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マオとイチの会話.54

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いま現在。

高速に動く尻尾をイチに止めさせた僕はというと、イチのもっふもふの…いやもぉっふぅぅん、な毛に埋もれています。

これはとんでもない毛並み、けしからん毛であります。触り心地もさる事ながら、さらには抜け毛もないという。とんでもない破壊力を持つ尻尾さえ無ければ、家庭に1匹は欲しい子です。

イチは撫でられるのが嬉しいのか、尻尾が揺れている。先ほどのものとは逆に、今は控えめに揺れているのでさっきまでの破壊力はない。

同じ悲劇をまた起こさないように注意したのだが、めちゃくちゃ嬉しそうに従ってくれた。イチはなんだか命令されることが嬉しいようだ。

今も僕の“撫でさせてほしい”という命令…お願い?を叶えてくれている。お腹を丸出しにしてでろんでろんになっている姿はなんともだらしなく、さっきまでの堂々たる姿勢は跡形もない。可愛いけどね。今の姿は誰がどう見てもわんこである。

そんなこんなでもふもふを満足した僕に、イチはタイミング良く話しかけてきた。さっきまでの締りのない顔でなく、キリッと引き締まったかっこよい顔つきである。

「マオ様、こうしてマオ様とお会いできたのはゼロノークと名乗るご老人のお陰でした。マオ様のおじい様だと聞いたのですが、本当なのですか?」

「え?ゼロじぃと会ったの?」

「はい!我らマオ様の配下たちに自我、肉体を与えてくれた方です。流石マオ様のおじい様ですね!」

おう。褒め言葉は嬉しいけれど尻尾の速度は落とそうか。

それにしてもそうか、ゼロじぃと会ったのか。そういえば、ゲームの中にいたイチは、この状況をどう感じているのだろう…それにまだスマホの中にいる他の配下たちもそうだ。ゼロじぃに会ったってことは全部知ってるのかな?

それに若干だけど、イチの性格がゲームの頃と違っている気がする。ゲームの時はクールな性格かと思ったけど、今はどっちかっていうとヤンチャそう。僕はどちらにしてもイチが好きだけどね。

「イチは、今まで僕と会う前はどんな感じだったの?」

「はい。意識や自我などはなく、規則道理にしか動くことしかできない状態でした。今はマオ様のおじい様に自我を与えられ、己を知り、他者を知り、考えるということを知りました。そして、マオ様がどれほど素晴らしいお方なのかを知りました!」

「そ、そっか。じゃ、じゃあやっぱり今までの、ゲームの中での記憶もちゃんと持ってるんだ?」

「はい!もちろんです!マオ様との思い出は一欠片も忘れてなどおりません!」

「うん、ありがとう」

ゼロじぃにはほんと、感謝です。

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