勇者一行の料理人

こせい。

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料理人ライア

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朝日が部屋の窓から溢れる。
カーテンから溢れる太陽の光が目覚まし代わりとなり、僕の顔を照らす。

「おはよう……」

僕はライア。 家名は持っていない。
僕以外誰もいない家でポツリと『おはよう』を言ってしまうほど寂しい人間である。
ここクルルートで料理店を営んでいる一般的な……もっと詳しくいえば庶民的な村人だ。

「そういえば、今日は昨日の夜から仕込んでた豚の煮込みが仕上がってる頃かな?」

部屋を出て下の階に降り、キッチンに向かう。キッチンのコンロには大きな鍋が弱火でグツグツと煮込んである。
この豚の煮込み、仕入れから下準備、色々と苦労して作った自信作である。
自分でお肉も狩りをして取ってきた。そのため肉も臭くなくジューシーなお肉になっている。
味付けや味を整えるための香草ももちろん自ら取ってきた。
香草なども上質なものを厳選し、雑味が出ないよう工夫している。

「うん、やっぱり自分で1から作った料理は上手いな!」

よし、メイン料理はできた。
スープも豚の骨をベースにしたスープでこちらも美味しくできている! ……はずだ…………。

んじゃ、やりますか……!
キッチン部屋の扉を開け、少し歩いた扉にかかってある札を裏返した。

【至福料理亭 くるるーと食堂開店】

「今日も頑張りましょう!」

また誰もいない中、僕は声を出したのだった。






────────






クルルート村、そこでの村長と息子との会話……。

「そういや聞いたか? 森にオークが出たらしい……」
「まさか!? どこの情報だ?」

息子の言葉に驚いて大きな声を出してしまう。

「なんでも村の衛兵が森の見回りをしていたら大量のオークがうじゃうじゃいたらしい」
「なんだって!? すぐに近くの村から冒険者を集めなければ!」
「ランク帯はどの辺だと考える?」
「うじゃうじゃがどのぐらいの量かわからない今、正確なランク帯もわからないが……」

オーク1匹で……Cランク帯だと考えると──

「そうだな、A……最悪S帯も考えられる……」
「まさか上位種がいる……いや、オークの数が数え切れないほどいるなら必ずいるだろう。最悪キングや変異種もいるかもしれない……」

オークキングは数々の冒険者を殺し、変異種に至っては多くの村、そして小国が滅んだこともある。

「最近噂の勇者様が来てくれないとここら周辺の村は全滅かもしれないな……」
「そんなことは考えないようにしよう。 っとまぁ、話はこれぐらいにしてギルドに報告しに行こうか」
「そうだな……あ、ギルドの報告し終わったらライアのところに行こう!」
「それはいい。 もしかしたらオークたちが攻めてきて、今日が最後の日になるかも知れんからな。 最後に美味しいものを食べるのも悪くないな」

二人は足取り軽くギルドに足を運んだ。




────────




「いらっしゃいませぇ~」

元気よく挨拶をする。 今回はちゃんと一人言ではなく、目の前にいるお客さんに言っている。

「よぉ、ライア元気そうだな」
「村長も息子と一緒に昼間っから食堂で食事ですか?」
「あぁ、たまには贅沢も必要だと思ってな!」
「奥さんにまた叱られますよ。 っと、それよりご注文をどうぞ」
「おぉ、そうだな。 それじゃあ……オススメとかあるのか?」
「そうですね……今日のおすすめは豚の角煮ですね。 昨日森に行った時に新鮮な豚が手に入ったので、森の香草などを使ってぷるぷる美味しく仕上げました」

昨日は野生の豚が出てきてくれたので在庫はホクホクだ。

「なんだって!? 森に入った!?」
「えぇ、どうしたんですか?」
「いや、えっとな、今森に危険な魔物が出たらしくてな……」
「そ、そうなんですか!? よ、よかった……何ともなくて……」

もしも料理人の僕が魔物に会ったらそれこそ料理されて喰われていたのは僕の方だったかもしれない。

「まぁ、それよりシェフ? それじゃあご自慢の角煮を頂こうかな」
「楽しみですね」

村長親子が話を切り替えて料理に戻る。
そういえばさっきから角煮の匂いがこの席まで漂ってくる。

「それじゃあ、準備しますので少々お待ち下さい」
「なるべく早くね」

こうは言っているが実際いつも気長に待ってくれる。優しく、賢いこの村の頼れる村長である。

「お待たせしました。こちら豚の角煮定食になります」
「ほほぉ! 調理場から匂いはしていたが近くで見るとこれは凄い! まず匂いがいいな」
「これはハーブですか?」

村長の息子、シューリ。 通称シューが質問してきた。
そういえばシューは自炊していたはずだ……。
早く可愛いお嫁さん貰って作ってもらえるよう日々婚活に生を出してるらしいが……なかなか難しいらしい……。
っと、それより……

「ハーブというより、柑橘系の爽やかな風味が出るのを意識して調理しました。ラモンの葉っぱなどを燃やし、薫製したりもしてます」
「なるほど、だからこんなにいい匂いがするのか……」

二人は十分に肉の匂いを嗅いだ後、お肉が冷めないうちに口いっぱいに頬張る。

「「う、う…………」」

な、なんだ!? 二人がいきなり小刻みに震えだした。 もしかして香草と間違って毒草でも入れてしまったのか!?

「え、えっと……すいませんでした!」

僕はとりあえず謝ることにした……。

「「う、う…………上手い!」」

「…………………………っへ?」

あれ? どうして二人とも涙を流しているのだろうか?

「……んが!…………」
「父さ、村長!食い意地が汚……んぐ……んっ……」

シューは前にやめたお父さん呼びに戻り、注意しながら自分にもブーメランになっていることに気づいていない!?

「ん、ん゛ん゛んん゛……」
「え、えっと……ご馳走様でした……」
「お粗末様でした」

二人の食べているところを見ると僕もお腹が空いてくる。

「それじゃあ、今日のお代はいくらだ?」
「えっとざっと相場は……こんなもんですね」
「3000チルトか……まぁ普通の昼飯の倍はするが……この旨さだ……もっと払ってもいいぐらいだ」

そう言いながら村長と息子は笑いながら帰っていった。

「僕もご飯食べるか……」

ポツンと一人になった僕は一人寂しく昼を過ごすのであった。
僕もシューのことを言えないな……。




────────




「そういえば村長、オーク討伐に勇者が来るらしい」
「勇者だって!?」
「あぁ、なんでこんな辺境の村に来てくれるのかは分からないが……でもこれで安心して寝れるな」
「そうだな……神は私たちを見捨てていなかったようだ──」





「ふぁ~~」

その頃、何も知らない僕は厨房で明日の料理を欠伸をしながら作っていた。
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