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年齢の差は23歳
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「平野さんのおうちに、一緒に帰るぅ」
鬼瓦と評される平野の腕にぶら下がって駄々を捏ねる小娘は、すらりと伸びた脚を惜しげもなく晒したショートパンツ姿だ。
「うるせえよ、さっさと電車に乗れ」
「なぁんでぇ?平野さんのおうちに行きたいーっ」
誰だ、こいつに酒を飲ませやがったヤツは。そして駅まででいいからと、俺に押し付けたのは誰だ。うんざりした顔でホームで並んで電車を待つ。ああ、めんどくせえ。
「平野さん、つめたい。あたしのことキライなんだ……」
「生憎とロリコンじゃない。ガキは帰って寝ろ」
「ロリータじゃないもん。高校卒業して就職したんだもん」
「まだ選挙権も無い小娘が、知った風な口利くな」
噛み潰した苦虫の味が口いっぱいに広がったみたいに、平野は吐き出した。入社して三ヶ月ほどの小娘が平野に纏わりついているのは、社員全員が知っている。いかつい風貌の上に口の荒い平野が一度目の結婚を破綻させてから、ずいぶん長いこと経っているから無責任に、若い母ちゃんを貰うチャンスだと煽る声も聞こえる。
冗談じゃない、ガキのお守りなんざ真っ平だ。
それにしても、と小娘―三沢茜―の脚を見下ろす。無防備に脚を出して夜道をひとりで歩くなんて、襲ってくれと言ってるようなもんだ。今時の若い女はなんて言葉が、口をついて出そうになる。去年不惑を越えた時には感慨は無かったが、目の前に若さを見せつけられると、自分の老いが迫ってくるのを感じる。
しがみついている茜を電車に無理やり乗せ、反対方向のホームに向かう。車を会社に置いてきたから、明日は電車で出社しなくてはならない。電車の中で煙草は吸えないから、口の中にガムを放り込む。
ヘルメットを抱えて現場から戻ると、茜が笑顔で「おかえりなさーい」と迎えた。
「平野さん、汗だらけ。着替えないと風邪ひくよ」
世話女房よろしく冷えた麦茶と冷たいおしぼりがデスクの上に揃えられ、先に戻った仲間が苦笑する。
「三沢ちゃーん、俺の麦茶はー?」
「冷蔵庫に入ってまーす。どうぞー」
あからさまにつけられる区別に、誰も何も言わない。もともとがそんな社風だし、茜のキャラクターは明るくオープンで、憎めない。
「平野さん、いいなあ。あんな可愛い子に、俺も言い寄られたいっすよ」
まだ二十代の同僚が、心底羨ましそうに言う。
「おまえが嫁に貰や良いだろうが。娘みたいな歳の女、どうしろっていうんだ」
「あっちがそうしたいって言ってんだから、良いじゃないっすか。ちょっと犯罪チックだけど」
犯罪……そうだな。少なくとも、エロ親父が何も知らない生娘を誑かしたように見えることは、間違いない。大体、目の前を動き回る生脚に、食指をそそられないのだ。若い娘特有の肌のつやや、まっすぐで膝頭の小さい脚は、未成熟の証拠のように見える。
「平野さん。安全靴脱いで、乾かしておかないと」
「ああ、足洗ってくらぁ」
世話されることにはもう、文句は言わないことにした。言っても茜は翌日同じように世話をやきたがるし、跳ねつけるよりも受け入れてしまったほうが、遥かに楽なのだ。
「平野さぁん、帰りましょー」
ぎゅっと腕にしがみつく茜を引き剥がし、苦笑する。
「若いヤツに言ってやれ。三沢さんならって思う男は、いっぱいいるだろ」
「平野さんがいいんだもん。本気なんだから」
本気の恋愛が、そんなに軽々と口に出せるわけが無い。こんな風にオヤジをからかうのは、おそらく茜にとって遊びのうちなのだ。
「なんで相手にしてくれないのかなあ。私、ピチピチなのに。女に興味ないの?」
会社裏の駐車場までくっついて来る茜の言葉に、思わず笑う。
「女だぁ? そんなセリフは、男の三人や四人咥えこんでから言えや。はい、ガキはおとなしく帰れ」
運転席のドアを開けて自分だけ乗り込むと、エンジンをかける。窓を開けると、膨れっ面の茜が覗き込んだ。
「いいもんっ! 負けないもん! 平野さんのこと、好きなんだもん」
「言ってろ、ばか」
サイドブレーキを外して、車を発進させる。バックミラーに、歩き出した茜がうつった。
赤信号で煙草に火をつけて、肺いっぱいに吸い込む。最近の禁煙だか嫌煙だかの風潮など、クソ喰らえだ。平野が携わる工事現場でも、最近はスタンド式の灰皿を備え付けず、個々に持っている携帯灰皿推奨だ。好きなものを吸って身体を悪くする自由もないのか、と思う。こんなことを思うのも、考えに柔軟性のなくなった証拠なのか。
茜が何を考えて自分に懐いているのか、おそらく大人の男らしく誤解しているのだと思う。実際の自分は妻にも愛想をつかされた、草臥れかけたつまらない男だというのに。立て続けに煙草をふかし、弁当屋の店先に車を止めて、持ち帰り弁当を二種類買う。外食することも億劫になると、テレビを見ながらそれを食べてビールを飲むことが、平野の夜のすべてだ。風呂に入ることと灰皿の灰を始末することは、自分に義務付けている。それさえクリアすれば、後はどうにかなるものだと学んだのは、妻が出て行ってから一年も経った頃だったろうか。ひとりの生活は、慣れてしまえば案外と快適で、そして侘しい。
窓をかりかりと引っ掻く音がして、少し隙間をあけると、猫が入ってきた。四月のある日、会社の近所で怪我している猫を保護して連れて帰ったのだ。傷が癒えるまで部屋に置くつもりが、なし崩しに一緒に暮らしている。テレビ以外の話し相手は今、家の中ではこいつだけだ。
面白くない現場で、荒れていたのは確かだ。偉そうに指図した元請の若造に腹を立てて帰社し、荒れたまま同僚と飲みに出た。その時に茜がついてきたのか、後から現れたのかは覚えていない。それくらい頭に血が昇っていた。平野さん少し飲みすぎだよ、そう言う同僚の腕を振り払ったことまでは覚えている。気がついたら会社の駐車場まで戻り、植え込みの影で吐いていた。
「平野さん、お水」
ペットボトルが差し出され、それを引っ掴んで飲んでから見上げると、茜が横にいた。
「大丈夫? 歩ける?」
見上げた先にあるのは、いつも通りすらりと伸びた脚の上部、夜目に白い太腿――
ああ、女の脚になんて、何年も触れていなかった。綺麗だなと見蕩れてから、それが茜のものだと思い直す。もう一度えずくと、茜は隣にしゃがんで大沢の背中をさすった。
「今、何時だ?」
「まだ十時半。電車で帰る? タクシー呼ぼうか?」
覗き込んだ顔は茜のものなのに、酔いのフィルタが自分ながらヤバイと思う。
「仮眠室で、寝てく」
「そう言い張るから、着いてきたんじゃないの。セキュリティシステム作動で、警備会社の人が飛んで来るよって言ったのに」
昨年新たに導入したセキュリティシステムは、最後の一人が施錠報告のボタンを押した後に誰かが社内に入ると、警備会社が点検した挙句、社内の防犯ビデオが社長宅に転送されるのだ。
「ああ、じゃあ車で寝てく。おまえ、帰れ」
ペットボトルの水でうがいをして吐き出すと、平野はよろけながら立ち上がった。ポケットから車のキーを取り出して、開錠しようとしたとき、細い指がそれを攫った。
「ダメだよ。醒めたと思っても、お酒は残るんだよ。そんなんで運転してたら、危ないじゃない」
「うるせえな、放っとけ。おまえこそ、こんな時間に暗いところで男と一緒にいるんじゃねえや。脚まる出しで、誘ってるつもりか」
「誘われてくれないくせに」
酔いに任せての、売り言葉と買い言葉だ。
「誘われてやろうか」
一歩踏み出すと、怯えた顔の茜がじりっと後ずさった。逃げられると追いたくなるのは、人間の常だ。もう一歩踏み出すと、茜はあっけなく平野の車のボンネットに追い詰められる。
「なあ、誘いたいんだろう?意味わかってんのか」
両手をつき、茜の顔を見下ろして、笑ってみせる。
「平野、さん?」
酔っているな、制御が利かないという自覚は、ある。
「一緒に帰るの泊めてのって、やることは変わんねえだろうが。ここでいいか」
「へ……ひら……」
ボンネットの上に押し倒して身体を割り込ませると、茜の足はじたばたと宙を蹴る。慄いて食いしばった歯を強引にこじ開け、舌をねじ込んで胸のふくらみを掴んだ。もちろん、本気なんかじゃない。少し箍が外れただけだ。
「ん……やあっ! ……やだあっ! ……くっ……」
久しぶりに触れる女の身体に欲望が膨れ上がったのを感じ、その後に涙を流している茜を見た。ああ、まずいと思う。何も知らない小娘に、していいことじゃない。
「帰れよ」
しゃくりあげている茜を、ボンネットから降ろす。
「気安く言えるもんじゃないって、わかっただろう。帰り道で知らない男に引っ張り込まれる前に、帰れ」
ぺたんと座り込んだ茜の腕を引っ張って立ち上がらせ、車のキーを取り戻した。あの状態で握ったままでいたのは、ラッキーだったと思う。
「俺はここで寝てく。明るい道選んで帰れよ」
「……酔いが醒めても、しばらく運転しないって、約束して」
大した根性だ。強姦されそうになったというのに、まだ平野と口を利く気力が残っているのか。
「うるせぇ女だな。おまえこそ、暗がりに引っ張り込まれんじゃねえぞ」
「逃げ足は早いの、私」
逃げることなんてできなかった癖に、よく言うものだ。
「ここでぐずぐずしてると、俺がやっちまうぞ」
「ほ……本望だもんっ」
「嘘吐け。ぐしゃぐしゃな顔して、何言ってやがる」
苦笑して車を開け、シートを倒す。窓を少し開けて、もう一度茜に声をかける。
「手荒にして、悪かったよ。酔っ払いに迂闊に近付くとこうなるって、教訓にでもしといてくれ。おやすみ」
返事を聞かずに目を閉じたから、茜がどんな風に帰ったのかは知らない。
目が覚めると身体はぎしぎし言ったが、頭のほうはすっきりしていた。まだ早朝三時程度だ。一度家に帰ってシャワーを浴びても、仮眠する時間はある。落ちていたペットボトルを拾って生ぬるい水を飲み、自分の身体に運転できる常態か、冷静に問い合わせる。
――酔いが醒めても、しばらく運転しないって約束して。
蘇った声に毒づいてから、数時間前の出来事を思い出した。夜目に白く映えた太腿と、身体の下で暴れる感触が、自分の中で何かを呼び覚ます。何か、ひどくバランスの悪い精神状態だ。
いかんいかん。社内の、しかも娘ほどの年齢の女に、何を考えているのだ。むくむくと頭をもたげはじめた己自身を宥め、エンジンをかける。しばらく女に触っていなかったとはいえ、小娘相手じゃ情けない。
帰宅すると、猫が擦り寄ってきて甘えはじめた。保護した時は怪我をしているクセに暴れまくって、獣医でネットに入れられて治療したのに、今では生まれた時から飼い猫のような顔をしている。メスならば増える心配はあるが、オスなので去勢手術もせずに放っておいてある。獣医には飼うのなら義務だと言われたが、平野はどうも気が進まない。
「おまえも、女とやりたいよな。俺の遺伝子なんか今更残らないけどよ、おまえは残したいだろ?」
人間の勝手な言い分で、増えた野良猫が厳しい生活を強いられるのは、見て見ぬふりだ。子供を持たない平野の遺伝子はここで途切れるが、飼い猫がどこかで生を繋いでいくことに、やけにセンチメンタルな感慨がある。
「子供産ませたら俺にも見せろよ、チビすけ」
「みゃう」
猫は理解しているんだかいないんだか、正座して答えた。妻が出て行ってから、何年経ったのだろう。子供でもできていれば、ひとりになることはなかったのかも知れない。いや、子供ごと出て行ったか。自分の生活を誰かと、常に比較しているような女だったなと思うが、妻が比較している生活より劣っていたのは確かで、それを求められても応えられなかったのは、平野自身だ。
「猫はいいな。甲斐性求めらんないから」
「みゃ」
正座を解いて丸まった猫は、面倒臭そうに片目だけ開けて見せた。
「平野さん、おかえりー」
懲りない茜が、現場から戻った平野の世話を焼く。
「おしぼり、凍らせといた。暑かったよね、今日」
「おう、ありがとな」
忘れたような顔をしたって、お互いに覚えているのだ。平野が非道いことをして、茜は泣いたのだから。それなのに知らん顔をして、茜は平野の世話を焼く。
こんな風に表面を取り繕うことができる程度には、茜は大人なのだ。有難いのか申し訳ないのか平野には判断ができなくて、その分茜への当たりは強気でなくなる。幾分幼さの残る顔が、嬉しそうに麦茶を差し出した。
「水分もちゃんと補給してね。平野さんが倒れても、私が看病するけど」
「へえ? ありがとさん。うかうか病気にもなれねえな」
「どういう意味よ!」
「余計悪くなりそうな気がするってもんだ。粥くらい炊けるのか」
「バカにしないで!」
からかったつもりで、脳裏に描いたのは自分のアパートのキッチンに立つ、危ない包丁捌きの茜だ。これは何かおかしいぞ。ガキなんて相手する気はないのに。うろたえた平野は、慌てて麦茶を飲み干した。
「なんで会社まで来るのよ! あんたとはもう、二度と会いたくないって言ったでしょ!」
駐車場の奥で、茜らしき声がした。
「俺は別れてもいいなんて、一言も言ってない」
「つきあってもいないじゃないの! 帰って、二度と顔見せないで……放してっ!」
ただ事ではない気配に、車を開錠しようとした平野の手が止まった。
「女を殴る男なんて、サイテー! ……きゃあっ!」
ただの痴話喧嘩にしては、ずいぶん物騒だ。陰になっている場所に頭をめぐらすと、頭を抱えた茜に拳を振り上げた男が見えた。
理由はどうあれ、自分の知っている女の子が殴られる場面なんて、平野は見過ごせない。相手はひょろひょろした兄ちゃんだ、現場仕事を生業としている平野の腕力で、負けるはずがない。
「ずいぶん物騒なことしてんな、兄ちゃん」
「誰だよ、おっさん」
飛びついてきた茜を背中で庇って、男と対峙した。
「躾の悪いガキは、嫌いだ。相手に名前を聞くときは、自分から名乗るもんだよ」
「うるせえよっ! 他人のことに口出しすんなよ!」
背中にしがみついている茜が、小さく震えている。先程の威勢の良いやりとりは、虚勢だったか。
「三沢、こいつ知り合い?」
背中に向かって訊く。
「知り合いじゃない。勝手につきまとって、好きな人がいるって言ったら殴られたの」
「おまえが俺の言うこと、聞かないからじゃないかよ!」
背中に回りそうな兄ちゃんの動きに合わせて、平野は向きを変えた。
「ずいぶん勝手な理屈だなぁ。悪いけど、これは俺の女だ」
咄嗟にそう出たのは、相手が殴りかかって来たりしないという、核心の下だ。男同士であるなら、身体つきで相手の腕力は予測ができる。力の強い男が保護しているのだと思わせれば、手を引く可能性がある。
「ふざけんなよ、おっさん。嘘吐くんじゃねえよ」
「嘘かどうか、確認してみるか?」
ずいっと一歩出ると、男は一歩後ずさった。
「ガキが、俺の女に気安く手ぇ出すなっ! とっとと帰って、母ちゃんのおっぱいでもしゃぶってろ!」
もう一歩踏み出しながら凄むと、男はあっけないほど素直に退散した。平野の見た目のいかつさは、こんな時にだけ役に立つ。
「三沢さん、あいつもう帰ったよ。駅まで送ってこうか?」
そう声をかけると、茜は胸に飛び込んできた。
「やっぱり助けてくれたね。駐車場なら平野さんが助けてくれるって、思ってた」
胸の中の茜をどうして良いのかわからず、平野の手は一度持ち上がってから、身体の横に下りた。
「だからあいつが腕ひっぱって駐車場に引き摺りこんだ時、平野さんが帰り支度してたって、安心してた。平野さんなら見ないフリなんてしないで、絶対助けてくれる」
「大声出して、誰かに助けてもらえば良かったのに」
そう言うと、茜は頭を振った。
「前にそうなった時は、駅前広場だったのに誰も助けてくれなかった。好きな人がいるって言ってんのに、しょっちゅう後着いてきて、決まった男となんて会ってないじゃないかって」
軽度の、ストーカー被害なのだ。若い男女が大声で言い争っていたら、通る人は痴話喧嘩だと思うだろう。事実、はじめは平野もそう思ったのだから。
そんな場所でずっとしがみつかせているわけにも行かず、平野は車の助手席に茜を促した。恐怖が解けて興奮状態の茜を、送ってやろうと思ったのだ。
「怪我した野良猫、ダンボール箱に入れたよね。足引き摺りながら逃げてる猫、すっごい勢いで引っ掻いて、平野さんの腕から血が出てたの」
「見てたのか。あれ、化膿してなあ。野良猫って、すげーばい菌持ってんな」
「病院に、連れてったんでしょう?」
「放っておけないだろう。今は走り回ってるよ」
茜の家まで送るまでの、ただの世間話のつもりだった。
「あのまま、平野さんの家にいるの?」
さっきまでの怯えた顔はどこへやら、である。
「見たい! 見せて! 猫に会いに行く!」
「猫なんか見て、どうすんだ」
「元気になったとこ、見たい。平野さんに懐いてる?」
「勝手に出てって、勝手に帰ってくるよ」
押し切られて茜が部屋を訪れたのは、日曜日だ。部屋に入れることを承諾してしまったのは、多分しんどい気持ちだった筈の茜が明るく振舞っているのがいじらしく見えたからである。男やもめに蛆が湧いていると言われても仕方の無い部屋を、別に片付けようとも思わなかった。
「おじゃましまーす。わー、平野さんらしーい」
「猫、遊びに行ってんぞ。一日に何回か帰ってくるけど」
「待ってるもーん。その間、ちょっとこれ片付けてもいい?私が座るとこ、作んなくちゃ」
返事をする間もなく洗い物を始めた茜は、鼻歌だ。洗い物に続いて脱ぎ散らかした服を集められ、自分の部屋なのに平野は所在無くウロウロした。見る見る間に床面積が広くなっていく。
窓が外からかりかりと引っ掻かれ、平野が細く隙間を作ると、猫がするりと入ってきた。
「おい、猫帰ってきたぞ」
風呂場でなにやらしている茜を呼び戻すと、わーいなんて子供じみた歓声を上げた。
「男の子なんだね、このこ。平野さんのお布団で寝たりするの?」
「ああ、弱ってた時はまだ気温も低くてな。朝起きると隣で寝てたりした」
皿の上のシリアルをせっせと食べている猫の隣にしゃがんで、茜が言う。
「いいなあ。一緒に寝てるんだね」
「一緒にっていうか、勝手に布団に潜り込んでくるから。三沢さんの家は、ペット禁止?」
「お母さんが、猫嫌いなの。でも、私がいいなって言ったのは、猫のほう」
床に両手をついた茜は、そのまま四つん這いで平野に近付いた。
「猫だって女の子なら、許せないな。私も平野さんと一緒に寝たい」
無邪気に見えていた顔が、女に見えたのはその表情か。
「私も、平野さんの飼い猫になる。抱っこしてもらって、時々お風呂に入れてもらって」
平野の喉が、大きく動いた。
「あ……あっ……あんっ……」
茜が平野の膝を跨いで唇を近づけた時、平野の中で何かが堰き切れた。唇を重ねて舌を吸い上げると、茜の口は甘かった。夢中でシャツの中に手を入れると、弾力のある胸が応えるように押し付けられる。そして今、平野の膝の上でシャツを捲り上げられた茜の胸は、平野の舌と歯に翻弄されているのである。
何故そんな風に欲情したのか、平野にも判断は難しい。ガキだと思っていた茜は思いの外女の反応をして、平野の頭を掻き抱く。ショートパンツから出た細い足が、もぞもぞと動いて平野の太腿を挟んでいる。胸の先端を吸い込みながら背中に指を走らせると、すべらかな肌がぶるりと震えた。
身体中が指に吸い付くような肌なのか。女の肌は、これほどまでに柔らかく薄いものだったのか。
邪魔になったシャツを脱がせ、役立たずになったブラも取ってしまうと、まだ淡い色の先端が誘うように揺れた。恥ずかしげに逸らす顔に嗜虐心が湧き、両の指先でそこを捻ると、耐えた顔がますます上気する。たまらずに押し倒して、ショートパンツのジッパーに手をかけてから、瞬間頭にある疑問が過ぎる。
「処女か、おまえ」
そうだと返答されても、もう止めるつもりはないが、痛い痛いと泣かれるのはいやだ。平野の首に手を回した茜は、小さく首を横に振った。
「違うの。がっかりする?」
「いや、気が楽だ」
そうと決まれば、遠慮も容赦も必要ない。ショートパンツとショーツを一度に剥ぎ、上から圧し掛かる。
「やだ、平野さんも脱いでぇ……」
懸命に平野のシャツを捲りあげようとする茜の手を掴んで、胸を開かせる。膨らみは横に流れずに存在を主張し、くびれたウエストラインの下には平たい腹と淡い茂みが息づいている。
「私だけじゃ、恥ずかしいよう」
文句を言う口を塞ぎ、唇の内側を探る。舌の絡まる音が内側から響き、その間に指が茜の身体のラインのすべてを覚えようとするかのように、忙しく動き回る。どこもかしこもすべらかな肌は、下腹の茂みだけ少々手触りが変わる。首から腋へ舌を移すと、茜の脚がもじもじと動いた。舌に乗る肌の感触を、まだ楽しんでいたい。
膝を掴んで脚を持ち上げ、内腿にも舌を這わせる。白い肌に透ける青い静脈に、目が眩みそうだ。一番の好物を最後まで楽しみに取っておく子供のように、平野の舌は少しずつ核心に近くなって行き、舌に先駆けて指が到着した。
「あぅっ……」
茜の身体は一度大きく跳ね、その指を待っていたことを告げる。
「やっ……舌入れちゃ、やだぁっ……」
腰を振るほど気持ちがいいんだろうが、と返したいところだが、平野の唇はただいま多忙だ。返事の代わりに核を指で弾くと、嬌声が上がった。
顔の位置を胸まで戻し、留守だった胸をもう一度咥えると、茜の手が平野の下腹に伸びた。
「私ばっかりこんなにして、ズルい……脱いでよぉっ……」
「急かすなっ……」
「だって、もう……ああっあっ……」
指を二本押し込み、中を混ぜてやると、茜はあっけなく言葉を途切れさせた。その表情を見ながら、平野はシャツを脱ぐ。筋肉質の平野は、見た目よりずいぶん重い。太い腕で茜の脚を抱え上げ、無言で切っ先を押し当てた。
避妊しなくてはなんて、もう考えられない。目の前で頬を上気させ、潤んだ瞳を半眼にしている女を、孕ませてしまいたい。この柔らかな身体は、自分のものだ。
「ゴム、持ってねえぞ。いいか」
「来てぇっ……そのまま、来て……欲しいっ……」
腰を押し進めようとすると、茜の内側の抵抗が強い。処女ではなくとも、経験は浅いらしい。耳朶に息を吹き込みながら、腰を細かく揺すって馴染ませていくと、中途でずるんと受け入れられた。
「ん……はぁっ……ひら、の、さん……」
肩にしがみついた茜が、絶え絶えの声を出す。なんて愛らしい仕草で、愛おしい声だろう。自分に反応する女の中の、熱い感触が背筋を抜けていく。平野の口からも、溜息が漏れた。
「イイな、おまえの中……熱くて、狭い」
揺すりあげて、また唇を吸う。茜の爪が背中に食い込むのを感じ、自分にも余裕がないことを知る。
「あかね、って呼んで……」
哀願めいた声は切れ切れで弱々しく、けれど腰は緩やかに平野を強請っている。繋がったまま胸を探ると、茜の中は平野を締め上げた。
「茜」
耳元でそう呼ぶと、茜は高い声を上げる。混ざった汗が互いの胸の間で、音をたてた。
「ちょ……うだいっ……もっと……あ、あああんっ…」
強烈な感覚に、平野の腰は早く動き始める。こんなに早く終わらせることは惜しいが、余裕が皆無だ。
「あっあっ…あああああんっ……いやぁっ…ああっ…んんん……」
一足早く達した茜が、胸の下で痙攣する。
「出すぞ」
「もう、だめっ……ああっ……もう……いやあぁぁぁっ!」
更に深い場所で達しようとしている茜を、胸の中に抱き込んだ。こいつをもう、手放す気はない。
孕め。そう、強く思った。俺の下で夢中になって、孕んじまえ。
終わったあとに身体を寄せる茜の横で、煙草を吸う。こんな小娘に夢中になっちまってと、自嘲はある。長い脚をだらんと投げ出した茜は、平野の胸に手を置いた。
「私、平野さんの飼い猫になっていい?」
「猫より、役に立つ」
素っ気無いセリフだと理解してはいるが、平野にそれ以上の言葉は出ない。
いつの間にやら部屋の隅で眠っていた猫が、また外に出て行こうとする。外から発情期を迎えたメス猫の、誘う声がする。尻尾を立てて勇んで出ようとする猫のために、窓を細く開けながら、やはり去勢手術を施さなくてはと思う。恋を得るために争って傷ついたり、生きるのに難しい野良猫を増やしたりすることを、防がなくてはならない。
チビすけの代わりに、俺が繁殖してやるよ。猫の後姿を見ながら、平野は呟いた。
夕方近く、帰宅する茜を家に送った。
「来週も、平野さんの家に行っていい?」
生返事をしながら、心の中で決意を固める。多分茜は、生活や未来なんて見えていない。甲斐性のない自分にできるのは、この世間知らずの小娘を自分の生活に巻き込んで、取り込んでしまうことだけだ。
中年を本気にするとこうなるんだ、小娘。逃げられると思うなよ。
fin.
鬼瓦と評される平野の腕にぶら下がって駄々を捏ねる小娘は、すらりと伸びた脚を惜しげもなく晒したショートパンツ姿だ。
「うるせえよ、さっさと電車に乗れ」
「なぁんでぇ?平野さんのおうちに行きたいーっ」
誰だ、こいつに酒を飲ませやがったヤツは。そして駅まででいいからと、俺に押し付けたのは誰だ。うんざりした顔でホームで並んで電車を待つ。ああ、めんどくせえ。
「平野さん、つめたい。あたしのことキライなんだ……」
「生憎とロリコンじゃない。ガキは帰って寝ろ」
「ロリータじゃないもん。高校卒業して就職したんだもん」
「まだ選挙権も無い小娘が、知った風な口利くな」
噛み潰した苦虫の味が口いっぱいに広がったみたいに、平野は吐き出した。入社して三ヶ月ほどの小娘が平野に纏わりついているのは、社員全員が知っている。いかつい風貌の上に口の荒い平野が一度目の結婚を破綻させてから、ずいぶん長いこと経っているから無責任に、若い母ちゃんを貰うチャンスだと煽る声も聞こえる。
冗談じゃない、ガキのお守りなんざ真っ平だ。
それにしても、と小娘―三沢茜―の脚を見下ろす。無防備に脚を出して夜道をひとりで歩くなんて、襲ってくれと言ってるようなもんだ。今時の若い女はなんて言葉が、口をついて出そうになる。去年不惑を越えた時には感慨は無かったが、目の前に若さを見せつけられると、自分の老いが迫ってくるのを感じる。
しがみついている茜を電車に無理やり乗せ、反対方向のホームに向かう。車を会社に置いてきたから、明日は電車で出社しなくてはならない。電車の中で煙草は吸えないから、口の中にガムを放り込む。
ヘルメットを抱えて現場から戻ると、茜が笑顔で「おかえりなさーい」と迎えた。
「平野さん、汗だらけ。着替えないと風邪ひくよ」
世話女房よろしく冷えた麦茶と冷たいおしぼりがデスクの上に揃えられ、先に戻った仲間が苦笑する。
「三沢ちゃーん、俺の麦茶はー?」
「冷蔵庫に入ってまーす。どうぞー」
あからさまにつけられる区別に、誰も何も言わない。もともとがそんな社風だし、茜のキャラクターは明るくオープンで、憎めない。
「平野さん、いいなあ。あんな可愛い子に、俺も言い寄られたいっすよ」
まだ二十代の同僚が、心底羨ましそうに言う。
「おまえが嫁に貰や良いだろうが。娘みたいな歳の女、どうしろっていうんだ」
「あっちがそうしたいって言ってんだから、良いじゃないっすか。ちょっと犯罪チックだけど」
犯罪……そうだな。少なくとも、エロ親父が何も知らない生娘を誑かしたように見えることは、間違いない。大体、目の前を動き回る生脚に、食指をそそられないのだ。若い娘特有の肌のつやや、まっすぐで膝頭の小さい脚は、未成熟の証拠のように見える。
「平野さん。安全靴脱いで、乾かしておかないと」
「ああ、足洗ってくらぁ」
世話されることにはもう、文句は言わないことにした。言っても茜は翌日同じように世話をやきたがるし、跳ねつけるよりも受け入れてしまったほうが、遥かに楽なのだ。
「平野さぁん、帰りましょー」
ぎゅっと腕にしがみつく茜を引き剥がし、苦笑する。
「若いヤツに言ってやれ。三沢さんならって思う男は、いっぱいいるだろ」
「平野さんがいいんだもん。本気なんだから」
本気の恋愛が、そんなに軽々と口に出せるわけが無い。こんな風にオヤジをからかうのは、おそらく茜にとって遊びのうちなのだ。
「なんで相手にしてくれないのかなあ。私、ピチピチなのに。女に興味ないの?」
会社裏の駐車場までくっついて来る茜の言葉に、思わず笑う。
「女だぁ? そんなセリフは、男の三人や四人咥えこんでから言えや。はい、ガキはおとなしく帰れ」
運転席のドアを開けて自分だけ乗り込むと、エンジンをかける。窓を開けると、膨れっ面の茜が覗き込んだ。
「いいもんっ! 負けないもん! 平野さんのこと、好きなんだもん」
「言ってろ、ばか」
サイドブレーキを外して、車を発進させる。バックミラーに、歩き出した茜がうつった。
赤信号で煙草に火をつけて、肺いっぱいに吸い込む。最近の禁煙だか嫌煙だかの風潮など、クソ喰らえだ。平野が携わる工事現場でも、最近はスタンド式の灰皿を備え付けず、個々に持っている携帯灰皿推奨だ。好きなものを吸って身体を悪くする自由もないのか、と思う。こんなことを思うのも、考えに柔軟性のなくなった証拠なのか。
茜が何を考えて自分に懐いているのか、おそらく大人の男らしく誤解しているのだと思う。実際の自分は妻にも愛想をつかされた、草臥れかけたつまらない男だというのに。立て続けに煙草をふかし、弁当屋の店先に車を止めて、持ち帰り弁当を二種類買う。外食することも億劫になると、テレビを見ながらそれを食べてビールを飲むことが、平野の夜のすべてだ。風呂に入ることと灰皿の灰を始末することは、自分に義務付けている。それさえクリアすれば、後はどうにかなるものだと学んだのは、妻が出て行ってから一年も経った頃だったろうか。ひとりの生活は、慣れてしまえば案外と快適で、そして侘しい。
窓をかりかりと引っ掻く音がして、少し隙間をあけると、猫が入ってきた。四月のある日、会社の近所で怪我している猫を保護して連れて帰ったのだ。傷が癒えるまで部屋に置くつもりが、なし崩しに一緒に暮らしている。テレビ以外の話し相手は今、家の中ではこいつだけだ。
面白くない現場で、荒れていたのは確かだ。偉そうに指図した元請の若造に腹を立てて帰社し、荒れたまま同僚と飲みに出た。その時に茜がついてきたのか、後から現れたのかは覚えていない。それくらい頭に血が昇っていた。平野さん少し飲みすぎだよ、そう言う同僚の腕を振り払ったことまでは覚えている。気がついたら会社の駐車場まで戻り、植え込みの影で吐いていた。
「平野さん、お水」
ペットボトルが差し出され、それを引っ掴んで飲んでから見上げると、茜が横にいた。
「大丈夫? 歩ける?」
見上げた先にあるのは、いつも通りすらりと伸びた脚の上部、夜目に白い太腿――
ああ、女の脚になんて、何年も触れていなかった。綺麗だなと見蕩れてから、それが茜のものだと思い直す。もう一度えずくと、茜は隣にしゃがんで大沢の背中をさすった。
「今、何時だ?」
「まだ十時半。電車で帰る? タクシー呼ぼうか?」
覗き込んだ顔は茜のものなのに、酔いのフィルタが自分ながらヤバイと思う。
「仮眠室で、寝てく」
「そう言い張るから、着いてきたんじゃないの。セキュリティシステム作動で、警備会社の人が飛んで来るよって言ったのに」
昨年新たに導入したセキュリティシステムは、最後の一人が施錠報告のボタンを押した後に誰かが社内に入ると、警備会社が点検した挙句、社内の防犯ビデオが社長宅に転送されるのだ。
「ああ、じゃあ車で寝てく。おまえ、帰れ」
ペットボトルの水でうがいをして吐き出すと、平野はよろけながら立ち上がった。ポケットから車のキーを取り出して、開錠しようとしたとき、細い指がそれを攫った。
「ダメだよ。醒めたと思っても、お酒は残るんだよ。そんなんで運転してたら、危ないじゃない」
「うるせえな、放っとけ。おまえこそ、こんな時間に暗いところで男と一緒にいるんじゃねえや。脚まる出しで、誘ってるつもりか」
「誘われてくれないくせに」
酔いに任せての、売り言葉と買い言葉だ。
「誘われてやろうか」
一歩踏み出すと、怯えた顔の茜がじりっと後ずさった。逃げられると追いたくなるのは、人間の常だ。もう一歩踏み出すと、茜はあっけなく平野の車のボンネットに追い詰められる。
「なあ、誘いたいんだろう?意味わかってんのか」
両手をつき、茜の顔を見下ろして、笑ってみせる。
「平野、さん?」
酔っているな、制御が利かないという自覚は、ある。
「一緒に帰るの泊めてのって、やることは変わんねえだろうが。ここでいいか」
「へ……ひら……」
ボンネットの上に押し倒して身体を割り込ませると、茜の足はじたばたと宙を蹴る。慄いて食いしばった歯を強引にこじ開け、舌をねじ込んで胸のふくらみを掴んだ。もちろん、本気なんかじゃない。少し箍が外れただけだ。
「ん……やあっ! ……やだあっ! ……くっ……」
久しぶりに触れる女の身体に欲望が膨れ上がったのを感じ、その後に涙を流している茜を見た。ああ、まずいと思う。何も知らない小娘に、していいことじゃない。
「帰れよ」
しゃくりあげている茜を、ボンネットから降ろす。
「気安く言えるもんじゃないって、わかっただろう。帰り道で知らない男に引っ張り込まれる前に、帰れ」
ぺたんと座り込んだ茜の腕を引っ張って立ち上がらせ、車のキーを取り戻した。あの状態で握ったままでいたのは、ラッキーだったと思う。
「俺はここで寝てく。明るい道選んで帰れよ」
「……酔いが醒めても、しばらく運転しないって、約束して」
大した根性だ。強姦されそうになったというのに、まだ平野と口を利く気力が残っているのか。
「うるせぇ女だな。おまえこそ、暗がりに引っ張り込まれんじゃねえぞ」
「逃げ足は早いの、私」
逃げることなんてできなかった癖に、よく言うものだ。
「ここでぐずぐずしてると、俺がやっちまうぞ」
「ほ……本望だもんっ」
「嘘吐け。ぐしゃぐしゃな顔して、何言ってやがる」
苦笑して車を開け、シートを倒す。窓を少し開けて、もう一度茜に声をかける。
「手荒にして、悪かったよ。酔っ払いに迂闊に近付くとこうなるって、教訓にでもしといてくれ。おやすみ」
返事を聞かずに目を閉じたから、茜がどんな風に帰ったのかは知らない。
目が覚めると身体はぎしぎし言ったが、頭のほうはすっきりしていた。まだ早朝三時程度だ。一度家に帰ってシャワーを浴びても、仮眠する時間はある。落ちていたペットボトルを拾って生ぬるい水を飲み、自分の身体に運転できる常態か、冷静に問い合わせる。
――酔いが醒めても、しばらく運転しないって約束して。
蘇った声に毒づいてから、数時間前の出来事を思い出した。夜目に白く映えた太腿と、身体の下で暴れる感触が、自分の中で何かを呼び覚ます。何か、ひどくバランスの悪い精神状態だ。
いかんいかん。社内の、しかも娘ほどの年齢の女に、何を考えているのだ。むくむくと頭をもたげはじめた己自身を宥め、エンジンをかける。しばらく女に触っていなかったとはいえ、小娘相手じゃ情けない。
帰宅すると、猫が擦り寄ってきて甘えはじめた。保護した時は怪我をしているクセに暴れまくって、獣医でネットに入れられて治療したのに、今では生まれた時から飼い猫のような顔をしている。メスならば増える心配はあるが、オスなので去勢手術もせずに放っておいてある。獣医には飼うのなら義務だと言われたが、平野はどうも気が進まない。
「おまえも、女とやりたいよな。俺の遺伝子なんか今更残らないけどよ、おまえは残したいだろ?」
人間の勝手な言い分で、増えた野良猫が厳しい生活を強いられるのは、見て見ぬふりだ。子供を持たない平野の遺伝子はここで途切れるが、飼い猫がどこかで生を繋いでいくことに、やけにセンチメンタルな感慨がある。
「子供産ませたら俺にも見せろよ、チビすけ」
「みゃう」
猫は理解しているんだかいないんだか、正座して答えた。妻が出て行ってから、何年経ったのだろう。子供でもできていれば、ひとりになることはなかったのかも知れない。いや、子供ごと出て行ったか。自分の生活を誰かと、常に比較しているような女だったなと思うが、妻が比較している生活より劣っていたのは確かで、それを求められても応えられなかったのは、平野自身だ。
「猫はいいな。甲斐性求めらんないから」
「みゃ」
正座を解いて丸まった猫は、面倒臭そうに片目だけ開けて見せた。
「平野さん、おかえりー」
懲りない茜が、現場から戻った平野の世話を焼く。
「おしぼり、凍らせといた。暑かったよね、今日」
「おう、ありがとな」
忘れたような顔をしたって、お互いに覚えているのだ。平野が非道いことをして、茜は泣いたのだから。それなのに知らん顔をして、茜は平野の世話を焼く。
こんな風に表面を取り繕うことができる程度には、茜は大人なのだ。有難いのか申し訳ないのか平野には判断ができなくて、その分茜への当たりは強気でなくなる。幾分幼さの残る顔が、嬉しそうに麦茶を差し出した。
「水分もちゃんと補給してね。平野さんが倒れても、私が看病するけど」
「へえ? ありがとさん。うかうか病気にもなれねえな」
「どういう意味よ!」
「余計悪くなりそうな気がするってもんだ。粥くらい炊けるのか」
「バカにしないで!」
からかったつもりで、脳裏に描いたのは自分のアパートのキッチンに立つ、危ない包丁捌きの茜だ。これは何かおかしいぞ。ガキなんて相手する気はないのに。うろたえた平野は、慌てて麦茶を飲み干した。
「なんで会社まで来るのよ! あんたとはもう、二度と会いたくないって言ったでしょ!」
駐車場の奥で、茜らしき声がした。
「俺は別れてもいいなんて、一言も言ってない」
「つきあってもいないじゃないの! 帰って、二度と顔見せないで……放してっ!」
ただ事ではない気配に、車を開錠しようとした平野の手が止まった。
「女を殴る男なんて、サイテー! ……きゃあっ!」
ただの痴話喧嘩にしては、ずいぶん物騒だ。陰になっている場所に頭をめぐらすと、頭を抱えた茜に拳を振り上げた男が見えた。
理由はどうあれ、自分の知っている女の子が殴られる場面なんて、平野は見過ごせない。相手はひょろひょろした兄ちゃんだ、現場仕事を生業としている平野の腕力で、負けるはずがない。
「ずいぶん物騒なことしてんな、兄ちゃん」
「誰だよ、おっさん」
飛びついてきた茜を背中で庇って、男と対峙した。
「躾の悪いガキは、嫌いだ。相手に名前を聞くときは、自分から名乗るもんだよ」
「うるせえよっ! 他人のことに口出しすんなよ!」
背中にしがみついている茜が、小さく震えている。先程の威勢の良いやりとりは、虚勢だったか。
「三沢、こいつ知り合い?」
背中に向かって訊く。
「知り合いじゃない。勝手につきまとって、好きな人がいるって言ったら殴られたの」
「おまえが俺の言うこと、聞かないからじゃないかよ!」
背中に回りそうな兄ちゃんの動きに合わせて、平野は向きを変えた。
「ずいぶん勝手な理屈だなぁ。悪いけど、これは俺の女だ」
咄嗟にそう出たのは、相手が殴りかかって来たりしないという、核心の下だ。男同士であるなら、身体つきで相手の腕力は予測ができる。力の強い男が保護しているのだと思わせれば、手を引く可能性がある。
「ふざけんなよ、おっさん。嘘吐くんじゃねえよ」
「嘘かどうか、確認してみるか?」
ずいっと一歩出ると、男は一歩後ずさった。
「ガキが、俺の女に気安く手ぇ出すなっ! とっとと帰って、母ちゃんのおっぱいでもしゃぶってろ!」
もう一歩踏み出しながら凄むと、男はあっけないほど素直に退散した。平野の見た目のいかつさは、こんな時にだけ役に立つ。
「三沢さん、あいつもう帰ったよ。駅まで送ってこうか?」
そう声をかけると、茜は胸に飛び込んできた。
「やっぱり助けてくれたね。駐車場なら平野さんが助けてくれるって、思ってた」
胸の中の茜をどうして良いのかわからず、平野の手は一度持ち上がってから、身体の横に下りた。
「だからあいつが腕ひっぱって駐車場に引き摺りこんだ時、平野さんが帰り支度してたって、安心してた。平野さんなら見ないフリなんてしないで、絶対助けてくれる」
「大声出して、誰かに助けてもらえば良かったのに」
そう言うと、茜は頭を振った。
「前にそうなった時は、駅前広場だったのに誰も助けてくれなかった。好きな人がいるって言ってんのに、しょっちゅう後着いてきて、決まった男となんて会ってないじゃないかって」
軽度の、ストーカー被害なのだ。若い男女が大声で言い争っていたら、通る人は痴話喧嘩だと思うだろう。事実、はじめは平野もそう思ったのだから。
そんな場所でずっとしがみつかせているわけにも行かず、平野は車の助手席に茜を促した。恐怖が解けて興奮状態の茜を、送ってやろうと思ったのだ。
「怪我した野良猫、ダンボール箱に入れたよね。足引き摺りながら逃げてる猫、すっごい勢いで引っ掻いて、平野さんの腕から血が出てたの」
「見てたのか。あれ、化膿してなあ。野良猫って、すげーばい菌持ってんな」
「病院に、連れてったんでしょう?」
「放っておけないだろう。今は走り回ってるよ」
茜の家まで送るまでの、ただの世間話のつもりだった。
「あのまま、平野さんの家にいるの?」
さっきまでの怯えた顔はどこへやら、である。
「見たい! 見せて! 猫に会いに行く!」
「猫なんか見て、どうすんだ」
「元気になったとこ、見たい。平野さんに懐いてる?」
「勝手に出てって、勝手に帰ってくるよ」
押し切られて茜が部屋を訪れたのは、日曜日だ。部屋に入れることを承諾してしまったのは、多分しんどい気持ちだった筈の茜が明るく振舞っているのがいじらしく見えたからである。男やもめに蛆が湧いていると言われても仕方の無い部屋を、別に片付けようとも思わなかった。
「おじゃましまーす。わー、平野さんらしーい」
「猫、遊びに行ってんぞ。一日に何回か帰ってくるけど」
「待ってるもーん。その間、ちょっとこれ片付けてもいい?私が座るとこ、作んなくちゃ」
返事をする間もなく洗い物を始めた茜は、鼻歌だ。洗い物に続いて脱ぎ散らかした服を集められ、自分の部屋なのに平野は所在無くウロウロした。見る見る間に床面積が広くなっていく。
窓が外からかりかりと引っ掻かれ、平野が細く隙間を作ると、猫がするりと入ってきた。
「おい、猫帰ってきたぞ」
風呂場でなにやらしている茜を呼び戻すと、わーいなんて子供じみた歓声を上げた。
「男の子なんだね、このこ。平野さんのお布団で寝たりするの?」
「ああ、弱ってた時はまだ気温も低くてな。朝起きると隣で寝てたりした」
皿の上のシリアルをせっせと食べている猫の隣にしゃがんで、茜が言う。
「いいなあ。一緒に寝てるんだね」
「一緒にっていうか、勝手に布団に潜り込んでくるから。三沢さんの家は、ペット禁止?」
「お母さんが、猫嫌いなの。でも、私がいいなって言ったのは、猫のほう」
床に両手をついた茜は、そのまま四つん這いで平野に近付いた。
「猫だって女の子なら、許せないな。私も平野さんと一緒に寝たい」
無邪気に見えていた顔が、女に見えたのはその表情か。
「私も、平野さんの飼い猫になる。抱っこしてもらって、時々お風呂に入れてもらって」
平野の喉が、大きく動いた。
「あ……あっ……あんっ……」
茜が平野の膝を跨いで唇を近づけた時、平野の中で何かが堰き切れた。唇を重ねて舌を吸い上げると、茜の口は甘かった。夢中でシャツの中に手を入れると、弾力のある胸が応えるように押し付けられる。そして今、平野の膝の上でシャツを捲り上げられた茜の胸は、平野の舌と歯に翻弄されているのである。
何故そんな風に欲情したのか、平野にも判断は難しい。ガキだと思っていた茜は思いの外女の反応をして、平野の頭を掻き抱く。ショートパンツから出た細い足が、もぞもぞと動いて平野の太腿を挟んでいる。胸の先端を吸い込みながら背中に指を走らせると、すべらかな肌がぶるりと震えた。
身体中が指に吸い付くような肌なのか。女の肌は、これほどまでに柔らかく薄いものだったのか。
邪魔になったシャツを脱がせ、役立たずになったブラも取ってしまうと、まだ淡い色の先端が誘うように揺れた。恥ずかしげに逸らす顔に嗜虐心が湧き、両の指先でそこを捻ると、耐えた顔がますます上気する。たまらずに押し倒して、ショートパンツのジッパーに手をかけてから、瞬間頭にある疑問が過ぎる。
「処女か、おまえ」
そうだと返答されても、もう止めるつもりはないが、痛い痛いと泣かれるのはいやだ。平野の首に手を回した茜は、小さく首を横に振った。
「違うの。がっかりする?」
「いや、気が楽だ」
そうと決まれば、遠慮も容赦も必要ない。ショートパンツとショーツを一度に剥ぎ、上から圧し掛かる。
「やだ、平野さんも脱いでぇ……」
懸命に平野のシャツを捲りあげようとする茜の手を掴んで、胸を開かせる。膨らみは横に流れずに存在を主張し、くびれたウエストラインの下には平たい腹と淡い茂みが息づいている。
「私だけじゃ、恥ずかしいよう」
文句を言う口を塞ぎ、唇の内側を探る。舌の絡まる音が内側から響き、その間に指が茜の身体のラインのすべてを覚えようとするかのように、忙しく動き回る。どこもかしこもすべらかな肌は、下腹の茂みだけ少々手触りが変わる。首から腋へ舌を移すと、茜の脚がもじもじと動いた。舌に乗る肌の感触を、まだ楽しんでいたい。
膝を掴んで脚を持ち上げ、内腿にも舌を這わせる。白い肌に透ける青い静脈に、目が眩みそうだ。一番の好物を最後まで楽しみに取っておく子供のように、平野の舌は少しずつ核心に近くなって行き、舌に先駆けて指が到着した。
「あぅっ……」
茜の身体は一度大きく跳ね、その指を待っていたことを告げる。
「やっ……舌入れちゃ、やだぁっ……」
腰を振るほど気持ちがいいんだろうが、と返したいところだが、平野の唇はただいま多忙だ。返事の代わりに核を指で弾くと、嬌声が上がった。
顔の位置を胸まで戻し、留守だった胸をもう一度咥えると、茜の手が平野の下腹に伸びた。
「私ばっかりこんなにして、ズルい……脱いでよぉっ……」
「急かすなっ……」
「だって、もう……ああっあっ……」
指を二本押し込み、中を混ぜてやると、茜はあっけなく言葉を途切れさせた。その表情を見ながら、平野はシャツを脱ぐ。筋肉質の平野は、見た目よりずいぶん重い。太い腕で茜の脚を抱え上げ、無言で切っ先を押し当てた。
避妊しなくてはなんて、もう考えられない。目の前で頬を上気させ、潤んだ瞳を半眼にしている女を、孕ませてしまいたい。この柔らかな身体は、自分のものだ。
「ゴム、持ってねえぞ。いいか」
「来てぇっ……そのまま、来て……欲しいっ……」
腰を押し進めようとすると、茜の内側の抵抗が強い。処女ではなくとも、経験は浅いらしい。耳朶に息を吹き込みながら、腰を細かく揺すって馴染ませていくと、中途でずるんと受け入れられた。
「ん……はぁっ……ひら、の、さん……」
肩にしがみついた茜が、絶え絶えの声を出す。なんて愛らしい仕草で、愛おしい声だろう。自分に反応する女の中の、熱い感触が背筋を抜けていく。平野の口からも、溜息が漏れた。
「イイな、おまえの中……熱くて、狭い」
揺すりあげて、また唇を吸う。茜の爪が背中に食い込むのを感じ、自分にも余裕がないことを知る。
「あかね、って呼んで……」
哀願めいた声は切れ切れで弱々しく、けれど腰は緩やかに平野を強請っている。繋がったまま胸を探ると、茜の中は平野を締め上げた。
「茜」
耳元でそう呼ぶと、茜は高い声を上げる。混ざった汗が互いの胸の間で、音をたてた。
「ちょ……うだいっ……もっと……あ、あああんっ…」
強烈な感覚に、平野の腰は早く動き始める。こんなに早く終わらせることは惜しいが、余裕が皆無だ。
「あっあっ…あああああんっ……いやぁっ…ああっ…んんん……」
一足早く達した茜が、胸の下で痙攣する。
「出すぞ」
「もう、だめっ……ああっ……もう……いやあぁぁぁっ!」
更に深い場所で達しようとしている茜を、胸の中に抱き込んだ。こいつをもう、手放す気はない。
孕め。そう、強く思った。俺の下で夢中になって、孕んじまえ。
終わったあとに身体を寄せる茜の横で、煙草を吸う。こんな小娘に夢中になっちまってと、自嘲はある。長い脚をだらんと投げ出した茜は、平野の胸に手を置いた。
「私、平野さんの飼い猫になっていい?」
「猫より、役に立つ」
素っ気無いセリフだと理解してはいるが、平野にそれ以上の言葉は出ない。
いつの間にやら部屋の隅で眠っていた猫が、また外に出て行こうとする。外から発情期を迎えたメス猫の、誘う声がする。尻尾を立てて勇んで出ようとする猫のために、窓を細く開けながら、やはり去勢手術を施さなくてはと思う。恋を得るために争って傷ついたり、生きるのに難しい野良猫を増やしたりすることを、防がなくてはならない。
チビすけの代わりに、俺が繁殖してやるよ。猫の後姿を見ながら、平野は呟いた。
夕方近く、帰宅する茜を家に送った。
「来週も、平野さんの家に行っていい?」
生返事をしながら、心の中で決意を固める。多分茜は、生活や未来なんて見えていない。甲斐性のない自分にできるのは、この世間知らずの小娘を自分の生活に巻き込んで、取り込んでしまうことだけだ。
中年を本気にするとこうなるんだ、小娘。逃げられると思うなよ。
fin.
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