔法的に作られたもので、大きな怪我も瞬時に治すモノ。

回復薬はゲームの時とほとんど効果は一緒だったのですんなり理解することが出来た。傷薬の方は日本にあったものとほとんど同じようなものだろう。


「ほんとにあったね、オルナ草の群生」

「他にもお金になりそうな薬草がありますうさ。採取していきますうさ?」

「いや、今はとりあえず依頼をこなしちゃおう。必要になったらまた来ればいいよ」

「了解ですうさ!…ってイチ!クロスケ!それはオルナ草じゃないうさ!」

「む、そうなのか?」

「?」

「全然違ううさ!どこに目つけてんだうさ!」

「イチ殿、クロスケ殿、オルナ草はこれでございまする」

「…同じだろう?」

「…??」

「違うつってんだろぼけ!」

「そんな怒らなくても良いでは無いか…」

「ウサマルセンパイコワイッス……」

「…ふふ」


みんなのコント…会話に笑いを零しながら僕もオルナ草を採取していく。鮮やかな緑がとても綺麗だ。それに加え長細い単純な形な為採取しやすい。

黙々と作業を続け結構な数を取ったが、群生地なだけあってまだまだ沢山のオルナ草が生えている。依頼では10本をひと束としてそれを10束だが、これだと直ぐに終わってくれそうだ。


「これだ、うさまる!今度こそオルナそっ……」

「色がまるっと違うだろうーーがーー!!!」

「ぶへっ!」




……頑張ろう!



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

王太子の子を孕まされてました

杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。 ※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。

巨根王宮騎士の妻となりまして

天災
恋愛
 巨根王宮騎士の妻となりまして

処理中です...