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薬草採取
しおりを挟む今日も今日とていい朝である。
天気もいいし体調もいいしご飯も美味しかったし、正しくお仕事日和だ。と、いうわけで。
「今日から金稼ぎだ!!」
異世界生活4日目。僕達は昨日訪れたギルドへ来ていた。目的はなんと言っても仕事をするためである。
現状、僕はまだ今後どうするだのこうするだのを全くと言っていいほど決めていない。ゼロじぃにイチ達配下を貰う前は、静かに慎ましく生きていこうと思っていたが国や配下を持つ今はそうもいかない。
しかしどんなに考えてもスマホの中にある国や配下達をどう扱えばいいのか考えつかないのである。
考えて解決策が見つからないのであれば、今はとりあえず目先の問題であるお金を稼ぎながらゆっくり考えていこうと思い至ったのだ。
「あ、ここだ」
ギルド内の壁際にあるボードに貼られている紙には、数々の依頼が書かれていた。どうやらこのボードにはC~Gランクの依頼が貼られているようだ。
それを剥がして受付まで持っていく。それ以上のランクの依頼は受付の人から直接貰えるっぽい。
まぁ僕はFランクの薬草採取依頼を受けるのだがね。
「ハク達は何受けるの?」
「?マオ様と同じものを受けます!」
「私もです」
心底不思議そうにハクとコクが首を傾げた。
「え?二人は僕と違って戦えるし、もっと上のランクの依頼を受けると思ったんだけど…それに僕が心配ならイチ達も連れてくから安全だと思うよ?」
「そ、それはそうですが!マオ様の護衛はいくらいても足りないです!」
「何より私達配下はマオ様を御守りしてこそ意味がございます」
自分も連れて行って欲しいと目で語ってくる二人に何となく断りずらい雰囲気になり戸惑っていると、イチが今まで聞いたことの無いほど冷たい声をを二人に投げかけた。
「“…確かにハクとコクの言いたいことは分かる…だが、今この街に我らより強者はいない。そして何より優先されるべき我らがマオ様の目的は、金銭の確保だ。それはお主らも分かっているだろ?”」
「“っ!…はい……”」
「“マオ様より、己の私欲を優先しての発言ならば我はお主らを一から教育しなおさねばならぬが…”」
「“それは断じてございません。全てはマオ様を思うあまり、深く考えぬままの発言でございました。申し訳ありません”」
「“ふん。ならばこれからはよく考えてから発言するのだな。二度はないぞ”」
「「“はっ”」」
「…」
どうやら話は纏まったらしい。僕は一言を話さずにイチが全てやってくれたが、話の内容はなんというか…先輩後輩というより上司と部下みたいだ。
僕が怒られていた訳でもないのに、少し心拍数が上がった。イチさん怖い。
「“わたくし達が全力でマオ様を御守りしまする。お二人にはお二人のやるべき事をなさってください”」
「“そっちの仕事もマオ様の護衛と同じくらい大切な仕事うさ。甘ったれたこと言ってんじゃねぇ…うさ”」
「“はい…私達が浅はかでした……”」
「“申し訳ございません、マオ様”」
「“気にしてないから大丈夫。僕も依頼頑張るから、二人も無理せず頑張れ!”」
もう何度目かの涙目を眺めつつ、僕は二人を受付まで送り届けた。ここで二人とはおしばらくお別れだ。
「“手ぇ抜いてマオ様の顔に泥を塗るなようさ”」
「“はい!完璧に依頼をこなしてみせます!”」
「“うむ、うむ。頑張るのだぞ”」
うさまるとイチがハクとコクにエールを送ると、その言葉で気合を入れた天使達二人は、こちらが少し不安になるくらいやる気を出していた。
あの二人に任せて大丈夫だろうか…。
いや、他人の心配をしている場合ではない。僕も僕で頑張らなければならないのだ。二人のことは信用するとして、自分の事に集中しなければ。
依頼の紙を受付の人に渡し、ついに異世界初、僕は仕事を受けた。
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