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「このシフォンケーキ、すっげー美味い!お店出せるんじゃないか?」
目の前ではシフォンケーキを美味しそうに頬張る桜羽くん。そして正面には肩を縮ませて座る男、俺。
久東には散々迷惑をかけたし言われたからには頑張ろう、と勇気を出して桜羽くんに話しかけたが罪悪感で胸が苦しい。タダでは着いてきてくれないかもしれないと思い、シフォンケーキを焼いてきたが、ここまで純粋に喜ばれるとまるで自分が幼児をお菓子で釣る不審者になった気分だ。
胸が痛むが、平然を装い俺は微笑んだ。
「良かった。美味しそうに食べて貰えて」
「俺こそこんな美味いのタダで食べていいのか?なんかお礼とか、大したことは出来ないけどさ」
よし、きた!ここで生徒会に近付くのを控えてくれって注意すれば上手くいく!
このビッグチャンスに胸を馳せていたが、突然爆弾を落とされた。
「颯汰のことか?」
「えっ、な、なんで」
「颯汰と付き合ってるんだろ?」
ここでも知られていた。
俺があんなに必死に隠そうとしていた努力は一体……。確か三谷情報では王道転校生は鈍感で世間知らずだと言っていたが、嘘だったのか?
「最近喧嘩したんだろ?」
「え、あ、うん。でも、仲直りしたから」
「良かったな!颯汰も一時期死人みたいな顔してたけど今じゃスキップまでしてるよ」
スキップをする颯汰くん!?見たい、凄く気になる。ていうかこの子俺達の仲をどこまで知ってるんだろう。
そういえば、颯汰くんはこの子が転校してくるまで滅多に人と関わりが無かったし、学校生活も一人で過ごしていたはずだ。桜羽くんと颯汰くんってどんな会話をして仲良くなったんだろう。
やばい。色んなことが気になってきてしまう。でも今は風紀委員として聞かなくては。
「颯汰くんのことじゃなくて、他の生徒会役員のことなんだけどさ、ちょっとお願いしたいことがあって」
「なんだ?」
「実は親衛隊が最近桜羽くんに嫌がらせしてるって聞いて。だから生徒会と関わる機会を減らして欲しいんだ」
「嫌だ」
即答で断られた。やっぱり簡単にいかせてもらえないか。どうしよう。どうやって説得すればいいんだ。
「なんでそんなこと言うんだよ」
「え?」
「お前だって颯太と一緒に居たら楽しいじゃん。それなのになんで邪魔するんだよ!」
「そ、それは……」
反論が出来なかった。俺だって颯汰くんと別れろ、と急に言われたら嫌に決まってる。
「その、でも、親衛隊に嫌がらせをされたら困るよね。もしかしたらエスカレートしてもっと酷いことになるかも」
「別にいい。あんな奴ら俺ががぶっ飛ばしてやるよ」
頼もしすぎる。流石主人公、言うことも格好良い。
でも正直言うと彼が強いようには見えない。小さくて華奢だから力も弱そうだ。
親衛隊の子達も可愛らしい子ウサギのような容姿をしているが、ゴリラのようなマッチョを使って襲わせることもある。実際、そういう被害を受けた子達を見てきた。だから親衛隊を見くびってはならない。いくら転校生でも一人では勝てないだろう。
「大人数で襲われたりしたらどうするの?危ないよ」
「大丈夫。俺強いし」
「でも、何かあったら……」
その時、扉が開いた音がした。誰か来たのかと思い後ろを振り向いたが誰もいない。
すると下から声が聞こえたので目線を下げた。そこには一匹の小さな猫がいたのだ。
「黒猫?」
「ほんとだ!よしよーし、こっちこーい」
桜羽くんが話しかけるが、黒猫はそっぽ向いて扉の方へ歩いていった。その様子を見て分かりやすく肩を下ろして落胆する桜羽くん。
「猫、好きなの?」
「好き!」
無邪気に歯を見せて笑う。こういう素直で真っ直ぐなところに生徒会は惹かれたのか、と考えていると、突如彼の口から似合わない言葉が出てきた。
「そういえば、隼人ってネコ?」
「猫?人間だよ?」
「違う違う。知らなかった?あー、えっと、ヤる時のことなんだけど、上か下かって言ったらわかる?」
どういう意味が理解した瞬間、顔が燃えるように熱くなる。
な、何故急にそんな下ネタを言うんだ!純粋そうな顔をしてるのに衝撃である。
目の前ではシフォンケーキを美味しそうに頬張る桜羽くん。そして正面には肩を縮ませて座る男、俺。
久東には散々迷惑をかけたし言われたからには頑張ろう、と勇気を出して桜羽くんに話しかけたが罪悪感で胸が苦しい。タダでは着いてきてくれないかもしれないと思い、シフォンケーキを焼いてきたが、ここまで純粋に喜ばれるとまるで自分が幼児をお菓子で釣る不審者になった気分だ。
胸が痛むが、平然を装い俺は微笑んだ。
「良かった。美味しそうに食べて貰えて」
「俺こそこんな美味いのタダで食べていいのか?なんかお礼とか、大したことは出来ないけどさ」
よし、きた!ここで生徒会に近付くのを控えてくれって注意すれば上手くいく!
このビッグチャンスに胸を馳せていたが、突然爆弾を落とされた。
「颯汰のことか?」
「えっ、な、なんで」
「颯汰と付き合ってるんだろ?」
ここでも知られていた。
俺があんなに必死に隠そうとしていた努力は一体……。確か三谷情報では王道転校生は鈍感で世間知らずだと言っていたが、嘘だったのか?
「最近喧嘩したんだろ?」
「え、あ、うん。でも、仲直りしたから」
「良かったな!颯汰も一時期死人みたいな顔してたけど今じゃスキップまでしてるよ」
スキップをする颯汰くん!?見たい、凄く気になる。ていうかこの子俺達の仲をどこまで知ってるんだろう。
そういえば、颯汰くんはこの子が転校してくるまで滅多に人と関わりが無かったし、学校生活も一人で過ごしていたはずだ。桜羽くんと颯汰くんってどんな会話をして仲良くなったんだろう。
やばい。色んなことが気になってきてしまう。でも今は風紀委員として聞かなくては。
「颯汰くんのことじゃなくて、他の生徒会役員のことなんだけどさ、ちょっとお願いしたいことがあって」
「なんだ?」
「実は親衛隊が最近桜羽くんに嫌がらせしてるって聞いて。だから生徒会と関わる機会を減らして欲しいんだ」
「嫌だ」
即答で断られた。やっぱり簡単にいかせてもらえないか。どうしよう。どうやって説得すればいいんだ。
「なんでそんなこと言うんだよ」
「え?」
「お前だって颯太と一緒に居たら楽しいじゃん。それなのになんで邪魔するんだよ!」
「そ、それは……」
反論が出来なかった。俺だって颯汰くんと別れろ、と急に言われたら嫌に決まってる。
「その、でも、親衛隊に嫌がらせをされたら困るよね。もしかしたらエスカレートしてもっと酷いことになるかも」
「別にいい。あんな奴ら俺ががぶっ飛ばしてやるよ」
頼もしすぎる。流石主人公、言うことも格好良い。
でも正直言うと彼が強いようには見えない。小さくて華奢だから力も弱そうだ。
親衛隊の子達も可愛らしい子ウサギのような容姿をしているが、ゴリラのようなマッチョを使って襲わせることもある。実際、そういう被害を受けた子達を見てきた。だから親衛隊を見くびってはならない。いくら転校生でも一人では勝てないだろう。
「大人数で襲われたりしたらどうするの?危ないよ」
「大丈夫。俺強いし」
「でも、何かあったら……」
その時、扉が開いた音がした。誰か来たのかと思い後ろを振り向いたが誰もいない。
すると下から声が聞こえたので目線を下げた。そこには一匹の小さな猫がいたのだ。
「黒猫?」
「ほんとだ!よしよーし、こっちこーい」
桜羽くんが話しかけるが、黒猫はそっぽ向いて扉の方へ歩いていった。その様子を見て分かりやすく肩を下ろして落胆する桜羽くん。
「猫、好きなの?」
「好き!」
無邪気に歯を見せて笑う。こういう素直で真っ直ぐなところに生徒会は惹かれたのか、と考えていると、突如彼の口から似合わない言葉が出てきた。
「そういえば、隼人ってネコ?」
「猫?人間だよ?」
「違う違う。知らなかった?あー、えっと、ヤる時のことなんだけど、上か下かって言ったらわかる?」
どういう意味が理解した瞬間、顔が燃えるように熱くなる。
な、何故急にそんな下ネタを言うんだ!純粋そうな顔をしてるのに衝撃である。
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