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自分のセンスに自信がなくなるんです
しおりを挟む 精の退治依頼を受けていた場所は五条通りを東に抜け鴨川を渡った先にある大きめの池のほとりだ。吉右衛門によれば、そこに出るらしい。
何が?
肝心なところを言わずにそそくさといなくなった吉右衛門を恨めしく思いながら霞は九郎に向き合い、
「この辺りなんだけど、あんた準備良い?」
「はぁ」
相変わらず、なんとも頼りない。
「九郎、やるわよ。あんたの俊敏と打撃力いっぺんに上げるよ」
霞は篠笛を吹く。
九郎の周囲を黄金色に染め上げやがて極大になると九郎の身体が発光し、スーッと光が消えていく。その様子を確認した霞が笛の調べを変えた。
池の畔、
「霞姐さん。精を止めないでください。自分の力を測ってみたいのです」
「何言ってんの? あんた」
「やってみたいのです。自分の修行が正しいのか。やってきたことが間違っていなかったのか……
だから、お願いです」
頭を下げて霞を見つめる。今まで、何となく心がここになかったような九郎が何か決めた目で見つめている。
九郎は、この日を待っていた。強くなりたいと願ったあの夜からずっとこの日を待っていた。人に頼るのではなく自分の力で自分の道を切り開く力が欲しかった。その第一歩が、今夜だった。九郎の決意は固い。
霞にも理解が出来ていた。
九郎が吉右衛門や弁慶に稽古をつけられて上達しない自分に人知れず陰で涙を落していたことを知っていたから。
「九郎、私が危ないと思ったらその場で介入するわよ。いいわね」
霞が念を押すのに九郎を見ると
「ありがとうございます」
一つ深く礼をして背を向けた。
何が?
肝心なところを言わずにそそくさといなくなった吉右衛門を恨めしく思いながら霞は九郎に向き合い、
「この辺りなんだけど、あんた準備良い?」
「はぁ」
相変わらず、なんとも頼りない。
「九郎、やるわよ。あんたの俊敏と打撃力いっぺんに上げるよ」
霞は篠笛を吹く。
九郎の周囲を黄金色に染め上げやがて極大になると九郎の身体が発光し、スーッと光が消えていく。その様子を確認した霞が笛の調べを変えた。
池の畔、
「霞姐さん。精を止めないでください。自分の力を測ってみたいのです」
「何言ってんの? あんた」
「やってみたいのです。自分の修行が正しいのか。やってきたことが間違っていなかったのか……
だから、お願いです」
頭を下げて霞を見つめる。今まで、何となく心がここになかったような九郎が何か決めた目で見つめている。
九郎は、この日を待っていた。強くなりたいと願ったあの夜からずっとこの日を待っていた。人に頼るのではなく自分の力で自分の道を切り開く力が欲しかった。その第一歩が、今夜だった。九郎の決意は固い。
霞にも理解が出来ていた。
九郎が吉右衛門や弁慶に稽古をつけられて上達しない自分に人知れず陰で涙を落していたことを知っていたから。
「九郎、私が危ないと思ったらその場で介入するわよ。いいわね」
霞が念を押すのに九郎を見ると
「ありがとうございます」
一つ深く礼をして背を向けた。
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