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久東に言われた事を反省し俺は好きだと直接的に言わないようにした。
甘い物もあげない。優しくしない。綺麗な子を見守るだけにしよう!そう固く決心した。
さてと、今日は図書室によく居る美形図書委員長を眺めに行こうかな。ついでに本も借りたいし。
「あ、あったあった」
目当てのレシピ本を取り、少し立ち読みする。今度は何を作ろうか。
本の中身に集中していると、影が覆い被さった。
「あっ、葉桐くん」
「何見てるの」
「今度作るお菓子のレシピ見てる」
影の正体は、翡翠のような透明感のある瞳が美しい葉桐くんだった。
葉桐くんは俺より一つ年下で生徒会に所属しており書記を務めている。無口で無表情だが美し過ぎるその容貌により書記に選ばれ、生徒に大人気だ。少女漫画ではイケメンだけ風で髪が靡くなんてシチュがありがちだが、彼の場合美しすぎて台風でも引き起こすのではないかと思う。まああくまで例えだが。
そんな彼と関わる機会なんて普通無いが、以前校内で適当に配ったお菓子を彼もどこからか貰ったのか、美味しいと言ってくれて、それ以降余ったお菓子を時々渡している。
葉桐くんは俺の隣でレシピ本に視線を移した。背丈が同じ位だからか顔が近くて緊張する。こんなにファンサされていいの?俺明日殺されないかな。イケメンに興奮している事を紛らわすために口を動かした。
「葉桐くんは何が好き?」
「リゾット」
「ああ、美味しいよね」
俺が聞いたのは菓子類の中で、ってつもりだったんだけどまあいいや。リゾットか。美味しいよね。うん。
「先輩、付き合ってほしい」
「え、どこに?」
いきなりなんだ。でも、もう目当ての本も借りれたし俺は何処でも付き添える。それに葉桐くんの美顔を横で見れるなんて寧ろラッキーである。
しかし、俺の考えとは裏腹に、葉桐くんは跪き、俺の手を優しく両手で包んで口を開いた。
「好きです」
「……え?」
俺の脳内はクエスチョンマークで埋め尽くされた。しかし、そんな俺の様子を気にも留めず彼は手の甲にキスを落とした。
予想外の行動に目を大きく見開く。な、何してんの?パクパクと餌を前にした鯉のように口を開閉し、やっと声を出した。
「え、えと、葉桐くん。ちょっと、手を離してくれないかな」
「なんで?」
「心臓が痛すぎて死にそうだから」
「っ!?分かった。離す」
素直に信じるところ可愛いね。お兄さんはその純粋な心のまま成長して欲しいと心から思うよ。そして、葉桐くんは恐る恐る伺うような視線を俺に送ってきた。
「その、返事は?」
「えっ」
真剣な眼差しが突き刺さる。徐々に皮膚に彼の熱が伝わる。
ど、どうしよう。恋愛対象として見ていないし俺は女の子が好きだ。そんな素振りをしていないつもりだったが、また知らないうちに勘違いさせてしまったのだろうか。
俺はなるべく彼を傷付けないようにやんわりと断った。
「ごめん。その、今まで葉桐くんのこと、あんまり恋愛対象として見てきてなかったし恋とかよく分かんないかな」
「そう……じゃあ、恋愛対象として見てもらえば好きになってもらえる?」
「へ?」
ぽかんと固まり油断した隙にぐっと腕を引かれ、いつの間にか俺は壁と葉桐くんの間に挟まっていた。所謂壁ドンというやつである。
鼻と鼻がくっつくほどの至近距離で迫られた。
「お試しで付き合って欲しい。いつか先輩に好きになってもらえるように精進する。だからチャンスが欲しい」
瞬間、ズキュンと俺の胸に愛の矢が刺さった。かつてないほど動悸が早く顔が熱い。いつも無表情な彼が今は少し赤く染めて必死な表情をしている。葉桐くんのビー玉のようにキラキラと光る綺麗な翡翠色の瞳の中には顔を赤く染めた俺が映っていた。
俺は照れて伏し目になるものの、小さな声で返事をした。
「えっと、す、既に惚れそうなんですけど、それでもいいですか」
葉桐くんは俺の言葉に驚いたのか呆然とする。やがて、花が咲くような笑顔を零した。
「嬉しい」
そして、俺達は付き合うことになった。彼は満足そうに微笑み俺の髪を優しく撫でた後図書室を去った。
「……イケメン過ぎない?」
どきんどきんと鼓動がうるさい。心臓が破裂してしまいそう。こんなに胸が鳴るのは初めてだ。暫く十分程俺は図書室で立ち尽くした。
甘い物もあげない。優しくしない。綺麗な子を見守るだけにしよう!そう固く決心した。
さてと、今日は図書室によく居る美形図書委員長を眺めに行こうかな。ついでに本も借りたいし。
「あ、あったあった」
目当てのレシピ本を取り、少し立ち読みする。今度は何を作ろうか。
本の中身に集中していると、影が覆い被さった。
「あっ、葉桐くん」
「何見てるの」
「今度作るお菓子のレシピ見てる」
影の正体は、翡翠のような透明感のある瞳が美しい葉桐くんだった。
葉桐くんは俺より一つ年下で生徒会に所属しており書記を務めている。無口で無表情だが美し過ぎるその容貌により書記に選ばれ、生徒に大人気だ。少女漫画ではイケメンだけ風で髪が靡くなんてシチュがありがちだが、彼の場合美しすぎて台風でも引き起こすのではないかと思う。まああくまで例えだが。
そんな彼と関わる機会なんて普通無いが、以前校内で適当に配ったお菓子を彼もどこからか貰ったのか、美味しいと言ってくれて、それ以降余ったお菓子を時々渡している。
葉桐くんは俺の隣でレシピ本に視線を移した。背丈が同じ位だからか顔が近くて緊張する。こんなにファンサされていいの?俺明日殺されないかな。イケメンに興奮している事を紛らわすために口を動かした。
「葉桐くんは何が好き?」
「リゾット」
「ああ、美味しいよね」
俺が聞いたのは菓子類の中で、ってつもりだったんだけどまあいいや。リゾットか。美味しいよね。うん。
「先輩、付き合ってほしい」
「え、どこに?」
いきなりなんだ。でも、もう目当ての本も借りれたし俺は何処でも付き添える。それに葉桐くんの美顔を横で見れるなんて寧ろラッキーである。
しかし、俺の考えとは裏腹に、葉桐くんは跪き、俺の手を優しく両手で包んで口を開いた。
「好きです」
「……え?」
俺の脳内はクエスチョンマークで埋め尽くされた。しかし、そんな俺の様子を気にも留めず彼は手の甲にキスを落とした。
予想外の行動に目を大きく見開く。な、何してんの?パクパクと餌を前にした鯉のように口を開閉し、やっと声を出した。
「え、えと、葉桐くん。ちょっと、手を離してくれないかな」
「なんで?」
「心臓が痛すぎて死にそうだから」
「っ!?分かった。離す」
素直に信じるところ可愛いね。お兄さんはその純粋な心のまま成長して欲しいと心から思うよ。そして、葉桐くんは恐る恐る伺うような視線を俺に送ってきた。
「その、返事は?」
「えっ」
真剣な眼差しが突き刺さる。徐々に皮膚に彼の熱が伝わる。
ど、どうしよう。恋愛対象として見ていないし俺は女の子が好きだ。そんな素振りをしていないつもりだったが、また知らないうちに勘違いさせてしまったのだろうか。
俺はなるべく彼を傷付けないようにやんわりと断った。
「ごめん。その、今まで葉桐くんのこと、あんまり恋愛対象として見てきてなかったし恋とかよく分かんないかな」
「そう……じゃあ、恋愛対象として見てもらえば好きになってもらえる?」
「へ?」
ぽかんと固まり油断した隙にぐっと腕を引かれ、いつの間にか俺は壁と葉桐くんの間に挟まっていた。所謂壁ドンというやつである。
鼻と鼻がくっつくほどの至近距離で迫られた。
「お試しで付き合って欲しい。いつか先輩に好きになってもらえるように精進する。だからチャンスが欲しい」
瞬間、ズキュンと俺の胸に愛の矢が刺さった。かつてないほど動悸が早く顔が熱い。いつも無表情な彼が今は少し赤く染めて必死な表情をしている。葉桐くんのビー玉のようにキラキラと光る綺麗な翡翠色の瞳の中には顔を赤く染めた俺が映っていた。
俺は照れて伏し目になるものの、小さな声で返事をした。
「えっと、す、既に惚れそうなんですけど、それでもいいですか」
葉桐くんは俺の言葉に驚いたのか呆然とする。やがて、花が咲くような笑顔を零した。
「嬉しい」
そして、俺達は付き合うことになった。彼は満足そうに微笑み俺の髪を優しく撫でた後図書室を去った。
「……イケメン過ぎない?」
どきんどきんと鼓動がうるさい。心臓が破裂してしまいそう。こんなに胸が鳴るのは初めてだ。暫く十分程俺は図書室で立ち尽くした。
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