54 / 109
マオとイチの会話.54
しおりを挟むいま現在。
高速に動く尻尾をイチに止めさせた僕はというと、イチのもっふもふの…いやもぉっふぅぅん、な毛に埋もれています。
これはとんでもない毛並み、けしからん毛であります。触り心地もさる事ながら、さらには抜け毛もないという。とんでもない破壊力を持つ尻尾さえ無ければ、家庭に1匹は欲しい子です。
イチは撫でられるのが嬉しいのか、尻尾が揺れている。先ほどのものとは逆に、今は控えめに揺れているのでさっきまでの破壊力はない。
同じ悲劇をまた起こさないように注意したのだが、めちゃくちゃ嬉しそうに従ってくれた。イチはなんだか命令されることが嬉しいようだ。
今も僕の“撫でさせてほしい”という命令…お願い?を叶えてくれている。お腹を丸出しにしてでろんでろんになっている姿はなんともだらしなく、さっきまでの堂々たる姿勢は跡形もない。可愛いけどね。今の姿は誰がどう見てもわんこである。
そんなこんなでもふもふを満足した僕に、イチはタイミング良く話しかけてきた。さっきまでの締りのない顔でなく、キリッと引き締まったかっこよい顔つきである。
「マオ様、こうしてマオ様とお会いできたのはゼロノークと名乗るご老人のお陰でした。マオ様のおじい様だと聞いたのですが、本当なのですか?」
「え?ゼロじぃと会ったの?」
「はい!我らマオ様の配下たちに自我、肉体を与えてくれた方です。流石マオ様のおじい様ですね!」
おう。褒め言葉は嬉しいけれど尻尾の速度は落とそうか。
それにしてもそうか、ゼロじぃと会ったのか。そういえば、ゲームの中にいたイチは、この状況をどう感じているのだろう…それにまだスマホの中にいる他の配下たちもそうだ。ゼロじぃに会ったってことは全部知ってるのかな?
それに若干だけど、イチの性格がゲームの頃と違っている気がする。ゲームの時はクールな性格かと思ったけど、今はどっちかっていうとヤンチャそう。僕はどちらにしてもイチが好きだけどね。
「イチは、今まで僕と会う前はどんな感じだったの?」
「はい。意識や自我などはなく、規則道理にしか動くことしかできない状態でした。今はマオ様のおじい様に自我を与えられ、己を知り、他者を知り、考えるということを知りました。そして、マオ様がどれほど素晴らしいお方なのかを知りました!」
「そ、そっか。じゃ、じゃあやっぱり今までの、ゲームの中での記憶もちゃんと持ってるんだ?」
「はい!もちろんです!マオ様との思い出は一欠片も忘れてなどおりません!」
「うん、ありがとう」
ゼロじぃにはほんと、感謝です。
0
お気に入りに追加
198
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる