魔王ではなくマオ様です！

マオがいなくなった後の、田中くんのお話.39

“フリーデイズ”

日本でその名を知らない人はいないほど、今10代、20代、男女問わず爆発的人気のゲームアプリである。

それは日本のみならず、世界中で広まっていた。

キャラクターや背景の色鮮やかさもさることながら、モンスター、武器などのこと細かいデザイン。絵。設定。
しかし、一番の人気理由となったのはその自由さ。多種多様なプレイ方法があり、飽きることのないそれは、現代では最先端のゲームとなっている。

時には乙女ゲーム、時にはギャルゲーム、またある時はアクションゲーム、他にも育成ゲームなど、必ず自分の好きなプレイ方法を見つけ出すことができる。

更には手の込んだ細かい設定のストーリー。王道にも関わらず、その物語はどこか引き込まれるところがある。
何百、何千といるモンスターやプレイヤー、NPCなどの声にはきちんと声優が声を吹き込んでいる。
ここから有名になった新人声優は何人もいるだろう。

このゲームはできたての頃の評価は今と違って酷かった。クソゲーと言われるほど酷かった。
それが、約2年前に大型アップデートを機に変わった。

“フリーデイズ～第二の人生～”

ほとんどの者達は次も同じようにクソだろうと手を出すことはなく、初めの方は全く相手にされなかった。

しかし、それもつかの間。

試しにインストールした者達、初期からインストールしていた者達からは絶賛の声。
人から人へと、このゲームの素晴らしさは伝わった。

それからは一気に火がつき、フリーデイズの時代が訪れた。





まさか、このゲームがここまで人気になるとは…。

おっと、いきなりすまない。自己紹介が遅れてしまった。
俺は田中。それ以上でも以下でもない。田中だ。

こんな平凡な人生を送っている俺でも、非日常というものは訪れるのだと今、実感している。
ある親友達に勧められたクソゲーを、無理やりインストールされたのは高一の時。
それからはずっとそのゲームをやらされていた。

イライラしながらだがプレイしていたため、そこでは俺もクソゲーの最高位プレイヤーとなっていた。
しかしそれはプレイヤーが少ないので必然的だ。なんだか虚しい。

そんなクソゲー、もといフリーデイズは2年前に大型アップデートされてから、前のなりは見る影もないほどの大人気アプリゲームとなっていた。
大型アップデートの通知が来たのは、その友人達がいなくなった後のことだった。
このゲームがアップデートされたと聞いたら、うるさいくらいに喜ぶだろう。
あの二人はフリーデイズの大ファンだからな。

大型アップデートされる前からプレイしていた者達には多くのプレゼントが配られた。
更にはアップデート前にプレイヤーが所持している武器やアイテム、モンスターはそのままに、数多あったアイテムたちは入手可能地から消えていった。
今では入手不可能なアイテムってことだな。

俺も漏れずにそうだ。
あのフリーデイズ大好き人間二人には負けるが、なかなかのアイテムを所持していた。
それからの俺の肩書きは、大人気アプリ、フリーデイズのトッププレイヤーとしてひたすら走り続けているちょっとした有名人。

普通では有り得無かっただろう。
ほんと、あの２人はどこまでも規格外だよな。
一体誰が前までクソゲーだったこのゲームが、ここまで凄いものになるとわかっていただろうか。もうクソゲーなんて言えない。

藤堂、中西、お前達が愛してやまないゲームは、今では知らないやつなんていないほどに、世界中に広まったぞ。


「お前達がいなくなった後に人気が出るなんて…ほんと、皮肉なものだよな…」



こうして今日も、俺はフリーデイズをプレイする