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マオはブラックを感じる.64

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「ひやぁ~。すっごいなぁ」

街の中へ一歩入れば、見渡す限りの人人人。飛び交う呼び込みの声に、子供たちのはしゃぎ声。どこまでも賑やかで明るい街の風景があった。王都だけあって華やかだ。

それに道は綺麗に整えられていてレンガ造りの家もある。想像していたよりも文化は進んでいるらしい。

今の印象としては良いのではないだろうか?とてもあの王様が治めているとは思えないほど街の人々には笑顔が溢れていた。

『“マオ様!お気をつけください!いつ誰が襲ってくるかわかりませんゆえ!”』 

『“うさまる達が絶対助けるうさけどな”』

『“!!”』

『“わたくしもこの身をもって、御方おんかたをお守りする所存しょぞんでございまする”』

か、過保護だなぁ。嬉しいけどね?

「あ、そういえばイチ達にアクセサリーかなんか付けないと!」

イチ達の話をさえぎった僕は、リックさんから言われたことを思い出す。街のど真ん中じゃ邪魔なので、道の隅の方に身を置く。

「うーん、何がいいだろう…出来れば皆お揃いで…」

アイテムボックスを漁るが、アクセサリーが思いのほか沢山あって迷ってしまう。

『“マオ様!今は我らのことはいいのです!まずは宿に向かうのがいいかと。アクセサリーなどはその時に”』

『“いや!でもイチ達が襲われるかもしれないんだから、はやい方がいいよ!イチは首輪なんてどう?”』

『“我は犬ではありませぬ!”』

イチ達は自分のことよりも僕のことを優先しようとするが、僕は納得しない。危険があると知っているのに対策しないで手遅れになるのはごめんだ。しかし、ここまで言うからには何か理由があるのだろうか?

『“もしかして、この街にはイチ達が敵わない相手がいるの?”』

『“いえ、見た限りではわたくし達以上の戦闘力を持つ者は見当たらないでございまする”』

『“へぇ、見ただけで強さとかわかるんだ。凄いねギン。スキル?”』

『“いいえ。これは今までの経験と、あとは勘でございまする。イチ殿やうさまる殿もこのくらいのことは出来るでございましょう。クロスケ殿は苦手なようですが”』

『“我は見ただけではあまり…”』

『“うさまるはやろうと思えばやれるうさ!”』

『“…”』

『“ちなみにコツとかってあるの?”』

僕も今後のため、相手の強さとかわかりたいので参考までに聞く。

『“鼻で嗅ぎます!”』

犬じゃん。

『“耳で聞くうさ!”』

うさぎだね。

『“やからの強さは嗅げばだいたいわかることが出来ます!”』

やっぱ犬じゃん。

『“うさまるは相手の筋肉が動くときの音や息遣い、歩く音なんかで強さを判断するうさ!”』

え、なにそのうさぎらしからぬ能力。

『“ふむ…そうですね。我らの敵となりうる者はいないと思います。すみません…我らは少し気分が高揚していたようです”』

どうやら皆初めての街に少し敏感になっていたようだ。確かに警戒するのは大切だが、やりすぎもよくない。そんな四六時中神経を張り詰めても、疲れるだけである。だからって油断するのは駄目だけどね。

『“たしかに、雑魚しかいないうさ”』

え、ちょっ、うさまるさん?雑魚って。言い方言い方。

『“じゃあ大丈夫だね!念の為うさまるは結界、皆は周囲の警戒をお願い”』

『“了解うさ!”』

『“!!”』

『“わかりました!”』

『“はいでございまする”』

と、皆を納得させた後。

時間はかかったけど、イチ達のアクセサリーが無事決まりました!

イチ=黒い鎖でできた首輪。
うさまる=左耳に真っ赤なピアス。
ギン=首に金のリボン。
クロスケ=銀のネックレス。

出来ればお揃いにしたかったのだけど、そうするとどうしても似合わない子が出てきてしまうので断念。

なので一人一人にベストなアクセサリーを選ぶことにした。クロスケ表に出ないし、必要なくない?とか思わない。クロスケにだけあげないという選択はないのである。平等。それが平和。

皆が喜んでくれている中、何故かイチがじーっと僕のことを見つめてくる。可愛い尻尾は揺れているが、顔が少し不機嫌ぽかった。

アクセサリーを貰ったのは嬉しいが、首輪は犬っぽくて嫌だったのだろうか。しかし、似合ってるよ!と言ったら直ぐに機嫌が良くなった。今は小さな尻尾を思い切りフリフリしてる。よかったよかった。

そんなこんなでアクセサリーを決めた僕達は、リックさんから紹介された宿屋へと向かう。実はリックさんに事前に色々とこの街の情報を聞いていたのだ。質問すればこころよく教えてくれた。今度お礼でもしよう。

アクセサリー選びに少々時間がかかってしまったので僕達は気持ち早めにその宿屋へと続く道のりを歩いて行く。身分証は明日に持ち越しにしよう。

リックさんの話では身分証などを手に入れるのに一番手っ取り早いのが冒険者になるということらしい。冒険者ギルドで冒険者になる際、ギルドカードという物が手渡され、それが身分証の役割を果たしてくれるのだとか。

丁度僕にはイチ達という戦力がいるので、魔物使いとして冒険者活動をするのにはピッタリではなかろうか?…一から十まで配下頼りな僕を許しておくれ、皆。

それと冒険者ギルドは二十四時間毎日営業中なのだとか。いつ行っても空いているため、そこまで急ぐ必要も無いという。


そ、その、冒険者ギルド。ブ、ブラックとかじゃないよね?


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