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「生徒会長!今日もお供致します」
「ああ、そうか」
声の主は、この学園でも有名な生徒会長と親衛隊隊長。相変わらずご尊顔を拝見することが出来てラッキーだ。
少し浮き足立ちながら、俺は自分の寮へ向かった。
「えっと、残りオーブンで35分」
オーブンに生地を入れた。今、作っているのはシフォンケーキ。ケーキは美味しいし可愛くて好きだ。
俺は、人や物に限らず、可愛い物や綺麗な物を眺めるのが好きだ。
「欲しい」とか「なりたい」とかじゃなくて、ずっと遠くから観察するのが好き。簡単に言えばアイドルのファンのような距離感が好きなのだ。だから、こうしてよくお菓子作りもする。可愛いものは自分で作れるから良いよな。
「何を作ってるんだ?」
「あ、久東」
おっと、こんなところにも美人が。
気配も消して直ぐ後ろに立っていたものだから驚いた。
久東は風紀委員長であり、生徒会長の横に並んでも違和感が無いほど美形だ。瑠璃色の髪はとても艶やかで美しく切れ長の瞳は宝石のような輝きを放っている。そしてその身体は細くしなやかな肢体で、無駄のない筋肉がバランスよくついていた。
こんな至近距離で話していたらバチが当たりそうな程の美しさだ。思わず反射神経で目を瞑る。
すると、急に額に刺激を与えられた。デコピンされた所を手で抑える。
「何ビビってんだ」
「ああ、ごめん。シフォンケーキ作ってる」
「そうか。間食だから食べ過ぎないように。他のケーキに比べてカロリーは低いが、それでも食パン一切れ以上なんだぞ」
相変わらず美に厳しい。まあ、美しい人はこれ程努力してその顔が出来ているという事だ。凄いなぁ。
久東は暫く俺と一緒に膨らんでいくシフォンケーキの様子を眺めていた。食べたいのか?
「食べたいの?」
「間食はしたくない。それにしても、まさかこれ全部一人で食べる気か?」
「まさか。クラスの皆に分けるつもりだよ」
本当は一人で食べるつもりだったが、もしそんな事がバレたら久東が「太るぞ!」と怒るだろう。まあ普通にクラスの皆に渡すのも良いかもしれない。
俺の言葉に何故か久東は少し眉間に皺を寄せた。怒った顔も美しいです、委員長…!と彼のファンさながらそんなセリフを言いたくなった。
「……また勘違いさせたらどうするんだ」
「勘違い?」
「昨日告られていたじゃないか」
少し時を戻そう。
校舎裏で待っていた放課後のことだ。理由は知らないが、後輩から「校舎裏で待っていてください」と書いてあった手紙を渡されたのだ。
用事があるなら直接言えばいいのに。もしや決闘?それなら行きたくない。しかし、言われたからには行かないと。
そして校舎裏に行けばもう既に後輩は待っていて、俺を見た瞬間ガバッと頭を下げた。
「お願いします。別れて下さい」
「……へ?」
「先輩の事、最初は好きだったんですけど、ちょっと浮気癖が多くて無理というか」
「ンン?」
今この子なんて言った?別れて下さい……別れて?
俺、君と付き合って無いけど!?
俺と後輩は寮の部屋が近くだった。最近よく話してくれるし懐いてくれていたのかな、嬉しい。みたいな気持ちだった。それに彼は一年の中でも美形で可愛らしい顔立ちで癒されるなぁと思っていた。
だけど、俺は男に興味はないのだ。顔が好きなだけで恋愛対象は女の子。それなのに俺は振られている。男に。付き合ってもいない後輩に。
「お、おお、落ち着こっか」
「だって、先輩が酷いんじゃないですか。僕の事好きって言ったのに、他の男とばっか話して、僕と居る時もいつも他の先輩見てますし」
いやまあ確かに君のこと好きって言ったかもしれないけど、顔が可愛いから好きって言っただけで他意は無い。兎に角、今の状況を何とか回避しないと。
後輩くんは今涙目。潤んだ瞳も可愛い、って落ち着け俺!!キモイこと考えんな!!彼は俺なんかのせいで泣いているんだぞ!
「あ、ああ、泣かないで。君は笑顔の方が可愛いんだから」
「もー、先輩の人たらし!そういう事言うから好きになっちゃうんですよ」
「ご、ごめん」
何故か反射的に謝ってしまったけどこれ俺が悪いの?そして、彼は潤んだ瞳をキッと睨みつけて俺に言い放った。
「先輩と居ると俺ばかり辛い思いしちゃうんで別れます。もう俺の事騙さないで下さい」
これが、昨日起こったことだ。
このように勘違いされることは一度や二度だけじゃなかった。俺が美形を見つめているからか、自分を好きなのかと勘違いしてしまう人が多いのだ。俺がやめればいいだけなんだけど、美形を見つめるのは俺にとって生き甲斐のようなもの。止められない。
「いい加減、後輩を誑かすのはやめろ」
「誑かしているつもりは無いんだけど……。悪いけど、美形を見るのは俺にとってエナジードリンクのようなものなの。美形はこのお菓子よりも何百倍以上に癒されるんだよ」
「今も餌付けしようとしてるじゃないか」
「い、今は違う」
今何を言っても彼には言い訳をしているように感じられる。
じろりとした目で久東は俺を見る。……シフォンケーキはやはり一人で食べよう。元々そのつもりだったから。
「取り敢えず、易々と好きとか言うな。お前は良かれで甘やかして相手をダメにする性格だからな」
「ゔ、はい……」
「ああ、そうか」
声の主は、この学園でも有名な生徒会長と親衛隊隊長。相変わらずご尊顔を拝見することが出来てラッキーだ。
少し浮き足立ちながら、俺は自分の寮へ向かった。
「えっと、残りオーブンで35分」
オーブンに生地を入れた。今、作っているのはシフォンケーキ。ケーキは美味しいし可愛くて好きだ。
俺は、人や物に限らず、可愛い物や綺麗な物を眺めるのが好きだ。
「欲しい」とか「なりたい」とかじゃなくて、ずっと遠くから観察するのが好き。簡単に言えばアイドルのファンのような距離感が好きなのだ。だから、こうしてよくお菓子作りもする。可愛いものは自分で作れるから良いよな。
「何を作ってるんだ?」
「あ、久東」
おっと、こんなところにも美人が。
気配も消して直ぐ後ろに立っていたものだから驚いた。
久東は風紀委員長であり、生徒会長の横に並んでも違和感が無いほど美形だ。瑠璃色の髪はとても艶やかで美しく切れ長の瞳は宝石のような輝きを放っている。そしてその身体は細くしなやかな肢体で、無駄のない筋肉がバランスよくついていた。
こんな至近距離で話していたらバチが当たりそうな程の美しさだ。思わず反射神経で目を瞑る。
すると、急に額に刺激を与えられた。デコピンされた所を手で抑える。
「何ビビってんだ」
「ああ、ごめん。シフォンケーキ作ってる」
「そうか。間食だから食べ過ぎないように。他のケーキに比べてカロリーは低いが、それでも食パン一切れ以上なんだぞ」
相変わらず美に厳しい。まあ、美しい人はこれ程努力してその顔が出来ているという事だ。凄いなぁ。
久東は暫く俺と一緒に膨らんでいくシフォンケーキの様子を眺めていた。食べたいのか?
「食べたいの?」
「間食はしたくない。それにしても、まさかこれ全部一人で食べる気か?」
「まさか。クラスの皆に分けるつもりだよ」
本当は一人で食べるつもりだったが、もしそんな事がバレたら久東が「太るぞ!」と怒るだろう。まあ普通にクラスの皆に渡すのも良いかもしれない。
俺の言葉に何故か久東は少し眉間に皺を寄せた。怒った顔も美しいです、委員長…!と彼のファンさながらそんなセリフを言いたくなった。
「……また勘違いさせたらどうするんだ」
「勘違い?」
「昨日告られていたじゃないか」
少し時を戻そう。
校舎裏で待っていた放課後のことだ。理由は知らないが、後輩から「校舎裏で待っていてください」と書いてあった手紙を渡されたのだ。
用事があるなら直接言えばいいのに。もしや決闘?それなら行きたくない。しかし、言われたからには行かないと。
そして校舎裏に行けばもう既に後輩は待っていて、俺を見た瞬間ガバッと頭を下げた。
「お願いします。別れて下さい」
「……へ?」
「先輩の事、最初は好きだったんですけど、ちょっと浮気癖が多くて無理というか」
「ンン?」
今この子なんて言った?別れて下さい……別れて?
俺、君と付き合って無いけど!?
俺と後輩は寮の部屋が近くだった。最近よく話してくれるし懐いてくれていたのかな、嬉しい。みたいな気持ちだった。それに彼は一年の中でも美形で可愛らしい顔立ちで癒されるなぁと思っていた。
だけど、俺は男に興味はないのだ。顔が好きなだけで恋愛対象は女の子。それなのに俺は振られている。男に。付き合ってもいない後輩に。
「お、おお、落ち着こっか」
「だって、先輩が酷いんじゃないですか。僕の事好きって言ったのに、他の男とばっか話して、僕と居る時もいつも他の先輩見てますし」
いやまあ確かに君のこと好きって言ったかもしれないけど、顔が可愛いから好きって言っただけで他意は無い。兎に角、今の状況を何とか回避しないと。
後輩くんは今涙目。潤んだ瞳も可愛い、って落ち着け俺!!キモイこと考えんな!!彼は俺なんかのせいで泣いているんだぞ!
「あ、ああ、泣かないで。君は笑顔の方が可愛いんだから」
「もー、先輩の人たらし!そういう事言うから好きになっちゃうんですよ」
「ご、ごめん」
何故か反射的に謝ってしまったけどこれ俺が悪いの?そして、彼は潤んだ瞳をキッと睨みつけて俺に言い放った。
「先輩と居ると俺ばかり辛い思いしちゃうんで別れます。もう俺の事騙さないで下さい」
これが、昨日起こったことだ。
このように勘違いされることは一度や二度だけじゃなかった。俺が美形を見つめているからか、自分を好きなのかと勘違いしてしまう人が多いのだ。俺がやめればいいだけなんだけど、美形を見つめるのは俺にとって生き甲斐のようなもの。止められない。
「いい加減、後輩を誑かすのはやめろ」
「誑かしているつもりは無いんだけど……。悪いけど、美形を見るのは俺にとってエナジードリンクのようなものなの。美形はこのお菓子よりも何百倍以上に癒されるんだよ」
「今も餌付けしようとしてるじゃないか」
「い、今は違う」
今何を言っても彼には言い訳をしているように感じられる。
じろりとした目で久東は俺を見る。……シフォンケーキはやはり一人で食べよう。元々そのつもりだったから。
「取り敢えず、易々と好きとか言うな。お前は良かれで甘やかして相手をダメにする性格だからな」
「ゔ、はい……」
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